「職場環境改善促進委員会」からの報告書の受領について

2015 年4月8日
各 位
会 社 名:株式会社ゼンショーホールディングス
代 表 者 名:代表取締役会長兼社長兼CEO 小川 賢太郎
(コード番号 7550 東証第1部)
問 合 せ 先:グループ職場環境改善改革推進室 町田 知尚
( TEL: 03-5783-8818)




「職場環境改善促進委員会」からの報告書の受領について


株式会社すき家本部(代表取締役社長:興津龍太郎 本社:東京都港区)およびその統括会社
である株式会社ゼンショーホールディングス(代表取締役会長兼社長兼 CEO:小川賢太郎 本社:
東京都港区 証券コード:7550)は、自社が全国展開する牛丼チェーン「すき家」の職場環境改
善を加速・徹底するために昨年 11 月 14 日に設置した「職場環境改善促進委員会」
(委員長:白井
克彦 放送大学学園理事長)より、3月 31 日に「職場環境改善に関する報告書」を受領しました。
同委員会は、昨年4月に株式会社ゼンショーホールディングスの要請で結成された「すき家」
の労働環境改善に関する第三者委員会から昨年 7月 31 日に提言された内容を実現するため、学
識者や企業経営経験者、弁護士、キャリアカウンセラー、ジャーナリストからなる 5 名の有識者
で構成されました。その後、昨年 11 月から5回にわたって会社との協議を重ね、
「すき家」の職
場環境改善の進捗状況を確認・評価するとともに、さらなる改善に向けた意見交換を進めてきま
した。
本報告書には、改善状況に対する評価の総括に加え、会社がさらなる飛躍への礎を築いていく
ための各委員の提言がまとめられています。
本報告書を受け、興津は次のように述べています。 委員会からの評価、
「 提言を真摯に受けとめ、
今後、重要な経営課題としてグループ職場環境改善改革推進室(室長:国井義郎)とも連携し、
再発防止と信頼回復に向けて全力を傾けてまいります」。
また、小川は「これを契機に従業員とともにより良い会社づくりを目指し、
『世界から飢餓と貧
困を撲滅する』という経営理念の実現を図っていきます」と述べています。
株式会社すき家本部と株式会社ゼンショーホールディングスは、今後も「すき家」の職場環境
の一層の改善を進め、より働き甲斐のある、そして安心して働ける職場環境を実現してまいる所
存です。




以上
目 次


Ⅰ 職場環境改善促進委員会の目的等..........................
..........................4
1.設置の背景....................................
................................... 4
2.当委員会の目的と検討経緯.............................
............................ 4


Ⅱ 第三者委員会提言の対応の進捗状況.........................
.........................5
1.
「職場環境改善促進委員会」の評価の範囲......................
......................5
2.
「1.労働環境を改善するための施策」から
「過重労働禁止のルール化とその実現のための体制整備」................
................5
(1)長時間労働を禁止するルール.........................
.........................5
(2)休日の付与と連勤禁止のルール........................
........................5
(3)人事部門による営業部門の監視機能......................
......................5
(4)内部監査や監査役による監査.........................
.........................10
3.
「1.労働環境を改善するための施策」から「サービス残業を防止するための施策」...11
...
(1)労働時間管理を改める............................
............................11
(2)労働時間を客観的に管理するためのシステム導入................
................11
4.
「1.労働環境を改善するための施策」から「バランスに配慮した投入労働時間の設定、運用」
........................................
........................................11
(1)投入労働時間に余裕を持たせる検討......................
......................11
(2)深夜時間帯の複数勤務体制を確立.......................
.......................12
5.その他従業員の労働環境を改善する具体的な仕組み.................
.................12
(1)クルー採用を活性化させる取組み.......................
.......................12
(2)クルーが働きやすい職場を作る取組み.....................
.....................13
(3)クルーの待遇改善..............................
..............................13
6.「1.労働環境を改善するための施策」から「従業員を企業の重要なステークホルダーと位置
づけ、その人権と生活を尊重する企業風土を築くための施策」...........
............14
(1)CEO名の宣言を出す............................
............................14
(2)
「ゼンショーグループ憲章」
「コンプライアンス行動指針」の見直しプロジェクト..
..14
(3)経営幹部が従業員の現場の声を真摯に聴き、労働環境を改善する仕組み......
......14
7.
「1.労働環境を改善するための施策」から「労働環境の重要性に関する全社的教育の実施」
........................................
........................................15
(1)調査報告書を題材にした対話型社内研修実施..................
..................15
(2)労働環境の重要性を啓発する継続的全社教育実施................
................16
8.
「2.経営幹部の意識を改革するための施策」....................16
....................
9.
「3.コーポレートガバナンスを改革するための施策」................17
................
10.
「4.担当者の権限と責任の明確化のための施策」..................17
..................
11.
「5.リスク情報の伝達経路を明確にするための施策」................18
................
12.進捗状況に対する総合的な評価..........................
..........................18

-2-
Ⅲ 総括.......................................
.......................................20
1.まとめ.....................................
.....................................20




-3-
Ⅰ 職場環境改善促進委員会の目的等
1.設置の背景
株式会社ゼンショーホールディングス(以下「ゼンショー」という)の子会社である株式会社
すき家本部(以下「すき家本部」という)が運営する「すき家」では、2014 年2月から4月に
かけて、業界全体の人手不足による従業員の採用難などの困難な状況下で、2月に発売した「牛
すき鍋定食」による従業員作業負担増加などを背景とした従業員の退職を直接的なきっかけとし
て、全国の1割程度にあたる 200 余りの店舗において、一時休業や時間帯による休業の措置を
取らざるを得ない事態が発生した。ゼンショーはこの事態を重く受け止め、店舗の労働環境改善
を経営の最重要課題に位置付けることとした。
まず、客観的な視点で課題を抽出するため、久保利英明弁護士を委員長とする「すき家」の労
働環境改善に関する第三者委員会(以下「第三者委員会」という)を4月に設置した。並行して、
経営陣と現場従業員との距離を近づけ、労働環境の実態把握及び改善を行うため、全国のすき家
を7つの地域運営会社(以下「地域すき家」という)に運営させる分社化を同年6月に実施した。
第三者委員会は、3か月程度の調査期間を経て、7月 31 日に調査報告書を提出し、すき家の
労働環境の実態とその課題を明らかにするとともに、労働環境改善に向けた提言を行った。
ゼンショー及びすき家本部は第三者委員会の調査報告書を受け、同日の記者会見において提言
の実行を約した。その実行を果たし、グループの他の企業も含めて職場環境の改善を行うため、
(室長:国井取締役)を 11 月
社内の横断的な組織である「グループ職場環境改善改革推進室」
1日付で設置し、すき家本部と連携して施策を推進することとした。また、学識者、弁護士、経
営者、キャリアカウンセラー、ジャーナリストなど多方面に渡る有識者で構成された「職場環境
」を 11 月 14 日付で設置し、それぞれの施策に対す
改善促進委員会(以下「当委員会」という)
る助言を得ることとした。


2.当委員会の目的と検討経緯
当委員会は、ゼンショーから、第三者委員会の調査報告書の提言に対して、すき家本部が取組
んでいる「すき家」の労働環境改善の進捗状況を継続的に確認・評価し、意見を述べることを主
たる役割とし、同時に、ゼンショー及びすき家本部が行う職場環境改善のための諸施策について、
各委員がこれまでに培ってきた専門分野の知見から評価及び助言を行うことを委嘱され、それを
受任したものである。
当委員会の委員は、巻末の資料<「職場環境改善促進委員会」委員プロフィール>を参照。
2014 年 11 月 17 日に開催された第1回委員会において、委員の互選によって委員長に選任さ
れた白井氏ほか4名は、毎月1回、これまでに合計5回の委員会を開催し、会社の取組み状況を
ヒアリングするとともに、
「すき家」店舗やクルー(すき家におけるパート・アルバイトのこと)
ミーティングの視察や聞き取りを行うなど、多岐にわたる議論を重ねてきた。こうした検討を踏
まえ、今般、それまでの検討結果を取りまとめた本報告書をゼンショー及びすき家本部に提出し
た。




-4-
Ⅱ 第三者委員会提言の対応の進捗状況
1.
「職場環境改善促進委員会」の評価の範囲
第三者委員会の調査報告書では、以下に示したように、労働環境改善に向けた提言とともに、
問題の抜本的な解決を図ることを目的として、経営幹部の意識改革やコーポレートガバナンスを
改革するための提言を行っている。
「1.労働環境を改善するための施策」
「2.経営幹部の意識を改革するための施策」
「3.コーポレートガバナンスを改革するための施策」
「4.担当者の権限と責任の明確化のための施策」
「5.リスク情報の伝達経路を明確にするための施策」
当委員会の目的は「すき家」の労働環境改善の進捗度合を継続的に確認、評価することである
が、さしあたり、上記事項の中でも喫緊の課題となっている「1.労働環境を改善するための施
策」を中心に本報告書をまとめることとした。
なお、本報告書に記載されている職場環境改善に関する数値(残業時間や労働実態を示す数値
のこと)は、すき家本部から提出されたものである。会社側は、そのデータの信頼性を担保する
ため、残業時間の実態などは、すき家本部の人事労務部から担当マネジャーへの連絡により事実
確認を行っている。また、労務管理の実態に関して、ゼンショー及びすき家本部の取締役会に毎
月報告し、監査役のチェックを受けている。更に、ゼンショー従業員組合会 ZEAN(ゼアン)
(以
下「ZEAN」という)は、店舗への無作為ヒアリングを行い、裏付けを行っているとの報告を受
けている。当委員会では、これらのこと及び、実際の現場でどのように労務管理が成されている
かを視察調査して、報告書に記載されている数値が一定程度信頼に足るものであると判断した。
今後、勤務時間の記録方法を含め、労務管理システムの改善については、会社の継続的な努力が
必要である。
以下、具体的な会社の対策の中身について進捗状況と当委員会の評価を記載する。


2.「1.労働環境を改善するための施策」から
「過重労働禁止のルール化とその実現のための体制整備」
(1)長時間労働を禁止するルール
(2)休日の付与と連勤禁止のルール
(3)人事部門による営業部門の監視機能
①当委員会の課題認識
すき家本部におけるこれまでの長時間労働の把握は、月間で、かつ前月に対してのもの
であった。更に、当該月の長時間労働者に対しての後追い方法も注意喚起をする程度であ
った。その背景としては、全国 2,000 店舗弱を品川本部のみでコントロールしていたこと
により、把握が追いつかず、後追いが浅くならざるを得なかったことが推測される。その
ため、当委員会では、従業員の正確な労働実態を迅速に把握し、長時間労働の発生を事前
に防ぐための仕組みが必要であると認識した。
②会社の取組み

-5-
すき家本部では、2014 年 10 月より、パート・アルバイトを含めた労働時間の管理が
日々行えるように仕組みを整えた。これにより、地域すき家それぞれにおいて、担当店舗
である約 300 店舗の従業員に対して日々長時間労働の兆候をチェックし、改善させるよ
うにした。
また、地域すき家において、労使が構成する「時間管理委員会」を設置した。この委員
会は月に1回開催され、地域すき家の COO(チーフオペレーティングオフィサー、代表
取締役社長)、監査役、ゼンショーホールディングス人事、ZEAN 幹部が構成員となる。
時間管理委員会は、前月長時間労働を行った従業員の上司にあたるマネジャーを召集し、
原因の究明と再発防止のための手立てをヒアリングする。
これらの施策の結果、第三者委員会の調査報告書で指摘された、月間で時間外労働 100
時間以上の従業員は、2014 年3月には非管理職社員 418 名の内 55.3%にあたる 231 名だ
ったが、以降減少し、10 月には0名になった。以降、0名が続き、2015 年1月には2名
だったものの、直近の2月の実績は0名となっている(図1)


月間時間外労働100時間以上の社員数の推移
(人)
250 100%
231 社員 90%
200 80%
70%
55.3%
150 149 60%
37.1% 50%
100 82 40%


30%
16.4% 14.4%
50 9.6%58 20%

1.0% 6 2.3% 0.0% 0.0% 0.0% 0.2% 0.0% 10%
0 0 0 0 2 0 0%
14/3 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 15/1 2月
非管理職 月 月
社員数 418 402 500 522 573 607 665 697 757 803 836 854 (人)
出典:すき家本部人事労務部

(図1)すき家における月間時間外労働 100 時間以上の社員数の推移




-6-
次に、月間時間外労働 100 時間以上のクルー数の推移を示す。こちらは、調査報告書
にある 2014 年3月の時点では、稼働(その月に 15 分以上勤怠が記録されていることを
指す)しているクルー32,174 名の内、1.8%にあたる 579 名が該当した。その後、減少傾
向になったものの、繁忙期にあたる7月・8月には増加し、8月の実績は稼働 33,864 名
の 1.4%にあたる 484 名が該当した。その後、9月以降は減少し、2月には 34,422 名の
0.01%にあたる4名となった。3月にはゼロを目指している(図2)

出典:すき家本部人事労務部
月間時間外労働100時間以上のクルー数の推移
(人)
800 100%
クルー 90%

579 80%

484 70%
500 419 60%

400 365 375 50%

300 40%
30%

80 46 57 20%
100 1.8% 1.3% 1.1% 1.1% 1.2% 1.4% 1.0% 0.4% 0.2% 0.1% 0.2% 0.0% 10%
0 4 0%
14/3 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 15/1 2月
クルー 月 月
32,174 33,040 34,268 34,417 35,779 35,012 (人)
数 30,880 33,920 33,864 35,107 35,885 34,422

(図2)すき家における月間時間外労働 100 時間以上のクルー数の推移


また、社員の平均残業時間の推移は以下の通り(図3)

出典:すき家本部人事労務部
(時間) 社員の月間平均残業時間の推移
120 200%
109 社員
177.1% 180%

160%

140%

120%
99.8%
95.0%
60 109.3% 89.3% 100%
45 90.5% 58 47 53 80%
40 47 56.9%
52.6%53.8%37
74.4% 31 60%

20 32 30 36 48.9% 40%
33.3% 20%
0 0%
14/3 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 15/1 2月
月 月
(図3)すき家における社員の月間平均残業時間の推移
2014 年3月には、
これを見ると、 平均残業時間が 109 時間、前年同月との比較で 177.1%
と突出していたが、その後減少傾向となり、5月以降前年を下回る水準となった。また、
10 月以降は法定基準である 45 時間を下回る水準まで低下している。2015 年2月には 31
時間となり、前年同月比は 33.3%となった。

-7-
次に、社員の残業時間の内訳を円グラフで示した(図4)。

社員の残業時間の内訳 比較
(人) (時間)
105 , 105 , 0以上60未満
25% 25% 74 ,
9% 0, 60以上100未満
合計 0% 100以上120未満
418名
80 , 82 ,
120以上160未満
19% 46 , 20%
160以上
11%
2014年3月 合計
854名
780,
91%
2015年2月 出典:すき家本部人事労務部

(図4)すき家における社員の残業時間の内訳 比較
2014 年3月の段階では、非管理職社員 418 名の内、25%にあたる 105 名が0時間以上
60 時間未満の残業時間、20%にあたる 82 名が 60 時間以上 100 時間未満、11%にあたる
46 名が 100 時間以上 120 時間未満、19%にあたる 80 名が 120 時間以上 160 時間未満、
25%にあたる 105 名が 160 時間以上であった。
他方、2015 年2月度の社員残業時間をみると、非管理職社員 854 名の内、全体の 91%
にあたる 780 名は0時間以上 60 時間未満の残業、9%にあたる 74 名は 60 時間以上 100
時間未満となった。100 時間以上の残業者は発生していない。なお、社員数が増加してい
るのは、後述するようにクルーから社員への登用が進んでいるためである。


次に、客観的な事実として、社員の離職率を業界と比べたのが以下である(図5)。

すき家社員離職率と業界比較
70%
59% すき家
60% 飲食
52%
50% 49% 教育・学習支援業
46%
39% 40% 医療・福祉
40% 36% 全産業平均
32%
27%
30% 22%
23% 21% 22%
20% 14%
13%
10%
10%
0%
2011年入社 2012年入社 2013年入社 2014年入社
(3年) (2年) (1年) (1年)
出典:ゼンショー人事部、厚生労働省 HP`
(図5)すき家社員離職率と業界比較(一部ゼンショーの社員含む)
2011 年入社で3年間経過した時の社員の合計離職率を見ると、すき家は 59%となって
おり、飲食業界の 52%、教育・学習支援業の 49%を上回る水準となっている。

-8-
翌 2012 年入社で2年間経過した時の数値は、すき家が 46%、飲食業界が 40%であり、
依然として業界平均よりも高い水準となっていたが、2013 年入社で1年間経過した時の
数値は、すき家が 21%と、飲食業界の 22%を下回った。また、2014 年入社の、3月末
までの離職率は 10%となっており、他業界の統計は出ていないものの、2013 年よりも低
水準で推移している。


従業員の長時間労働を解消する一つの方法として、クルーの継続的採用が必要である。
クルーに関しては、2014 年3月から7月まで前年を下回る応募水準だったが、積極的な
採用活動を行った結果、8月以降前年を上回る水準となり、12 月には前年に対し 153%
となるなど、前年同月と比較して 100%を超える人数の応募が2月まで続いている(図6)


クルー応募者数前年同月比 前年比
180%
153%
160% 141%
134%
140% 122%121%
114%
120% 104%
100%
80%
82% 84% 83%
60% 72% 78%
40%
20%
0%
14/3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月15/1月 2月
出典:すき家本部人事労務部
(図6)すき家におけるクルー応募者数前年同月比


また、クルーの稼働人数の推移は以下の通りである。なお、8月と1月は、長期休暇の
ため帰省する学生クルーも多く、稼働人数が下がる傾向がある。また、2月から4月は卒
業などの影響で人が入れ替わり、同様の傾向がある(図7)


クルー稼働人数推移 稼働人数
38,000
35,885
36,000

34,000
32,174 33,864 34,422
32,000

30,000 30,880

28,000
14/3 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 15/1 2月
月 月
出典:すき家本部人事労務部

(図7)すき家におけるクルー稼働人数推移



-9-
もう一つ長時間労働を軽減するのに有効な方法として、人材強化が挙げられる。すき家
ではクルーの能力開発について、その方法の改善に着手している。まず、クルーから役職
付のクルーへ、そこから契約社員へ、更には正社員への登用ができることを明確にし、そ
のための要件について、周知を行った。特に契約社員に関しては、1店舗を管理する店長
としての登用を推進している。その結果、2014 年3月から 2015 年2月までの期間で、
合計 418 名(前年に比べ約 70%増加)と、社員登用が進捗していることが確認された。
また、新しく入社した契約社員などに対して研修を充実させている。
③取組みに対する評価
長時間労働が発生しないように、従来はできていなかった事前の牽制ができるようにな
ったことは評価できる。また、地域すき家において担当を明確にし、網の目を細かくして
日々の労務管理を行う体制に改めた点や、労使双方がメンバーとなった時間管理委員会に
て、直接の上司に対して教育の機会を設けている点も、今後の再発防止に一役買うものと
理解できる。
クルーの応募状況については、特に景気が回復し、人手不足感が高まっている中、前年
を上回る応募があり、基調としてはクルーの稼働人数も増加傾向にあるということは評価
すべきである。
ただし、日々の報告書を積み上げた統計資料に関しては、数値の信頼性が重要となる。
今回 ZEAN が行った調査はサンプルチェックであり、申告の際に虚偽がないかどうか、
継続的な取組み、例えば、内部相談制度を充実させ、現場の従業員が情報を上げやすくし、
更にその内容の事実確認をするなど、実態をより正確に掌握する仕組みが必要である。
また、社員やクルーの長時間労働の実態が改善してきたとはいえ、改善の取組みに時間
を要しているうえ、残業が 60 時間以上の従業員が相当数継続して存在していることも、
労働環境が十分改善しているとは言い難い。クルーの作業負担軽減も踏まえ、長時間労働
を発生させないよう、引き続き対応の努力をすべきである。


(4)内部監査や監査役による監査
①当委員会の課題認識
第三者委員会報告書におけるガバナンスの体制構築の一環として、真摯に対応する必要
がある。
②会社の取組み
すき家本部では、2014 年6月より新たに常勤監査役を選任した。従来はゼンショーに
おいて内部監査室長を担当していた人物である。また、同常勤監査役をサポートする専任
スタッフを1名置いている。当常勤監査役は、Ⅱ-2-(3)②に記載されている、地域す
き家の「時間管理委員会」に適宜出席し、意見を述べている。
また、客観的な視点から意見を述べ、助言する目的で、2014 年 11 月には、すき家本部
の社外取締役として、人事労務の経験豊かな人物を選任した。
③取組みに対する評価
社外の人材を選任するなど、外部の客観的な視点を取り入れようとする姿勢は評価でき
る。常勤監査役は、地域すき家の監査役や、ゼンショーの監査役との連携を密に取ってい

- 10 -
るようだが、今後も緊密な調整・指導・助言などを期待したい。


3.
「1.労働環境を改善するための施策」から「サービス残業を防止するための施策」
(1)労働時間管理を改める
(2)労働時間を客観的に管理するためのシステム導入
①当委員会の課題認識
第三者委員会の調査報告書通り、早急にタイムカードなどの導入をすることが必要であ
ると判断し、実施方を強く要請した。
②会社の取組み
すき家本部では、第三者委員会提言及び当委員会での議論を踏まえ、労働時間管理を確
実なものとするため、就業時間の「見える化」に取り組んでいる。具体的には「店舗安定
運営システム」と呼ばれるシステムで、出退勤時に従業員が登録作業をすることで、記録
をデータに残し、管理を行うものである。ただし、この運用にあたっては、ZEAN との
間で労使協定を結ぶこととしている。具体的には、例えば「始業時間は、会社の上司が指
揮命令し、業務に服した状態、即ち契約上の開始時間とする。また、これを改めて運用す
る場合は労使による早出協定を行う」などである。更に、予定と実労働の管理がシステム
上でできるようにし、予定の労働時間とずれが生じた場合に、上司である店長などのマネ
ジャーが簡単に確認できる仕組みとしている。新システムは現在、全店展開に向けて導入
を推進しており、2015 年秋ごろをめどにシステムの検証を終え、全国 2,000 弱の店舗全
てで稼働する予定である。
③取組みに対する評価
従来の管理方法を改め、記録を表示して就業時間の「見える化」を図ることにより、現
場におけるサービス残業発生の可能性が低下すると推測されることは評価できる。今後、
この仕組みが計画通り導入されていけば、サービス残業を防止するための施策になるのは
確かであろう。


4.
「1.労働環境を改善するための施策」から「バランスに配慮した投入労働時間の設定、運用」
(1)投入労働時間に余裕を持たせる検討
①当委員会の課題認識
当委員会では、実際の店舗への視察を 2015 年2月 18 日及び3月9日の計2回行った
他、店舗のピーク時間帯と呼ばれる 12 時から 13 時の間の従業員の動きを動画にて確認
した。また、従業員へのヒアリング及びマネジャーからの生産性指標の説明を受けた。結
果として、すき家の労働生産性指標の取り決めについては、従業員に過度に負担を強いる
ものではないと認識した。ただし、すき家におけるメニュー数の多さや手数の多さ、レジ
会計などの通常営業を行う上での作業については、従業員にとって負担になりうるため、
メニューの絞り込みや券売機の導入検討など、作業負担改善に取組む必要性を指摘した。
②会社の取組み
すき家においては、労働生産性を掌握する手段として、1時間当たりに1人の従業員が
何人の顧客対応をしたのかを測る「人時接客数」という指標を使用している。従来は、深

- 11 -
夜など売上高が比較的低くなる時間帯は、目標の労働生産性が確保できないとして1人勤
務体制となる店舗があった。そこで、2014 年 10 月に深夜を複数勤務体制にしたことで、
生産性の数値は悪化したものの、深夜等の労働環境は大幅な改善が実現された。
また、2014 年2月の労働環境悪化のきっかけとなった「牛すき鍋定食」の再導入にあ
たっては、店舗でのオペレーションを改善し、仕込み作業の時間を 1/10 とした上、2週
間前から店舗研修を行った。これにより、同年 11 月に再度同商品を導入する際には、ス
ムーズな商品導入が成された。
③取組みに対する評価
牛すき鍋定食の再導入に際し、現場のクルーの意見を踏まえて改善策を講じ、慎重に再
スタートしたことは評価できる。しかしながら、すき家は多様な顧客に対応するため、バ
ラエティーに富んだメニュー構成となっており、それらの商品作成手順を覚えることや、
それをこなしながら顧客の対応をすることは依然として煩雑で、処理に限界があると見受
けられる。引き続き店舗クルーの作業負担を軽減する努力が必要である。


(2)深夜時間帯の複数勤務体制を確立
①当委員会の課題認識
深夜時間帯の複数勤務体制については、従業員の安全配慮の観点からも、第三者委員会
の報告に従って早急に実行されるべき施策であった。
②会社の取組み
すき家では、第三者委員会の調査報告書が提出された翌週の 2014 年8月6日、会見に
おいて9月末までに深夜複数勤務体制を確立できなかった場合、できなかった店舗の深夜
営業を休止すると発表した。その後、同年 10 月1日には、全店舗の約6割(当時)にあ
たる 1,254 店舗の深夜営業を休止した。
結果として、2014 年 11 月 13 日時点の同社の 2015
年3月期業績予想として、営業利益に 88 億円のマイナス影響が見込まれている。なお、
この金額には深夜営業再開のための新たなクルーの採用コストや、新たな深夜の時間帯担
当クルーの教育コストなどの投資コストも含まれる。
③取組みに対する評価
一時的にせよ企業利益を損ねることがわかっていながら、従業員が揃わない店舗に関し
て深夜時間帯の営業を停止した判断は評価することができる。2015 年3月末現在、すで
に 638 店舗(2014 年 10 月の深夜時間帯営業休止 1,254 店舗の 50.9%)が深夜営業を再
開しているが、深夜営業を再開する際、これまでと同様に1人勤務体制に戻る恐れがない
かについては、例えば内部相談制度の活用などで、継続的なチェックの仕組みが必要とな
る。


5.その他従業員の労働環境を改善する具体的な取組み
(1)クルー採用を活性化させる取組み
①当委員会の課題認識
優れた従業員の採用は労働環境改善に資する。現状のクルー採用のウェブサイトを見る
と、メッセージのトーンが弱く、すき家で働く姿を想像しにくいと思われる。人手不足を

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補うために、現在働いている主婦が生き生きと働いている様子を紹介したり、学生が社会
人としての基礎的なルールを身に付けることができることを紹介したりするなど、従来の
ウェブサイトとともに、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)もその特性に合
わせて十分活用し、ターゲットとなる層それぞれに直接働きかける努力も必要である。
②会社の取組み
ゼンショーでは、学生にターゲットを絞った「スチューデントプロジェクト」をスター
トさせた。当該プロジェクトにおいて、例えば学生がすき家でアルバイトをすることによ
り、社会人としての基本を身に付けたり、効率的な動き方ができるようになることなどを
示していく。
③取組みに対する評価
スタートしたばかりであり、評価する段階ではないが、方向性としては正しい。更に力
を入れて、継続的な取組みとなるよう期待する。


(2)クルーが働きやすい職場を作る取組み
①当委員会の課題認識
労働環境を改善するということは、単に長時間労働を根絶するにとどまらず、さらに進
んで、働きやすい職場を実現することである。
主婦層など、子供がいて、働く意思がある層のモチベーション向上を図るため、女性に
特化した補助制度の在り方を構築することが考えられる。例として、認可外保育園に通っ
ている児童の保護者に対して補助をすることで、より働きやすい環境を構築することがで
きる。
②会社の取組み
女性向けの施策として、グループ店舗の従業員を対象にして企業内保育所の設置を検討
中である。
更に、厚生労働省が推進している、職場での女性の活躍を推進する取組みである「ポジ
ティブ・アクション」に取り組むことを 2015 年4月中に宣言する予定である。今後、ク
ルーを含めたプロジェクトチームを組織し、チームにおいて議論を行い、対策を人事部に
起案していく。
③取組みに対する評価
政府と歩調を合わせて、日本の飲食業の代表として社会的にプラスとなるような施策に
取り組んでいく姿勢は評価できる。意気込みだけに終わらないよう、働く女性や学生のた
めに成果を出せるよう取り組むことを期待する。


(3)クルーの待遇改善
①当委員会の課題認識
より良い職場環境づくりのために、クルーが働くことに意義を感じ、勤務を継続できる
ようにするためのインセンティブ付与などの施策を検討することが考えられる。
②会社の取組み
卒業などで退職する学生クルーなどに対する退職時のインセンティブを検討している。

- 13 -
また、2015 年3月には、全グループ規模で、本部、店舗、工場、物流センターで働く
クルーで、2015 年3月 31 日に在籍していた者を対象に、一律 2.5%の時給引き上げをす
ることを発表した。これは、クルーの生活水準の維持向上や勤労意欲の向上を目的とした
ものである。なお、同月、春季労使交渉の結果、ゼンショーの社員に対する待遇改善とし
て、ベア 2,000 円(0.65%)
、定昇 5,700 円(1.85%)、合わせて 7,700 円(2.5%)とい
う妥結結果も発表している。
③取組みに対する評価
経営環境が厳しい中、社員の待遇改善と併せて、会社としては初となるクルーに対して
の時給一律引上げを決断したことは、クルーの勤労意欲の向上につながるものと思われ、
評価できる。


6.「1.労働環境を改善するための施策」から「従業員を企業の重要なステークホルダーと位置
づけ、その人権と生活を尊重する企業風土を築くための施策」
(1)CEO名の宣言を出す
(2)
「ゼンショーグループ憲章」「コンプライアンス行動指針」の見直しプロジェクト
①当委員会の課題認識
全社的な活動として、ゼンショーの目的・理念を指針や憲章にわかりやすく表現し、従
業員の理解を広げ、深めるよう徹底していくことが重要である。
②会社の取組み
ゼンショーグループ憲章とは、全社員に入社時に配布され、理念の教育などに利用され
る資料であるが、現在、幅広い階層の社員から成るプロジェクト「ゼンショーグループ憲
章起草委員会」が発足しており、見直しを行っている。具体的には、仕事と生活のバラン
スを保ち、生きがいを持って働けるよう呼びかける内容とする。今後、労使委員会などを
活用し、クルーも含めた従業員の意見を集約して見直しを進める。
クルーについては、会社の理念やコンプライアンスについても記載された「クルーハン
ドブック」を制作中である。制作にあたっては SWM(スゥイングマネジャー。契約社員
店長)やクルー出身の DM(ディストリクトマネジャー。60 店舗程度を管轄するマネジ
ャー)も参加し、現場の意見を吸い上げながら進捗させるなど、過程を重要視した。
また、コンプライアンス行動指針に関しては、2015 年3月に、グループ総務本部下に
新たな組織「コンプライアンス室」を作り、従業員に対する指針の落とし込みを継続的に
行う体制を構築した。
③取組みに対する評価
ゼンショーグループ憲章の起草委員会に関しては、現状、本部勤務の正社員のみで構成
されており、クルーなど現場の人間が構成員として組織されていない。確認のプロセスな
どで、現場のクルーの意見も十分に吸収しながら進めていくことが望ましい。今後、理念
の共有、落とし込みが徹底されれば、仕組みが確立されていくであろう。


(3)経営幹部が従業員の現場の声を真摯に聴き、労働環境を改善する仕組み
①当委員会の課題認識

- 14 -
現場の問題を経営幹部が適時適切に把握し、対策を打つことができるようになる仕組み
が必要である。また、会社へのヒアリングによると、すき家では月間に 1,000 人程度(全
体の 2.9%程度)のクルーが退職している。しかしながら、必ずしも退職事由が十分に把
握されていたとはいえなかったことから、これらのデータの分析が必要である。
②会社の取組み
従業員相談室(従業員が相談できるゼンショー全体の窓口)については、相談内容の共
有や対策が不十分であったため、すき家に関する相談は、該当する地域すき家の COO に
内容が周知されるように改善した。また、ゼンショーの取締役会及びすき家本部の取締役
会において、重要案件が報告されるようになった。
一方、退職するクルーの分析に関して、当委員会の議論を踏まえ、退職時に記入する退
職届のフォーマットを変更し、より詳細に退職理由を把握することができるようにした。
これは、集めた退職事由を統計的に分析し、未然に防げるものがあれば一つひとつ丁寧に
対応しようとするものである。
また、会社による従業員窓口での対応に加え、ZEAN では、クルーミーティングを各
地域で実施する。このミーティングは、普段は言えないような本音を引き出すことを目的
とし、2015 年2月より開催された。3月末の段階では7都府県、30 地区で開催されてお
り、218 名の従業員が参加した。ミーティングでは実際に「掃除デイを作り、例えば2時
間でもクローズして集中してクリンリネスをしたい」「責任者に休みの日に電話がかかっ
てこない仕組みづくりが必要」といった具体的な意見が出ている。ZEAN は、今後、継
続的に全国 146 地区を対象として開催する。
③取組みに対する評価
クルーミーティングなど、労使協調で従業員の声を真摯に聴こうという姿勢は評価でき
る。ただし、形だけにならないよう、吸い上げた意見がどのように反映されるのかを適宜
フィードバックし、参加したクルーが納得できるようにすることが重要である。フィード
バックまでが適正に実施されれば、継続的な良い仕組みとなっていくであろう。
また、従業員の本音を知る機会として、定期的な従業員アンケートの実施や、従業員向
けのカウンセリングなどを充実させることが考えられる。頻度は四半期に1回程度は行い、
幹部や本部に対しての不満が表現できる、風通しの良い風土を構築する。また、この場合、
アンケートをして終わりでは効果が認められないため、その結果を適時的確にフィードバ
ックすることが必要である。


7.
「1.労働環境を改善するための施策」から「労働環境の重要性に関する全社的教育の実施」
(1)調査報告書を題材にした対話型社内研修実施
①当委員会の課題認識
第三者委員会で提出された調査報告書は、今後同様の問題が起きないようにするための
良い教材であることから、新たに採用した従業員などに対して、この報告書を教材とする
継続的な教育が必要不可欠であると記載されている。
なお、研修については、単に労働三法などの法律の知識を詰め込む研修では意味を成さ
ない。そのため、この会社で働くことの意義やコミュニケーション力の必要性についての

- 15 -
講義など、実務に基づいた研修を行うとともに、ケーススタディなどを盛り込むことで自
分に引き寄せて考えることができるような研修にするなど、工夫が必要である。
②会社の取組み
調査報告書を受け、すき家では 2014 年8月に、地域すき家の COO7名を始め、営業
を統括する職務である7社の GM(ゼネラルマネジャー)8名以下、DM や BM(ブロッ
クマネジャー。15 店舗程度を管轄するマネジャー)などに対してコンプライアンス及び
労務管理に関する研修を実施した。また、11 月以降随時、本部に研修に訪れる BM に対
し、より実務に引き寄せて、管理職が部下に対してどのような教育を行えばいいのかをテ
ーマに、時間管理や残業の捉え方、長時間労働が健康に与える影響などについて追加教育
している。
③取組みに対する評価
現状では営業の中枢を構成する BM に対する追加教育中とのことであるが、それ以外
の階層、特に新たに店長になる従業員などに対しても同様の教育を迅速に行う必要がある。


(2)労働環境の重要性を啓発する継続的全社教育実施
①当委員会の課題認識
すき家で起きたことを全社的視野で捉え、グループ各社への展開を行う必要がある。
②会社の取組み
現状、すき家の教育体制を構築することに注力しており、グループへの展開は今後の課
題である。
③取組みに対する評価
優先順位をつけることは大切だが、グループ各社でも同様の問題が起こる可能性があり、
並行して対策を行うべきである。


8.
「2.経営幹部の意識を改革するための施策」
①当委員会の課題認識
現状、会社としてはⅡ-2からⅡ-7に記載された、「労働環境を改善するための施策」
を最優先に取り組んでいる。会社の風土を変えるということは時間を要することであるが、
方向性だけでも出していく必要がある。
②会社の取組み
2014 年8月、すき家本部では、第三者委員会の調査報告書を受け、労働法の知識を習
得し、
部下に共有できるようになることを目的として、地域すき家の COO 及び GM 以下、
当時の社員に対し、コンプライアンス研修を実施した。
また、小川代表取締役会長兼社長が、地域すき家に赴き、25 歳~35 歳の中堅社員及び
幹部社員を対象に、ワークライフバランスの考え方や仕事に向かう姿勢などを説く「中堅
セミナー」を 2014 年 10 月から実施している。現在のところ、7地域中6地域及びゼン
ショー本部で計 10 回開催されており、受講人数合計は 331 名となっている。
更に、2015 年3月には、グループ総務本部の下に「コンプライアンス室」を立ち上げ
た。今後、コンプライアンス室において、経営幹部を含む全社員を対象にした研修などを

- 16 -
行っていきたい考えである。
③取組みに対する評価
小川会長兼社長が行う研修については、単発で終わらないよう、全国的に外部講師など
も視野に入れながら継続して行うことが望ましい。また、コンプライアンス室については
緒についたばかりであり、経営幹部の研修も含めて確実に対策を行っていくことが望まれ
る。更に、第三者委員会の調査報告書にあるように、役員合宿なども引き続き検討するこ
とが期待される。


9.「3.コーポレートガバナンスを改革するための施策」
①当委員会の課題認識
現場における応急措置が進捗したとしても、根本となるコーポレートガバナンスの体制
が構築、運営されなければ、持続可能な調和的発展は期待できないため、ゼンショー及び
すき家本部、地域すき家それぞれにおける一貫した体制の構築が必要である。
②会社の取組み
2014 年 11 月に、すき家本部において非常勤の社外取締役を選任。2014 年6月より既
に選任されている常勤監査役とともに、すき家全体のガバナンスを適正にするべく取り組
んでいる。なお、常勤監査役には、専属の職員が1名サポート役として充当されている。
また、ガバナンスを明確にするため、地域すき家では、2014 年8月より ZEAN 幹部・
ゼンショー・地域すき家従業員代表が構成員となる「時間管理委員会」を設置した。これ
により、長時間労働の従業員の上司に対し、原因の究明と再発防止策のヒアリングを行い、
是正を図っている。
更に、2014 年 11 月には、人事、総務、すき家本部、広報などグループ横断的な組織と
して、「グループ職場環境改善改革推進室」が設置された。当委員会をサポートする事務
局としても機能している。
③取組みに対する評価
横断的組織の設置や、外部の視点から客観的に牽制が可能になる社外取締役の選任を並
行的に行っていることは評価できる。コンプライアンス室も含めて、体制を確立し、不断
にコーポレートガバナンスを改革することを期待したい。


10.「4.担当者の権限と責任の明確化のための施策」
①当委員会の課題認識
責任は権限が伴って初めて果たせるものであるため、規程の策定などを積極的に推進す
るべきである。
②会社の取組み
すき家では、2014 年6月に全国を7つの地域に分ける分社化を行った。
それに伴い、各分社における職務権限を明確にするため、10 月に、職務権限規程の見
直しを行っている。これにより、意思決定の迅速化と、地域すき家における裁量権の拡大
が企図されている。
③取組みに対する評価

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職務権限規程だけではなく、業務分掌規程など、ガバナンスに関わる諸規程などもスケ
ジュールを立て、着実に見直すべきである。


11.「5.リスク情報の伝達経路を明確にするための施策」
①当委員会の課題認識
従来、取締役会では長時間労働や従業員からの相談など重大案件の情報が共有されてい
なかったが、幹部が情報不全による経営判断の誤りを引き起こさないためにも、現場の声
が経営層に確実に届くことが大事である。そのため、伝達を円滑に行うための体制やフォ
ーマットを整備することが求められる。
②会社の取組み
2014 年9月より、グループに存在するリスク情報の一元的な管理及び伝達を目的とし
て、ゼンショーのグループ経営本部の下に「リスク管理室」を設置し、専任担当者を1名
置いた。デイリーでリスク情報を収集し、ゼンショーの内部監査室及び、グループのリス
ク管理の総合的な展開 推進を効率的に進めることを目的とした横断的組織である総合リ

スク管理委員会メンバーに都度報告している。また、総合リスク管理委員会は従来四半期
に1回開催であったが、月に1回開催へと改めた。
従業員相談窓口については、2014 年8月より、ゼンショー及びすき家本部の月例取締
役会の資料として、重大なものを報告するように改めた。
また、ZEAN が企画し、地域すき家も協力して開催しているクルーミーティングは、
すき家本部や地域すき家では捉えきれない従業員の本音をヒアリングし、経営にフィード
バックすることを目的としており、現在は神奈川県、東京都、新潟県、大阪府、兵庫県、
福岡県、佐賀県、合計7都府県 30 地区で開催し、合計 218 人が参加した。今後全国各地
で行うことを計画している。
③取組みに対する評価
取締役会においては、従業員相談窓口の報告内容について、社外取締役を含めて議論さ
れているとのことであり、一定程度の成果が上がっていると言える。
クルーミーティングなどは現場の声を吸い上げ、リスク情報を含めて経営に伝達する取
組みとして評価できるが、経営にフィードバックがなされた改善案や本音が、きちんと地
域すき家やすき家本部に受け止められ、実行されるよう、PDCA の仕組みを構築するべ
きである。
本来的には、社員(正社員または契約社員)が1店舗あたり1名の割合で店舗を見るこ
とが望ましい。すき家としては、SWM を積極的に一般的なクルーから登用しているが、
当面1店舗当たり1名という体制の構築は難しいと推測される。例えば地域すき家におい
て、何か問題が起こった際に現場に急行し、応急措置を行うとともに、現場従業員のヒア
リングと本部への伝達を担う機動的な部隊「フライングドクター」を組織し、制度として
運用することも考えられる。


12.進捗状況に対する総合的な評価
ここまでの会社の対応は、一部に進捗の遅い施策はあるものの、困難な状況の中でベストを尽

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くし、概ね良好であると受け止める。具体的には、以下6点が評価できる。
①分社化によって各階層のマネジャーが管理する社員またはクルーの数が適正なものに整理
されて、勤務状態の把握をはじめ時間管理の徹底、労使委員会による後追い確認など労務管
理が円滑になされるようになり、過重労働が相当程度解消された。
②クルーの採用強化と研修の徹底を図って各店舗がスムーズに運営されている。
③労働時間管理を「見える化」し、より合理的に改めようとしている。
④深夜時間帯の1人勤務体制を根絶するため、2014 年 11 月 13 日時点で、営業利益に 88 億
円程度のマイナス影響があることが想定されていながら、複数勤務体制を推進し、実現でき
ない店舗はあえて深夜営業を休止した。
⑤従業員の現場の声を真摯に聴き、経営に生かすために、労働組合と共催で全国においてクル
ーミーティングの開催を始め、展開している。
⑥クルーの待遇改善について、会社として初めて春闘により一律の時給引上げを行った。


改善に向けた取組みはスタートしたばかりのものもあるが、今後の持続的な取組みが可能であ
るように、継続的な確認を労使含めて組織的に行う必要がある。当委員会として、個々人にあっ
て監視を怠らないようにしたい。




- 19 -
Ⅲ 総括
1.まとめ
創業者であり、ゼンショーホールディングスの会長兼社長である小川賢太郎氏の言葉を引用
すると、20 世紀にアメリカが中心となって築き上げてきた、大量に生産して消費するという
基本サイクルは、物の豊かさという点において素晴らしい文明を築いてきた。しかし、21 世
紀は違うやり方で経営を行う必要がある。21 世紀の日本発の企業として、単に外食企業とし
てだけではなく、精神性やサービスの在り方も含め、人類の根幹である「食」を通じて、世界
に提案をしていきたい。そして、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」というビジョンを達成し
たいということである。
その理念を実現するためには、現在日本の「食」の産業分野で起きている課題に対して真摯
に向き合い、一つひとつ解決し、前に進んでいく気概が必要であろう。現在、労務環境につい
ては、一定程度の改善が示された。しかしながら、そのデータの信頼性をチェックする仕組み
が必要であるし、残業時間の改善も、十分であるとは言い難い。
また、例えばすき家のクルーの6割程度を占める学生クルーに対して考えると、近年、親が
負担する学生の学費や生活費は減少が著しく、学生のアルバイト収入は極めて重要なものとな
っている。このような社会の動向に対して、学生クルーを単純に安価な労働力の提供者として
だけ見るのではなく、学生のより有益な学習を支援する補助的な取組みや、様々な立場にある
主婦のそれぞれにターゲットを絞った、より柔軟な働き方を提案し、日本における業界のリー
ディングカンパニーとして、他の企業をリードするようなワーキングモデルの確立をしていく
ことが、日本代表として世界に提案をするためには不可欠である。
更に、全国を品川本部で一極管理する体制から、地域すき家を設立し、それぞれの COO を
選任したのだから、地域の店舗及びクルーに密着し、各々の現場の実態の吸い上げと、迅速な
改善を図り、地域の顧客においしい「食」を提供するという目的達成のため、より強力に取り
組んでほしい。また、単に顧客に食事を提供するだけではなく、地域社会との結びつきを更に
強め、本当の意味での「食のインフラ」として地域社会の中で輝きを放つ会社になるよう、不
断に社内風土の改革に取組んでいただくことを期待し、報告書を締めくくる。




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資料
2015 年4月8日

「職 場 環 境改 善 促 進委 員会 」委 員 プロフィール

委員長:

白 井 克彦 (しらい かつひこ)氏の略 歴
放送大 学学 園理事 長・早 稲田大 学学 事顧問


1968 年早稲 田大 学大学 院理工 学研 究科博 士課 程単位 取得 満期退 学。工学博 士。1975 年に教 授
となり、現在 は名誉 教授 。専門は知 能情 報学 。
早稲田 大学 教務部 長、常任理 事等を歴任 し、2002 年早 稲田大 学第 15 代総長に就 任。2010 年 11
月退任と同時に同学 事顧 問。
2011 年 4 月 より放 送 大 学 学 園 理 事 長 。2013 年 10 月 日 本 オープンオンライン教 育 推 進 協 議 会
(JMOOC)理 事長に就任 。
文 部 科 学 省 中 央 教 育 審 議 会 生 涯 学 習 分 科 会 委 員 、日 本 私 立 大 学 連 盟 顧 問 など 、多 数 の要 職 を
兼務。
主 な受 賞 歴 に、日 本 放 送 協 会 放 送 文 化 賞 、イタリア共 和 国 功 労 勲 章 グランデ・ウッフィチャーレ賞 、
高柳健 次郎 賞など。


委 員 :(以 下 50 音 順 )

北 村 憲雄 (きたむら のりお)氏の略 歴
株式会 社サンリオ取締役
黒沢建 設株 式会社 特別 顧問
元イタリアトヨタ株式 会社 社長兼スペイントヨタ株式 会社会 長
元郵便 事業 株式会 社会 長 CEO


1967 年 鹿児 島大 学卒
1967 年 トヨタ自 動車販 売 株式 会社 [現トヨタ自動 車株式 会社 ]入社
国 内 営 業 統 括 本 部 、貿 易 センター留 学 (通 産 省 主 管 )、海 外 営 業 統 括 本 部 並 びにヨーロッ
パ部他地 域担当 部を経 て
1987 年 ベルギーブリッセル欧州 本部駐 在
1996 年 イタリアトヨタ株 式会社 社長 兼スペイントヨタ株式会 社会 長就 任
イタリア連帯の星勲章「コンメンダトーレ章」を受 賞
2006 年 日本 郵政 株式 会社取 締役 就任
2007 年 郵便 事業 株式 会社会 長 CEO 就 任
2010 年 同上 顧問 、トヨタ自動車 株式 会社顧 問就 任
2014 年 株式 会社サンリオ取締役 、黒沢 建設 株式 会社特 別顧 問就任
2015 年4月8日
四 方 洋(しかた ひろし)氏 の略 歴
ジャーナリスト/元 毎日新 聞編集 委員・元サンデー毎日編 集長


1960 年 、京 都 大 学 (文 学 部 )を卒 業 し、毎 日 新 聞 社 へ入 社 。その後 社 会 部 記 者 、東 京 本 社 社 会 部
副部長 、人 事第二 (労 務 )部長 、サンデー毎日 編 集長、学生 新聞本 部長 を経て、1989 年に 52 歳で
退社。
退社後は、株式会 社 IBC(海外広 報の会社)の専 務取締 役をはじめ、東邦 大学薬 学部 教授(人間科
学)、高速道 路調 査会 参 与、市 立町 田市民 病院 事業管 理者 などを歴任 。
町 田 市 民 病 院 事 業 管 理 者 への就 任 について読 売 新 聞 ( 2009.03.07)は、「町 田 市 は、市 立 町 田 市
民 病 院 の経 営 責 任 者として、4月に新 設 される病 院事 業 管 理 者 に、元 毎 日新 聞 記 者 の四 方 洋(しか
たひろし)氏 (73)を起 用する。『ジャーナリズムで培 った幅 広い見 識で病 院を改 革 してほしい』というの
がその理由。」と報じている。


現 在 は、フリージャーナリストとしてコラム執 筆 、季 刊 誌 「蕎 麦 春 秋 」編 集 長 のかたわら、早 稲 田 環 境
塾運営 委員 長、東 日本 鉄道文 化財 団評議 員、健康といきがいづくり開発 財団監 事などを務める。


著書に『離 婚の構図 』(毎 日新聞 社 1987)、『いのちの開拓 者』(共同 通信 社 1998)、『心に残るあの
一言』(文化 放送 1996)、『土 着権力 』(講 談社 1986)ほか。



島 谷 美奈 子 (しまたに みなこ)氏の略 歴

パーソナルライフデザイナー/キャリアカウンセラー


人材業 界での人材活 用 提案・採 用業 務にて約 10年の経験を積み、その後 は内閣府 官民 人材 交流
センター、神奈 川若 者就 職支援センター、厚 生労 働省長 期失 業者支 援事 業などの公的 機関や自
治体にて再 就職支 援・キャリアカウンセリング業務 に関わる。


現 在 、個 人 向 けには介 護 や育 児 を経 て社 会 復 帰 を目 指 す方 の就 職 支 援 や、自 宅 で起 業 する人 の
サポートを続 けている。また企 業 向 けには、採 用 側のニーズを把 握 し、キャリアカウンセリング経 験 から
良質な人材の提案や女 性スタッフのキャリア開 発 支援などを業 務としている。
女 性 向 け再 就 職 支 援 講 座 やワーキングマザー向 け両 立 支 援 セミナーなどで講 師 を務 め る。コラム執
筆も多数 。
[資格 ]
2004年 1月 全 国産 業 人能力 開発 団体連 合会 キャリア・デベロップメント・アドバイザー
2007年 3月 社 団法 人 日本産 業カウンセラー協 会 産業 カウンセラー
2007 年 11 月 Japan Association for Psychological Type MBTI 認定ユーザー
2015 年4月8日

若 狭 勝 (わかさ まさる)氏 の略 歴

弁護士(若狭 法律 事務所 )、元 東京地 検公 安部 長


[略歴 ]
昭和 31 年 12 月 6 日生 東京 都出 身


昭和 55 年 3 月 中央大 学法 学部 卒業
昭和 55 年 10 月 司法 試験合 格
昭和 58 年 4 月 東京 地検 検事
昭和 59 年 4 月 福島 地検 検事
平成 2 年 4 月 東京 法務 局(訟 務検 事 )
平成 5 年 4 月 東京 地検 検事 特捜 部
平成 8 年 4 月 法務 総合 研究所 (教官 )
平成 10 年 4 月 東京 地検 検事 特捜 部 副班長
平成 12 年 4 月 司法 研修 所(検 察教官 ・司法試 験考 査委員 )
平成 15 年 4 月 東京 地検 検事 特捜 部 班長
平成 16 年 4 月 東京 地検 検事 刑事 部 副部長
平成 16 年 10 月 東京 地検 検事 特捜 部 副部長
平成 17 年 9 月 横浜 地検 検事 刑事 部 長
平成 19 年 10 月 東京 地検 検事 公安 部 長
平成 21 年 4 月 1 日 弁 護士登 録


[テレビ出演等 ]
各マスコミにおける多様なコメンテーターとして出 演 等
(過去の出演 番組)
TBS「みのもんたの朝ズバッ!」
フジテレビ「スーパーニュース」
テレビ朝 日「ワイドスクランブル」
その他 、他 局にも多 数出演
[著書 ]:『嘘の見抜き方 』(新潮新 書)『ニュースで鍛 える善悪の整理 術 』(産 経 新聞出 版)
[趣味 ・趣向 ]:乗馬・温泉

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