株主の皆さまへ #2

株主の皆さまへ #2


はじめに


本日、マガシーク株式会社(以下「マガシーク社」
)の全発行済株式のうち、株式会社
NTT ドコモ(以下「ドコモ社」
)が保有する 75%、伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠商
事」)が保有する 3%の合計 78%を株式取得する旨の開示を致しました。
残る 22%は伊藤忠商事が継続保有するため、これによって Reebok Japan を運営する
RBKJ 株式会社(66%がジェイドグループ、34%が伊藤忠商事)同様、マガシーク社はジ
ェイドグループと伊藤忠商事との共同運営会社(78%がジェイドグループ、22%が伊藤忠
商事)になります。


本件によってグループ取扱高は 300 億円(23 年度計画値、親子相殺前)から 600 億円
(概算値)と 2 倍の規模へと拡大し、長期ビジョン「取扱高 1000 億円」の水準に一気に
近づく事ができました。


昨年から始めたこの「株主の皆さまへ」は、毎年、通期決算発表日である 4 月中旬に掲
載予定でしたが、今回、このようなジェイドグループにとって大きな変革となる M&A が
決まったため、このタイミングで「号外版」として本レターを出させて頂く運びになりま
した。


本日のレターにおきましては、以下の 3 個の重要トピックについて書かせて頂きます。


① 圧倒的な 2 位のためのロールアップ M&A 戦略
② ドコモ社 & 伊藤忠商事とのパートナーシップで 1 位を目指す
③ Reebok の PMI (Post Merger Integration; 買収後の統合) を経て進化した、物流と IT
のスーパープラットフォーム


ぜひ株主の皆さまはもちろん、ジェイドグループに関わる皆さまにもご一読頂ければ幸
いです。


① 圧倒的な 2 位のためのロールアップ M&A 戦略


今から 6 年前となる 2018 年 3 月。わたしは記者会見の場で「”Winner takes all(勝者総
取り)” の EC 市場においては少なくとも『圧倒的な2位』にならなければ継続的な成長
は難しい」と話しました。


古くは GE の元 CEO であるジャック・ウェルチ氏が「業界 1 位か 2 位の事業でなけれ
ば撤退する」と言いましたが、ファッション EC 業界の中の人間としてもその重要性はヒ
シヒシと感じておりました。


ファッション EC を成長させるためには 2 つの視点が必要です。1 つ目は消費者の視
点。消費者が何かをネットで購入する際、何個ものサイトを調べる人は稀で、多くは調べ
るとしても 2 個までです。わたし個人の例で言えば日用品をネットで買う際は amazon か
楽天ですし、タクシーをネット利用する際は Go Taxi か S. Ride ですし、出前をお願いす
る場合は Uber eats か出前館です。
何個も調べるのは時間を要するため「2 個の選択肢の 1 つ」になる事は業界で生き残る
ためには重要な事です。


2 つ目は出店ショップ(ブランド)の視点です。EC において最重要なのは「品揃え」と
言っても過言ではありません。それ故、ショップ側が EC モール出店を検討する場合にお
ける選択肢に入る事、これも非常に重要です。
ショップ側の視点においても EC モール事業を重要事業の一つとする場合、1 つのモー
ルだけに出店するというのは 1 つの企業への依存性を高めてしまうため、危うい戦略にな
り得ます。その意味でも消費者同様、ショップ側においても「2 個の選択肢の 1 つ」にな
る事は重要です。


しかし口で言うのは容易いものの、その実現は容易ではありません。この 6 年間、M&A
や業務提携、そして様々な新規事業に挑戦して来たものの、圧倒的な 2 位というポジショ
ンにまでは至っておらず、王者 ZOZOTOWN との差も開く一方でした。
圧倒的な 2 位になるためには必要条件でもあった、同じく 2 位争いをしていたマガシー
ク社とのグループ統合。2018 年、記者会見をしたその年には業務提携という形でロコンド
と MAGASEEK の相互出店をトライしたものの、当時は以下のような制約があって結果、
上手く行きませんでした。


⚫ 相互出店 = 在庫共有するのは倉庫在庫のみで、予約商品やお取寄品は共有対象外
⚫ タイムセールやクーポンなどの相互プロモーションは実施せず
⚫ お客様がロコンド、マガシーク商品を同時に購入するのは不可


その時、わたしの「中途半端な業務提携ではダメで、グループとして統合しなければ意
味がない」という考えは確信に変わって、そこから継続的に協議を重ねて参りました。
そしてこの度やっとグループ統合が実現し、グループ取扱高 600 億円の「圧倒的な 2
位」を実現する事ができたのです。


圧倒的な 2 位を目指した 6 年間


改めてこの 6 年間を振り返れば、何とか少しでも「圧倒的な 2 位」に近付くために目の
前の壁をひたすら登り続ける、そんな毎日でした。


圧倒的な 2 位発言をした 2018 年。MAGASEEK との相互出店だけでなく、圧倒的な 2
位を構築するために単年度の営業赤字は許容すると宣言し、マイナス 10 億円の営業赤字
を伴う、TVCM の積極投資計画を発表しました。今でこそこのような、中長期的な企業価
値最大化のため一旦、赤字を出す(掘る、潜る)という戦略は市場から理解を得られつつ
あるものの当時はそのような事例は稀有でした。
そのためどれだけ説明をしても市場の理解は得られず、発表の翌日から 2 日連続のスト
ップ安。「短期の株価は気にしない」と虚勢を張ってもなかなかこの出来事はショッキン
グで、今でもストップ安の画面をスマホで見ながら部屋の天井を見上げた時間は忘れられ
ません。
それでもこの積極投資計画をやりきった結果、その年の LOCONDO.jp の成長率は
+62% という大幅な伸び率を記録しました。秋頃にはストップ安になる前の株価の 1.5 倍
まで上昇し、完璧なタイミングで完璧な投資を行えたことをやっと市場にも評価してもら
うことができたと嬉しく思いました。あのショッキングなストップ安があったからこそ、
その喜びもひとしおでした。


翌年、2019 年は TVCM 投下による成長効果が徐々に減少したため、2020 年に始めたの
が YouTube へのシフトでした。最初に始めたヒカルとの ReZARD コラボは大ヒット企画
となってその後も様々な YouTuber とのコラボへ展開し、TV を見ない視聴者層への認知
度 UP と売上 UP を同時に実現する事ができました。
翌年、2021 年は TVCM 同様、YouTube シフトによる成長効果が逓減したものの、
2022 年には Reebok Japan (RBKJ 株式会社) の M&A という絶好の機会に恵まれ、そして
2023 年は TVCM と YouTube の混合パターンとも言える、SixTONES (ストーンズ) との
コラボレーション企画によって成功裏に終える事ができました。


このように書くとジェイドグループはマーケティングの試行錯誤によって圧倒的な 2 位
を目指しながら成長し続けて来た、という印象を抱かれるかもしれませんが、必ずしもそ
うではありません。
圧倒的な 2 位になる事を標榜した 2018 年以降、マーケティング戦略「以外」にも様々
な戦略を推し進めていましたが、その一つが今回のマガシーク社の株式取得にも繋がる
「ロールアップ戦略」になります。


ロールアップ戦略


ロールアップ戦略とは同じ市場の企業群を M&A しながらグループの市場シェアを高
め、様々な「規模の経済性」を発揮して行きながら売上、収益性、共に高めて行く M&A
戦略になります。
一般的に言われるロールアップ M&A 戦略における規模の経済性とは、売上に占める固
定費率(倉庫賃料やシステム費用等)の削減や、共同仕入れなどによる粗利率の向上など
が挙げられます。


しかしながらファッション EC 業界のロールアップ戦略においてはこのような規模の経
済性「以外」のメリットもあります。
最も大きいのは、品揃えの拡充効果です。EC において何よりも重要なのは品揃えとい
うのは先にも述べた通りです。
単に現金を持って行けば仕入れられる程、仕入は簡単ではありません。ブランド側も卸
先は選定しますし、EC 市場においてはそもそも消化仕入と呼ばれる委託取引が主流で、
その場合はまずは在庫を預かって、お客様に商品が売れたらブランド側にお金をお支払い
します。
それ故、実績も何もない EC に大事な在庫を預けるという事はありません。仕入を始め
るためにはまずは出店ショップからの信頼を得る事が必要で、それができて初めて品揃え
を増やして行く事ができます。
競合といえども出店ショップや取扱ブランドが全く同じ、という事はありません。例え
ばロコンドと MAGASEEK、取扱商品の重複率はおよそ 3 割前後(当社分析)であるため
端的に言えば在庫データベースを共通化する事で、ロコンドも MAGASEEK もどちらも品
揃えを 1 + 0.7 = 1.7 倍にできる、結果、既存のお客様に販売できる商品が大幅に増える、
これは非常に大きなシナジー効果です。


他にも「共通部門の効率化と組織力の向上」という効果もあります。EC 企業の場合、
そこにある部門はほとんど同じで「商品、マーケティング、デザイナー、エンジニア、物
流、スタジオ、顧客応対、管理」が基本構成になります。
EC 企業においては売上が 3 倍になったから人員も 3 倍必要かと言われればそうではあ
りません。例えば物流担当などは売上が増えて出荷数も増えれば比例的に拡大していく傾
向もあるものの、他の部門は比例的に増やす必要はありません。


M&A によって現在の人員数が必要数を上回った場合、例えば、商品担当の人員数が「1
+ 1 = 2」になるものの、ショップやブランドの重複があるため「人員数は 1.5 で問題な


し」という事はよくあります。それで 0.5 の人件費をカットすればそれは正に規模の経済
性(= 固定比率の削減)になる訳ですが、そんな事をしていたら M&A 市場における信頼
を損ないますし、何よりも PMI が上手く行くはずもありません。会社においてヒトは何よ
りも重要な資産です。


ではどうするかと言えば「再配置による組織力の向上」になります。M&A を実行した
場合、わたしは少なくとも 1 カ月以内にその全社員と個人面談をし、各人のスキルや意向
を正しく理解するように努めます。その理解を踏まえ、ゼロベースで新たなグループ組織
図を設計するようにしています。


例えば 2019 年、当社が M&A したモバコレの場合、商品担当が多すぎる事になったた
め、各人との面談結果を踏まえ、出店ショップ様のサポート担当、SAT(Shop Assistant
Team)を新設しました。
それまでは商品担当が、仕入も分析も運営サポートも全て行っていたためどうしてもシ
ョップ様へのサポートが手薄になってしまっていました。この問題を SAT の新設によって
解決したと同時に、M&A によって商品担当の人員数が必要数を上回ってしまう、という
問題も同時に解決した訳です。
また個人面談の中で「わたしはショップ様の運営サポートに集中したい」という数名の
意向を吸い上げる事が出来たのも非常に良かったと思います。
結果、この判断は大当たりでした。ショップ様へのサポートを手厚くする事に成功し、
今も SAT のリーダー、副リーダーはモバコレ出身者が務めています。


他にもロールアップ M&A による情報共有のメリットも大きいです。同じ市場のプレイ
ヤーだとしても取り扱っているブランドが異なるのと同様、持っている情報も違う事は少
なくありません。
例えば本日、同じタイミングで M&A する Fascinate の徳永社長とは毎週の定例ミーテ
ィングだけでなく日々、情報交換していますが、国内ハイブランドやセレクトショップ、
海外の越境 EC 企業に関してはわたしや他のジェイドグループ社員よりも詳しいため、そ
の強化戦略にあたっては彼らの判断を仰いでいます。


ロールアップ戦略、規模の経済性というとどうしても無機質で冷たい印象があります。
古くはアルセロール・ミタル社がこのロールアップ戦略によって鉄鋼市場のトップシェア
を獲得した事が有名で、わたしも前職、マッキンゼーの経営コンサルタント時代はその戦
略を研究していましたが、その規模の拡大と効率化という面に対しては合理的であると同
時に冷たい印象も抱いていました。




しかし実際にやってみた結果、その PMI のアプローチ次第では様々なシナジー効果を享
受でき、温かくて皆がハッピーになる戦略に昇華できるというのがわたしの結論です。


② ドコモ社 & 伊藤忠商事とのパートナーシップで 1 位を目指す


ここまでの説明で、如何にロールアップ戦略がその PMI アプローチ次第では有効で、か
つ今回のマガシーク社の株式取得がその戦略の一環として完璧である事はご理解頂けたか
と思います。
しかし今回のマガシーク社株式取得はロールアップ戦略「以上」の重要な価値がありま
す。ロールアップ戦略の一環というストーリーにおいては圧倒的な 2 位を獲得、というの
がその価値になりますが、今回はそれに加えて「1 位を目指すためのパートナーシップ」
を構築できた事、これはロールアップ戦略以上の価値があると言っても過言ではありませ
ん。


現状、マガシーク社は大きくは 2 つの事業、ドコモ社の d fashion と MAGASEEK を運
営する EC モール事業と、ジェイドグループにおいては BOEM (Brand’s Official E-
commerce Management) と呼んでいる、ブランドの自社 EC 構築運営事業 (B2B) の 2 つ
を行っています。
そして前者の EC モール事業においてはドコモ社の支援、主に集客面でのパワフルな支
援を得ていて、後者の自社 EC 事業においては FILA、Leilian、LeSportsac など伊藤忠商
事が国内ライセンスまたは子会社として運営しているブランドと同じグループとして会話
ができる、これまたパワフルな支援を得ています。


戦略としては完璧です。日本最大級の携帯電話会社が「集客」を支援し、日本のファッ
ション業界を牽引する総合商社が「品揃え」を支援する。EC にとっての2大重要要素
を、日本一の会社が支える完璧なバックアップ体制です。ドコモ社がマガシーク社の株式
取得を発表したのが今から 11 年前の 2013 年で、当時のロコンドはまだできて 3 年目の
EC サイトだったので「あぁ、こんな完璧な座組を組まれたらもう勝ち目は無いかも…」
と落胆した事を今でも覚えています。


しかしマガシーク社はそんな大幅なリードをしていたにもかかわらず、取扱高はジェイ
ドグループに並ばれ、営業利益はジェイドグループの 1/10 以下、と立場が大きく変わっ
てしまったのは、決してこの戦略が悪かったからでもなければマガシーク社員の責任でも
ありません。
今でもこの日本一の会社群による支援はどのファッション EC 企業も欲しくてたまらな
い重要な要素ですし、わたしが出会った事のあるマガシーク社社員は皆、エネルギッシュ


でやる気に満ち溢れています。


では何故、マガシーク社とジェイドグループと立場がここまで変わってしまったのか、
と言えばその最大の理由の一つは「物流と IT を外注しているから」であると考えていま
す。
EC 企業において集客を増やす、品揃えを強化する、それ以外にも様々な進化をして行
くためには「高水準の内製物流倉庫と内製 IT 基盤」を持つ事は必要不可欠です。amazon
帝国が出来上がった背景の一つにも内製の物流倉庫と IT 基盤が存在します。
自社の主たる事業が EC でないならば必ずしも物流・IT インフラを内製で運営する必要
はありません。しかし EC が主たる事業であるならば内製の物流・IT インフラはマストで
す。それらが無ければ進化し成長し続ける事はできません。


ジェイドグループでは少数精鋭のエンジニア・デザイナーたちがあらゆるシステム(EC
基盤、管理画面、倉庫管理システム、店舗 POS レジなど)を全てオリジナルで開発して
います。また 3.5 万坪の倉庫「LOCOPORT」のスタッフはほぼ全員、直接雇用の社員や
アルバイトのスタッフです。
反面、マガシーク社は物流倉庫もシステム開発も全て外注しています。それ故、高コス
ト体質になるだけでなくスピーディーな変化をする事ができなくなります。成長市場にお
いてスピーディーな変化ができない事、これは致命傷になり得ます。


ではマガシーク社も内製で倉庫運営やシステム開発をすれば良いだけではないか。そう
思うかもしれません。しかし物流倉庫やシステムを内製化へ切り替えるのは言うなれば
「大手術」なので様々なリスクを伴いますし、1 年や 2 年でできるような事ではありませ
ん。
ジェイドグループも創業当時は物流倉庫もシステム開発も外注で始めましたが、幸か不
幸か、創業からして半年後には倒産危機に陥って、その後は 4 年間以上も資金枯渇と戦っ
て来たため、外注を続けるお金がありませんでした。
じゃあ、じぶんたちでやるしかない、と 2012 年からは腹をくくって内製化にシフトし
そこから 3 年かけて物流倉庫と IT 基盤の内製化を実現しました。内製化を進めた 3 年間
は想像以上に大変でした。内製化に反対して辞めて行った役員や社員も多々いましたし、
内製化の過程では物流倉庫やシステムのトラブルも少なからずありました。わたし自身、
倉庫に 1 週間、寝泊りしていた事もあります。
それでも我々が内製化へ切り替えられたのは外注コストを払えないという事情に加えて
まだ規模が小さかったから、です。規模が小さかったからこそ 3 年間で内製化を実現でき
た訳で、もし今の規模でそれをやるとなると何倍もの年数を覚悟する必要はありますし、
トラブルになった時の被害額もトンデモない金額になります。


マガシーク社の創業は 2003 年、ジェイドグループの 7 年前で、ドコモ社がマガシーク
社の株式取得をした 2013 年には既に 100 億円近い売上がありました。つまり今のマガシ
ーク社の場合、10 年単位の長期で考えれば物流と IT の内製化はやるべきだけども、少な
くとも 3 年から 5 年単位で考えればリスクが高すぎる。だからこそ長年、内製化に着手出
来ていなかったのも一理あると考えています。


今回のグループ統合においても当然ながら物流・IT インフラは統合します。これまでの
PMI ではおよそ 3 カ月で完了していましたが、今回は範囲も広いため 1 年かけて丁寧に統
合していく予定です。
これによってマガシーク社は「外注から内製化へ」という長年の課題を解決できます。
そして本来ならばこのシフトチェンジは多大なリスクを伴いますが、今回の統合プランに
おいては決して自ら内製化をする訳ではなく、あくまでジェイドグループのインフラにリ
プレイス (置換) する形になるため、マガシーク社にとってはローリスク・ハイリターン
の統合計画になります。
上記の通り、ジェイドグループにとって物流倉庫と IT 基盤のリプレイスは初めての経
験ではありません。これまでの M&A の PMI においても何件も行っていますので経験もノ
ウハウも豊富です。


このローリスク・ハイリターンの物流・IT インフラ内製化を実現してマガシーク社の長
年の課題を解決すると同時に、マガシーク社単体ではパワーを最大限、発揮できなかった
最強のパートナーシップの効果を最大化し、1 位を目指す。これが今回の株式取得におけ
る非常に重要なポイントになります。


③ Reebok の PMI を経て進化した、物流と IT のスーパープラットフォーム


前章ではグループ統合において物流・IT インフラのグループ内製化 (リプレイス) が重
要で、我々にはその経験とノウハウがあると申し上げましたが、改めて当社の M&A の歴
史を振り返ると以下になります。


1. MANGO Japan (2017): ブランドの M&A
2. 三鈴商事 (2018): 生産背景の獲得
3. モバコレ (2019): EC モールのロールアップ戦略
4. ファッションウォーカー (2020): EC モールのロールアップ戦略
5. SWS (2021): EC モールのロールアップ戦略
6. waja (2021): EC モールのロールアップ戦略
7. Reebok Japan (2022): ブランドの M&A


8. Fascinate (2024): ブランド(セレクトショップ)の M&A
9. Brandeli (2024): EC モールのロールアップ戦略
10. マガシーク社 (2024): EC モールのロールアップ戦略


Fascinate、Brandeli、マガシーク社は本日、M&A したばかりなのでその成否が決まる
のはこれからになりますが(TCB jeans は 35%取得のため除外)
、それまでの 7 社の M&A
には 7 戦 7 勝、要は「全勝」している、と自負しています。


ジェイドグループの「勝ち」の基準はシンプルです。M&A で支払った企業価値から、
PMI の中で資産等を償却した後の実質的な純資産を差し引いた「実質のれん代」を回収で
きたか、これが第一基準になります。これをクリアしたら白星が付きます。
しかしながらその後、赤字になってしまっては勝ち星が消滅してしまうため、その後も
「黒字経営をできる収益体質になっているか」も重要なポイントでこれがクリアできたら
最終的な白星となります。


この厳格な基準に則って当社はこれまでの M&A を全勝できていると言える訳ですが、
その最大の理由はやはり「物流・IT インフラの内製化」にあります。これができるからこ
そジェイドグループの M&A においてはあの有名な台詞じゃないですが「私、失敗しない
ので」と胸を張って言う事ができる訳です。


何故、物流・IT インフラの内製化をするから M&A に失敗しないのか、理由を説明して
行きますと、それはジェイドグループの物流と IT 基盤は「唯一無二で、最高品質」だか
らです。
ただこう書くと「物流倉庫は自動化やロボティクス、IT は AI 技術が満載って事なのか
な?」と誤解されるかもしれませんがそうではありません。例えばイーロン・マスク氏は
2018 年 4 月 13 日 CBS インタビューの中で「自動車製造の遅れの理由はフリーモントに
ある TESLA の自動車工場において自動化を使い過ぎているから」と発言しましたが、何
でもかんでも自動化、ロボティクス、AI ならば良いという訳ではありません。


物流に関して、わたしはファッション業界の倉庫において重要な事は以下の2つである
と考えています。


1. Quality (品質: エラーの少なさや梱包の丁寧さなど)、Cost (生産性)、Delivery
speed (お届けするまでの納期や入荷してから販売するまでの必要日数)、この 3 つの
QCD 指標において高い水準を満たす事
2. ファッション業界において最重要事項とも言える「健全な在庫回転率」を実現する


ため、倉庫内で保管している全ての在庫を一元的にあらゆる販路(EC、店舗、卸
先)で同時販売する「在庫一元化」ができる事


この「高い QCD 指標」と「在庫一元化」の 2 つが重要で、この 2 つを満たす上でジェ
イドグループの物流倉庫は「唯一無二で、最高品質」であると言えるのです。


次に IT 基盤に関して、EC 領域においてはジェイドグループ(ロコンド)の IT 基盤は
客観的に見てまだまだ改善すべき要素があります。商品検索や絞り込みの精度向上、サイ
ズの選択しやすさ向上、スマホアプリの機能向上、サーバーの安定性など、やらなければ
ならない事は多々あります。その意味では EC の IT 基盤として「唯一無二で最高品質」か
と言えばまだそうではないと思います。


反面、以下の 2 つを実現する上ではジェイドグループの IT 基盤は「唯一無二で、最高
品質」であると評価できます。


1. EC、店舗、卸の 3 つの事業において必要な仕事を全てデジタル化(DX)できる事
2. 上記によって在庫一元化だけでなく「情報の一元化(売上情報、顧客情報、商品情
報など)
」を実現し、これによって適正な価格マネジメント等を通じた「健全な在庫
回転率」を実現する事


初期の PMI、例えば Mango やモバコレの PMI の段階では決してこの高い水準にありま
せんでした。Mango の時は倉庫在庫と店舗在庫の一元化はできていませんでしたし、モバ
コレの PMI の際はそのリプレイスフローが確立されておらず、統合後、多くの修復作業に
時間を要しました。
しかし多くの PMI を経験し、またその過程で物流倉庫も IT 基盤もバージョンアップを
繰り返し、そして 2022 年、店舗も卸も EC も行っている Reebok Japan の PMI において
あらゆる事業に対応できる「唯一無二で、最高品質」の物流・IT インフラに磨き上げたか
らこそ、これまでも M&A で全勝して来ましたし、これからの M&A でも全勝できる自信
があるのです。


おわりに


「号外版」の本レターも気付けば既に 10 ページになりましたので今回はこのあたりで
終えたいと思います。
通期決算発表日である 4 月 15 日は年一回の定期レターとして、今回の要旨に加え、23
年度の決算数値や今回の株式取得によって大きく変わる新中期計画、そして毎年アップデ


ートしていく事業内容や年度計画、その他、各種取り組みなどを「株主への手紙 #3」と
して掲載予定です。


取扱高 600 億円の「圧倒的な 2 位」ポジションといえども 1 位の ZOZOTOWN と比べ
たらまだ 1/10 の規模にすぎません。また amazon や楽天などの総合通販サイト、SHEIN
などの越境 EC サイト、各ブランドの自社公式 EC サイトなど、広義の「競合」は無数に
ありますし(彼らが時にはパートナーや取引先にもなるので一概に競合とも言えませんが
…)それこそ 10 年後、20 年後、30 年後の日本経済を踏まえれば国内のファッション領域
だけで戦っていても厳しくなって来る事も容易に想像できます。
要は、今は「やっと『ちゃんと』戦えるスタートラインに立てた」だけであって、これ
からやらなければならない事は多々あるため、大好きな歌の歌詞の一つ「高ければ高い壁
の方が登った時気持ちいいもんな」そう口ずさみながら、上へ、上へ目指して行きたいと
思います。


株主の皆さま、いつもジェイドグループの応援の程、ありがとうございます。23 年度は
暖冬の影響で苦しんだ面もあったものの、それでも Reebok Japan の M&A と PMI によっ
て取扱高と営業利益、共に大きく伸長する見込みです。そして 24 年度以降は今回の M&A
と PMI によって 23 年度を凌駕する、大きな成長ストーリーを描ける算段が立ちました。
これからも中長期的な企業価値向上にコミットし続けますので、引き続き応援の程、宜し
くお願いします。
そして取引先の皆さま、いつもジェイドグループとお取引の程ありがとうございます。
これからもファッション EC 業界を盛り上げて行くため、Win-Win を実現して行くため尽
力し続けますので、引き続きのご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いします。
最後に Reebok Japan (RBKJ) を含むジェイドグループのみんな、いつも毎日、ありがと
う。今のジェイドグループが様々な進化をし続けてジェイド(翡翠)のように輝いていら
れるのは皆の毎日の努力の結晶です。
マガシークの皆も明日からはジェイドグループの一員として一緒に高い壁を目指して頑
張ろう。


2024 年度、始まります。


2024 年 2 月 29 日


ジェイドグループ株式会社
代表取締役社長
田中 裕輔


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