2050年GHG排出ネットゼロへの挑戦 -「“K”LINE 環境ビジョン2050 」2050年目標の改定について-

NEWS LETTER
2021 年 11 月 4 日
川崎汽船株式会社


2050年GHG排出ネットゼロへの挑戦
~「“K”LINE 環境ビジョン2050 」2050年目標の改定について~


川崎汽船株式会社(以下、「当社」)はこの度、気候変動対策に対する取り組みを強化するた
め、昨年6月に改訂版を公表した環境に関わる長期指針「“K”LINE 環境ビジョン2050 ~青い
海を明日へつなぐ~」の一部を見直し、新たな2050年目標として「GHG(温室効果ガス)排出ネ
ットゼロに挑戦する」ことを定めました。


世界の気候変動対策への強化は喫緊の課題となっており、各国政府や産業界において、2050
年GHG排出実質ゼロを目指そうという動きが一段と加速しています。そのような中、当社グルー
プも「2050年GHG排出ネットゼロ」という、より高い目標に挑戦してまいります。


尚、「“K”LINE 環境ビジョン2050」改訂版で定めた2030年に向けてのアクションプランに
ついては、これまで通り着実に進めて行きます。


当社グループは、海運業を母体とする総合物流企業グループとして、「人々の豊かな暮らし
に貢献する」という企業理念のもと、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指し、環境
負荷の低減に引き続き取り組んでまいります。


環境ビジョン2050 年目標の改定については、当社ウェブサイトでご覧いただけます。
https://www.kline.co.jp/ja/csr/environment/management.html




KAWASAKI KISEN KAISHA, LTD.
サステナビリティ推進・IR・広報グループ Corporate Sustainability, IR & Communication Group
青い海を明日へつなぐ
Navigating for Sustainability, Leading to a Bright Future




2050年GHG排出ネットゼロへの挑戦
環境ビジョン 2050年目標の改定




2021年11月4日
環境ビジョン2050年目標の改定について

川崎汽船グループは、総合物流企業グループとして、人々の豊かな暮らしに貢献するという企業理念
の下、「青く美しい海を明日へつなぐ」という使命を担い、環境問題に取り組んでいます。昨年6月
には「環境ビジョン2050」改訂版を発表し、「脱炭素化」と「環境影響への限りないゼロ化」を
二つの大きな軸として目標に掲げて、取り組みを進めています。


2030年の中期マイルストーンとしては、国連の専門機関である国際海事機関(IMO)の目標である
CO2排出効率40%改善(2008年比)を上回る50%改善を独自の目標として掲げ、既にLNG燃料船の
導入を実現し、風力推進(Seawing)等の様々な省エネ技術の導入にも取り組んでおります。


今後も「環境ビジョン2050」改訂版で定めた2030年に向けてのアクションプランについては、
今まで通り着実に進めて参ります。一方、2050年の目標に関しましては、「GHG排出総量を半減
以下にする」というIMOと同じ目標を置いておりましたが、地球規模での気候変動対策は、国際社会
全体で強化すべき課題として捉え、今後はより高い目標である「2050年GHG排出ネットゼロ」に
引き上げて、挑戦して参ります。


2020年代後半には、新燃料によるゼロエミッション船の導入を目指し、自社のGHG排出削減への
取り組みを強化するだけでなく、洋上風力発電等の再生可能エネルギー関連事業の支援船や、水素や
アンモニア等の新エネルギーの輸送、または回収したCO 2 の輸送等、社会の脱炭素化に向けた
事業の支援にも積極的に取り組んで参ります。このような社会の脱炭素化を支援・推進することが、
海運の新たな事業分野を拡げる大きな機会にもなると考えています。


当社グループは、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指し、自社の脱炭素化と社会の脱炭素
化に全力で取り組んで参ります。



代表取締役社長 CEO



2050年に向けての新たな挑戦
2030年に向けては、これまで環境ビジョンで
掲げてきた中期マイルストーンの目標達成に向けて、
アクションプランを着実に推進していきます。
自社からの海洋・大気への
環境影響の限りないゼロ化 自社の脱炭素化
2050年の目標として、新たに
⚫ 油濁事故ゼロ
GHG排出量
GHG排出量ネットゼロを目指し挑戦していきます。
⚫ 船舶運航における
海洋・大気への
環境影響の限りな
いゼロ化 ネ ッ トゼ ロ
に挑戦します
自社の脱炭素化
社会の環境改善支援

⚫ 社会の環境改善支援 GHG排出総量半減
⚫ 生態系保護の (CO2排出効率
業界トップ 2008年比70%改善)



自社からの海洋・大気への
環境影響低減 社会の脱炭素化支援
油濁事故ゼロを含む
船舶運航における
社会の脱炭素化を
海洋・大気への 支える新エネルギー
環境影響低減
輸送・供給の担い手に
自社の低炭素化
社会の環境改善支援

社会の環境改善
年 CO2排出効率
中期
に向けた
対話・活動の強化 マイルストーン 50%改善
(2008年比)
社会の脱炭素化の支援も推進し、
“人々の豊かな暮らしに貢献する”
社会の低炭素化支援
社会の
低炭素化に向けた
新しいエネルギー
輸送・供給の推進 ことを目指していきます。


2050年
GHG排出ネットゼロに向けて
2020年代後半には、新燃料によるゼロエミッション船の
導入を目指し、自社のGHG排出削減への取り組みを強化 2020年
するだけでなく、洋上風力発電等の再生可能エネルギー 年間CO2排出量

9.2百万㌧
関連事業支援や、新エネルギーやCO2 の輸送等、社会の
脱炭素化に向けても積極的に取り組んで参ります。
社会の脱炭素化を支援・推進することが、海運の新たな
事業分野を拡げる大きな機会にもなると考えています。




ア クション・プランのロードマップ 2020 2030 2040 2050

運用・拡大
LNG/LPG燃料船
01 R&D 運用・拡大
ゼロエミッション船
自社の脱炭素化 R&D 運用・拡大
02 Seawing/風力推進

深化
03 効率運航強化



社会の脱炭素化支援 01-04
再エネ発電事業支援/ 拡大

新燃料輸送/CO2輸送 など


現在進行中の取り組みの進捗


自社の脱炭素化〈CO2排出削減〉
01 新燃料(燃料転換)


LNG燃料船の導入拡大 アンモニア/水素燃料等のゼロエミッション船の導入

• 2020年代はLNG燃料船の導入を拡大し、 • アンモニア・水素燃料といったゼロエミッション燃料、
2030年までに約40隻投入 及びバイオLNG、合成燃料等のカーボンニュートラル
燃料の導入を検討中
2021年3月当社初のLNG燃料焚き
自動車運搬船“Century Highway • アンモニアの舶用燃料利用を目指し、海運/商社/荷主/
Green”竣工 メーカー等業界の枠を越えて共同で課題を検討する舶用
2024年には当社初のLNG燃料焚き 燃料利用研究協議会に参画
大型ばら積運搬船が竣工予定
2025年までに8隻のLNG燃料焚き
• 2020年代後半にはゼロエミッション船の実用化/導 入
自動車運搬船の追加投入決定 を目指して検討中


従来の重油焚きに比べて、
CO2排出ゼロ
約25~30%のCO2排出削減効果あり CENTURY HIGHWAY GREEN




LPG燃料船の導入

• 2023年竣工予定にて、LPGを主燃料
とし、将来のアンモニア輸送を念頭
においたLPG/アンモニア兼用の
大型LPG運搬船を投入

重油焚きに比べて、
約20%のCO2排出削減効果あり 提供:川崎重工業株式会社 提供:日本船舶技術研究協会


現在進行中の取り組みの進捗


自社の脱炭素化〈CO2排出削減〉
02 自動カイトシステム「Seawing(風力推進)」の活用 03 効率運航強化


• フランスのAIRBUS社から分社したAIRSEAS社との共同開発 K-IMS(統合船舶運航・性能管理システム)
• 船種を問わず、既存船も含め搭載可能な新技術であり、
各船種への搭載拡大を検討 • 燃料消費量、機関出力、速力等の本船運航データをリア
ルタイムに把握。また安全且つ最小燃費の推奨航路を
2022年度中に大型ばら積船にて、実装開始予定
算出する最適運航支援システムも活用し、本船運航管理
の高度化を追求
20%以上のCO2排出削減効果を見込む
LNG燃料船等への設置による相乗効果により、 • 最近ではAIによるデータ解析技術により、各船の性能
CO2排出45~50%削減を追求 劣化や外乱影響を可視化し更なる運航効率の維持・改善
を実現


K-IMS搭載により、約3~5%のCO2排出削減効果あり




運航データ収集・監視
DATA COLLECTING &
MONITORING




K-IMS
統 合 船舶運航・
性 能 管理システム

パフォーマンス解析 最適運航支援
PERFORMANCE ANALYSIS OPTIMUM NAVIGATION



LNG燃料焚きケープサイズバルカー





現在進行中の取り組みの進捗


自社の脱炭素化〈CO2排出削減〉
04 その他の省エネ・脱炭素の技術/装置 05 トランジション・ファイナンスによる資金調達
(脱炭素に向けた移行ファイナンス)


ハイブリッド推進機関 • 2021年3月、国内初のクライメート・トランジション
ローンにてLNG燃料焚き自動車運搬船 “Century Highway
• 軸発電機、バイナリー発電※、 ディーゼル発電機
Green”の資金調達実施(資金使途特定型)
リチウムイオン畜電池を
組み合わせたハイブリッド • 2021年9月、国内初のトランジション・リンク・ローン
推進機関の検討 軸発電機 にて 約1100億円を調達。脱炭素化に向けた各種環境対策
メインエンジン への資金等に充当予定(資金使途不特定型)

SG 1 2 3 4 5 6 7 8




リチウムイオン
※バイナリー発電: 蓄電池
温水、低圧蒸気、エア等の低位熱源 バイナリー発電
により沸点の低い作動媒体を加熱、
蒸発させてその蒸気でタービンを回
し発電する方式
06 インターナルカーボンプライシングの運用開始
電力
CO2船上回収 • 2021年4月から社内にて本格運用開始。
CO₂排出量1トン当たり4,000円の将来収益貢献を考慮し
• 2021年8月世界初の船上CO2回収 た経済性指標を参考として算定。
試験装置を石炭運搬船 “Corona • 投資案件に関する評価方法のひとつの指標として活用し、
Utility” に搭載 低炭素化・脱炭素化事業を推進
• 三菱造船/日本海事協会と共同
で実用化に向けて実証実験中





現在進行中の取り組みの進捗


社会の脱炭素化支援
01 洋上風力発電事業支援 02 水素/アンモニア輸送事業への参画・燃料供給ネットワーク構築


• 川崎近海汽船とKWS(Kline • 豪州の褐炭から製造されるCO2フリー水素を日本へ輸送
Wind Service)社を設立し、 する国際的なサプライチェーン構築に向けて取り組む
洋上風力発電向け作業船/ 「技術研究組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構
輸送船へ参画 (Hystra)へ参画

• 日本政府が目標とする「2040 • アンモニア輸送事業への
年迄に30~45ギガワットの 再参入を検討中
洋上風力導入」を作業面/
• 各拠点における水素/アン
輸送面から支援
モニア供給ネットワーク
構築事業への参画を検討中
オフショア支援船 提供:川崎重工業株式会社



03 CO2輸送事業への参画 04 その他の取り組み

• 日本エンジニアリング協会、日本ガスライン、お茶の水大学と • カナダにおける中部電力との潮流発電事業
共に、CO2船舶輸送に関する研究開発及び実証実験に参画中 (2023年操業開始を目指して)

• カーボンクレジットやカーボンオフセット等の検討
輸送船舶の共同開発 ※排出量とのオフセットについては、将来国際的に認められる方法で行う可能性があります。

排出源/回収 払出 受入 再昇圧
液化CO2船
タンク タンク
液化 加温




分離・回収 輸送 受入


出荷基地 船舶輸送 受入基地



環境ガバナンス



環境マネジメント推進体制 DRIVE GREEN NETWORK
2021年10月、従来の組織を発展的に改組し環境ガバナンス体制 当社グループ全体の環境マネジメント推進体制として「DRIVE
を刷新しました。 GREEN NETWORK」を構築しています。
「サステナビリティ経営推進委員会」は、環境関連を含む当社
グループ全体で環境コンプライアンスを確保しつつ、PDCA
グループのサステナビリティ経営の推進体制の審議 ・策定を
サイクルを活用して継続的に環境保全活動を推進することを
通じて、企業価値向上を図っています。
目的としています。
「GHG削減戦略委員会」では、LNG燃料焚き船・LNG燃料供給
事業への取り組み加速と次世代燃料や新技術の検討 、および
国際的な環境規制への技術面も含めた対応方針の施策を担い、 DRIVE GREEN NETWORK
それぞれ戦略的議論の場として機能しています。

船舶管理会社
取締役会 4社
監督


経営会議
海運会社・ 港湾・
社長執行役員
代理店 倉庫会社
執行役員会 他

付託 報告 付託 報告
20 社 16 社
サステナビリティ経営推進委員会 GHG削減戦略委員会
ロジスティックス・
監督・指示 報告 報告 監督・指示 陸運会社
2社
CII・2030年
環境専門 サステナビリティ 次世代代替燃料 安全環境
環境目標
委員会 専門委員会 推進PT 支援技術PT
対応PT

※PT:プロジェクトチームの略




※これらのアクションプランは、想定される国際規則・規格の整備や、技術革新、社会インフラの確立等を前提に策定したものであり、
今後これらの前提条件の変化を踏まえ、適宜見直しを行って参ります。

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