研究開発の活動状況について

平成 28 年 5 月 2 日
オンコセラピー・サイエンス株式会社




2015 年 4 月より現在にいたる当社の研究開発の活動状況については、以下の通りとなっ
ております。


(1)開発パイプラインの進捗状況について




 低分子医薬


 総括
低分子医薬の分野では、現在 OTS167(MELK 特異的阻害剤)について、2013 年より
固形がんを対象とした静脈投与による第Ⅰ相臨床試験を実施しておりましたが、今期は、
経口投与の実施、および白血病の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験が追加され、開発が進捗しています。
また、上記 OTS167 以外にも、TOPK 特異的阻害剤など複数の候補化合物が研究~非
臨床段階にあり、臨床試験に向けて、研究・開発を行っています。


 OTS167
2016 年 4 月に、米国で行われている固形がんを対象とした OTS167 の臨床試験におい
て、患者登録を終了いたしました。これは、静脈投与において、当初の試験目的である安
全性と薬物動態の確認は達成されたと判断したためです。
また、2016 年 1 月には、上記の固形がん試験の進捗を踏まえて、急性骨髄性白血病に
対する OTS167 の静脈内投与による第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を開始しています。
さらに、2016 年1~3 月には、オーストラリアで経口投与による健常成人を対象とし
た第Ⅰ相臨床試験を実施し、ヒトでの良好な消化管吸収性(バイオアベイラビリティ)を
確認しております。この結果を今後の経口製剤開発に生かしていく予定です。


 その他の化合物
非臨床段階化合物の進捗としては、2015 年 11 月に、米国立がん研究所が提供するが
ん治療薬候補化合物特性評価及び安全性評価プログラムに TOPK 阻害剤が採択されまし
た。本プログラムにより、本化合物の非臨床試験開発が促進されることが期待されます。


 抗体医薬


 総括
抗体医薬の分野では、今期、OTSA101(滑膜肉腫を対象とした抗体)が医師主導治験
による第Ⅰ相臨床試験を終了し、現在、企業主導の次相臨床試験を計画中です。
また、KHK6640(アルツハイマー病を対象とした抗体で他社に導出済み)は第Ⅰ相臨
床試験を実施中です。


 OTSA101
2016 年 3 月に、OTSA101 の滑膜肉腫に対する第Ⅰ相臨床試験で、安全性と体内集積
につきまして良好な結果が確認できました。当社は、今回の臨床試験の結果を踏まえ、企
業主導の次相臨床試験を計画し、日米欧の承認申請を目指してまいります。
この臨床試験は、フランス・リヨンのレオンベラールセンター(Centre Léon Bérard)
において、肉腫治療の世界的権威であり、欧州がん研究・治療機構(EORTC)元会長の
Jean-Yves Blay 教授(同センター長)のもとで、医師主導治験として実施されたもので
す。


 KHK6640
2015 年 4 月に、抗アミロイドβ(Aβ)ペプチド抗体 KHK6640 について、昨年の欧
州での第 I 相臨床試験開始に引き続き、日本におきましても協和発酵キリン株式会社に
よりアルツハイマー病を対象とした第 I 相臨床試験が開始され、第 1 例目の投与が行わ
れました。同抗体は当社連結子会社であるイムナス・ファーマ株式会社を通じてライセン
スアウトしているものです。
 がんペプチドワクチン


 総括
がんペプチドワクチンについては、すでに数種類のワクチンを他社に導出済みであり、
第Ⅰ相~第Ⅲ相の試験が、ライセンスアウト先の各社で実施されており、今期、下記のと
おり順調に治験が進捗いたしました。現在、当社が企業治験として自ら実施している臨床
試験はございません。


 企業治験
2015 年 5 月に、当社が塩野義製薬株式会社にライセンスアウトしているがん特異的ペ
プチドワクチン S-588410 (5 種類のペプチドワクチンを混合)につきまして、食道がん
患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験の第一被験者の登録をいたしました。
また、同年 9 月には、同じく塩野義製薬株式会社が実施中の S-588410 の膀胱がんに
対する日欧第Ⅱ相臨床試験について、目標症例数の登録が完了しました。


 医師主導治験
なお、がんペプチドワクチンを使った医師主導治験については、2016 年 1 月には悪性
中皮腫を対象とした混合ペプチドワクチンの第Ⅰb 相臨床試験(医師主導治験)が開始さ
れています。また、2016 年 3 月には、当社が治験薬提供者として参加し、シンガポール・
韓国および日本にて実施されておりました、がんペプチドワクチンカクテル「OTSGC-
A24」の胃がんに対する第 I/II 相臨床試験(医師主導治験)が終了し、主たる目的であっ
た安全性及び免疫誘導につきまして良好な結果が確認されています。


(2)がん個別化医療への取り組みについて


 TCR 解析サービス
当社は、2015 年 9 月より、がん免疫療法分野における最先端の取組みである T 細胞受
容体(TCR)解析サービスに着手いたしました。これは、がん患者さんのゲノム等の情報を
もとに、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供するがん個別化医療のさきがけとなるも
のです。


 がん個別化医療
21 世紀に起こった技術革新により、個々の患者のゲノム・エピゲノム・プロテオームな
どの変化を詳細に解析することが可能となりました。したがって、がん医療は、これらの情
報を駆使して、予防・早期発見・最適な治療法の選択・新規治療法の開発を行う「がん個別
化医療」(Cancer Precision Medicine)が必須であると、当社は考えております。
(Cancer Precision Medicine)については、がん患者さんから提供さ
「がん個別化医療」
れた各種検体を分析して、①患者さんに合った分子標的薬剤があればそれをご紹介し、②再
発の有無を遺伝子レベルで追跡する、さらに、③適切な分子標的薬が存在しない場合、患者
さんに合ったワクチン療法をご紹介するなどの取り組みを考えております。


 ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法
上記「がん個別化医療事業」の一翼を担う事業として、2016 年 4 月には、がん細胞の遺
伝子異常解析を基盤にした「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法」の実用化に、テラ社と
共同で取り組むことを合意しています。
ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法は、個々の患者さんのがん細胞の遺伝子異常情報
を基盤として、患者さんごとに特別なオーダーメードのワクチン治療法を提供する「究極の
個別化医療」であり、世界的に注目を集めている最先端の免疫療法です。


以上

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