ディープテック・スタートアップ企業Brilliant Matters 社への追加投資について ー軽量で曲がる有機薄膜太陽電池向け高分子材料製造のスケールアップー

各 位 2023 年 7 月 18 日
株式会社GSIクレオス
経営企画部 企画広報課




ディープテック・スタートアップ企業 Brilliant Matters 社への追加投資について
-軽量で曲がる有機薄膜太陽電池向け高分子材料製造のスケールアップ-


株式会社GSIクレオス(東京都港区、代表取締役 社長執行役員:吉永直明、以下 当社)は、カナダ・
ケベック州のディープテック・スタートアップ企業、ブリリアント・マターズ(Brilliant Matters Organic
Electronics Inc.、以下 BM 社) に、同社が取り組む高分子事業および有機薄膜太陽電池(Organic Photovoltaic、
以下 OPV)(1)事業の拡大を目的として 6 月 21 日付で追加投資を行いました。この増資により同社の高分子合成
設備を拡充し、OPV 向け半導体高分子材料製造のスケールアップを図ることで、次世代再生可能エネルギーOPV
の大規模な社会実装の一翼を担い、地球環境負荷低減に貢献してまいります。当社と BM 社は、急速に成長する
世界有機太陽電池市場をターゲットに OPV 向け半導体高分子材料の供給を進めます。


【 事業の概要 】

BM 社は独自の高分子合成技術を有しており、次世代太陽電池 OPV をはじめとする有機エレクトロクニクス
(Organic Electronics、OEL) (2)分野向けに、最適な最先端の導体、半導体高分子の研究・開発、製造を行って
います。この独自の高分子合成技術は安全な高分子合成法として高く評価されており、BM 社製高分子材料は
環境負荷が極めて少ないため、OPV メーカー各社において発電を司る活性層に採用されています。OPV は、
鉛化合物を用いるペロブスカイト型太陽電池(Perovskite Solar Cell、以降、PSC)と異なり、使用する原料から
製造法まであらゆる工程で毒性がなく、環境負荷も極めて少ない有機太陽電池です。OPV は軽量のフィルム状
で透明かつ曲がるという特徴を持つため汎用性が高く、有力な次世代再生可能エネ
ルギーとして期待されており、欧米を中心に OPV モジュールの社会実装が進めら
れています。

当社は本事業の有益性や将来性に着目し、2021 年に他の有力投資会社や環境・
エネルギー分野に特化するベンチャーキャピタルらと共に BM 社に資本参加し、
経営参画いたしました。OPV メーカー各社が本年度より世界市場での OPV 敷設の
実施を目指す中で、かねてより要請されていた高分子材料の供給量拡大に対応する
ため、この度当社は他の出資者と共に BM 社に追加資金を投入し、同社の生産設備
の拡充を図ることといたしました。
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【 今後の展望 】

BM 社製高分子材料は、前述のとおり OPV の活性層に使用される最重要材料であり、世界の再生可能エネ
ルギー導入の拡大に向けて極めて重要な役割を担うことになります。

今後は、BM 社との協力関係を一層深化させ、国内外の OPV 顧客への供給量を確保することで世界の需要に
応えるとともに、OPV モジュールの日本、アジア市場への展開を進め、当社の最重要分野の一つとして再生可能
エネルギーの普及に貢献して参ります。

以 上
<本件に関するお問い合わせ>
株式会社GSIクレオス 経営企画部 企画広報課 TEL:03-5418-2122
https://www.gsi.co.jp/ja/index.html



◆Brilliant Matters Organic Electronics Inc.概要
所在地:カナダ、ケベック州ケベックシティ
創業:2016 年 2 月
CEO:Mr.Jean-Rémi Pouliot
CTO:Dr. Philippe Berrouard
事業内容:高分子、低分子化合物の研究・開発、製造、加工
従業員:11 名


◆用語解説
(1) 有機薄膜太陽電池(Organic Photovoltaic、OPV)
フレキブルで軽量なフィルム状の太陽電池。
OPV は、その製造法、発電原理から様々な特長がありますが、近年特に重視されているのは
地球環境への負荷の低さです。
例えば以下のような優れた特長があります。 図 1.各 PV の GWP


①地球温暖化係数(GWP : Global Warming Potential)が少ない
R2R は環境負荷の少ない製造法なので、単位エネルギー当たりの CO2 排出量は Si-PV の
1/7 に過ぎない。
図 1 に Si-PV(Multi-Si)、CdTe 化合物太陽電池、OPV の同じ発電量(kWh)を生み出す
モジュール製造時に排出される GWP を示す。


②エネルギーペイバックタイム(EPT(3))が極めて少ない(図 2) 図 2.各 PV の EPT
Si-PV では約 3 年かかるのに対し、OPV では約 3 か月で回収可能。


③単位重量当たりの発電量が大きい(図 3)
フィルム状の太陽電池で超軽量なので、単位重量当たりの発電量は Si-PV の 10 倍以上。
OPV の実装時に Si-PV のような大型架台は不要で、既存の窓や屋根に取り付け可能。
また柔軟な性質を持つため、屋根などの曲率を持つ建築物にも設置可能。
建物の外観、屋外駐車場の屋根など。

図 3.各 PV の単位
④OPV は原理的に透明、半透明化が可能
重量当たり発電量
OPV は、Si-PV や PSC と異なり、原理的に透明、半透明化、透明化が可能なので、窓や
遮光ブライド、温室など、採光が必要なあらゆる場所に実装が可能。


(2)有機エレクトロニクス(Organic Electronics、OEL)
半導体高分子など有機物をベースとした電子機器全般を指す。近年のスマートフォンなどに使用される有機
EL は代表的な OEL デバイス。フィルム基板の上に印刷、または蒸着して作製できるため、従来の Si 型デバイ
スに比べ軽量、薄い、フレキシブル、大面積化など様々な優位点がある。
(3)エネルギーペイバックタイム(EPT)
製造、設備製造・設置、PV(太陽電池)運用、廃棄に至るライフサイクルを通じて投入されるエネルギー量
が、PV システムにより生み出されるエネルギーによって回収できるまでの期間。
すべての工程で使用されるエネルギーを、PV の運用で生み出すエネルギーによって回収できるまでの期間を
表した指標。
EPT=PV のライフサイクルを通じて投入されるエネルギー量 ÷ PV から 1 年間に生み出されるエネルギー量

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