「糖鎖修飾改変T細胞」に関する特許が日本で成立

2023 年 11 月 29 日
各 位
会 社 名 株 式 会 社 メ デ ィ ネ ッ ト

代表者名 代 表 取 締 役 社 長 久布白 兼直

(コード番号 2370 東証グロース)

問合せ先 取締役経営管理部長 落 合 雅 三

(電話:03-6631-1201)



「糖鎖修飾改変 T 細胞」に関する特許が日本で成立


当社は、国立大学法人大阪大学と共同で出願した「糖鎖修飾改変 T 細胞」に関する特許が日本で成
立しましたのでお知らせいたします。

当社は、国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科最先端医療イノベーションセンター(大阪府吹
田市、センター長:金井好克教授)を活動拠点とする共同研究講座「免疫再生制御学共同研究講座(大
阪大学大学院医学系研究科豊福利彦特任教授(常勤))」を 2014 年から 2019 年までの5年間設置し、
次世代の免疫細胞治療技術の開発を行いました。本件特許は、共同研究の成果ⅰとして大阪大学と当社
が共同で出願していたものです。

本件特許技術は、2-デオキシグルコース(以下「2-DG」)ⅱという糖の誘導体を用いることで、抗腫瘍効果
を高めた T 細胞を誘導するものです。従来の培養法で得られる T 細胞と比較して、がん細胞傷害活性の
向上、NK 細胞様の特徴を有し、さらにがん細胞の分泌する物質による免疫機能低下を回避することが
できるため、がんに対する免疫細胞治療の効果の向上が見込まれます。

2-DG は細胞内エネルギー産生の場である解糖系ⅲを抑制することで、抗腫瘍効果の高い免疫記憶ⅳ
の確立に有利であることがマウスの実験で報告されていますⅤ。2-DG は、細胞を構成する様々なタンパ
ク質の糖鎖修飾Ⅵにも作用することが知られている一方で、T 細胞の抗腫瘍機能への影響については明
らかにされておりませんでした。今回、2-DG が糖鎖修飾を改変することによって T 細胞の抗腫瘍効果を
向上させていることを新たに見出した知見は、T 細胞の体外での活性化・増殖培養中に 2-DG を添加す
ることを含む新しい発想の免疫誘導法であり、2-DG 処理した T 細胞は、キメラ抗原受容体(CAR-T)等
の T 細胞ベースのがんに対する免疫細胞治療に応用できる可能性があります。

免疫再生制御学共同研究講座は 2019 年3月をもって終了いたしましたが、本技術の研究開発を
更に推進し、患者様の QOL 向上を目指した再生医療等製品の開発へと発展すべく、着実に進めてまい
ります。

本件による 2024 年9月期業績に与える影響は軽微でありますが、今後、適時開示の必要性が生じた場
合は、速やかに開示いたします。

<特許情報>
発 明 の名 称 : 改良された αβT 加工細胞製造方法
登 録 番 号 : 特許第 7374434 号
特 許 権 者 : 国立大学法人大阪大学、株式会社メディネット
特 許 登 録 日 : 2023 年 10 月 27 日
特許公報発行日 : 2023 年 11 月 7 日
存続期間満了日 : 2039 年 2 月 7 日


以上



2020 年 2 月 7 日糖鎖修飾改変 T 細胞に関する研究成果が海外学術誌「The Journal of Immunology」に掲載
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2370/announcement6/50339/00.pdf


2-デオキシグルコース(2-DG)
細胞の最も重要なエネルギー源であるグルコースの類似体。グルコースと同じ経路で細胞内に取り込まれる
が、2-DG はグルコースのエネルギー代謝系を阻害する作用がある。グルコースの細胞内取り込みが亢進し
ているがん細胞の特徴を利用し、放射線標識した 2-DG は画像診断薬として臨床応用されている。


解糖系
細胞内でグルコース(糖)を分解し、細胞内活動維持に必要なエネルギーを合成する代謝系。


免疫記憶
免疫系が一度感作された病原体等に対し、再度感作された際に迅速かつ強力に活性化・増殖できる現象の
こと。免疫記憶 T 細胞は寿命が長く、生涯にわたって抗原に対する記憶を保持すると考えられている。


(Sukumar, M. J. Liu, Y. Ji, M. Subramanian, J.G. Crompton, Z. Yu, R. Roychoudhuri, D.C.
Palmer, P. Muranski, E.D. Karoly, R.P. Mohney, C.A. Klebanoff, A. Lal, T. Finkel, N.P. Restifo,
and L. Gattinoni., Inhibiting glycolytic metabolism enhances CD8+ T cell memory and
antitumor function. J Clin Invest, 2013. 123(10): p. 4479-88.)


糖鎖修飾
糖が複数個つながった化合物がタンパク質や脂質に選択的に付加されること。細胞内で合成されるほとんど
のタンパク質は糖鎖が結合しており、タンパク質の安定化、局在や移動に重要な役割を担っている。





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