微細藻類ユーグレナの抽出物の摂取によるマウスの肺がんの増殖抑制に、腸内細菌叢(そう)の変化が関与していることを確認しました

2022 年 4 月 21 日

微細藻類ユーグレナの抽出物の摂取によるマウスの肺がんの増殖抑制に、
腸内細菌叢(そう)の変化が関与していることを確認しました

株式会社ユーグレナ

株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、社⻑:出雲充)は、⽶国のカンザス州⽴⼤学⽥村正明
教授との共同研究により、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ、以下「ユーグレナ」)粉末の抽
出物※1 の摂取によるマウスの肺がんの増殖抑制は、腸内細菌叢(そう)の変化が関与していること
を示唆する研究成果を確認しました。なお、今回の研究結果は、2022 年 2 月 5 日に『Nutrients』
オンライン版に掲載されました(https://www.mdpi.com/2072-6643/14/3/678/htm)

※1 ユーグレナ粉末から水で抽出し、煮沸した物質で、ユーグレナ粉末の水溶性成分が含まれていると考えられます



■研究の背景と目的
肺がんは、罹患数の増加とともに死亡率も年々上昇しています。肺がんの原因としては喫煙との関
連が報告されていますが、喫煙以外でも、アスベスト(石綿)やクロム、ラドンなどの有害物質への
ばく露や、PM2.5 などの⼤気汚染も原因になりうるとされています。また、肺がんは他の臓器に転
移を起こしやすく、さらに、他の臓器がんの転移による肺がんの発症も多いという特徴もあり、予防
や治療による対策が求められています。がんの抑制には免疫の活動が関わっているとされています
が、当社ではこれまでに、ユーグレナの水抽出物が免疫を介してマウスの肺がんの増殖を抑制するこ
とを示唆する研究成果を発表しております※2。
人間の腸内には多種多様な細菌が生息しており、およそ 1000 種類、100 兆個とも言われてい
ます。腸内細菌の集団を腸内細菌叢と言いますが、たくさんの細菌が住んでいる様子が「お花畑
(flora)」に見えることから、「腸内フローラ」とも言われています。腸内細菌叢は、免疫系の発
達、訓練、および機能に不可欠とされています。さらに、短鎖脂肪酸などの腸内細菌叢由来の代謝物
は、宿主の免疫応答に影響を与える可能性があります。最近では「腸-肺軸」※3 と呼ばれる共有粘膜
免疫システムを介した腸内細菌叢と肺の間の重要なクロストーク※4 の存在も示唆され、喘息、肺がん
などの肺疾患における腸内細菌叢の影響が論じられています。ユーグレナの摂取が腸内細菌叢の変
化に寄与すること※5,6,7 はこれまでの研究からも分かっており、今回は、ユーグレナの腸-肺軸への関
与可能性について確認するために実験を行いました。
※2 2020 年 5 月 12 日付のリリース https://www.euglena.jp/news/200512-2/
※3 腸 内 細 菌 叢 を 含 む 消 化 管 と 呼 吸 器 ( 肺 ) は 密 接 に 関 係 し て い る と い う 概 念
※4 生体内または細胞内において、ホルモン・酵素・たんぱく質などの情報伝達を担う分子が血流や細胞質を通じて運ばれ、

対応する受容体にはたらきかける過程のことをシグナル伝達と呼びますが、別の経路との間で影響を与え合うこともあり、

これを「クロストーク」と呼びます

※5 2021 年 1 月 15 日付のリリース https://www.euglena.jp/news/20210115-2/
※6 2021 年 10 月 22 日付のリリース https://www.euglena.jp/news/20211022-2/
※7 2022 年 2 月 14 日付のリリース https://www.euglena.jp/news/20220214/



■研究の内容と結果
ユーグレナの抽出物を摂取させたマウスの糞便を別のマウスに移植することで、ユーグレナ抽出物を
摂取していた場合と同程度まで肺がんの腫瘍重量が抑制され、ユーグレナ抽出物による肺がんの腫瘍
重量の抑制は、抗生物質により腸内細菌叢を除外することで見られなくなりました
今回、以下の 4 群を用意して、肺がんの腫瘍重量を比較しました。なお、ユーグレナ抽出物は飲
水に混ぜて摂取させました。
1) 何も摂取させずに肺がんを誘発したマウス(以下、コントロール群)
2) ユーグレナ抽出物を 5 週間毎日摂取させた後に肺がんを誘発し、さらに 3 週間摂取を継続した
マウス(以下、ユーグレナ摂取群)
3) ユーグレナ抽出物を食べてはいなかったが、肺がんを誘発する 2 週間前に、ユーグレナの抽出
物を 3 週間毎日摂取していたマウスの糞便を移植したマウス(以下、糞便移植群)
4) ユーグレナ抽出物を摂取しながら、肺がんを誘発する 2 週間前より抗生物質を用いて腸内細菌
叢を攪乱したマウス(以下、抗生物質群)
その結果、1)コントロール群と比較して、2)ユーグレナ摂取群では、有意に肺がんの腫瘍重量
が減少しました。また、3)糞便移植群では、ユーグレナ抽出物を摂取していないにも関わらず、有
意に肺がんの重量が減少しました。さらに、4)抗生物質群では、ユーグレナ抽出物を摂取していた
にも関わらず、2)ユーグレナ摂取群で確認されていた肺がんの重量減少が見られなくなりました
(図 1)。

肺がん腫瘍重量





肺がん腫瘍重量[g]





*

*







コントロール群 ユーグレナ摂取群 糞便移植群 抗生物質群



図 1:マウスの肺がん腫瘍重量
*p<0.05、t 検定



また、マウスの腸内細菌叢の解析を行ったところ、ユーグレナ摂取群では、コントロール群と比較
して、特に、Firmicutes 門と Bacteroidetes 門※8 の比率が減少し、Akkermansia 属※9 と
Muribaculum 属※10 が⼤幅に増加しました。
※8 過敏性腸症候群(IBS)
、自閉症、高血圧、慢性疲労症候群、および肺がんを含むがん患者などでは、健常人と比較して、

Firmicutes (ファーミキューテス) 門と Bacteroidetes (バクテロイデス) 門の比率(Firmicutes 門/ Bacteroidetes 門)の増加が報告

されています

※9 Akkermansia (アッカーマンシア) 属に属する Akkermansia muciniphila (アッカーマンシア・ムシニフィラ) は、抗炎症や代

謝改善などに関わるとされ、肺がんの患者の腸内細菌叢にはあまり多くないことが知られており、Akkermansia muciniphila によっ

て、免疫チェック阻害剤療法の有効性を改善することなどが明らかになっています

※10 Muribaculum (ムリバキュラム) 属の存在率は肺がん重量の抑制と相関しています
以上の糞便移植や抗生物質処理を活用した検証により、ユーグレナの抽出物によるマウスの肺が
んの増殖抑制は、腸内細菌叢の変化が関与していることが示唆されました。
当社では、からだが本来もつ「つくる・はたらく・まもる」のサイクルを支えるユーグレナの可
能性のさらなる解明と、ユーグレナおよびその含有成分の健康食品、医療分野等での利活用や食材
としての付加価値向上を目指し、研究開発を行っていきます。


<微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)について>
ユーグレナは、ワカメや昆布、クロレラと同じ藻の一種で、動物と植物の両方の特徴を持ってお
り、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など 59 種類の栄養素をバランスよく含んでい
ます。なお、ユーグレナ特有の成分で β-グルカンの一種であるパラミロンは、近年機能性につい
ての研究が進み、食品や化粧品などのヘルスケア分野などでの活用が期待されています。


<株式会社ユーグレナについて>
2005 年に世界で初めて石垣島で微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外⼤量培養技術
の確⽴に成功。石垣島で生産したユーグレナ・クロレラなどを活用した機能性食品、化粧品等の開
発・販売を行うほか、バイオ燃料の生産に向けた研究、遺伝子解析サービスの提供を行っていま
す。また、2014 年よりバングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届
ける「ユーグレナ GENKI プログラム」を継続的に実施。「Sustainability First(サステナビリテ
ィ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、事業を展開。https://euglena.jp


以上

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