革新的多機能材料創製に向けた共同研究開発事業の開始について

各 位 2023 年 9 月 26 日
株式会社GSIクレオス


革新的多機能材料創製に向けた共同研究開発事業の開始について

株式会社GSIクレオス(東京都港区/代表取締役 社長執行役員 吉永直明)は、国立研究開発法人 海洋
研究開発機構(神奈川県横須賀市/理事長 大和裕幸)、一般財団法人 高度情報科学技術研究機構(茨城県
那珂郡/理事長 田島保英)と共に、地球環境負荷の軽減に向けたグローバルなアプローチとして、
あらゆる産業セグメントに関わる「エネルギー効率の向上」や「省エネルギー」を実現する「グリーン・
トライボロジー(注 1)」の共同研究開発事業を開始します。
この革新的共同研究開発の提案は、防衛装備庁の「令和 5 年度 安全保障技術研究推進制度」大規模研究
課題タイプSにおいて、課題名「実験・計算科学の融合による革新的塗膜創成と機序解明の基礎研究」
として採択(注 2)され、5 年間に及ぶ支援を受けて実施されます。


【研究開発事業の目的と概要】
3 機関による共同研究開発事業では、ミクロ・マクロ領域における実験科学と AI やスーパーコンピュータを
駆使した計算科学を融合し、ナノ炭素の微量添加により初めて発現する多機能材料を創製します。例えば深海
のような超高圧雰囲気や宇宙空間のような真空雰囲気など、超過酷環境での適用可能性を追求すると共に、
電子顕微鏡の新規評価法を開発し、その活用により多機能性発現の起源解明を目指すことを目的としており、
分野横断型研究としては世界最先端の研究開発事業です。


【3 機関の説明と役割】
炭素系複合材料の研究開発&加工製造
20 年以上にわたるナノ炭素(CNT)の基礎研究
株式会社GSIクレオス 世界トップクラスの応用開発実績
▶ 本研究開発事業の統括
▶ 高耐久性を有する新規多機能塗膜の創製
▶ SEM(注 3)による広域観察と新規解析法の確立


深海から表層に至る海洋研究開発のための国立海洋研究開発拠点
▶ 新規多機能塗膜の各種評価
国立研究開発法人 海洋研究開発機構 ▶ 常圧から高圧に至る水中環境での評価試験
▶ 部品形状での試験法の確立と実施


炭素材料&炭素系複合材料に関する豊富な実績
▶ 分子シミュレーションによる構造解析と物性評価
▶ 高分子複合構造の摩擦係数計算
一般財団法人 高度情報科学技術研究機構
▶ 計測インフォマティックス(注 4)構築
【今後の展望】
ナノ構造の解明と計算科学の連携による横断的な理解により、ナノ空間とは異なるマクロ空間にある塗膜や
バルク体のマクロ物性における現象と関連付けることは、海洋や宇宙などの様々な極限条件だけでなく、地上
における使用環境においても革新的高耐久、多機能材料を実現するための大いなる知見となります。
また本研究で開発する実験・計算・データ科学の融合による計測インフォマティックスシステムは、ナノ材料
や微量添加材料の解析全般に適用可能な有用な汎用的手法となります。
この研究開発の最終目標は、あらゆる駆動装置の省エネルギーの実現により、環境負荷の低減に貢献すること
であり、その波及効果は「トライボロジー」の先行研究による試算を基にすると、日本の 2022 年度実質 GDP
換算 7.6 兆円に相当する極めて大きい社会的インパクトとなります。




(注 1)グリーン・トライボロジー
トライボロジー“tribology”とは、“擦る”を意味するギリシャ語“tribos”と、学問を意味する“ology”とをつなぎ
合わせた造語で、潤滑や摩擦、摩耗など、「相対運動しながら互いに影響を及ぼしあう 2 つの表面の間におこる
すべての現象を対象とする科学と技術」を意味する。
摩擦と摩耗によるエネルギー消費、経済支出、CO2 排出に与える影響についての先行研究によれば、
✓ 世界の総エネルギー消費量の約 23%(119 EJ)は摩擦摩耗が原因。
✓ これら摩擦・摩耗によるエネルギー損失を新材料で削減できれば、世界規模では各国年間 GDP の 1.4%、
長期的には総エネルギー消費の 8.7%を節約が可能。
✓ 高度なトライボロジー技術の導入により、世界全体の CO2 排出量を短期的に 1,460 MtCO2 削減、長期的
には 3,140 MtCO2 の削減が可能と試算。
こうした社会的・環境的インパクトから、エネルギーおよび材料の節減と環境や生活の質の改善を実現する
科学技術として、近年ではグリーン・トライボロジーと称されている。
(注 2) 防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」
概要:https://www.mod.go.jp/atla/funding/seidogaiyo_20230810.pdf
採択結果:https://www.mod.go.jp/atla/funding/kadai/r05kadai.pdf
(注 3) SEM
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)。
(注 4) 計測インフォマティックス
計測技術と機械学習・統計的推定を融合することで、より高度な計測などを実現させる技術。


以 上


<本件に関するお問い合わせ>
株式会社GSIクレオス 経営企画部 企画広報課 TEL:03-5418-2122 https://www.gsi.co.jp/ja/index.html

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