環境調和型触媒の開発に関するお知らせ

News Release

2024 年 1 月 19 日
各 位

会 社 名 堺 化 学 工 業 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長 矢 倉 敏 行
(コード番号 4078 東証プライム)



環境調和型触媒(固体高分子(*PEM)型水電解アノード電極向け触媒「Ir/ENETIAⓇ」

の開発に関するお知らせ
~水素社会実現に向けたPEM型水電解装置普及への貢献に期待~



当社は、次世代エネルギー源として期待されている水素に関して、その生産方法である水分解に貢献
できる新たな触媒「Ir/ENETIAⓇ」を開発しましたのでお知らせ致します。これからも化学の力で社会
課題の解決に注力していきます。
概要は下記のとおりです。





1.概要
当社は、①ライフサイエンス・ヘルスケア、②環境・エネルギー、③電子材料・情報通信の 3 分
野を研究開発の対象領域としており、各分野での「モノづくりで社会の課題を解決する」ことをマ
テリアリティに据えております。それぞれの分野において、既存事業としては、①では日焼け止め
材を展開する化粧品材料事業、②ではゴミ焼却場などで使用される窒素酸化物除去に寄与する脱硝
触媒を扱う触媒事業、③では積層セラミックコンデンサ向けの電子材料事業を展開しており、私た
ちの生活に既に深く関わっております。
2050 年のカーボンニュートラル社会の実現が求められる昨今、注目が集まる水素に関して、環
境・エネルギー領域で貢献できる材料開発を進めてきた結果、新たな触媒となる PEM 型水電解ア
ノード電極向け触媒「Ir/ENETIAⓇ」を開発しました。
(*PEM:Proton-Exchange Membrane)
(ENETIAⓇは、弊社の登録商標です。)



■本開発品のポイント

・独自開発した低次酸化チタン ENETIAⓇ(TiOx)とイリジウム(Ir)を組み合わせた、
PEM 型水電解アノード電極用触媒。
・従来のイリジウム触媒と同等以上の触媒活性と、耐久性の飛躍的向上を実現。
・希少で高価な貴金属であるイリジウムの使用量が低減可能。
2.背景
近年、水素が次世代のエネルギー源として期待されており、水を水素と酸素に電気分解する水電
解の技術開発が進んでいます。特に、再生可能エネルギー電力を用いた電気分解により生成される
水素を“グリーン水素”と呼ばれ、CO2 の排出なしで製造することができるため、カーボンニュー
トラルの実現に向けて、多くの研究開発が進められています。 水電解技術の中でも、PEM 型水電
解は高い電解効率を持つことと、電力変動に対して応答性が高く、耐久性も優れていることから、
再生可能エネルギーを使用した環境調和型の水電解技術として注目を集めています。
しかしながら、PEM 型水電解は、電極に用いる触媒に極めて希少で高価な貴金属であるイリジ
ウムを使用しているため、実用普及化する上で、イリジウムの使用量を削減することが喫緊の課題
となっています。



3.技術内容と成果
当社は、1935 年に国内初となるアナタース型酸化チタンの工業的生産を開始して以来、長年蓄積
した酸化チタンのコア技術、ノウハウを融合し、独自技術により作り上げた低次酸化チタン TiOx
(=ENETIAⓇ)を開発。ENETIAⓇと酸化イリジウムを組み合わせることにより、水電解電極のア
ノード触媒として利用可能な「Ir/ENETIAⓇ」を開発しました(図 1、2)。


従来の 1/10 程度の少量のイリジウムでも従来の一般的な酸化イリジウム触媒
本開発品は、 (IrOx)
と同等以上の触媒活性を実現し、耐久性も高いことが特徴です。従来の触媒ではイリジウムの量を
低減すると、長期的な耐久性が悪化する課題がありましたが、本開発品は特殊な酸化チタン担体と
イリジウムの結合状態を工夫することで、担体とイリジウムの化学状態を安定化させることに成功
し、少ないイリジウム量でも活性と耐久性の両立に成功しました(図 3)。今回開発した触媒は、従
来の水電解触媒と変わらない粉末状の触媒であるため、触媒層付き電解質膜(Catalyst Coated
Membrane「以下、CCM」)の大型化に有利なスクリーン印刷「ロール to ロール」方式に適用でき
ます。



4.今後の展望
既にサンプル提供を開始しており、早期の量産体制の確立を目指しています。本開発品によっ
て、水電解装置の普及を後押しし、次世代のエネルギー源である水素を用いたカーボンニュート
ラルの実現に貢献致します。




図 1 CCM の概略図
図 2 開発した触媒 (左)と CCM (右)の写真




2.2

2.1 300 h
Ref. IrOx
[V]





2.0 Ir/ENETIA
セル電圧




1.9

1.8 1,000 h
1.7

1.6
0 時間

図 3 IrOx(市販品)および Ir/ENETIAⓇの水電解耐久性試験(60 ℃, 2.0 A/cm2)
※Ir 触媒担持量を従来の 1/10*で比較(*2022 年現在の一般的な担持量との比)
※時間の経過とともに、従来品(Ref.IrOx)に比べ、当社開発品(Ir/ENETIAⓇ)の方が
電圧上昇を大きく抑制できており、耐久性向上を確認できました。


<問い合わせ先>
・堺化学工業株式会社 人事総務部総務課
TEL:072-223-4111 E-mail:soumu-inquiry @sakai-chem.co.jp


以 上

6910