BTK阻害剤AS-1763に関するアメリカ癌学会年次総会での発表のお知らせ

2022年4月12日
各 位
会 社 名 カルナバイオサイエンス株式会社
代表者名 代表取締役社長 吉野 公一郎
(コード番号:4572)
問合せ先 取締役経営管理本部長 山本 詠美
(TEL: 078-302-7075)


BTK阻害剤AS-1763に関するアメリカ癌学会年次総会での発表のお知らせ

当社は、2022年4月11日(米国時間)に米国ルイジアナ州ニューオーリンズで開催中のアメリカ癌学
会年次総会(AACR Annual Meeting 2022)において、当社が開発中の次世代型BTK阻害剤AS-1763の創薬
研究およびフェーズ1試験SADパートの結果に関する発表を行いましたので、その概要をお知らせいた
します。


(1)AS-1763の創製研究および非臨床試験に関する発表
アブストラクト番号 1400

ポスタータイトル AS-1763: a highly potent, noncovalent and next generation BTK inhibitor for
the treatment of patients with B-cell malignancies having C481S mutation in
BTK
セッション High-throughput Screening, Drug Design, and Natural Products in Cancer

発表者 Wataru Kawahata, Tokiko Asami, Takao Kiyoi, Takayuki Irie, Shigeki
Kashimoto, Hatsuo Furuichi, Kyoko Miyamoto, Akinori Arimura, Masaaki
Sawa
ポスター発表の概要
BTKは、非受容体型チロシンキナーゼの1種であり、B細胞の分化 増殖に関与するB細胞抗原受容体
・ (BCR)
シグナル伝達に重要な役割をしていることが知られており、慢性リンパ性白血病(CLL)などの血液が
んの重要な治療標的として認識されています。第1世代の共有結合型BTK阻害薬は、B細胞腫瘍の有効な
治療薬として幅広く使われていますが、近年、これらの共有結合型BTK阻害剤に対する薬剤耐性が深刻
な問題となってきています。これらの耐性患者において481番目のシステインがセリンに変異(C481S
変異)したBTKが高頻度に見い出されていることから、このC481S変異が第1世代BTK阻害剤の共有結合
を妨げ阻害活性を低下させることが主な薬剤耐性の原因と考えられています。このような背景からBTK
C481S耐性変異に対する新しい治療方法の開発が非常に望まれており、次世代型非共有結合型BTK阻害
剤は、この薬剤耐性患者の有望な治療薬として大変期待されています。
今回、BTKにより増殖が制御されているヒトB細胞非ホジキンリンパ腫細胞株(OCI-Ly10細胞)に対して
強い増殖抑制活性を示しつつ、C481S耐性変異をもつBTKも阻害する新しいBTK阻害剤を創出することを


-1-
目的として、当社の保有するリード化合物を出発点として構造最適化を実施いたしました。その結果、
非常に高いキナーゼ選択性を示し、野生型およびC481S耐性変異をもつBTKの両方を強く阻害する化合
物AS-1763を見出しました。
本ポスターでは以下の結果について詳細を報告いたしました。
 リード化合物から構造最適研究を実施してAS-1763を創出した
 リコンビナント酵素アッセイおよび細胞アッセイにおいて、AS-1763は野生型およびC481S耐性変
異をもつBTKの両方を強く阻害した
 291キナーゼを含むキナーゼ選択性プロファイリング評価において、AS-1763は非常に高い選択性
を示した
 ヒト初代培養細胞を用いたPhenotypic screening(BioMAP® Diversity PLUS® Panel)においても
AS-1763はB細胞系バイオマーカーのみに作用したことから高い選択性が示唆された
 AS-1763は、OCI-Ly10細胞およびC481S変異BTKを導入したOCI-Ly10細胞(イブルチニブ耐性リンパ
腫モデル)を用いた担癌マウスモデルにおいて高い抗腫瘍効果を示した
 治験許可申請(IND)に必要な前臨床試験において、Ames試験、小核試験ともに陰性であり、安全
性薬理試験(心血管系、呼吸系および中枢神経系)に対する作用もなく、安全性が確認された
 マウスおよびイヌを用いた28日間の反復投与毒性試験において、それぞれの最高投与用量(500
mg/kg/dayおよび200 mg/kg/day)において毒性が観察されなかったことから、NOAEL(No Observed
Adverse Effect Level、無毒性量)は、それぞれ500 mg/kg/dayおよび200 mg/kg/dayと決定した
 以上の結果に基づき、AS-1763を医薬品候補化合物として選択し、現在フェーズ1試験を実施して
いる


(2)AS-1763のフェーズ1試験結果に関する発表
アブストラクト番号 CT137

ポスタータイトル Safety, pharmacokinetics, and pharmacodynamics of AS-1763, a highly
selective, orally bioavailable, non-covalent BTK inhibitor, in healthy
volunteers
セッション Phase I Clinical Trials 1

発表者 Akinori Arimura, Kyoko Miyamoto, Maria Velinova, Marieke van den
Dobbelsteen, Katsuhiro Mihara, Robert M. Miller, Masaaki Sawa


ポスター発表の概要
B細胞抗原受容体(BCR)-BTKシグナル経路は、正常B細胞だけでなくB細胞腫瘍の分化・増殖に関与す
るシグナル伝達に重要な役割をしていることが知られています。イブルチニブのような共有結合型BTK
阻害薬は、B細胞腫瘍の治療薬として承認されていますが、長期間の使用で薬剤耐性が発生したり、オ
フターゲットキナーゼ阻害活性に基づく副作用等が報告されています。
-2-
AS-1763は当社が創製した高いキナーゼ選択性を有する経口投与可能なBTK阻害剤で、野生型および
C481S耐性変異をもつBTKの両方を強く阻害することから、イブルチニブが効果を示さない慢性リンパ
性白血病(CLL)などのB細胞リンパ腫患者にも有効な治療薬として開発を進めています。
今回、健康成人を対象として実施した第1相臨床試験(EudraCT number 2020-005599-37)の結果につ
いてポスター発表いたしました。
本ポスターでは以下の結果について詳細を報告いたしました。
<試験デザイン>
 プラセボ対照無作為化二重盲検・用量漸増単回経口投与(SAD)パート、および100 mgタブレット
製剤を簡易製剤(溶液)と比較するオープンラベル相対的バイオアベイラビリティ(BA)パートの
2パートで構成
 SADパートは18歳から64歳までの健康成人男女(8名ずつの2コホート)を対象とし、5, 25, 100,
300, 500, 600 mgのAS-1763溶液(簡易製剤)もしくはプラセボを経口投与し、安全性および忍容
性、薬物動態(PK)
、薬力学(PD; CD69を指標としたB細胞活性化抑制活性)を評価
 BAパートは、別コホート(8名)を対象として、100 mgタブレットの単回経口投与後の薬物動態を
測定し、相対的BAを評価
<結果>
 SADパートにおいて、AS-1763の600 mg(最高用量)単回投与までの用量で忍容性を確認
 重篤な有害事象(AE)の発現はなし
 1名の被験者において、2つのグレード2のAEが報告されたが、薬剤に関連するものではなかった
 その他に報告されたAEは、軽度のものであり、用量相関性はなかった
 また臨床的安全性として評価した全てのパラメータ(心電図、バイタルサイン等)においても、薬
剤投与に関連する変化はなく、安全性が確認された
 PK評価において、薬剤経口投与後、AS-1763の血中濃度は速やかに上昇し、その後、2相性で低下
(tmax中央値:0.5~1.5時間、t1/2平均値:8.4~12.1時間)
 暴露量は、500 mgまで用量依存性が確認された
 PD評価において、AS-1763の5 mg投与から用量依存的にB細胞の活性化(CD69発現増加)が抑制さ
れた
 B細胞の活性化抑制は、100~600 mgのAS-1763投与後1~2時間で最大に達し(80%以上の抑制)
、そ
の強い抑制効果は、100, 300, 500, 600 mgの投与後、それぞれ2, 6, 8, 8時間まで持続した。
 PK-PD相関解析の結果、B細胞活性化抑制のIC50値は10.5 ng/mLと算出された
 BAパートにおいて、100 mgタブレット製剤は、溶液製剤と比べて少し暴露が低いものの、ほぼ同
等のPKプロファイルを示した
 これらの結果から、再発/難治性CLLおよびB-cell NHL患者を対象とした第1b相試験において、AS-
1763タブレット製剤の1日2回投与レジメンが推奨された

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以上


BTK阻害剤AS-1763について
AS-1763は、慢性リンパ性白血病(CLL)を含む成熟B細胞腫瘍の治療を目的として開発中の、野生型お
よびC481S変異型Bruton's Tyrosine Kinase(BTK)の両方を阻害する高選択性で非共有結合型の経口
投与可能な化合物です。イブルチニブを代表とする第1世代の共有結合型BTK阻害薬は、CLLや他の成
熟B細胞腫瘍の標準選択薬として使用されています。しかしながら、多くの患者で、BTKの481番目のシ
ステイン残基(C481)がセリンに置き換わる変異が生じて、第1世代の共有結合型BTK阻害剤の結合が
弱まり、薬剤耐性になることが報告されています。AS-1763は、野生型およびC481変異BTKのリンパ腫細
胞の両方の増殖を強く阻害することから、野生型のみならずC481変異BTKをもつ患者の治療にも有効と
考えられます。




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