カナダのディープテックスタートアップ企業Brilliant Matters社へ資本参加

各 位 2021 月 6 月 24 日
株式会社GSIクレオス


カナダのディープテックスタートアップ企業 Brilliant Matters 社へ資本参加

-有機太陽電池など有機エレクトロニクス向け高分子材料を展開へ-

株式会社GSIクレオス(東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:吉永直明、以下GSIクレオ
ス)は、カナダ・ケベック州のブリリアント・マターズ(Brilliant Matters Organic Electronics Inc.、以
下 BM 社)に、ケベック州投資公社や環境・エネルギー分野に特化するベンチャーキャピタルらと共に資本
参加、経営参画し、BM 社製有機材料をアジア市場中心に世界市場への展開を図る事に合意致しました。
BM 社は、カナダ・ケベック州のスタートアップ企業で、有力な次世代再生エネルギーである有機太陽
電池(OPV)(1)をはじめとする有機エレクトロクニクス(OEL) (2)分野向けに最適な最先端の導体、半導体高分
子の研究・開発、製造を行っています。
BM 社の特許技術である高分子合成技術 DHAP 法 (3)は、環境負荷の少ない「極めてグリーンな合成法」
として既に高い評価を得ており、高分子合成や高分子構造に関する知的財産も多数保有しております。
BM 社では OEL の各用途に最適な高分子合成の設計、合成を行っており、既に欧米をはじめとした世界
各国の OEL 市場で実績を重ねています。今回の増資により、需要の急増が見込まれる OEL 市場に対応可
能な製造能力を整える事になり、急速な事業の拡大が見込まれます。
GSIクレオスは既に BM 社との間で日本を中心とするアジアでの独占販売契約を締結しており、今回
の出資により経営参画するとともに、同社が目指す本有機材料の世界展開の一翼を担っていきます。


◆背景
すべてのものがインターネットにつながる IoT(Internet of Things)社会において、各種 IoT 機器の普
及台数は 2025 年には世界で 416 億台に達すると予想されています。この時、屋内外に多数設置される IoT
機器に使用されるセンサーへの電源が必要であり、その電源としては人的充電の必要のない自立型発電が
有効な方策となります。
代表的な自立型発電として「太陽電池」は、光さえあればどこでも発電できるため再生エネルギーとし
ても最有力の発電デバイスとされ、これまでシリコン(Si)型太陽電池は世界的に展開が進んでいます。こ
れに対し有機太陽電池(OPV)は、Si 型太陽電池では不可能な「印刷技術」により製造でき、低価格、軽
量、フレキシブル、カラフルな発電デバイスを製造することが可能で、近年急速に開発が進んできまし
た。最近では室内光のような微弱光に対しても良好な発電性能を示す OPV が開発されており、例えば欧
米では遮光と発電を兼ねた「スマートウインドウ」として社会実装が進んでいます。
こうした有機材料による電子機器は有機エレクトロニクス(OEL)と呼ばれ、ロール・ツー・ロール(roll to
roll, R2R)など直接連続印刷法によりフィルム上に回路を形成できるので、製造工程の簡素化、デバイスの
大面積化だけでなく、薄型・軽量・省資源・低エネルギーでの生産を可能とします。BM 社の有害物質を使
用しない「グリーン」合成法は地球環境負荷への低減に大きく貢献し、R2R にも極めて適した高分子とし
て極めて有望で、世界市場から引き合いが急増しています。
BM 社は、GSIクレオスがナノテクノロジー事業を通じて培ってきた先端材料に対するアプリケーシ
ョン開発マネジメント能力に着目し、日本国内、アジア市場での事業展開を推し進めるだけでなく、米州
や欧州市場についても、協働で業容拡大を図る事に合意しています。日本市場では既に OEL 分野の有力
顧客、研究機関での評価、連携が進んでおり、OPV などあらゆる OEL 分野でのアプリケーション開発を
展開していきます。
以 上
<本件に関するお問い合わせ>
株式会社GSIクレオス 経営企画部 企画広報課 小野、谷村 Tel 03-5211-1802


◆Brilliant Matters Organic Electronics Inc.概要
所在地:カナダ、ケベック州ケベックシティ
創業:2016 年 2 月
CEO:Mr. Jean-Rémi Pouliot (写真右)
CTO:Dr. Philippe Berrouard(写真中)
COO:Mr. François Grenier (写真左)
事業内容:高分子、低分子化合物の研究・開発、製造、加工
従業員:24 名



◆用語解説
半導体高分子インク外観
(1) 有機太陽電池(Organic Photovoltaic、OPV)
OPV は印刷技術により製造できるため、従来のシリコン(Si)型太陽電池に比べ多くの優位性がある。
 低コスト…塗布・印刷方式での素子作製が可能なので安価。
 薄い、曲がる、カラフル…フィルムなどフレキシブル基板に素子の作製ができ、色の選択肢が広く、Si 型
では不可能な自由な設計が可能。
 単位重量当たりの高エネルギー…極めて軽量なので、Si 型太陽電池に比べ単位重量当たりのエネルギー効
率は約 10 倍高い。
 低環境負荷…BM 社の合成法は、毒性のある金属前駆体を使用しないので安全で、低エネルギーでの製造
が可能。OPV 素子そのものも軽量なので、製造後の運送、取り付けなど、すべてのサプライチェーンにお
いて環境負荷が小さい。
 高起電力…光は太陽光、蛍光灯、LED、ハロゲンなどそれぞれ固有の波長をもつが、OPV では個々の波長
領域に合わせた光電変換効率の良い素子設計が可能。
BM 社開発材料はラボベースで LED 光に対し 16~19%のエネルギー変換効率を達成している。


(2)有機エレクトロニクス(Organic Electronics、OEL)
半導体高分子など有機物をベースとした電子機器全般を指す。近年のスマートフォンなどに使用される有機 EL は
代表的な OEL デバイス。フィルム基板の上に印刷、または蒸着して作製できるため、従来の Si 型デバイスに比べ軽
量、薄い、フレキシブル、大面積化など様々な優位点がある。BM の高分子材料は、特に受光素子分野で極めて優れ
た性質を示す。
OEL は印刷技術を用いて電子回路やデバイスを形成する事を特長としている。
現在、基板の製造工程は「基材にメタル層形成→レジスト層形成→パターン露光→現像→エッジング→レジス
ト剥離」により電子回路を形成しているが、この工程を続ける限り、本質的に製造コストの低減には限界があ
る。これに対し OEL では基材に導電性インク等などを R2R 法などにより直接連続印刷する事で工程を大幅に
短縮でき、極めて簡素で大規模な回路の形成が可能となる。
OEL の特長を以下にまとめる。
① 製造工程の簡素化による設備投資の低減
デジタル機器は価格下落や製品サイクルの短期化が進み、少ない設備投資で製品を開発する必要がある。
印刷による回路形成は製造工程が簡素なので、投資リスクを最小限にできる。
② 製品の薄型・大面積化に対応
回路を柔らかいフィルム基板に連続印刷(R2R)できるため、軽量・薄型・大面積デバイス製品に対応できる。
③ ウェアラブル製品開発
曲面でも回路を形成でき、軽量なので身に付ける OEL 製品の開発が可能。
④ 超低価格製品の実現
新聞や雑誌を刷るように、印刷によって大量に高速に製造できるので、低コストな OEL 製品が期待できる。
⑤ 環境面への考慮
軽量なので重量当たりの発電効率が良く、また無害な DHAP 法なので、省資源・有害物質低減、低エネルギー
での生産、運搬、取り付けなど、あらゆる工程で環境負荷が小さい。


(3)DHAP 法(直接的ヘテロアリール合成法、Direct Hetero Arylation Polymerization)
BM 社の DHAP 法は、最も汎用的な共役ポリマーの合成法である Stille 重合とは異なり、毒性の高いトリア
ルキルスズ誘導体を前駆体として用いておらず、毒性取り扱いの問題が本質的に解消されており、環境負荷が極
めて小さく、安全な合成法である。また再現性良く安定した品質の高分子を得る事が可能であり、100kg を超え
るような大量生産にも優れている事を実証済みである。
この DHAP 法は BM 社 CTO、Dr. Berrouard が LAVAL 大学在学中に基本技術を開発した特許技術で、世界
的にも BM 社オリジナルの合成技術として認知されている。
BM 社は、DHAP 法をベース製法として、p-type(高分子ドナー材料)、n-type(低分子アクセプター材料)、BHJ(バ
ルクヘテロジャンクション)材料など OPV 向け、OEL 向けのあらゆる高分子、低分子材料を供給する事が可能
である。

10081

新着おすすめ記事