新潟大学との共同研究の成果に関する論文掲載のお知らせ

平成 30 年5月 16 日
PR 情報

各 位
会 社 名 株式会社カイオム・バイオサイエンス
代表者名 代 表 取 締 役 社 長 小 林 茂
(コード:4583 東証マザーズ)



新潟大学との共同研究の成果に関する論文掲載のお知らせ



当社は、平成 28 年 2 月より国立大学法人新潟大学(以下、新潟大学)大学院医歯学総合研究科消化器内科
学分野(寺井崇二教授、土屋淳紀講師)、消化器・一般外科分野(若井俊文教授)との共同研究(以下、本研究)
において、肝がんのヒト臨床検体での DLK-1 を含む肝前駆細胞マーカーの発現と腫瘍マーカー、病態との関連
性や治療標的分子としての可能性について検討し、その研究に関する研究成果が米国の論文誌「Oncotarget」
に掲載されましたので、お知らせいたします。


論文概要
タイトル: 「Clinical outcome of hepatocellular carcinoma can be predicted by the expression
of hepatic progenitor cell markers and serum tumour markers」
(和訳:肝前駆細胞マー
カーと血清腫瘍マーカーの発現解析により肝細胞癌の臨床的予後を予測できる)


著 者: Satoshi Seino, Atsunori Tsuchiya, Yusuke Watanabe, Yuzo Kawata, Yuichi Kojima,
Shunzo Ikarashi, Hiroyuki Yanai, Koji Nakamura, Daisuke Kumaki, Masaaki Hirano,
Kazuhiro Funakoshi, Takashi Aono, Takeshi Sakai, Jun Sakata, Masaaki Takamura,
Hirokazu Kawai, Satoshi Yamagiwa, Toshifumi Wakai, Shuji Terai


掲 載 先: 米国医学論文誌 Oncotarget* 2018, Vol. 9, (No. 31), pp: 21844-21860
▼論文全文は下記よりご覧いただけます。
(英語サイト)
https://doi.org/10.18632/oncotarget.25074


* Oncotarget
米国に本社を置く Impact Journal 社が 2010 年に創刊した、癌の分子標的治療領域で高い評価を受けている査読つき
医学論文誌です。
(http://www.oncotarget.com/)


「LIV-1205*」の開発状況
当社では抗 DLK-1 ヒト化モノクローナル抗体「LIV-1205」を医薬候補抗体として開発中であり、現在、臨床
開発に向けた準備を進めております。本研究における成果を含め、今後の LIV-1205 臨床試験の開発戦略を定
めてまいります。



* LIV-1205
LIV-1205 は肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現している抗原(標的分子)「DLK-1(Delta-like 1
homolog)
」に結合し、がんの増殖活性を阻害するヒト化モノクローナル抗体であり、当社が開発中の医薬候補抗体で
す。DLK-1 は幹細胞や前駆細胞といった未熟な細胞の増殖、分化を制御すると考えられており、肝臓がんの細胞表面
に発現し、その増殖に関与していることが発見された、新しいがん治療の標的になりうる可能性がある分子です。


以 上
<研究概要(参考)>
肝がんは、癌による死亡者数では世界で 2 番目に多い癌種で、その 90%は原発性の肝細胞がんからなり、C
型肝炎ウイルスや B 型肝炎ウイルスの感染、アルコールの過剰摂取、非アルコール性脂肪性肝炎など、様々な
背景によって多段階に癌の発生と進行が進む難治性のがんです。肝細胞がんは組織学的に非常に不均一な癌細
胞集団から構成されており、そのことが肝細胞がんの治療における患者の層別化を困難なものにしており、腫
瘍細胞の挙動や予後因子など包括的な肝細胞がんのバイオマーカーの確立が必要とされています。
本研究は、2008 年から 2014 年の間に新潟大学医歯学総合病院(160 症例)と新潟県立中央病院(91 症例)に
おいて、肝細胞がんの患者から手術によって摘出された肝細胞がん病理検体 251 症例について、発現すると臨
床上予後不良になると考えられている4種類の肝幹・前駆細胞マーカー(EpCAM, NCAM, DLK-1, CK19)の発現
プロファイルを免疫組織染色により解析し、患者の臨床病理学的な特徴、癌悪性度、および血清腫瘍マーカー
(AFP*1, AFP-L3*2, DCP*3)
、および手術後の患者予後との相関についてレトロスペクティブに解析し、肝前駆
細胞マーカーの高度にヘテロな細胞集団からなる肝細胞がんにおいて、個別化医療にむけた診断、治療標的分
子としての可能性を評価したものです。
本研究の結果、解析した4種類の肝前駆細胞マーカーのうち、2種類以上の肝前駆細胞マーカーを同時に発
現している肝細胞がん患者では、術後の予後が不良で、肝前駆細胞マーカーの発現頻度は血清腫瘍マーカーで
ある AFP, AFP-L3 のレベル、腫瘍血管の浸潤の頻度、がん細胞の分化度から判断される腫瘍の悪性度との相関
が認められ, 特に EpCAM の発現、DCP>300 mAU/ml, 年齢 > 60, 肝機能を表す指標である Child-Pugh*4 スコア
のグレード B または C が、肝細胞がん患者の独立した予後予測因子となりうることが判明しました。DLK-1 の
肝細胞癌中での発現は、肝前駆細胞マーカーの中でも最も高率に認められ、高率に他の肝前駆細胞マーカーと
の重複が見られ、その発現は臨床上頻用される AFP, AFP-L3 のレベルから高率に予想できることがわかりまし
た。
今回の研究成果は、肝前駆細胞マーカーと血清腫瘍マーカー、肝がん臨床転帰との関連性の研究に向けて道
を開く成果であり、将来的に遺伝子変異などの情報と統合することにより肝細胞がんの個別化医療にむけた研
究の進展が期待されます。


*1 AFP (α-fetoprotein)
肝細胞癌の代表的な腫瘍マーカーの1つ。肝炎や肝硬変でも上昇する場合がある。
*2 AFP-L3 (lectin-reactiveα-fetoprotein)
AFP のうち、癌化にともない変化した糖鎖構造をもつ分画(L3 分画)で、レクチンとの結合性を利用して検出するこ
とができる。
*3 DCP (des-γ-carboxy prothrombin)
肝細胞癌の腫瘍マーカーの1つで、別名 PIVKA-II (protein induced by vitamin-K absence II)とも呼ばれビタミン
K 欠乏で産生される異常プロトロンビンである。
*4 Child-Pugh スコア
肝機能を表す分類法の1つ。脳症、腹水、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、プロトロンビン活性値の 5 項目の
検査値から 3 段階(A, B, C ステージ)に分類される。


研究の背景、内容等につきまして、新潟大学のホームページに詳細な説明が掲載されておりますので、是非ご
覧ください。
(https://www.niigata-u.ac.jp/news/2018/43103/)




【本件に関する問い合わせ】
株式会社カイオム・バイオサイエンス IR 担当
電話:03-6383-3746

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