スポンサードリサーチレポート発行のお知らせ

2021 年 11 月 17 日
各 位
会 社 名 日本ピラー工業株式会社
代表者名 代表取締役社長 岩波 嘉信
(コード番号 6490 東証第1部)
問合せ先 取締役専務執行役員 宿南 克彦
(TEL.06-7166-8281)



スポンサードリサーチレポート発行のお知らせ

当社は、投資家とのコミュニケーションを円滑にし、当社に対するご理解を深めていただくためスポンサー
ドリサーチレポートを発行いたしましたので、お知らせいたします。


当リサーチレポートは、株式会社キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリーに作成を依頼しております
が、当社株への推奨は一切なく、当社のビジネスモデル、業界動向、業績推移、長期的な事業戦略といったす
でに公表されている内容を投資家の皆様にわかりやすく説明するためのものです。
詳細につきましては、次ページ以降をご参照ください。


以上
企業レポート

東証 1 部・機械 担当アナリスト
2021 年 11 月 17 日

黒田真路

日本ピラー工業(6490) 星野英彦 CMA

キャピタルグッズ・リサーチ&アド
バイザリー


「半導体」と「脱炭素」をキーワードに ESG 経営を強化する流体制御機器メーカー
 日本ピラー工業(以下、同社)は、半導体製造装置メーカー向けを中心に、ピラフロンに代表されるふっ素樹脂を加工した継手
などを扱う電子機器関連事業および各種プラントに組み込まれて使用されるポンプやバルブ向けメカニカルシールやグランドパッキン、
ガスケットなどを手掛ける産業機器関連事業が主力事業である。20%前後の営業利益率を誇る電子機器関連事業は、半導
体設備投資の拡大を背景に、同社業績の牽引役となっている。一方、産業機器関連事業は、売上高の約半分をアフターマーケ
ット収入が占め、シクリカルな業績推移を見せる。22/3 期業績は 1Q 決算に続き 2Q 決算発表時にも通期業績予想を上方修
正、売上高は 3 期ぶりに過去最高、営業利益および営業利益率も 5 期ぶりに過去最高を更新する見通しである。
 同社は 2017 年の CSR 報告書において、岩波清久会長が初めて ESG 課題への取り組みを紹介、比較的他社に先駆けて
ESG 経営に舵を切ってきた。21 年 4 月には岩波嘉信社長を委員長とする ESG/SDGs 推進委員会を設置、ESG 経営を深
耕・強化する方針である。ESG 外部評価としては、2018 年以降、S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数に組み込まれている。
 今後の事業環境に関しては、WSTS(世界半導体市場統計)は自動車の CASE や IoT・ICT、DX の進展などを背景に、
2030 年における半導体の市場規模が 2020 年対比で倍増の 1 兆ドルに達すると予想している。加えて、世界的なカーボンニュ
ートラルの動きを背景に、各種装置産業において水素などへの燃料転換に伴う設備投資や二酸化炭素の再利用に向けた設備
投資の拡大が見込まれる。Bloomberg NEF などは 2050 年までにエネルギー分野における年間設備投資が現状の 1.7 兆ド
ルから 3.3~5.8 兆ドルへ拡大すると予想している。従って、電子機器関連事業は短期的な調整局面も見られようが、新規顧客
の開拓や海外展開、新製品投入効果なども加わり、引き続き中長期的な成長ポテンシャルは大きい。更に、従来のシクリカルな
業績トレンドを見せてきた産業機器関連事業は、「脱炭素」をテーマに成長局面に転じる可能性が高まっていると言えよう。
 現在、同社は 23/3 期を最終年度とした 3 ヶ年中期経営計画「BTvision22」が進行中である。2024 年の創業 100 周年に
向けて株主還元を含む資本政策の強化に加え、上記のような環境下、次期中期経営計画へ期待が高まる。

(日本ピラー工業の連結業績および各種株価データ:億円、円、%)
トレーディング・データ 業績推移 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3会予
株価(21年11月16日) 3,005 円 売上高 272 295 310 292 302 380
52週レンジ 1,537~3,110 円 営業利益 52 52 51 37 48 100
時価総額 753 億円 経常利益 53 52 52 37 51 100
発行済株式総数 25,042 千株 親会社当期利益 32 34 37 26 34 70
平均売買代金(20日) 5.8 億円 EPS 131.1 140.0 152.1 108.6 144.7 296.1
会社予想PER 10.1 倍 ROE 9.1 8.9 9.1 6.2 7.8 -
PBR(21/3末) 1.6 倍 1株配当金 34.0 36.0 45.0 40.0 50.0 90.0
予想1株配当金 90.0 円 配当性向 25.9 25.7 29.6 36.8 34.6 30.4
予想配当利回り 3.0 % FCF 9 5 11 11 20 -
ROIC(21/3) 7.7 % NetCash 124 115 118 115 117 -


本レポートは投資の勧誘・推奨・助言を意図したものではなく、当該企業に関する情報提供を目的として当社独自の視点から作成されています。
また、本レポートに記載されている内容は公表された情報に基づき作成されておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。
本レポートの著作権は(株)キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリーに帰属しており、無断転写を禁じます。本レポートの内容は、今後予告なし
に変更される場合があります。当社及び本レポートは投資家の投資判断に関知することはなく、投資に関する決定はご自身の判断で行って頂くよう
お願い申し上げます。
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目 次
(1)日本ピラー工業で注目される 3 つのポイント:p3~4
(2)事業内容とビジネスモデル:p5~11
・事業内容:p5
・主力製品の説明:p6
・主要製品と最終顧客:p7
・6つの経営資本とビジネスモデル:p8~9
・国内主力生産拠点のポイント:p10
・セグメント別の沿革と主なイベント:p11
(3)中期経営計画と SWOT&5Forces 分析:P12~18
・23/3 期を最終年度とした中期経営計画の基本方針:p12
・中計経営計画「BTvision22」の CGRA 注目ポイント:p13
・SWOT&5Forces 分析:p14
・同社における 3 つの強みの源泉:p15~16
・競合企業の分析:p17~18
(4)業績推移とセグメント別動向:p19~24
・過去の業績推移と 22/3 期業績予想:p19
・電子機器関連事業の市場概況と業績見通し:p20~21
・産業機器関連事業の市場概況と業績見通し:p22~23
・新型コロナウイルス感染症の影響に関して:p24
(5)財務および非財務分析:p25~30
・財務分析:p25~26
・非財務分析:p27~28
・コーポレートガバナンス体制:p29~30
(6)株主還元と過去の業績予想達成度合い:p31~32
・株主還元:p31
・過去における業績予想の達成度合い:p32
(7)株価推移と株価バリュエーション:p33~34
・競合および顧客の株価動向:p33
・株価バリュエーション:p34
(8)損益計算書と貸借対照表およびキャッシュ・フロー計算書:p35~36


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(1)日本ピラー工業で注目される 3 つのポイント
ポイント①:同社の市場環境は中長期的な高成長が期待可能
現在の同社事業環境は、旺盛な半導体設備投資需要を背景に、電子機器関連事業が好調を持 「半導体」と「脱炭素」
続しているうえ、シクリカルな産業機器関連事業も回復傾向を強めている。ただし、短期的には強すぎ をキーワードに中長
る半導体関連需要に対して、仮需が消滅する格好で踊り場が来るとの見方が株式市場で懸念されて 期的な成長余地は

いる模様である。しかし、WSTS は自動車の CASE や IoT・ICT の普及に伴うデータ処理量の増大、 大きそうだ

5G とポスト 5G、DX の進展などを背景に、2030 年のグローバル半導体市場が 2020 年の約 4,000
億ドルから 1 兆ドルへ拡大すると見込んでいる。加えて、Bloomberg NEF などは、2050 年に向けて
カーボンニュートラルの実現に向けた水素などへの燃料転換を伴う世界的なエネルギー関連設備投資
の拡大(現在の 1.7 兆ドル→3.3~5.8 兆ドル)を予想している。個別企業においても、日機装や
横河電機などは 2030 年に向けて関連事業の売上高が倍増するとの見通しを開示している。
2017/3 期以降の同社業績は、半導体設備投資の拡大を背景とした電子機器関連事業を牽引役
に拡大基調にあったが、今後は産業機器関連事業と電子機器関連事業の両輪がかみ合った長期的
な成長局面の到来が期待できそうだ。生産能力の確保と新製品の開発・提案力、更には中長期の企
業価値のみならず本業にも大きな影響を与える ESG/SDGs 経営の深耕が求められよう。

ポイント②:ESG 経営を深化・加速することで、企業価値の向上に期待
同社はピラフロンを柱とした電子機器関連事業とメカニカルシールをメインとした産業機器関連事業の 2 ESG 経営の強化で
つのセグメントを有している。最終顧客は半導体・半導体製造装置メーカーおよびポンプやバルブを使 企業価値 の向 上が
用する各種装置産業などであり、同社の事業形態および顧客層は荏原に似ている。荏原はポンプを 期待される
手掛ける風水力事業と CMP 装置、真空ポンプなどを扱う精密・電子事業を柱とし、機械セクターを代
表する ESG 経営推進企業である。エーザイの柳 CFO が唱える「PBR1 倍以上は非財務情報で説明
可能」、CGRA が考える「PER は期間利益の継続年数を示したバリュエーション」との考え方が正しいと
仮定すると、荏原の 21/12 期予想 PER 15.5 倍は期間利益が 15.5 年継続することを意味し、
PBR1.9 倍(21/12 期末 ROE 8.4%)は ESG 経営強化の結果といえよう。一方、同社 PER は
10.1 倍、PBR は 1.6 倍(21/3 期 ROE 7.8%)にとどまっている。しかし、今後は岩波嘉信社長
を委員長とした ESG 経営の強化による持続的企業価値創造の試みと同時に、資本政策による ROE
の改善に伴う、企業価値の向上が期待される。ちなみに、SOTP(サム・オブ・ザ・パーツ)で PER を試
算すると、同社電子機器関連事業のセグメント利益構成比 88%に最大顧客である SCREEN ホー
ルディングスの 22/3 期予想 PER 15.0 倍を掛け合わせ、産業機器関連事業の構成比 12%に国
内競合 3 社の平均予想 PER 10.8 倍をあてはめて算出される PER は 14.5 倍となる。

ポイント③:2024 年の創業 100 周年に向けて株主還元の強化も期待
同社は現在進行中である 3 ヶ年中期経営計画「BTvision22」(21/3-23/3)の中で、配当性 株主還元を含むバラ
向 30%以上を掲げている。しかし、中計初年度である 21/3 期の配当性向は 34.6%(1 株 50 ンスシート・マネジメン
円配当、1Q 決算時予想の 40 円から 10 円の増配)であったうえ、約 8 億円(発行株数の約 トが期待される
3.3%)の自社株取得を実施、総還元性向は 57.5%に達した。同社の配当方針としては、成長
投資とのバランスを図り、安定的で継続的、かつ還元水準の向上を目指すとされ、22/3 期の 1 株予
想配当金は 90 円(期初予想 60 円、1Q 時予想 70 円)、配当性向は 30.4%が予想されてい
る。ただし、同社の場合、高い収益性以上にバランスシートが強いため、ROE が相対的に低位にとど
まっている印象である。今後は ROE の向上を図るべく、2024 年の創業 100 周年に向けて株主還
元を含む適切な資本政策が必要となろう。




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図表 1:脱炭素関連の設備投資および半導体需要は高成長期が到来

グローバル半導体需要とエネルギー分野での脱炭素投資額見通し
脱炭素に向けた設
脱炭素社会に向けたグローバル・エネルギー分野での設備投資見通し 備投資と半導体の
設備投資は拡大基
2020A
3.3兆~5.8兆ドルへ
調にある
2050E


半導体需要は過去20年間で倍増、今後は10年間で倍増する見通し

2000A


2020A
1兆ドルへ

2030E

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000
(億ドル)




図表 2:ESG 経営の深耕による企業価値向上に期待
(倍) 予想PERとPBR(傾きはROE)
3.0 ESG 経営の深化に
SCREEN よる期待収益継続
2.5
性(=PER)の向
y = 0.2057x - 0.9621
2.0 R² = 0.568 荏原 上が期待される

日本ピラー工業
PBR




1.5
ニチアス バルカー
1.0
イーグル工業
0.5


0.0
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0
予想PER (倍)


図表 3:継続的な株主還元の強化に期待
(円) 1株配当金と自己株取得、配当性向と総還元性向 (%)
100.0 70.0 今後に関しても継続
90.0 1株当り自己株取得額 1株当り配当金 的な株主還元に期
60.0
80.0 57.5 待したい
配当性向(右軸) 総還元性向(右軸)
70.0 49.5 50.0

60.0 41.8 40.0
36.8
50.0 34.6
29.3 28.8 25.9 29.6 30.430.0
40.0 24.9 24.9 29.6 30.4
24.9
24.9 25.9 25.7
25.7
30.0 21.4 20.0
17.7
20.0
10.0
10.0

0.0 0.0
12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 (会予)


出所:会社資料などから CGRA 作成



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(2)事業内容とビジネスモデル
・事業内容
社会と環境の安心・安全に貢献する流体制御機器メーカー
同社は 1924 年に岩波清久会長の祖父にあたる岩波嘉重氏が船舶用レシプロエンジンのシリンダーグ 日 本 初 のメカ ニカ ル
ランド用合金製ピラーパッキンを考案、創業した。1951 年に日本で初めてメカニカルシールを開発、グラ シールを開発、流体
ンドパッキン、ガスケットからふっ素樹脂製品(製品名:ピラフロン)へ展開してきた。「流体の漏れを止 の漏れを止める技術
める技術」を活用、創業以来 95 年以上にわたり、独創的かつ高品質な製品を提供している。メカニカ をベースに事業展開
ルシールなどの製品群は、発電所、石油精製や各種化学プラント、船舶などに組み込まれて使用され
るポンプやバルブ、撹拌機、各種パイプ類の配管接続部において、液体などの漏れを封止する目的で
使用される。ふっ素樹脂製品は高成長が続く半導体・液晶などの製造装置に加え、半導体工場にお
ける薬液供給設備に組み込まれて使用される。加えて、売上規模は小さいものの建物用の免震装置
や自動車衝突防止装置であるミリ波レーダーアンテナなども手掛ける。

安定収益源である産業機器関連と成長基調にある電子機器関連がコア事業
21/3 期連結売上高は前期比 3%増の 302 億円、営業利益は同 32%増の 48 億円(営業利益 14/3 期以降は電子
率 16.0%)であった。ピラフロンを扱う電子機器関連事業が売上高の 69%(207 億円)、メカニカ 機器関連事業が業
ルシールなどを扱う産業機器関連事業が残り 31%(95 億円)を占めた。営業利益に関しては、電 績の牽引役に転じた
子機器関連事業が 85%(=41 億円、営業利益率 20.0%)、残り 15%(=7 億円、同 7.3%)
を産業機器関連事業が占めた。

かつては祖業である産業機器関連事業が収益源であったが、14/3 期に営業利益構成比が逆転、そ
の後は電子機器関連事業が急成長、同社の収益ドライバーに転じている。ただし、産業機器関連事
業は売上高の推定 50%(=連結売上高の推定 16%)を安定需要が見込まれるアフターサービス
(=メンテナンス)事業が占めており、同社業績のアンカー役になっている。

半導体・液晶向け売上高が約 6 割を占める
21/3 期単体ベース売上高 283 億円(連単差 19 億円)を業種別に見ると、半導体・液晶向けが 17/3 期以降は半導
64%、化学・その他が 14%、石油・鉄鋼・輸送が 12%、電力・エネルギーが 5%、土木・建築が 4%、 体・液晶向け売上
官公需が 2%、その他が 1%を占めた。半導体・液晶向け売上高は 17/3 期に初めて売上構成比が 構成比が 50%以上
50%を超え、その後も拡大基調を続けている。海外売上高比率は 27%(国内売上比率 73%) を占める

にとどまっているものの、海外売上高自体はアジア地域を中心に伸長、過去 5 年で 2.2 倍の 82 億円
へ急成長している。現中計では「グローバル化の深耕」を基本方針の 1 つに掲げ、注力している。

図表 4:主要セグメントにおける製品および顧客業種
セグメント 売上構成比 主要製品 主な用途 主な使用箇所
半導体の基板製造装置 製造装置内の高純度薬液の循環、基板への薬液塗布・洗浄ラインの配管接続部
液晶の基板製造装置 高性能樹脂で構成される継手・チューブ・ポンプ・バルブ他などの高性能部品・機器
電子機器関連 69% ピラフロン製品 有機ELなどの製造装置

一般産業機器 高機能シール部品(往復動機器・回転機など)
自動車衝突防止装置 ミリ波レーダーアンテナ
建築・土木用免震装置 病院・役所・物流センター・半導体工場などにおける免震装置

メカニカルシール製品 ポンプ・攪拌機 石油・化学・食品などの装置産業における流体移送ポンプおよび撹拌機
火力・原子力発電所における各種ポンプ

産業機器関連 31% ポンプ 火力・原子力発電所における各種バルブおよびポンプ
グランドパッキン製品 バルブ 石油・化学プラントにおける各種バルブおよびポンプ
ガスケット製品 配管接続部 自動車排気管接続部
石油・化学などの装置産業および火力・原子力発電所における配管接続部

出所:会社資料などから CGRA 作成。売上構成比は 21/3 期実績
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・主力製品の説明
電子機器関連:半導体・液晶の洗浄装置や半導体工場の付帯設備に納入
ダイキン工業などから PTFE などのふっ素樹脂を調達、独自の成形・切削技術で継手やチューブ、バル 需要動向は半導体
ブなどに加工すると同時に、ベローズポンプなども生産している。売上高の約 8 割が半導体洗浄装置向 製造装置関連メーカ
けの継手、残りをベローズポンプなどが占める。同社は半導体洗浄装置向け継手では世界シェア 90% ーの受注および半導
以上を誇る最大手。同社製品は製造装置のみならず工場の付帯設備にも組み込まれて使用される。 体工場の設備投資
に連動する
図表 5:採用用途と製品




出所:同社 PRODUCTS GUIDE

産業機器関連:各種装置産業向けに流体漏洩防止機器を提供
同社が手掛けるメカニカルシール(国内シェア 30~35%)、グランドパッキン、ガスケットは、ポンプやバ 地味ではあるが重要
ルブ、各種配管の接続部分に組み込まれて使用され、流体の漏れを封止する機器である。なお、同 な役割を担う機器を
事業には荏原の CMP 向けを中心としたロータリージョイントが売上高の約 10%を占めている。 手掛ける

図表 6:採用用途と製品




出所:同社 PRODUCTS GUIDE


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・主要製品と最終顧客
電子機器関連事業:半導体製造装置および半導体工場へ納入
SCREEN ホールディングスが同社連結売上高の 13%、同事業の 19%を占める最大顧客である。続
いて荏原や東京エレクトロン、アプライドマテリアルズなどが手掛ける半導体製造装置(ウエット工程)
に組み込まれるうえ、半導体工場における薬液供給階の供給装置にも使用される。

図表 7:電子機器関連事業の主要納入先




産業機器関連事業:装置産業が主な最終顧客
荏原などのポンプメーカー、キッツなどのバルブメーカーおよび攪拌機メーカーや総合重機メーカー各社へ
販売、最終的には電力、石油化学、鉄鋼やセメントなどの各種プラントや各種社会インフラ設備に組
み込まれて使用される。今後はカーボンニュートラル社会の実現に向けた水素などへの燃料転換や
CO2 の固定・吸着と輸送、再利用などの分野で設備投資が国内外において拡大するとみられる。

図表 8:産業機器関連事業の主要納入先




出所:会社資料


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・6 つの経営資本とビジネスモデル
シクリカルグロースの電子機器関連事業と安定収益の産業機器事業を有する
同社は開発から生産、販売、サービス・メンテナンスまで一貫した開発・生産・販売体制を敷いている。 電子機器関連事業
開発はマザー工業である兵庫県三田市にある三田工場および京都府福知山市の福知山事業所で はシクリカルグロース、
行い、九州工場を含む国内 3 工場をメインに海外にも 5 つの製造・メンテナンス子会社(うちインドネ 産業機器関連事業
シアは修理拠点)を有する。販売は本社・各支店に加え、販売子会社および関連会社が担っている。 はシクリカルな業績
特殊鋼材やふっ素樹脂などの各種材料を外部調達、成形・切削加工を行い、国内外に販売している 推移を見せる

(海外売上高比率 27%)。電子機器関連事業は新設需要が中心であり、アフターサービスは少な
いが、産業機器関連事業の売上高の推定 50%をアフターサービス事業(=修理など)が占める。

電子機器関連事業は、半導体設備投資に大きく左右されるため、シクリカルグロースの性質を有する。
一方、産業機器関連事業は、顧客業種が多岐にわたる装置産業へ依存しているうえ、メンテナンス売
上高比率が高いため、売上高のボラティリティが低い傾向が見られる。

16/3 期以降は業績の成長局面が到来している
過去の業績を振り返ると、図表 9 の左グラフが示すとおり、15/3 期以前はシクリカルな業績推移を見 16/3 期以降の業績
せていた。しかし、16/3 期以降はシクリカルグロースの様相を強めている。この背景には、図表 9 の右グ は半導体設備投資
ラフが示すとおり、電力および装置産業の設備投資が伸び悩む中、世界的な半導体設備投資が拡 の拡大に支えられ、
大傾向を示し、同社電子機器関連事業が成長局面を迎えたことが主因である(同社は 10/3 期以 シクリカルグロースの

降のセグメント別業績を開示。09/3 期以前は連結売上高を図表に掲載)。 様相を強める

アフターサービス事業の強化と第 3 の新たな事業創出が次なる課題
営業利益率は 17/3 期に過去のレンジを超える 19.0%に達し、22/3 期は 5 期ぶりに過去最高とな
る 26.3%(1Q 実績 25.3%、2Q 実績 29.3%。下期予想 25.2%)が予想されている。セグメ
ント別では、かつての収益源であった産業機器関連事業の利益率は、12/3 期の 19.9%をピークに
低下傾向にあり、21/3 期は 7.3%、22/3 期も 12.4%(1Q 実績 12.2%、2Q 実績 17.0%。
下期予想 10.0%)に留まる見通し。一方、電子機器関連事業の利益率は半導体設備投資の拡
大を追い風に、21/3 期に過去最高の 20.0%に達し、22/3 期は 26.4%(1Q 実績 29.6%、2Q
実績 33.4%。下期予想 30.5%)へ伸長する見通し。今後は他社に劣後しているアフターサービス
事業の強化拡大、海外販売および海外生産の拡大、第 3 の新たな事業の創出が求められよう。

図表 9:16/3 期以降はシクリカルグロースの収益体質へ変化してきた
(百万円) (%)
日本ピラー工業のヒストリカル業績推移 (百万円) セグメント売上高と半導体設備投資の推移 (10億ドル)
45,000 30.0 45,000
産業機器関連事業 電子機器関連事業
40,000 連結売上高(左軸) 連結営業利益(左軸) 200
40,000
25.0 '09/3期以前は連結売上高 半導体設備投資(右軸)
35,000 営業利益率(右軸) 35,000

30,000 20.0 30,000 150


25,000 25,000
15.0
20,000 20,000 100


15,000 10.0 15,000


10,000 10,000 50
5.0
5,000 5,000


0 0.0 0 0


(会予)
(会予)


出所:会社資料、SEMI などから CGRA 作成


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経営資本を効率よく PDCA サイクルで管理している印象
製造資本:京都府福知山市にある福知山事業所(敷地約 39,000 ㎡)は、主に半導体・液晶 需要を先読みした設
製造装置向けの継手(フィッティング)などのピラフロン製品やベローズポンプのほか、ファインセラミックス 備投資を実施
の炭化ケイ素(SiC)製品を生産している。熊本県合志市に約 18,000 ㎡の敷地を有する九州工
場では、主に半導体製造装置用製品(チューブ、継手など)の設計、生産、組立を行っている。また、
兵庫県三田市にある同社マザー工場の三田工場(敷地約 43,000 ㎡)は、主にメカニカルシールと
グランドパッキンの生産を担い、約 50 年ぶりにリニューアル工事を実施、自働化・IT 化を図った最新鋭
工場に生まれ変わった。

21/3 期の設備投資は 9 億円(対売上高比率 3.0%)であったが、17/3-20/3 期の 4 年間で総
額 158 億円の設備投資(平均売上比率 13.5%)を実施、本社の移転に加え、三田工場のリニュ
ーアル化と九州工場および製造子会社の能力増強を進めてきた。その投資効果が近年の業績拡大を
支えていると言えよう。減価償却費は 20/3 期が 18 億円、21/3 期が 21 億円(同 6.8%)であっ
た。なお、現 3 ヶ年中計では 23/3 期までの 3 年間で 100 億円規模の設備投資を計画、22/3 期
は 15 億円を予定している。今後は国内、米国と中国工場での生産能力の増強を行う方針である。

知的資本:21/3 期の研究開発費は 11 億円、対売上高比率は 3.7%(過去 5 年平均研究開 最先端の技術開発
発費は年間 10 億円、同 3.3%)である。研究開発スタッフは約 70 名(連結従業員数の約 9%)。 センターを建設中
次世代製品や新市場向け製品開発、環境問題に対応すべく各種規格対応などの開発を行っている。
現在、2022 年竣工予定で兵庫県三田市に技術開発センターを建設中であり、組織横断の複合・
融合・総合技術による卓越した開発力を強化、第 3 の柱となる新製品開発を加速させる方針である。

人的資本:21/3 期末の連結従業員数は 759 名(単体 541 名)である。21/3 期従業員 1 人 競合を大きく上回る
当たり売上高は 39.8 百万円と高く、17/3 期以降、水準が切り上がっている。ちなみに同社最大顧 労働生産性を誇る
客である SCREEN ホールディングスは同 53.5 百万円、荏原は同 30.0 百万円。調達先の 1 つであ
るダイキン工業は同 29.4 百万円。競合であるイーグル工業は同 20.1 百万円、ニチアスは同 24.8
百万円、バルカーは同 24.8 百万円であり、競合他社を大きく上回る労働生産性を誇っている。

財務資本:21/3 期末の総資産は 549 億円(有利子負債 254 百万円、ネット・キャッシュ 117 億 高い収益性と強靭な
円)、自己資本 458 億円、自己資本比率は 83.3%である。財務資本をベースとしたアウトプットは、 バランスシートを有す
21/3 期連結売上高が 302 億円、営業利益は 48 億円(営業利益率 16.0%)。過去最高営 る
業利益は 17/3 期の 52 億円であるが、22/3 期は 100 億円が予想され、5 期ぶりに過去最高を更
新する見通し。営業 CF は 57 億円、フリーCF は 20 億円、期末の現金および現金同等物残高は
105 億円に達している。強靱なバランスシートを有しているため、ROE は 7.8%に留まっている。

社会・関係資本:同社は調達基本方針として「PILLAR CSR 調達ガイドライン」を制定、ESG 関連 サプライチェーン全体
投資やグローバル調達の拡大に鑑み、サプライチェーンマネジメントを取り巻く課題に対して、適切に対 における ESG 経営を
処する方針である。また、ピラフロン製品のスーパーフィッティング、スーパー300 タイプピラーフィッティング 強化

(S300)、免震支承などが世界的に高評価され、米デュポン社のプランケット賞を 3 度受賞している。
年 1 回、「お客様満足度調査」を実施、顧客ニーズに対し、最善提案が出来るように努めている。

自然資本:同社はカーボンニュートラルの達成の時期と具体策(ニチアスとイーグル工業は 2050 年
にカーボンニュートラルを目指す)を公表していないが、他社に先行する格好で環境会計を開示、毎年
の目標と具体的な取り組みを説明している。環境マネジメントに関しては、星川取締役専務執行役員
をトップとした「脱炭素地球環境委員会」が取り組み、岩波嘉信社長を委員長とする「ESG/SDGs 推
進委員会」へ報告、マネジメントによる継続的な改善を実施、実効性を高めている。



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・国内主力生産拠点のポイント
同社のメイン工場を訪問見学
2021 年 10 月 25 日、ふっ素樹脂を加工した継手およびチューブやベローズポンプなどの生産を手がけ 現在は納期遅延も
る福知山事業所およびメカニカルシール、グランドパッキン、ガスケットなどの生産を担う三田工場を訪問 なく、フル生産状況
したので内容を報告したい。 が続いている

福知山事業所は電子機器関連事業における生産高の 7 割強を占め、九州工場(チューブをメインに
継手も生産)が 3 割弱を占める。米テキサス・ヒューストンの日本ピラーアメリカでは PTFE を切削加工
して継手を生産しているが、同事業所では主に PFA を射出成形加工することで継手を生産している。
現在は納期遅延もなく、フル生産状態にあり、生産能力の増強を検討している模様。PFA は溶融時
にガスが発生するため、特殊仕様の射出成形機で加工、全数目視検査を行っている。独自の加工技
術および高い生産歩留まりと安定的な生産アウトプットが強みである。

図表 10:福知山事業所:電子機器関連事業のメイン工場




メカニカルシールやガスケットなどを手掛ける三田工場では大規模リニューアル工事が完了、工程の整流 次期中計では更なる
化を図りつつ、AGV による無人搬送(人員 2 割減)や各種データの見える化による生産稼働率の向 生産効率の向上が
上や在庫削減を進めた最新鋭工場に生まれ変わった。グランドパッキンは糸を編み、潤滑剤などを含浸 期待される
させる。次期中計では含浸工程の自動化などを一段と進める方針である。メカニカルシールに使用され
る部品加工は、ヤマザキマザックの複合加工機を導入、高い稼働率と加工精度を確保している。同工
場は現在 1 直生産体制であるが、今後の「脱炭素」に向けた新たな需要増局面において、生産ボリュ
ームの増加と同時に、最新鋭工場の稼働率向上に伴う生産性改善効果の顕在化に期待が集まる。

図表 11:三田工場:産業機器関連事業の主力工場




出所:同社 HP



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・セグメント別の沿革と主なイベント
2024 年に創業 100 周年を迎える流体制御機器メーカー
1924 年 5 月、創業者である岩波嘉重(岩波嘉信社長の曽祖父、岩波清久会長の祖父)が 3 等 「流体の漏れを止め
機関士として乗務した「賀茂丸」での経験を生かし、船舶用レシプロエンジンのシリンダーグランド用とし る技術」を活用、独

て合金製ピラーパッキンを考案、設立した「日本ピラー工業所」が同社の前身である。 創的かつ高品質の
製品を提供してきた
1926 年には大阪市淀川区に工場を新設、工業用漏れ止めパッキンの本格生産を開始、1932 年
には自動車用および船舶内燃機用ガスケットの生産を始めた。1951 年には日本初のメカニカルシール
(軸封装置)を開発し、生産を開始、1952 年には高温・高圧管フランジ用バーチカルガスケットを開
発、ふっ素樹脂製品(商品名「ピラフロン」)の生産をスタートさせた。創業から 1970 年辺りまでは事
業基盤の礎を築き、船舶や石油精製・化学・エネルギーなどの重厚長大産業の発展とともに歩んでき
た。1980 年代から 2000 年代にかけては自動車産業の成長が新たな需要先に加わると同時に、ブラ
ンドの確立と海外展開への基盤づくりが行われた。そして 2000 年以降は、半導体や液晶などが新規
の需要先として台頭すると同時に、海外拠点づくりを積極化、グローバル展開と新事業の創出に注力
してきた。現在、世界 10 か国に 14 拠点を有している。

2024 年の創業 100 周年に向けて、現中期経営計画「BTvision22」では、①事業基盤の拡充、
②グローバル化の深耕、③新事業の創出、④ESG/SDGs 経営の推進、⑤財務戦略を掲げ、兵庫県
三田市に技術開発センターを新設すると同時に、国内および米国、中国の生産拠点を増強、持続的
な企業価値の向上と社会課題の解決を目指す方針である。

図表 12:セグメント別の沿革と主なイベント(赤字は海外拠点)
本社関係 産業機器関連 電子機器関連 主な市場
1924年 5月 神戸市灘区に日本ピラー工業所を創設 特許製品「ピラー#1」パッキンを開発
船舶
1926年 8月 大阪市淀川区に工場を新設 工業用漏止めパッキンの本格生産を開始
1932年 6月 自動車用・船舶エンジン用ガスケットの生産を開始
1948年 5月 株式会社に改組し、日本ピラー工業(株)を設立
1948年 10月 東京出張所(現・東京支店)を開設
1951年 4月 日本初のメカニカルシールを開発、生産開始 石油精
1952年 10月 高温・高圧管フランジ用バーチカルガスケットを開発 ふっ素樹脂製品(商品名ピラフロン)の生産を開始 製、化
1967年 9月 兵庫県三田市に三田工場を新設 学、エネ
1970年 - 新素材「炭化繊維」を開発し、生産開始 ルギー
1974年 - 創業50周年(2024年に創業100周年)
1977年 5月 ピラーサービス販売(株)を設立
1980年 3月 日高精工(株)(現・日本ピラー精密(株))に資本参加
1981年 - ISOシリーズメカニカルシールの生産を開始
1984年 - 半導体製造装置向けピラーフィッティングを発売
1987年 - 膨張黒鉛編組パッキン「ピラーマークⅢ」を開発・生産 自動車
1989年 10月 京都府福知山市に福知山事業所を新設
1991年 - ピラースペラベローズポンプの生産開始
1993年 6月 日本ピラーシンガポール(株)を設立
1994年 - 米国大気浄化法対応の新パッキンEDPの本格納入を開始
1995年 9月 大阪証券取引所市場第二部に上場
1997年 2月 台湾に合弁会社リエンフーピラー(株)を設立
1999年 9月 米国に日本ピラーアメリカ(株)を設立 ピラースペラ300低脈動ベローズポンプの生産開始
2001年 1月 東京証券取引所市場第二部に上場
3月 東京証券取引所、大阪証券取引所市場第一部に上場
2002年 - スーパー300タイプピラーフィッティングの生産開始
半導体
2003年 7月 台湾ピラー工業を設立
医療
2003年 12月 中国に蘇州ピラー工業有限公司を設立 ノンアスベスト「#2603-EEEテクノブラック」の生産を開始
2005年 2月 熊本県合志市に九州工場を新設 食品
2007年 4月 中国に上海ピラートレーディング有限公司を設立 環境
2012年 - 半導体向け新型ロータリージョイントの生産を開始
2015年 4月 ドバイに日本ピラー中東(株)を設立 ポンプ用「ピラーカセットシール」の生産を開始
5月 タイに日本ピラータイ(株)を設立
2016年 3月 メキシコに日本ピラーメキシコ(株)を設立
2017年 3月 大阪市西区に本社を移転
2018年 5月 中国にピラー電子設備(上海)有限公司を設立
6月 ドイツに日本ピラーヨーロッパ(株)を設立
2019年 4月 インドネシアに日本ピラーインドネシア製造(株)を設立
11月 インドネシアに日本ピラーインドネシア販売(株)を設立
2020年 5月 中国に滁州ピラー工業有限公司を設立
2021年 - 新継手「スイープエルボ」を開発・生産
2022年 - 兵庫県三田市に技術開発センターが竣工予定
2024年 - 創業100周年



出所:会社資料などから CGRA 作成



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(3)中期経営計画と SWOT&5Forces 分析
・23/3 期を最終年度とした中期経営計画の基本方針
中期経営計画「BTvision22」は 1 年前倒しで数値目標を達成
2020 年 6 月 3 日、同社は 23/3 期を最終年度とする 3 ヶ年中期経営計画「BTvision22」を発 現中計および前中
表した。同中計は以下の 5 つの基本方針を掲げ、最終年度に連結売上高 325 億円、連結営業利 計も半導体 の設備
益 51 億円(営業利益率 15.7%)、ROE8.0%以上、配当性向 30%以上、3 ヶ年累計設備投 投資動向に大きく影

資額 100 億円を目指す内容である。 響を受けている

しかし、発表から約 1 年後の 2021 年 5 月 21 日、同社は予想以上に旺盛な半導体設備投資を背
景に、電子機器関連事業の業績計画を増額修正(売上高計画 221 億円→250 億円、営業利
益 40 億円→55 億円)する格好で、最終年度の連結売上高計画を 325 億円→350 億円(過
去最高)、連結営業利益を 51 億円→65 億円(過去最高)、営業利益率も 15.7%→18.6%
へ上方修正を行った。ROE8.0%と配当性向 30%以上および 3 年間累計設備投資額 100 億円
は当初計画が据え置かれた。

その際に発表された 22/3 期業績予想は、売上高が過去最高の 335 億円、営業利益も過去最高
60 億円であった。しかし、1Q 決算(2021 年 4~6 月期)発表時に予想売上高は 335 億円→
363 億円、営業利益も 60 億円→80 億円、1 株予想配当金は 60 円→70 円(配当性向 30.1%)
へ上方修正され、2Q 決算時にも予想売上高が 380 億円、営業利益も 100 億円、1株予想配当
金も 90 円へ再上方修正された。22/3 期最終年度の中計目標値を 1 年前倒しで達成する見通し
である。ちなみに前中計「BTvision19」に関しては、2 年目に数値目標が上方修正されたものの、最
終年度は半導体設備投資が調整局面を迎えたため、計画未達に終わった。

<5つの基本方針>
① 「事業基盤の拡充」:電子機器関連事業では、生産歩留まりの改善やリードタイムの短縮を目指 外部環境に左右さ
し、積極的な設備投資を実施する。産業機器関連事業では、三田工場で AGV 自動搬送や れにくい収益体質の

RFID などを活用した自働化・省人化を実施、20 年 3 月に全面リニューアル工事が完成した。 構築に期待したい

② 「グローバル化の深耕」:中国市場において滁州ピラー工業を設立し、拡大する中国市場の対応
を強化したうえ、日本ピラーアメリカでピラフロンの現地生産拡大のための増強投資を実施する。
③ 「新事業の創出」:「新」をキーワードに第 3 の柱となる製品および事業の創出を目指す。
④ 「ESG/SDGs 経営の推進」:岩波嘉信社長を委員長とした ESG/SDGs 推進委員会を設立。
⑤ 「財務戦略」:安定的で継続的、かつ水準の向上を目指した株主還元を実施する方針。

図表 13:中期経営計画「BTvision22」の数値目標
BTvision19 BTvision22(21/3~23/3)
20/3 21/3 22/3 23/3最終年度
( 百万円、%) 最終年度実績 初年度実績 2年目予想 当初計画 上方修正計画
売上高 29,213(計画 32,500) 30,200 38,000 32,500 35,000
営業利益 3,683(同 5,800) 4,847 10,000 5,100 6,500
 営業利益率 12.6%(同 17.8%) 16.1% 26.3% 15.7% 18.6%
ROE 6.2%(同 8.0%以上) 7.8% - 8.0%以上
配当性向 36.8%(計画なし) 34.6% 30.4% 30.0%以上
設備投資 11,649(3ヶ年累計) 907 1,500 3ヶ年累計100億円

出所:会社資料などから CGRA 作成

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・中期経営計画「BTvision22」の CGRA 注目ポイント
岩波社長自ら陣頭指揮を執る ESG/SDGs 経営の深化に注目
中期経営計画「BTvision22」は、3ヶ年計画の 2 年目を迎えているが、既に 3 年目の数値目標を
2 年目でクリア、22/3 期業績予想は 1Q 決算時に続いて、2Q 決算時にも再上方修正された。
CGRA ではポスト「BTvision22 」に向けた注目ポイントとして以下の 3 点に注目している。

① 岩波嘉信社長自ら陣頭指揮を執る ESG/SDGs 経営の深化に期待:競合他社ではイーグル グローバルベースで事
工業がサステナビリティ推進委員会を設置、代表取締役社長の鶴氏が委員長を務め、2050 年 業機会が拡大する

にカーボンニュートラルの達成を目指すと宣言している。一方、同社はカーボンニュートラルの達成時 中、ESG 経営の深
化で更なる成長が期
期は明示していないものの、環境データなど各種非財務データの開示が充実している。このため、
待できそうだ
外部評価として、2018 年から S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数構成銘柄に継続採用され、
三井住友銀行の「ESG/SDGs 融資評価」において各種取り組みが高い水準にあると評価されて
いる。次期中計においては更なる ESG 経営の深化が期待される。
② 株主還元強化を含む新たな資本政策に期待:現中計目標数値における懸念材料は、営業利
益率の高さに比べた ROE の低さである。同社はほぼ無借金で、21/3 期末のネット・キャッシュは
117 億円(総資産の 21%、時価総額の 16%)、自己資本比率 83.3%に達している。東京
エレクトロンと同様、半導体設備投資はボラティリティが激しいため、強い財務体質が必要との意見
に賛同する。しかし、東京エレクトロンの 21/3 期における営業利益率 22.9%、自己資本比率
71.1%、ROE26.5%との比較において、同社の強すぎるバランスシートを主因とした ROE の低さ
に関しては、株主還元の強化を含む資本政策による改善に期待したい。
③ 海外生産体制の強化と能力増強も必要となろう:同社の海外売上高は過去 5 年間で 2.2 倍
に拡大したが、海外売上高比率は 27.2%に留まっている。ここにきて米マイクロンや TSMC が大
規模な設備投資計画を相次いで発表している。今後は国内外における半導体設備投資、中国
の国策として半導体設備投資が期待可能。加えて、「脱炭素」社会の構築に向けた設備投資が
グローバルベースで増加する可能性が高いとみられる。既存工場の能力増強および新設、更には
海外生産・販売拠点の整備・強化が求められよう。

図表 14:成長投資と株主還元




出所:同社統合報告書から CGRA 作成
注:2021 年度設備投資計画 35 億円は期初ベース(新計画は 15 億円)




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・SWOT & 5Forces 分析
今後は海外展開と新市場および第 3 の柱となる新製品の創出が求められよう
同社の特徴および外部環境、更には内外競合企業を分析・比較しながら、以下に SWOT および 同社はリスクが少なく、
5Forces 分析を試みた。SWOT 分析に関しては、図表に同社の強み(Strength)、弱み 事業基盤 が盤 石か
(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を示した。今後の同社には、強い つ事業機会が大きい
バランスシートと高い製品開発力を生かした海外展開と新市場の開拓および新製品の創出、アフター 印象

サービス需要の刈り取りが求められると CGRA は考える。

リスク・課題が少なく、積極的な事業展開が可能であると CGRA は考える
5Forces 分析は SWOT 分析と似通った分析であるが、買い手と売り手の交渉力などの業界における
立ち位置の理解に有効である。

業界内の競争:同社は顧客への提案力に優れており、新規案件においては競争優位性を確保して
いる。しかし、メカニカルシールなどのアフターサービス事業に関しては、販売子会社が主に対応しており、
競合企業に相対的に競い負けている印象である。一方、電子機器関連事業のコア製品である洗浄
装置向けの継手に関しては、同社製品が市場シェアの 90%を握るデファクト製品となっている。

新規参入の脅威:新規参入の脅威は特にない。

代替品の脅威:今後は船舶および自動車の内燃機関が電動化される方向にある。自動車向け売
上高は推定 5 億円であり、船舶向けは推定 10 億円程度である。しかし、電気自動車や燃料電池
車など向けに高性能樹脂を加工した自動車部品で新たな需要を創出する可能性もあろう。船舶に関
しても電動化の前に LNG/LPG を燃料とした船舶の新設需要増が見込まれる。一方、電子機器関連
事業における継手などはコンタミ問題などを考えると、素材の変更や形状変更は難しいであろう。

売り手側の交渉力:産業機器関連事業では、ステンレスなどを外部から調達している。各種鋼材価
格の上昇はリスクだが、購買先の多様化、製品値上げなどで対応している。PTFE などのふっ素樹脂も
複数購買しているうえ、購入ボリュームが多く、同社のバイイングパワーは強い印象である。

買い手側の交渉力:洗浄装置向け継手は、品質と納期が重要視され、価格低下圧力は低い。しか
し、洗浄装置以外の市場では価格競争がシビアである。

CGRA では、同社の立ち位置は、リスクと課題が少なく、強靭なバランスシートを土台にして、積極的な
製品開発や海外展開などが可能な状況にあると考える。

図表 15:日本ピラー工業の SWOT およびリスク・課題分析
<強み> <弱み>
• リスク:個別企業への高い収益依
高い市場シェアと豊富な実績 アフターサービス事業
存度と半導体設備投資の変動
強いB/Sと高い収益性 海外展開と海外ブランド力 電子機器関連事業 • 課題:微細化などの質的な半導体
製品開発力とカスタマイズ対応力 独自製品が少ない 設備投資への対応力、新たな用
途・市場の開拓

SWOT分析
<機会>
水素やアンモニアなどの脱炭素燃 <脅威・リスク> • リスク:価格競争の強まり
料やCO2固定化などの世界的な脱 脱炭素に伴うダイベストメントや装 産業機器関連事業 • 課題:海外展開力とアフターサービ
炭素投資の拡大 置産業の設備投資抑制 ス売上高の刈り取り
半導体設備投資の長期拡大と新 半導体設備投資の低迷
規顧客の獲得、新規市場の創出

出所:CGRA 作成



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・同社における 3 つの強みの源泉
(1)電子機器関連事業:高品質を武器にグローバルニッチトップを確保
ふっ素樹脂を加工した継手、チューブ、ベローズポンプなどは、半導体工場内に設置されるウエハ洗浄 グ ロ ーバ ル ニ ッチ の 確
装置に加え、半導体工場における薬液供給配管に組み込まれて使用される。かつてクリーンルームの 固たる地位を確立
継手から薬液が漏れる問題に対処、独自のシール機能を有した高品質の継手「スーパー300 タイプピ
ラーフィッティング」を 2002 年に市場投入、市場を席巻した。同社のピラフロン製品は、硫酸や硝酸な
どへの耐薬品性や絶縁性、滑り性を有し、薬液内での溶出リスクがない。PTFE(ポリテトラフルオロエ
チレン:沸点でも液体にならないため、成形加工が難しい)や PFA(パーフルオロアルコキシアルカ
ン:溶融成形が可能)を独自技術で成形加工し、半導体製造工程では不可欠な製品となっている。
現在、同社は世界主要半導体製造装置メーカートップ 10 社へ納入、継手は世界シェア 9 割を誇る
デファクト製品となっている。

今後の成長が期待される中国半導体製造装置メーカー向けに関しても、既に 10 社近くへ納入が始ま
っている模様である。ベローズポンプに関しても、エア駆動を採用、他社製品に比べて低脈動性能を有
している。新製品「スイープエルボ」は独自の成形技術で流路の「R 形状」を成形することで製品化にこ
ぎ着けた。圧力損失を約 7 割低減、流量を最大 20%向上、生産設備の省エネ・小型化が可能とな
る画期的な製品であり、同社のグローバルニッチトップの座を確固たるものとしている。

(2)産業機器関連事業:ESG 経営で「脱炭素」関連市場を探求
同事業は石油化学や電力などの各種装置産業を主要顧客としており、各社は 2050 年のカーボンニ 顧客である装置産業
ュートラルに向けて水素やアンモニアなどへの燃料転換に加え、二酸化炭素をメタノールなどへ再利用す とのビジネス関係の強
る動きが世界的に強まっている。SBT(Science Based Target)では、Scope1,2,3 の合計 化にも ESG 経営の深
CO2 排出量のうち Scope3 が 40%を超える場合は、明確な目標設定と対策および時間軸の開示 化が不可欠
を求めている。ポンプを手掛ける荏原が ESG 経営を強化する背景には顧客の要求する非財務データ
開示対応も一因である。今後の同社は TCFD 提言への賛同、Scope1,2 ならびに Scope3 への対
応を強化しつつ、根拠を明確にしたカーボンニュートラルの時期を発表する方針である。引き続きパート
ナー企業との協業を強化、ESG 経営の深化による市場シェアの向上ならびに国内外での新エネ分野
での需要開拓が期待されよう。なお、米大気汚染防止法に適合した低漏洩・高性能 EDP(膨張黒
鉛パッキン)パッキンシリーズは好調な需要環境が持続しており、シェア推定 50%を確保している。

図表 16:新製品「スイープエルボ」を市場投入




出所:同社統合報告書 2021




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(3)第 3 の新たな事業を模索する研究・開発型企業
同社は競合他社との比較において、有形固定資産回転率が劣るものの、従業員1人当り売上高が ユニークな研究・開発
他社を遙かに凌いでいる(=労働装備率が高い)。つまり、同社工場は自働化・省力化が進み、需 を積極的に進めつつ、
要変動に対する効率的かつ柔軟な生産体制の確立と働き方改革が進んでいる証左であると CGRA 第 3 の事業、柱となる
は考える。また、同社の研究・開発人員は約 70 名であり、連結従業員数の約 9%を占める(対売 新製品を創出する考
上高研究開発費は約 4%)。現在、最先端の技術開発センターを建設中であり、バラバラに組織が えである
分かれている研究開発組織を一体化させることで、開発の一体運営とスピードアップを図り、第 3 の柱
となるべき新事業の創出と新製品の開発を目指す考えである。

例えば、荏原の CMP 向けロータリージョイントはメカニカルシールの摺動面のラップ加工技術を応用して
生まれた製品である。今後に関しては、水素などの新エネルギー社会や新たなインフラ、電気自動車や
空飛ぶ自動車などの新規市場の誕生が見込まれる。そのような中、同社では、ふっ素樹脂の加工技
術にメカニカルシールの技術を組み合わせた新たな製品開発、更には SiC フィルターや光触媒、黒鉛樹
脂のセパレータ、ダイヤモンドコート、ふっ素樹脂基板、稼働するメカニカルシールの振動などに関するパラ
メータをリアルタイムで分析し予知保全(=データサイエンティストを育成)に繋げるなどのユニークな研
究・開発が行われている。

かつて安川電機はサーボモータの単品売りからシステム販売を始めることでプライスレス化を進め、業績
拡大と企業価値の向上が見られた。同様に、日本ピラー工業においても継手やチューブなどの単品販
売からシステム武装(例えば、流体制御のみならず液質の検査・改善機能を付加)することで収益
構造と売上規模が様変わりするポテンシャルを CGRA は感じている。

図表 17:組織横断可能な最新の技術開発センターを建設へ




図表 18:予知保全事業に向けてデータサイエンティストを育成




出所:同社統合報告書 2021

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・競合企業の分析(非財務比較は→p27~28)
産業機器関連事業:シールは海外 3 強で世界シェアの約 7 割を占める
メカニカルシールの競合企業は、国内ではイーグル工業株式会社と非上場である株式会社タンケンシ 海外競合企業は安
ールセーコウ(東京)、海外は米フローサーブ(Flowserve Corporation:世界シェア推定 定的に 2 桁の ROE
20%)、英国ジョンクレーン(John Crane:世界シェア推定 30%)、イーグル工業と 2005 年に を確保している
アライアンス関係を締結した一般産業機械向けシールメーカーの Eagle Burgmann(同世界シェア
22%)などが挙げられる。グランドパッキンとガスケットではニチアス、ガスケットはバルカーなどが競合企
業である。

John crane の 21/7 期売上高は 8.65 億 UK ポンド、営業利益は 1.87 億 UK ポンド、営業利
益率は 21.6%であった。売上高の 59%がエネルギー産業向け、41%が一般産業用である。親会社
である SMITH GROUP PLC の ROE は 13.1%と高い。

Flowserve はポンプおよびバルブをメインにメカニカルシールも手掛ける。20/12 期売上高は 37 億
28 百万 USD(うちポンプ事業が 26 億 76 百万 USD)、営業利益は 2 億 50 百万 USD、営業
利益率は 6.7%、ROE は 11.2%。オイル&ガス向けが売上高の 34%、一般産業向けが 26%、化
学が 24%、電力が 13%、水関連が 3%を占める

イーグル工業はメカニカルシールの専業大手。21/3 期売上高は 1,305 億円、営業利益は 58 億円、 国内競合企業は各
営業利益率は 4.4%、ROE は 5.0%(売上高当期利益率 3.1%、総資産回転率 0.8 回、財務 社ともに安定的な業
レバレッジ 2.2 回)である。21/3 期末のネット・デットは 55 億円、自己資本比率は 52.4%であり、 績の中、積極的な
財務レバレッジと高い配当性向(21/3 期 61%:配当利回り 2.7%、20/3 期 84%:配当利回 株主還元を実施
り 4.0%)が株価を支えている。また、脱炭素に向けた水素関連や半導体、船舶向け環境対応製品
や航空宇宙関連事業への展開をアピールしている。

ニチアスはグランドパッキンとガスケットを中心に各種機能材を手掛ける。21/3 期売上高は 1,964 億
円、営業利益は 196 億円、営業利益率は 10.0%、ROE は 8.2%(売上高当期利益率 5.5%、
総資産回転率 0.9 回、財務レバレッジ 1.6 回)。21/3 期末のネット・キャッシュは 157 億円、自己
資本比率は 62.1%。比較的高い収益性と 13 期連続増配(21/3 期配当性向 48%:配当利
回り 2.8%)が同社株価を支えている。22/3 期が現中計最終年度であり、内外生産能力を増強、
CSR 活動としてニチアス改善計画(NKK)を推進、2050 年にカーボンニュートラルを宣言している。

バルカーはガスケットの専業メーカーで、各種樹脂加工品なども手掛ける。21/3 期売上高は 447 億
円、営業利益は 35 億円、営業利益率は 7.8%、ROE は 9.0%(売上高当期利益率 6.9%、総
資産回転率 0.9 回、財務レバレッジ 1.5 回)。ガスケットを中心としたシール製品事業が売上高の
70%(セグメント利益率 10.5%)を占め、機能樹脂製品事業が 24%(同 4.2%)、残りはシリ
コンウエハーリサイクル事業他(同 9.8%)が占める。市場別では半導体などの先端産業向けが
37%、一般産業機械向けが 33%、残りがプラント市場向けである。21/3 期末のネット・キャッシュが
39 億円、自己資本比率は 70.7%。相対的に高い ROE と配当性向 54.2%(配当利回り 4.5%)
が株価の支援材料となっている。2027 年の創業 100 周年に売上高 800 億円と ROE 10%を目
指し、SDGs 経営にチャレンジする方針である。

アフターサービス事業:同社のアフターサービス売上高比率は産業機器関連事業の推定 50%である
が、John crane では売上高の 68%、Flowserve は 59%(19 年は 63%)を占める。国内競合
企業も同社よりも高いアフターサービス売上高比率を有していると推測される。




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電子機器関連事業:継手は確固たるグローバル No.1 の地位を確立
同社電子機器関連事業におけるコア製品である半導体洗浄装置向け継手に関しては、世界シェア
90%を誇り、確固たる世界シェアトップの座を確立している。競合企業は米インテグリス(Entegris)、
非上場企業であるフロウエル(横浜)、更にはニチアスなども樹脂製のチューブやシート、容器などを生
産している。

海外競合である Entegris は半導体設備投資の質的な拡大の恩恵を享受
Entegris は(NASDAQ:ENTG)は、半導体などのマイクロサイエンス分野を中心にふっ素樹脂製 同社競合である米
のチューブや継手、バルブなどの流体制御機器や各種補助機器を扱う。しかし、それら製品のみならず、 Entegris は高い収益
各種薬液や CMP 用の砥粒、各種液体・気体用フィルターと計測器、更には流体中のコンタミネーショ 性と ROE を実現、高
ン管理や分析サービスまで手掛けている。つまり、半導体関連の「量的な設備投資拡大」のみならず、 い株価パフォーマンス
ロジックにおける線幅の微細化(=EUV+αを使った微細化と材料の変化)、3D NAND の多層化 を享受している

(=ウエット工程が増加)、DRAM の高密度化による「質的な設備投資」の恩恵を享受する企業で
ある。売上高の約 2 割が量的な設備投資、8 割が質的な設備投資に依存しているため、過去 5 年
間で市場成長率の 2.2 倍の売上成長を実現している。

Entegris の 20/12 期売上高は 18 億 59 百万ドル、営業利益は 3 億 95 百万ドル、営業利益率
は 21.2%、ROE は 21.4%である。売上高の 53%が半導体のファブ向けであり、うち 71%がロジッ
ク、16%が NAND、13%DRAM 向けであった。非半導体向けは売上高の 10%に過ぎない。セグメ
ント別では、売上高の 33%を各種材料やガス、CMP のパットコンディショナーやウエハキャリアなどを扱う
Special Chemicals and Engineered Materials(SCEM)事業、同 40%が各種フィルターなどを
扱う Micro contamination Control(MC)事業、27%を液体やウエハ搬送容器、継手などの流体
機器を扱う Advanced Materials Handling(AMH)事業が占める。セグメント利益率を見ると、
SCEM が 21.0%、MC 事業が 33.6%、継手などを扱う MC 事業が 20.6%と高い収益性を誇る。

図表 19:競合および顧客、サプライヤーの営業利益率比較
競合および顧客、サプライヤーの営業利益率(%、FY20)

産業機器関連事業
イーグル工業
バルカーのシール製品事業
アフターマーケットビジネス
ニチアスの高機能製品以外 の差が利益率の差につな
Flowserve がっていると考えられる

John crane


電子機器関連事業
EntegrisのMC事業
ニチアスの高機能製品
荏原の電子・精密事業
SCREENのSPE事業
東京エレクトロン
ダイキン工業の化学事業

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0
出所:各社の決算資料などから CGRA 作成


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(4)業績推移とセグメント別動向
・過去の業績推移と 22/3 期業績予想
売上高:22/3 期は 3 期ぶりに過去最高を更新へ
17/3 期以降の同社連結売上高は、半導体設備投資が拡大基調を強める中、半導体製造装置へ 22/3 期は 3 期ぶり
の依存度が高い電子機器関連事業および産業機器関連事業に含まれる CMP 向けロータリージョイン に 過 去 最高 の 売 上
トの需要増に支えられ、拡大局面を迎えた。17/3 期には過去の好況期においてクリアできなかった同 高、5 期ぶりに過去
社初の 250 億円を超える売上規模に達し、その 2 年後には 300 億円に達した。22/3 期は 3 期ぶ 最高営業利益を更
りに過去最高売上高を更新、400 億円の売上高が見えてきた。 新する見通し

営業利益:営業利益、営業利益率ともに 5 期ぶりに過去最高を更新へ
営業利益に関しても 17/3 期に 6 期ぶりに過去最高を更新すると同時に、同社初の 50 億円台(営
業利益率 19%)を確保した。その後は、半導体設備投資が調整局面を迎えたうえ、産業機器関連
を担う三田工場のリニューアル工事(20 年 3 月新三田工場竣工)と電子機器関連の国内増産体
制の構築やアメリカ現法でのピラフロン加工工場へ積極的な設備投資を行い、減価償却費(17/3
期 10 億円→18/3 期 14 億円→19/3 期 17 億円→20/3 期 18 億円→21/3 期 21 億円)な
どの固定費負担増が響いた。このため 18/3-19/3 期は増収営業減益を余儀なくされ、20/3 期は半
導体設備投資の端境期を迎え、減収 2 桁営業減益に転じた。しかし、21/3 期は産業機器関連事
業が減収減益となる中、半導体設備投資の拡大を背景に、電子機器関連事業が 2 桁増収増益と
なり、4 期ぶりに営業増益に転じた。22/3 期は半導体設備投資が加速する中、これまでの生産能力
増強投資効果が顕在化、5 期ぶりに過去最高の営業利益と営業利益率の更新が見込まれる。

22/3 期業績予想は 1Q 決算時に続いて 2Q 決算時に再上方修正された
22/3 期通期業績予想は、21 年 8 月 6 日の 1Q 決算発表時(1Q 売上高実績 91 億円、営業 22/3 期業績予想は
利益 23 億円、営業利益率 25.3%)に増額修正され、連結売上高は期初予想の 335 億円から 2Q 決算時に再上方

前年比 20%増の 363 億円へ、連結営業利益も同 60 億円(営業利益率 17.9%)から同 65% 修正された

増の 80 億円(同 22.0%)、1 株予想利益も 176.3 円から 232.7 円へ上方修正された。1 株
予想配当金も 60 円(配当性向 34.0%)から 70 円(同 30.0%)へ増配された。加えて、2Q
決算発表時の 11 月 9 日、予想売上高を 380 億円、営業利益も 100 億円、当期利益も 70 億
円、1 株予想利益も 296.14 円へ再上方修正され、1 株予想配当金も 90 円へ増配された。

図表 20:過去の業績推移と業種別売上高の推移
(百万円) (%) (百万円) 業種別売上高と営業利益の推移 (百万円)
40,000 30.0 35,000 8,000
連結売上高 連結営業利益 半導体・液晶 化学・その他 石油・鉄鋼・輸送
35,000 7,000
営業利益率(右軸) ROE(右軸) 30,000 土木・建築 電力・エネルギー 官公需
25.0
その他 連単差 営業利益(右軸)
30,000 6,000
25,000
20.0
25,000 5,000
20,000
20,000 15.0 4,000

15,000
15,000 3,000
10.0
10,000
10,000 2,000

5.0
5,000 5,000
1,000


0 0.0 0 0
14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 (会予) 05/3 06/3 07/3 08/3 09/3 10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3

出所:会社資料から CGRA 作成

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・電子機器関連事業の市場概況と業績見通し
設備投資への依存度が高いため、ボラティリティが若干高い
同社連結売上高の 13%(21/3 期実績約 40 億円)を SCREEN セミコンダクターソリューションズ 半導体製造装置の
が占め、枚葉式洗浄装置向けに継手を納入している。また、東京エレクトロン、ラムリサーチ、アプライド みならず薬液供給
マテリアルズ、サムスン電子の子会社であるセメスなども同社の顧客である。洗浄装置向け継手は世界 設備へも納入
シェア 90%を誇り、デファクトスタンダードとなっている。なお、製造装置のみならず半導体工場の薬液
供給設備向けにも継手、チューブ、ベローズポンプを納入している。図表 21 が示す通り、CGRA では
SCREEN の SPE 受注高、荏原の CMP 受注高、ダイフクのエレキ向け受注(=半導体ウエハや FPD
の搬送ライン)の合算受注高を同事業の先行指標として注目している。

半導体分野以外の新市場の開拓も期待される
半導体分野に関しては、米国および中国における新規顧客の開拓と質的な設備投資への対応が期 透析装置などの新市
待される一方、透析装置などの医療機器や各種食品加工分野などの新市場の開拓を進め、半導体 場の開拓も進む
向け需要の高いボラティリティを和らげる必要があろう。既に、日機装の透析装置向けへの採用(ステ
ンレス製部品からふっ素樹脂製部品へ切り替え)が決まるなど顧客層が拡大基調にある。同社が強
みを持つふっ素樹脂の成形・加工技術を駆使した新市場の開拓に期待したい。

顧客層の拡大もあり、長期的な成長ポテンシャルは大きい
短期的な仮需の消滅に伴う需要の反動減が懸念されるが、半導体需要の構造的増加、質的な設 新規顧客の開拓も
備投資の拡大などもあり、半導体および半導体製造装置市場は今後 10 年間で倍増するとみられて 進む
いる。同社に関しては、米アプライドマテリアルズなどの顧客層の拡大(統合報告書 18 ページ参照)
も期待され、業界を上回る成長も期待できそうだ。現在の生産能力には 2 割程度の余力はあるもの
の、福知山事業所には既に 8 万㎡の土地を確保しており、新工場の建設も検討している模様である。

22/3 期は過去最高の業績を大幅に更新する見通し
電子機器関連事業の 22/3 期会社側業績予想は、2Q 決算時に再上方修正され、売上高は前期
比 37%増の 282 億円(2 期連続の過去最高)、営業利益は同 2.1 倍の 87 億 50 百万円(2
期連続の過去最高)、営業利益率は 31.0%(4 期ぶりの過去最高)が予想されている。半導体
設備投資の加速に加え、好採算である継手の増販などが寄与する。1Q 営業利益率は 29.6%、2Q
実績は 33.4%に達しているが、下期は 30.5%の見通し。

図表 21:顧客の受注動向と業績推移
(百万円) 電子機器関連事業の業績動向 (%) (百万円) 電子機器関連事業売上高と半導体・液晶向け単体売上高および先行指標 (億円)
30,000 35.0 30,000 7,000
売上高 セグメント利益 セグメント利益率(右軸) 半導体・液晶向け売上高(単体)
30.0
25,000 6,000
25,000 電子機器関連事業の売上高
25.0
業績先行指標:3社受注高(右軸) 5,000
20,000 20.0 20,000
(3社受注高はSCREENのSPE受注高、荏原のCMP受注
15.0 高、ダイフクのエレキ向け受注高の単純合算受注高) 4,000
15,000
15,000
10.0
3,000
10,000
5.0 10,000
2,000
5,000 0.0
5,000
1,000
-5.0

10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 -10.0 0 0
(会予)
05/3 06/3 07/3 08/3 09/3 10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 (会予)
-5,000 -15.0


出所:各種資料などから CGRA 作成

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コロナ禍をきっかけに半導体投資ブームが進行
新型コロナウイルス感染症は世界的な経済活動の減速を招いたと同時に、生活様式およびビジネスの コロナ禍が半導体投
やり方を世界的に変貌させた。自国主義の高まりやリモートワークが定着する一方、Web を使った会議 資ブームを加速
など、デジタル化とグローバル化が加速した印象である。このため、米 GAFA の急成長をはじめ、パソコン
やスマホ、タブレットの急激な需要増と同時に、カーボンニュートラルに向けた電気自動車の販売増、通
信の 5G シフトなどから世界的な半導体ブームが生じ、過去最高の半導体投資ブームが起こっている。
ただし、強すぎる需要に対して供給が追い付かず、サプライチェーンの混乱が生じている。

半導体需要は 2030 年に向けて拡大基調が続きそう
今後に関しては、①通信 5G の普及率上昇とポスト 5G の登場、②自動車産業における CASE 半導体および製造
(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)の進展に加え、電気自動車の 装置市場は今後 10
台当り搭載半導体金額は通常のガソリン車の約 5 倍、③IoT に代表されるように、経済の「モノからコ 年間で倍増へ
ト」への変化に伴うデータ処理量の爆発的増加、④コロナ禍を契機としたデジタル化の加速、などを背
景に、半導体需要の長期的な成長は疑いがないであろう。実際、WSTS は 2030 年の半導体市場
を 2020 年比約 2.3 倍の 1 兆ドルと予想している。過去 20 年間で半導体市場は約 2,000 億ドル
から約 4,000 億ドルに倍増し、同時に半導体製造装置市場も約 300 億ドルから約 600 億ドルに
倍増した。同社半導体・液晶向け売上高(単体)は、取扱製品の拡大や顧客層の広がり、海外展
開が奏功、過去 6 年間でほぼ倍増している。米 Entegris のような半導体の質的設備投資にフォーカ
スしつつ、M&A で対象エリアを拡大させる企業もある。ただし、同社としては、高品質かつ高いブランド
力(継手は世界シェア 90%)を誇るピラフロン製品に注力、半導体のウエット工程をメインターゲット
に、過度な競争を避け、狙った市場を深堀する差別化戦略をとっている。

考えられるリスクは何か
リスクとしては、短期的に強すぎる最終需要に対して、顧客である装置メーカーからの前倒し発注(受
注高の推定 20%程度)が行われていると見られ、仮需の消滅に伴う、需要の反動減に加え、部材
不足に伴う生産活動が伸び悩むリスクが考えられる。中長期的には需要拡大を阻害するイベントの
発生、新たな競合企業の台頭や既存技術を必要としない新たな製品などの登場などが考えられる。
ボラティリティが大きい業種であり、BCP 対策を含め、増産時のみならず不況期においても柔軟に対処
可能なグローバルベースでの供給・調達体制の構築も求められる。

図表 22:半導体需要見通しと半導体設備投資動向
(億ドル) グローバルベースの半導体市場と半導体設備投資 (10億ドル)
12,000 250

半導体市場(左軸) 半導体設備投資(右軸)
10,000
需要ドライバー 半導体設備投資の変化

半導体市場および半導体設備投資は過去20年間で約倍増した。
通信5Gの普及+ポスト5G 需要増に応じた量的な設備投資
しかし、今後は2030年に向けて10年で市場規模は倍増する見通し
8,000
150 世界的なDX投資 半導体の囲い込みに伴う各国での投資 量的投資

6,000
自動車CASEの進展 中国市場での内製化

4,000 自動車台当り半導体消費量の拡大 ロジックにおける線幅の微細化


ICT・IoT拡大に伴うデータ処理量増加 3D NANDの多層化
2,000 質的投資
各種デバイスの高機能化と小型化 DRAMの高密度化

(CY)
AIを活用した新たな需要の登場 低消費電力ニーズの高まり




出所:WSTS、IC insight などから CGRA 作成。予想は WSTS と CGRA


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・産業機器関連事業の市場概況と業績見通し
業種別売上高(単体)はシクリカルな動きを見せ、売上構成比は低下へ
同社祖業である産業機器関連事業は、ボックスレンジ内でシクリカルな売上推移が続いている。業種 産業機器関連事業
別の売上高を見ると、化学・その他および石油・鉄鋼・輸送、土木建築が相対的に安定推移している。 の売上構成比は
しかし、電力・エネルギー向け売上高は、原子力発電設備の新設が凍結、世界的な脱炭素の潮流を 36%へ低下
受けた火力発電設備の新設も難しく、緩やかな縮小傾向にある。この結果、産業機器関連事業の売
上構成比(単体ベース)は、電子機器関連事業が成長基調にあるため、09/3 期の 72.7%から
21/3 期には 35.7%へ低下している。

アフターサービス事業と海外展開力に課題を残す
産業機器関連事業は、ボックスレンジ内でシクリカルな売上推移を見せており、安定的な事業といえる。 子会社の再編で市
しかし、08/3 期売上高を 100 として 21/3 期売上高を国内競合企業(イーグル工業、ニチアス、バ 場シェアの上昇も期
ルカー)と比較すると、同社は 83 に留まる一方、イーグル工業は 149、ニチアスは 116、バルカーは 待できそうだ
101 となっており、相対的に市場シェアを失っている印象を受ける。セグメント利益率に関しては、18/3
期以降、減価償却費が増加(17/3 期約 3 億円→18/3 期約 5 億円→19/3 期約 6.5 億円→
20/3 期 6.8 億円→21/3 期 7.6 億円)している点を加味すると、見た目ほど悪化していないが、右
肩下がりの傾向に変わりはない。同社はアフターサービス事業を主に 100%子会社に任せているが、他
社は本社で注力している点に要因がありそうだ。このため、同社は 22 年 4 月付で子会社の再編を行
い、組織の一体化と同時に、経営スピードの向上とアフターサービス事業の強化を目指す方針である。

脱炭素をキーワードに事業機会が拡大しそう
次ページの事業機会とリスクのページで述べているが、2050 年に向けては、脱炭素をキーワードに装置 脱炭素が次なる成
産業各社においてカーボンニュートラルに向けた設備投資が増加する見通し。最新鋭の三田工場の稼 長テーマとなろう
働率向上効果および同社の強みであるカスタマイズ提案力と新製品開発効果などに期待したい。

22/3 期業績は回復が鮮明化しつつある印象
産業機器関連事業の 22/3 期会社側業績予想は、2Q 決算時に再増額修正され、売上高は前期
比 2%増の 97 億円、営業利益は同 74%増の 12 億円、営業利益率は 12.4%が予想されてい
る。21/3 期に米国で発生した契約解釈の相違によるスポット費用が消滅することに加え、10 月の国
内エチレン生産は同 10%増に伸長するなど、装置産業の稼働率上昇などが大幅増益の要因である。

図表 23:半導体・液晶向けを除く業種別売上高と利益動向
(百万円) 産業機器関連事業の業績動向 (%) (百万円) 半導体・液晶向けを除く業種別売上高(単体ベース) (%)
14,000 30.0 16,000 100.0
売上高
化学・その他 石油・鉄鋼・輸送 土木建築
セグメント利益
電力・エネルギー 官公需 その他 90.0
12,000 セグメント利益率(右軸) 14,000
25.0
減価償却費を除くセグメント利益率(右軸) 売上構成比(右軸)
80.0
12,000
10,000
70.0
20.0
10,000
60.0
8,000

15.0 8,000 50.0
6,000
40.0
6,000
10.0
4,000 30.0
4,000
20.0
5.0
2,000
2,000
10.0

0 0.0 0 0.0
10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 (会予) 05/3 06/3 07/3 08/3 09/3 10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3



出所:各種資料などから CGRA 作成

日本ピラー工業(6490) 22
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長期的には産業機器関連事業に成長ポテンシャルを感じる
産業機器関連事業に関しては、2050 年の世界的なカーボンニュートラルを目指す動きを背景に、水 世界的なカーボンニ

素(マイナス 253℃で液体)への燃料変換(貯蔵、輸送、供給設備など)、アンモニア(マイナス ュートラルに向けた設
備投資が拡大局面
33℃で液化)の移送・貯蔵・供給設備、さらには CO2 の回収・地中貯蔵・商業化などに伴う新たな
を向けよう
設備投資の拡大に伴い、メカニカルシールやグランドパッキン、ガスケットなどの需要増が期待される。実
際、電力会社、鉄鋼、石油化学、セメント、ガラスなどの CO2 排出量の多い産業では、積極的に燃
料転換の策を模索し始めており、設備投資拡大の動きが強まり始めている。

2050 年の脱炭素に向けてグローバルの関連設備投資は倍増しそう
7 月 21 日、Bloomberg NEF は、2050 年にカーボンニュートラルの実現に向けたエネルギー転換に 個別企業でもカーボ

は 2050 年までに 92 兆ドルから 173 兆ドルものエネルギー関連の累計設備投資が必要であり、年間 ンニュートラル時代に
向けた売上計画を
投資額は現在の約 1.7 兆ドルから 3.3~5.8 兆ドルへ増加するとのレポートを発表した。また、国際再
発表する企業が増え
生可能エネルギー機関も 2050 年までに 130 兆ドルの設備投資が必要としている。
てきた
個別企業では、産業用ポンプを手掛ける日機装は、低炭素・脱炭素関連ビジネスが FY20 実績の
200 億円から FY25 には 450 億円程度(うち脱炭素分野は 30~50 億円)。FY30 には 600 億
円程度(うち同 100~150 億円)に達し、同社インダストリアル事業全体の FY25 の売上規模は
FY20 対比で 1.5 倍、FY30 には約倍増する計画を発表している。横河電機も中期経営計画
「Accelerate Growth 2023」の中で、制御事業の FY30 売上高を FY20 比倍増させる計画を提
示している。従って、CGRA では、2050 年の世界的なカーボンニュートラルの達成に向けて、同社産
業機器関連事業も成長局面を迎える可能性が高いと考える。ただし、同時に海外拠点の整備と対応
製品の開発、アフターサービスを含む販売体制の再強化が必要になろう。

考えられるリスクは何か
リスクとしては、脱炭素を背景とした火力発電設備のダイベストメントや水素などの新燃料の調達および
必要量の確保できないなどのインフラ面の障害、加えて同社海外展開力の遅れ、更には収益性が高
いアフターサービス事業の取りこぼし、高圧・極低温対応などの製品開発の遅れ、などが考えられる。

図表 24:FY30 に向けた売上高計画と脱炭素に向けた設備投資予想

各社の脱炭素関連事業における中長期売上計画 (%)
(百万円)

カーボンニュートラルに向けたエネルギー転換への設備投資予想
21,000
横河電機の制御事業指数化売上高

18,000 産業機器関連事業の売上高(左軸) 200 国際エネルギー機関(IEA) 75兆ドル ~2040年

15,000
日機装のインダストリアル事業指数化売上高


12,000
国際再生可能エネルギー機関 130兆ドル ~2050年
9,000 100


6,000


Bloomberg NEF 92~173兆ドル ~2050年
3,000



FY16 FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 (会予) FY22 (会予) FY25 (会予) FY30 (会予) 0 50 100 150 200
(兆ドル)


出所:各社の開示資料より CGRA 作成




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・新型コロナウイルス感染症の影響に関して
顧客への影響:半導体分野では需要が急増
産業機器関連事業:コロナによる直接的な影響は少なく、むしろ 2050 年のカーボンニュートラルに向 各社ともにコロナ影
けた水素やアンモニアへの燃料変更に伴う設備投資拡大や生産設備更新の議論が活発化している。 響は限定的であり、
業績の回復局面が
電子機器関連事業:旺盛な最終需要が顕在化する中、東南アジア地域におけるロックダウンの長期
到来している
化に端を発した各種部品・材料不足を背景に、実際の最終需要を 20~30%程度上回る発注が見
られている。最終需要が旺盛であるため、キャンセルや仮需が消滅する話は聞かれないが、資本市場で
は DRAM などの半導体価格の低下リスクが議論され始めている。

サプライチェーン面への影響:特段見られていない
産業機器関連事業:ステンレスなどの特殊鋼材を外部調達しているが、ここにきて価格上昇圧力が
強まってきた印象。

電子機器関連事業:PTFE などのふっ素樹脂をダイキン工業や三井ケマーズなどから調達している。ふ
っ素樹脂の原材料である蛍石は価格上昇が見られており、値上げ圧力が強まっている印象。

競合の業績動向:各社の業績は回復基調を強めている
ニチアス:ニチアスの業績は、コロナ影響から完全に脱却、22/3 期 Q1(21 年 4-6 月)は、売上 同社およびニチアス、
高が前年比 21%増の 523 億円、営業利益は同 74%増(営業利益率 12.6%)を確保した。5 バルカーは 22/3 期
つのセグメントのうち建材を除く 4 セグメントで好調を維持している。特に半導体と電子部品に加え、石 業績予想を上方修
油精製や石油化学プラント、電力向けも堅調に推移している模様。上期業績も会社計画を上回り、 正したが、イーグル工
22/3 期予想売上高は前期比 7%増の 2,100 億円、営業利益は同 27%増の 250 億円(営業 業は下方修正

利益率 11.9%。前回予想 205 億円)へ上方修正された。プラント向け工事販売以外のセグメント
で増収増益を計画している。23/3 期には次期中計が発表される見通し。

バルカー:バルカーの業績も順調に回復、22/3 期 Q1 は売上高が同 11%増の 122 億円、営業利
益は同 32%増の 12 億円(営業利益率 9.5%)に回復。半導体向けを中心とする先端産業向け
売上高が同 18%増、産業機械向けを中心とする機器市場向けが同 18%増、プラント市場向けが
3%減。海外売上高も同 15%増。特にアジアが同 18%増と伸長した。上期業績も順調に推移、
22/3 期通期予想売上高は同 16%増の 518 億円、営業利益は同 58%増の 55 億円(営業利
利益率 10.6%。前回予想 40 億円)、予想 ROE も 10.1%へ上方修正された。半導体製造装
置向けを中心とする先端産業市場を牽引役に、機器市場、プラント市場も着実な回復を示している。

イーグル工業:自動車および建機、半導体向け需要の回復を牽引役に、22/3 期 Q1 売上高は同
41%増の 360 億円、営業利益は 25 億円(同 7.0%)の黒字転換を果たした。セグメント別では、
自動車・建設機械業界向け事業の売上高が同 72%増、一般産業機械向け売上高が同 7%増、
半導体業界向け事業が同 40%増、舶用業界向け事業が同 1%減、航空宇宙業界向け事業は同
5%減であった。しかし、イーグル工業は売上高の 6 割を自動車・建設機械向けが占めており、自動車
業界の減産および材料費の高騰を背景に、22/3 期予想売上高を同 7%増の 1,390 億円、営業
利益も横ばいの 59 億円(営業利益率 4.2%。前回予想 81 億円)へ下方修正された。

Entegris:21/12 期 Q2 (21 年 4-6 月)業績は、売上高が同 27%増の 5 億 71 百万ドル、
営業利益は同 47%増の 1 億 39 百万ドル、営業利益率は 24.3%であった。Q3(7-9 月)業績
は売上高が同 21%増の 5 億 79 百万ドル、営業利益は同 31%増の 1 億 39 百万ドル、営業利
益率は 24.1%を確保した。ガイダンスを上回る好決算が続いているが、部品不足やサプライチェーンの
混乱が業績拡大の足かせになりつつある。


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(5)財務および非財務分析
・財務分析
潤沢な配当原資を有するネット・キャッシュ企業
21/3 期末の連結自己資本比率は 83.3%、利益成長が続く中、増配および自己株取得を行いつつ 潤沢な配当原資を確
も、4 年前に比べて約 9 ポイント上昇している。配当原資となる単体ベースの利益剰余金(21/3 期 保している
末)は 300 億円に達しており、22/3 期予想 1 株配当金 90 円(配当性向 30.4%、配当総額
約 21 億円)に対して潤沢な配当原資を有していると言えよう。

21/3 期末における有形固定資産回転率(売上高÷過去 2 年平均有形固定資産)は、17/3 期 設備投資を積極化さ
の 1.85 回から 1.42 回へ低下しているが、17/3 期以降に三田工場のリニューアル工事や九州工場 せた結果、設備効率
の増強などの設備投資を積極化させたことが主因と考えられる。実際、有形固定資産は 15/3 期の が低いように見える
115 億円から 21/3 期は 207 億円へほぼ倍増している。競合であるイーグル工業の 21/3 期におけ
る有形固定資産回転率は 2.1 回、バルカーは 2.8 回、ニチアスは 3.3 回であり、同社の設備効率が
低いように見える。しかし、他社を凌ぐ従業員 1 人当たり売上高(p9 の人的資本参照)の裏返しで
もあり、自働化・省力化の設備導入が進み、高い労働装備率を誇っていると高評価できよう。

売上債権の流動化が他社比での CCC の差につながっている
21/3 期末の運転資金動向をみると、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル:棚卸資産回転日数 競合他社に比べて
+売上債権回転日数-仕入債務回転日数)は 167 日である。イーグル工業の CCC は 138 日、バ CCC が劣後している
ルカーも 138 日、ニチアスは 82 日である。内訳を見ると、棚卸資産回転日数と仕入債務回転日数 ように見えるが債権の

は各社ともに同水準であるが、同社の場合、売上債権回転日数が 147 日と長く、イーグル工業の 86 流動化の有無が主因

日、バルカーの 113 日、ニチアスの 73 日に対して大きく劣後している。

売上債権回転日数の差異に関しては、他社は債権の流動化(オフバランス化)を行っていると推測さ
れるものの、同社は流動化を行っていないことが主因と考えられる。仮に債権の流動化を行った場合、
50 億円程度の売上債権の圧縮が可能であり、CCC は 106 日程度へ低下すると試算される。同社
はほぼ無借金であり、21/3 期末のネット・キャッシュは 117 億円(短期借入金 2 億 54 百万円、現
金及び預金 119 億円)であるが、流動化を行った場合、ネット・キャッシュは約 170 億円程度へ増加
することになろう。

図表 25:売上債権の流動化の有無が CCC の差を生んでいる
(日) 主要4社のキャッシュ・コンバージョン・サイクルの推移 (日) 日本ピラー工業のCCCを3項目に分解
250.0 250.0
日本ピラー工業のCCC イーグル工業のCCC 棚卸資産回転日数 売上債権回転日数
225.0 225.0
バルカーのCCC ニチアスのCCC 仕入債務回転日数 CCC
200.0 200.0
競合3社平均売上債権回転日数
175.0 175.0

150.0 150.0

125.0 125.0

100.0 100.0

75.0 75.0

50.0 50.0

25.0 25.0

0.0 0.0





出所:有価証券報告書などから CGRA 作成


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高水準の設備投資を実施しつつ、安定的な FCF を確保している
21/3 期の営業キャッシュ・フローは 57 億円、過去 5 年累計 217 億円(平均 43 億円)の営業キ 高水準の設備投資
ャッシュ・フローを確保している。過去 5 年累計 151 億円の設備投資を実施しつつも、21/3 期のフリ をこなしながら安定
ー・キャッシュ・フローは約 20 億円となり、過去 5 年累計で 56 億円の FCF を稼ぎ出している。21/3 的な FCF を確保
期は増配に加え、自己株取得(8 億円)を実施、財務キャッシュ・フローは-22 億円に転じ、期末の
現金及び現金同等物残高は 105 億円となった。現金及び現金同等物は設備投資と株主還元の強
化を背景に 17/3 期の 127 億円をピークに低下傾向にあるが、月商 4.2 ヶ月分を確保している。

同社収益性に対して財務戦略に改善の余地がありそう
同社の過去最高 ROE は 11/3 期に記録した 12.0%である。デュポンモデルに分解すると、売上高当 競合他社比で ROE
期利益率 13.1%、総資産回転率(売上高÷総資産)0.7 回、財務レバレッジ(総資産÷自己 が見劣りする理由は
資本)1.4 回であった。しかし、21/3 期の ROE は 7.8%にとどまった。売上高当期利益率 11.4% 資産効率の低さが
に対して、総資産回転率が 0.6 回、財務レバレッジが 1.2 回であり、資産効率の低さが響いた。 原因

競合であるバルカーの 21/3 期 ROE は 9.0%、ニチアスは 8.2%、イーグル工業は 5.0%であった。た
だし、バルカーの場合、当期利益率は 6.9%にとどまるが、総資産回転率が 0.9 回、財務レバレッジが
1.5 回。ニチアスは、当期利益率が 5.5%に過ぎないが、総資産回転率が 0.9 回、財務レバレッジが
1.6 回と高く、収益性では見劣りするが、レバレッジを掛けることで同社を上回る ROE を実現させてい
る。同社 ROE の改善には株主還元拡大などを含む資本政策の強化が有効と CGRA は考える。

図表 26:安定的かつ強固なバランスシートを維持
(百万円) FCFと現金及び現金同等物、自己資本比率 (%)
16,000 120.0
設備投資 自己資本比率(右軸)
14,000 105.0
フリー・キャッシュ・フロー 現金及び現金同等物

12,000 90.0


10,000 75.0


8,000 60.0


6,000 45.0


4,000 30.0


2,000 15.0


0 0.0


-2,000 -15.0




図表 27:財務戦略が ROE の改善に有効と考えられる
デュポンモデル 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3
売上高当期利益率:% 10.1 8.4 8.9 9.2 10.4 11.8 11.6 12.0 9.0 11.4
総資産回転率(売上高÷総資産):回 0.6 0.5 0.6 0.5 0.5 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
財務レバレッジ(総資産÷自己資本):回 1.4 1.3 1.3 1.3 1.2 1.3 1.3 1.3 1.2 1.2
ROE:% 8.5 5.7 6.3 6.2 7.2 9.1 8.9 9.1 6.2 7.8

NOPAT:百万円 2,255 1,506 1,788 2,158 2,349 3,831 3,645 3,471 2,743 3,532
投下資本:百万円 28,857 29,382 30,749 32,017 33,284 36,928 39,266 41,669 42,484 43,756
ROIC:% 7.8 5.1 5.8 6.7 7.1 10.4 9.3 8.3 6.5 8.1


出所:会社資料より CGRA 作成


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・非財務分析
非財務情報の開示が本業を左右する時代が到来しよう
かつてアクティブ・ファンドが全盛期の頃は、P/L を中心とした財務データの開示が資本市場で求められて 今後は戦略的な IR
いた。しかし、現在は ESG 関連を中心としたパッシブ・ファンドが世界的に急速な拡大を続けている。 が求められる時代が
2050 年における脱炭素をキーワードに、ESG および SDGs などの非財務データの開示を強化すること 到来しよう
で、事業の持続可能性を高め、企業価値の向上と同時に社会的価値の向上が求められている。

また、カーボンニュートラルの実現に向けて、Scope1、2のみならず 3 の開示が求められるうえ、TCFD
提言、自然資本などに関する開示と対策も義務化が進むであろう。グローバルベースでの人権、多様
性、社会的意義、社外取締役の実効性などを含む社会やガバナンスも企業の継続性向上に必要で
ある。

既に、消費財などの BtoC の産業では ESG/SDGs の議論と対策が積極的に行われている。消費者
の ESG 志向がグローバルベースで急速に進んでいることが背景にあり、非買運動へ発展するリスクがあ
るためだ。この動きはタイムラグを伴って、製造業にも波及するであろう。実際、欧州自動車メーカーを中
心に、各種非財務データの開示を求める機運が強まり始めている。この動きはグローバルベースで広がり、
非財務データの開示およびサプライチェーンのサステナビリティ認証である EcoVadis などの評価なしでは、
いくら性能が良く、価格が安くても、顧客を失うリスクが生じる時代が到来しそうだ。今後は企業の継続
性を説明可能な非財務データの開示が株価のみならず本業および資金調達面にも影響を及ぼすと
CGRA は考える。

非財務情報武装は海外競合が先行
上記のような環境認識の中、同社の国内外競合ならびに顧客の非財務戦略を検証してみた。 海外競合は TCFD 提
John crane は TCFD 提言に賛同し、2040 年までに GHG ネットゼロ(Scope1,2)を目標とし、 言への賛同をはじめ、

2050 年までには Scope3 もネットゼロを目指す方針である。SBTi(Science Based Targes 非財務データの開示
に積極的
initiative)および国連のゼロキャンペーンにも賛同している。社内の ESG 目標の進捗と長期のインセ
ンティブ報酬を紐づけているうえ、サステナビリティ委員会を設置、100%再生エネルギーの使用や電動
自動車の採用などを進めている。外部評価においては、2019 年データが CDP の B 評価、2020 年
6 月に FTSE4Good Index に採用、2021 年 2 月には MSCI の AA スコアを獲得している。2021
年 3 月には SUSTAINALYTICS の Medium Risk 評価、2021 年 9 月の ISS 評価ではガバナン
スが 3、環境が 3、社会が 2 の評価を得ている。

Flowserve においては、2030 年までに Scope1、2 の炭素排出量を 40%削減すると同時に女性
の役員登用や役員レベルでの ESG 認識の徹底、SASB 基準での非財務データ開示や TCFD 提言
への賛同を表明している(137 ページの ESG report を発行)。

Entegris は 2030 年に向けて CSR のゴールを設定している。2030 年までに全ての電力を再生エネ
ルギーに変更、水資源の使用量削減などと進めると同時に、多様性や機会均等、安全性などを高め、
革新的な技術の提供を通じた企業価値向上を図る方針である。




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同社とニチアスが S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数に採用されている
国内競合においては、イーグル工業が鶴代表取締役社長を委員長としたサステナビリティ委員会を設 唯一、国内競合では
置しているうえ、イーグル工業とニチアスが 2050 年のカーボンニュートラルを宣言している。各社ともに バルカーが TCFD 提
Scope1,2の開示を行っているが、唯一、バルカーが 2014 年度からサプライチェーン全体の Scope3 言に賛同している

ベースの温室効果ガスの排出量を算出しているうえ、TCFD 提言へ賛同している。
社会(S)に関しては、各社ともに差はないが、イーグル工業が KPI の開示を行っており、若干先行し
ている印象である。
ガバナンス(G)に関しては、唯一、ニチアスは社外取締役の割合が取締役の 3 割を超えていない。イ
ーグル工業は社外取締役の平均在任期間が約 6 年、バルカーにおいては平均兼任企業数が約 4 社
(日本ピラー工業も 3 社)と多い。
ESG 外部評価では、ニチアスと同社が S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数に採用されている。

図表 28:国内競合における主な ESG 項目の開示内容
主な開示項目 日本ピラー工業 ニチアス イーグル工業 バルカー
TCFD提言への賛同 × × × 〇
Scope1+2の開示 ○(9,579t-CO2) ○(15.5万t-CO2) ○ ○(22,319t-CO2)
Scope3の開示 × × × ○
リサイクル率 74.6% 65.0% 88.2% 開示なし
ISO14001認証 ○ ○ ○ ○
環境(E)
PRTR法届出対象物質データ開示 ○(5品目) ○(5品目) ○(4品目) 開示なし
環境保全コストの開示 ○ ○ × ×
環境改善貢献製品売上高の開示 × ○ △ ×
カーボンニュートラル目標 × 2050年にゼロ 2050年にゼロ ×
30年度に30%削減

女性社員比率(単体) 19% 開示なし KPIあり 開示なし
女性管理職 開示なし 開示なし KPIあり 11.8%(KPIあり)
有給休暇取得率 60.3% 63.9% 75.0% 開示なし
社会(S) 育児休業取得率 100% 開示なし 男女別取得者数開示 開示なし
男性育児休業取得率 13.6% 開示なし 1名 開示なし
平均勤続年数 15.3年 14.6年 15.4年 18.0年
障害者採用 開示なし 2.3% 2.8% 2.5%

監督と執行の分離 監査等委員会設置会社 監査役設置会社 監査役設置会社 監査役設置会社
取締役(社外取締役) 取締役9名(うち社外4名) 取締役11名(うち社外3名) 取締役6名(うち社外2名) 取締役7名(うち社外3名)
諮問委員会 指名及び報酬諮問委員会 指名及び報酬諮問委員会 指名及び報酬諮問委員会 -
ガバナンス(G) 独立役員の人数 4名(監査等委員含む) 6名(監査役3名含む) 5名(うち監査役3名) 5名(監査役2名含む)
社外取締役の平均在籍年数:年 1.7 4.7 5.9 3.1
社外取締役の平均兼任企業数:社 3 2.3 2.5 3.7
役員スキルマトリクス ○ × × ×

S&P/JPXcarbonEfficient指数 S&P/JPXcarbonEfficient指数 - -
社外評価 ESG/SDGs評価融資(三井住友) - - -



出所:各社の開示資料などから CGRA 作成




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・コーポレートガバナンス体制
資本市場および顧客動向を意識した開示が必要と CGRA は考える
同社は 2020 年に従来の CSR 報告書から統合報告書へ変更した。2017 年の CSR 報告書で初 今後は TCFD 提言へ
めて ESG の言葉を使い始め、SDGs に関しては 2019 年の CSR 報告書から使われ始めた。機械セ の賛同 、Scope3 の
クターにおいて ESG/SDGs 経営で先行するナブテスコは 2015 年から ESG 経営を導入、荏原でも 算出量把握などが求
2018 年辺りから始めており、同社は国内競合他社に先駆けて ESG 経営を強化・遂行している。 められよう

統合報告書 2021 は 46 ページ(2020 年は 38 ページ、2019 年 CSR 報告書は 30 ページ)を
確保、セグメント別の戦略、バリューチェーン別のサステナビリティ戦略、役員のスキルマトリクスなどが新た
に追加された。ただし、セグメント別の戦略部分では SWOT 分析を踏まえた説明が欠けているうえ、リ
スクと事業機会の分析、更には気候変動リスクに対する対応策などが不足している印象。岩波社長と
駒村社外取締役との対談は興味深いが、改訂コーポレートガバナンスコードを意識した方針や社外取
締役の監督能力などが外部からも読み取れる内容が求められよう。なお、同社はカーボンニュートラルの
時期と施策の開示ならびに TCFD 提言への賛同は行っていない。同社産業機器関連事業は、装置
産業を顧客としており、Scope3 レベルでの排出量の把握とカーボンニュートラルの達成時期と対策は
早急な開示が必要と CGRA は考える。

岩波社長を委員長とした ESG/SDGs 推進委員会の深化に期待したい
同社マネジメントのガバナンス体制としては、2017 年に監査等委員会設置会社に移行、執行役員制 非財務データの KPI、
を導入し、経営の意思決定及び監督機能と業務執行機能を分離すると同時に、任意の指名及び報 役員報酬との紐づけ
酬諮問委員会(3 名の取締役で構成され、うち 2 名は社外取締役。委員長は岩波清久会長)を などが求められよう
設置している。2021 年 6 月時点における同社取締役は 9 名、うち 4 名(社外比率 44%、女性
比率 11%)が社外取締役である。取締役会の議長は岩波清久会長が務め、社外取締役 4 名を
招聘、透明性の向上と監督機能の強化を行っている。

加えて、同社は 2021 年 4 月に岩波嘉信社長を委員長とする ESG/SDGs 推進委員会を CSR 委
員会の上位組織として設置、ESG 経営を強化する方針である。ただし、同社はマテリアリティの抽出と
対策および ESG/SDGs に対する KPI を設定・公表しておらず、今後の開示が待たれよう。役員報酬
に関しては、固定給ウエイトが 50-60%、残りは短期と中長期の業績連動型であり、売上高や ROE、
生産性向上、海外売上比率や新製品売上比率などに応じた内容となっている。ESG/SDGs 経営を
加速させるためには KPI の設定に加え、ESG 経営の対 KPI 進捗が役員報酬にもリンクする仕組みづ
くりが必要と CGRA は考える。

図表 29:同社とイーグル工業は代表取締役社長が ESG 経営を先導
日本ピラー工業 ニチアス イーグル工業 バルカー
統合報告書の発行 ○ CSRレポート ○ サステナビリティレポート

中計の開示 ○ ○ ○ ○

ESG/SDGs委員会の設置 ESG/SDGs推進委員会 NKK活動 サステナビリティ委員会 CSR推進委員会

委員会の委員長 代表取締役社長が委員長 - 代表取締役社長が委員長 専務取締役が委員長

各種ESG項目のKPI開示 開示なし 開示なし 開示なし 開示なし




出所:各社の開示資料より CGRA 作成




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政策保有株の圧縮も着実に実施している
同社のみならず、国内競合は比較的多くの政策保有株を有している。同社は 21/3 期末における投 政策保有株も着実に
資有価証券は株主資本の 11%、イーグル工業は 13%、ニチアスは 11% バルカーは 9%を占めて 圧縮へ
いる。同社は 19/3 期辺りから政策保有株の圧縮に動いており、20/3 期は 5 銘柄、21/3 期も 1 銘
柄の売却を行ったが、依然として投資有価証券が株主資本の 10%を上回る。現在保有する 26 銘
柄のうち、株式持ち合いを行っている企業数は 13 社。残り 13 社(保有有価証の簿価の 27%)は
同社株を有していない。今後は経済合理性を検証し、資本コストを上回るリターンが得られない銘柄
は売却を検討する方針である。

統合報告書 2021 で役員のスキルマトリクスを初めて開示
鈴木吉宣氏は、2019 年 6 月に同社社外取締役に就任。オムロン株式会社代表取締役副社長 社外取締役のスキル
CFO を歴任、現在は同志社大学大学院ビジネス研究科客員教授、センクシア株式会社社外取締 マトリク スを初 めて開
役を兼任している。 示。ただし、兼任企業
数が多すぎる印象
駒村純一氏は、2020 年 6 月に同社社外取締役に就任。三菱商事のイタリア事業投資先 Miteni
社社長や森下仁丹株式会社の代表取締役社長を歴任。現在はアンジェス株式会社社外取締役と
東海物産株式会社の社外取締役を兼任している。

髙谷和光氏は 2019 年 6 月に同社社外取締役に就任。1989 年に公認会計士、1992 年に税理
士登録し、現在はネクサス監査法人代表社員、株式会社ヒラノテクシード社外取締役(監査等委員)
を兼任している。

小林京子氏は 2021 年 6 月に同社社外取締役に就任。1999 年 4 月に弁護士登録、現在は川
上塗料株式会社社外監査役、弁護士法人色川法人事務所パートナー、三菱ロジスネクスト株式会
社社外取締役を兼任している。

今回、初めて「同社統合報告書 2021」の 27 ページに役員のスキルマトリクスが開示された。しかし、
一般的なスキルが中心であり、今後の注目ポイントである「新事業の創出」、「脱炭素関連ビジネス」、
「グローバル展開」、「アフターサービス事業の強化」、「ESG/SDGs 経営の推進」を監督・遂行できる人
選も必要と CGRA は考える。また、同社社外取締役は平均 3 社を兼任しており、兼任企業数が相
対的に多い印象である。

図表 30:役員のスキルマトリクス




出所:同社統合報告書 2021

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(6)株主還元と過去の業績予想達成度合い
・株主還元
過去 2 年の総還元性向は公約配当性向を大きく上回って推移
同社は 23/3 期を最終年度とした 3 ヶ年中期経営計画「BTvision22」の中で公約配当性向を 積極的かつ継続的な
30%以上としている。しかし、中計初年度の 21/3 期は 1 株配当金 50 円(配当性向 34.6%) 株主還元に期待した
に加えて、自社株取得(約 8 億円、約 53 万株)を実施、総還元性向は 57.5%に達した。22/3 い
期予想配当金は 1Q 決算時に 60 円→70 円、2Q 決算時に 70 円→90 円(配当性向 30.4%)
へ増配されたが、好調な業績と目標 ROE 8%以上をクリアするうえでも、継続的な株主還元の強化
が期待される。

同社は 2024 年に創業 100 周年を迎える。次期中期では株主還元の強化を含む財務・資本政策
も期待されよう。なお、図表に国内競合比較での株価バリュエーションおよび配当利回りを掲載している
が、同社の配当利回りは、株価の上昇もあり、競合 4 社比較において若干見劣りする。

ちなみに 20/3 期配当は前年比 5 円減の 40 円となったが、19/3 期において同社初の売上高 300
億円の達成を記念した 5 円配当の消滅が理由である。

図表 31:同社は株主還元を積極化している
(円) 1株配当金と自己株取得、配当性向と総還元性向 (%)
100.0 70.0

90.0 1株当り自己株取得額 1株当り配当金
60.0
80.0 57.5
配当性向(右軸) 総還元性向(右軸)
70.0 49.5 50.0

60.0 41.8 40.0
36.8
50.0 34.6
29.3 28.8 25.9 29.6 30.430.0
40.0 24.9 24.9 29.6 30.4
24.9
24.9 25.9 25.7
25.7
30.0 21.4 20.0
17.7
20.0
10.0
10.0

0.0 0.0
12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 (会予)


図表 32:同社配当利回りは株価上昇もあり、競合に比べて若干見劣りする
SCREEN
日本ピラー工業 イーグル工業 ニチアス バルカー 荏原
ホールディングス

株価(11月16日):円 3,005 1,075 2,680 2,460 6,040 11,630
予想PER:倍 10.1 10.8 9.9 11.7 15.5 15.0
PBR:倍 1.6 0.6 1.3 1.2 1.9 2.6
ROE:% 7.8 5.0 8.2 9.0 8.4 7.9
予想配当利回り:% 3.0 4.7 3.1 4.3 2.2 2.0
予想PERと予想配当利回りは22/3あるいは21/12期会社予想ベース。BPSは21/3期末あるいは20/12期末ベース
ROEは21/3期あるいは20/12期ベース。荏原のみ12月決算
出所:有価証券報告書などから CGRA 作成


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・過去における業績予想の達成度合い
業績予想は半導体設備投資に左右される傾向が強い
中期経営計画に関しては、前 3 ヶ年中計「BTvision19」は、2 年目の 19/3 期に数値目標を上方 業績予想は半導体
修正したものの、半導体設備投資の急減速が響き、最終年度である 20/3 期業績は中計目標値を 設備投資の振れ幅に
下回って着地した。現 3 ヶ年中計「BTvision22」も中計 2 年目となる 22/3 期期初時点(2021 左右されるが、期中の
年 5 月 21 日)において最終年度である 23/3 期業績目標値を増額修正しており、2 年目である 費用削減で期初予

22/3 期業績予想は最終年度である 23/3 期の中計目標値を上回る計画値が提示されている。 想並みを確保する傾
向がある
過去 10 年(12/3~21/3)の同社期初時点の業績予想を振り返ると、4 回上方修正し、4 回下
方修正している。13/3-15/3 期の 3 期間は、2Q 決算発表時において、通期予想が下方修正され
たものの、14/3 期と 15/3 期は費用削減が奏功、期初予想並で着地した。17/3 期は 2Q および
3Q 決算時に 2 度上方修正したものの、18/3 期は 2Q 決算前に下方修正された。

20/3 期は 2Q 決算発表時に上方修正され、21/3 期は 1Q と 3Q 決算発表時に通期予想が上方
修正された。現在進行中の 22/3 期においては 1Q 決算時に続いて 2Q 決算発表時に通期業績予
想が上方修正された。

図表が示す通り、傾向としては、ボラティリティが高い半導体設備投資が弱含む際は、通期予想が下
方修正されるものの、コスト削減と売上高の約半分がアフターマーケットである産業機器関連事業が下
支えし、最終的な着地点は期初予想に近い内容に落ち着く傾向が見られる。逆に半導体設備投資
が強含む際は、期初予想が上方修正される傾向が強い。

図表 33:期初予想営業利益と営業利益実績の差異
(百万円) (億ドル)

7,000 140



6,000 期初時点の営業利益計画 営業利益実績 半導体設備投資(右軸) 120



5,000 100



4,000 80



3,000 60



2,000 40



1,000 20









出所:会社資料などから CGRA 作成




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(7)株価推移と株価バリュエーション
・競合および顧客の株価動向
半導体関連銘柄は株価に二極化の動きが見られる
半導体製造装置関連銘柄の株価は、各社ともに上昇傾向にあるものの、パフォーマンスに二極化の動 半導体製造装置銘
きが見られる。微細化、多層化などの質的変化を伴う半導体設備投資関連銘柄である東京エレクト 柄内でも株価の二極
ロンやレーザーテックおよび同社の競合である米 Entegris の株価は大きくアウトパフォームする一方、量 化が見られる
的な設備投資に依存する SCREEN ホールディングス(=洗浄装置が主力製品)の株価は相対的
にアンダーパフォームする傾向にある。つまり、同社も液体の漏れを封止する部品としての継手の供給に
留まらず、薬液・砥粒の供給、フィルターなどによる流体の品質管理やコンタミの除去などの質的な設備
投資向けに製品供給が可能ならば、更なる株価パフォーマンスも期待出来よう。

図表 34:半導体関連企業の株価推移

Entegris

東京エレクトロン



日本ピラー工業

荏原

SCREEN




図表 35:産業機器関連事業における競合企業の株価動向

日本ピラー工業




バルカー


ニチアス

イーグル工業




出所:Marketscreener などから CGRA 作成

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・株価バリュエーション
ESG 経営深化に伴う持続可能性の高まりがバリュエーションにも反映されよう
過去 10 年の同社株価バリュエーションを見ると、PBR が 1 倍を確保した決算期は 17/3 期、18/3 ESG 経営の強化によ
期、21/3 期の 3 期のみであり、残りの 7 期は 0.7 倍程度で推移していることが分かる。PBR=ROE る利益成長の持続可
×PER の図式からいえることは、好調な業績を背景に ROE が 9%程度に上昇した時に PBR が 1 倍 能性を高めると同時に
に回帰する傾向が見られた。同社の過去 10 年平均営業利益率は 15.6%と高い収益性を誇ってい 資本政策を通じた

るが、当期利益の持続可能性が資本市場で認知されていないと推測されるため、PER が低位にとどま ROE の改善に期待

っていると推測される。過去 10 年平均自己資本比率は 78.8%と強いバランスシートを誇っているがゆ
えに ROE も低く、PBR が 0.7 倍~1.0 倍のレンジで推移していると CGRA は考えている。

同社と顧客および事業構成が似ている荏原の 20/12 期営業利益率は 7.2%、自己資本比率は
47.7%であるが、ROE は 8.4%と営業利益率を上回っているうえ、ESG 経営の強化で利益成長お
よび企業の持続可能性を高め、PER の上昇が見られている。また、同社海外競合であり、半導体設
備投資の質的変化の恩恵を享受可能な Entegris は、営業利益率が 24.7%と高いうえ、ROE も
23.2%を確保している。半導体の微細化などの質的変化の恩恵を享受可能であるためにサステナビリ
ティ(=利益成長の持続可能性)が向上、PER は 45 倍へ上昇、高い ROE を通じて、PBR は 10
倍に達している。

同社においても 22/3 期予想営業利益率は 26%と Entegris の収益性を凌駕している。Entegris
のような半導体の微細化・多層化の進展に伴う質的投資の恩恵を享受可能な事業展開や製品投
入に期待したいが、まずは資本政策による ROE の改善と ESG 経営の強化による利益成長の持続可
能性(=企業のサステナビリティ)の向上による PER の上昇を通じた、PBR の改善に期待したい。

図表 36:PBR=ROE×PER の図式から見たバリュエーション推移
12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3会予
株価:円 718 778 801 1,001 979 1,501 1,582 1,277 1,258 1,864 3,005
PBR:倍 0.7 0.7 0.6 0.7 0.7 1.0 1.0 0.7 0.7 1.0 -
ROE:% 8.5 5.7 6.3 6.2 7.2 9.1 8.9 9.1 6.2 7.8 -
PER:倍 8.0 12.1 14.7 12.5 10.1 11.5 11.3 8.4 11.6 12.9 10.1

営業利益率:% 17.2 12.7 14.0 14.9 15.1 19.0 17.5 16.6 12.6 16.0 26.3
自己資本比率:% 74.2 80.1 78.5 79.8 80.4 74.5 77.3 79.6 80.9 83.3 -

配当利回り:% 2.2 2.1 2.0 2.0 2.9 2.3 2.3 3.5 3.2 2.7 3.0


出所:各種資料から CGRA 作成




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(8)連結損益計算書と貸借対照表およびキャッシュ・フロー計算書
・図表 37:連結損益計算書
(百万円、%) 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3会予
売上高 22,086 18,831 20,720 21,675 22,960 27,225 29,461 30,963 29,213 30,200 38,000
増収率 -0.8 -14.7 10.0 4.6 5.9 18.6 8.2 5.1 -5.7 3.4 25.8
売上原価 14,388 12,692 13,955 14,457 15,287 17,125 18,788 20,214 19,921 19,641 -
原価率 65.1 67.4 67.4 66.7 66.6 62.9 63.8 65.3 68.2 65.0 -
販売費及び一般管理費 3,891 3,745 3,856 3,991 4,204 4,933 5,511 5,622 5,608 5,711 -
販管費率 17.6 19.9 18.6 18.4 18.3 18.1 18.7 18.2 19.2 18.9 -
営業利益 3,806 2,393 2,908 3,226 3,469 5,166 5,161 5,126 3,683 4,847 10,000
増益率 -3.3 -37.1 21.5 10.9 7.5 48.9 -0.1 -0.7 -28.2 31.6 106.3
営業利益率 17.2 12.7 14.0 14.9 15.1 19.0 17.5 16.6 12.6 16.0 26.3
営業外収支 14 129 122 221 25 90 -5 102 41 247 0
営業外収益 98 169 152 237 116 111 111 126 120 287 -
営業外費用 84 40 30 16 91 21 116 24 79 40 -
金融収支 11 19 40 57 71 63 71 77 73 73 -
受取利息 4 7 6 9 6 6 6 4 4 10 -
受取配当金 44 38 50 60 72 64 70 78 73 66 -
支払利息 37 26 16 12 7 7 5 5 4 3 -
経常利益 3,820 2,522 3,031 3,447 3,493 5,255 5,156 5,227 3,725 5,094 10,000
増益率 -1.3 -34.0 20.2 13.7 1.3 50.4 -1.9 1.4 -28.7 36.8 96.3
経常利益率 17.3 13.4 14.6 15.9 15.2 19.3 17.5 16.9 12.8 16.9 26.3
特別損益 13 0 0 -323 102 -646 -142 229 -72 -257 -
特別利益 13 0 0 14 207 30 0 602 27 58 -
特別損失 0 0 0 337 105 676 142 373 99 315 -
税前利益 3,833 2,522 3,031 3,124 3,595 4,609 5,014 5,456 3,653 4,837 -
法人税、住民税及び事業税 1,599 932 1,176 1,137 1,198 1,405 1,592 1,737 1,017 1,391 -
税率 41.7 37.0 38.8 36.4 33.3 30.5 31.8 31.8 27.8 28.8 -
親会社株主に帰属する当期純利益 2,233 1,589 1,854 1,986 2,397 3,204 3,422 3,719 2,635 3,445 7,000
増益率 -23.2 -28.8 16.7 7.1 20.7 33.7 6.8 8.7 -29.1 30.7 103.2
当期利益率 10.1 8.4 8.9 9.2 10.4 11.8 11.6 12.0 9.0 11.4 18.4
連結EPS 90.22 64.23 54.58 80.29 97.23 131.06 139.98 152.13 108.57 144.66 296.14

セグメント売上高
産業機器関連 11,167 9,970 9,683 9,797 10,352 10,680 10,467 10,757 10,915 9,471 9,700
電子機器関連 10,837 8,802 10,983 11,803 12,525 16,452 18,911 20,123 18,221 20,645 28,200
その他 81 58 53 74 83 91 83 82 77 84 100
連結売上高 22,086 18,831 20,720 21,675 22,960 27,225 29,461 30,963 29,213 30,200 38,000

セグメント利益
産業機器関連 2,217 1,833 1,434 1,528 1,527 1,828 1,337 1,485 1,403 691 1,200
電子機器関連 1,579 542 1,456 1,677 1,919 3,314 3,818 3,641 2,253 4,130 8,750
その他 33 15 14 14 12 13 29 15 27 26 50
調整額 -23 2 3 5 10 9 -23 -16 0 0 0
連結営業利益 3,806 2,393 2,908 3,226 3,469 5,166 5,161 5,126 3,683 4,847 10,000

セグメント利益率
産業機器関連 19.9 18.4 14.8 15.6 14.8 17.1 12.8 13.8 12.9 7.3 12.4
電子機器関連 14.6 6.2 13.3 14.2 15.3 20.1 20.2 18.1 12.4 20.0 31.0
その他 40.7 25.9 26.4 18.9 14.5 14.3 34.9 18.3 35.1 31.0 50.0
連結営業利益率 17.2 12.7 14.0 14.9 15.1 19.0 17.5 16.6 12.6 16.0 26.3

地域別売上高
日本 19,087 16,707 17,565 17,647 19,156 22,416 23,124 23,904 21,427 21,975 -
アジア 2,216 1,458 2,095 2,862 2,565 3,172 4,528 4,345 5,316 5,721 -
その他 782 664 1,059 1,165 1,238 1,637 1,809 2,713 2,470 2,504 -
合計 22,086 18,831 20,720 21,675 22,960 27,225 29,461 30,963 29,213 30,200 -
海外売上高 2,998 2,122 3,154 4,027 3,803 4,809 6,337 7,058 7,786 8,225 -
海外売上高比率 10.0 7.7 10.1 13.2 11.2 11.7 15.4 14.0 18.2 18.9 -

出所:会社資料より CGRA 作成




日本ピラー工業(6490) 35
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・図表 38:連結貸借対照表とキャッシュ・フロー計算書
(百万円、%) 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3
流動資産 22,334 21,867 24,805 26,124 25,279 29,832 28,821 28,375 27,025 27,994
現金・預金 9,259 10,763 13,093 13,929 12,451 14,060 13,153 12,912 12,196 11,918
受取手形・売掛金 10,428 8,481 9,401 9,602 10,159 12,143 12,785 12,026 11,551 12,701
有価証券 0 94 0 0 0 112 0 0 0 0
棚卸資産 2,173 2,128 1,790 2,162 2,174 2,235 2,612 3,063 2,956 3,024
その他流動資産 474 401 521 431 495 1,282 271 374 322 351
固定資産 14,256 13,863 14,180 15,342 16,884 19,514 22,717 24,597 26,165 26,955
有形固定資産 11,770 11,304 11,254 11,510 13,901 15,493 18,107 20,266 21,971 20,669
無形固定資産 56 78 75 75 94 107 105 173 251 246
投資その他資産 2,430 2,481 2,851 3,757 2,889 3,914 4,505 4,158 3,942 6,038
資産合計 36,590 35,731 38,986 41,466 42,164 49,347 51,933 52,972 53,190 54,949
流動負債 6,790 5,024 6,052 6,213 6,267 9,193 8,960 8,608 8,313 7,133
支払手形・買掛金 3,116 2,534 2,929 3,239 3,185 3,948 3,137 2,985 2,869 3,006
短期借入金・1年以内償還長期借入金 868 776 575 516 352 737 727 639 689 254
その他流動負債 2,806 1,714 2,548 2,458 2,730 4,508 5,096 4,984 4,755 3,873
固定負債 2,665 2,077 2,348 2,154 1,991 3,413 3,137 2,194 1,866 2,038
長期借入金 1,119 543 656 339 187 1,410 882 443 4 0
その他固定負債 1,546 1,534 1,692 1,815 1,804 2,003 2,255 1,751 1,862 2,038
負債合計 9,455 7,101 8,400 8,367 8,259 12,607 12,098 10,802 10,180 9,172
株主資本合計 26,870 28,063 29,518 31,162 32,745 35,166 37,657 40,587 41,791 43,502
その他包括利益 264 566 1,067 1,937 1,159 1,573 2,176 1,581 1,218 2,273
純資産 27,135 28,629 30,585 33,099 33,905 36,740 39,834 42,169 43,010 45,776
負債・純資産合計 36,590 35,731 38,986 41,466 42,164 49,347 51,933 52,972 53,190 54,949

(百万円、%) 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3
営業活動によるキャッシュ・フロー 3,671 2,930 3,429 2,957 3,074 3,220 3,752 5,035 4,064 5,676
税金等調整前当期純利益 3,833 2,522 3,031 3,124 3,595 4,609 5,014 5,456 3,653 4,837
減価償却費 1,170 967 924 954 940 1,022 1,397 1,718 1,822 2,056
売上債権の増減額 11 1,970 -877 -94 -564 -1,989 -635 1,072 455 -1,155
棚卸資産の増減額 -74 69 375 -337 -22 -71 -374 -346 101 -81
仕入債務の増減額 84 -602 354 275 -48 759 -844 -496 -98 147
法人税等の支払額 -1,483 -1,704 -532 -1,365 -968 -1,359 -1,739 -1,923 -1,505 -719
その他 130 -292 154 400 141 249 933 -446 -364 591

投資活動によるキャッシュ・フロー -624 -494 -927 -1,378 -3,230 -2,363 -3,244 -3,902 -2,950 -3,705
投資有価証券の取得 -5 -5 -115 0 -14 -596 -74 -132 -134 -168
投資有価証券の売却 0 0 0 35 353 56 0 0 0 0
有形固定資産の取得 -412 -480 -839 -1,298 -3,549 -1,822 -3,207 -4,107 -2,760 -3,163
有形固定資産の売却 0 0 0 -125 0 0 0 614 18 0
その他 -207 -7 28 10 -20 0 37 -277 -74 -374


フリー・キャッシュ・フロー 3,047 2,436 2,502 1,579 -156 857 508 1,133 1,114 1,971


財務活動によるキャッシュ・フロー -1,168 -1,088 -505 -839 -1,145 813 -1,455 -1,493 -1,862 -2,238
長期債務の調達・返済 -655 -668 -88 -375 -316 1,609 -537 -527 -439 -439
短期債務の調達・返済 0 0 0 0 0 0 0 0 50 0
配当金の支払 -493 -396 -395 -444 -495 -781 -904 -952 -1,093 -958
新株発行・自社株取得 0 0 0 0 -319 0 0 0 -337 -800
その他 -20 -24 -22 -20 -15 -15 -14 -14 -43 -41

現金及び現金同等物に係る換算差額 -56 191 225 190 -127 -72 -11 -41 -35 -13
現金及び現金同等物の増減額 1,820 1,539 2,222 929 -1,429 1,597 -958 -401 -783 -281
現金及び現金同等物期首残高 6,048 7,869 9,409 11,631 12,561 11,132 12,729 11,813 11,582 10,798
現金及び現金同等物期末残高 7,869 9,409 11,631 12,561 11,132 12,729 11,813 11,582 10,798 10,517


総資産回転率(回) 0.6 0.5 0.6 0.5 0.5 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
有形固定資産回転率(回) 1.8 1.6 1.8 1.9 1.8 1.9 1.8 1.6 1.4 1.4
流動資産回転率(回) 1.0 0.9 0.9 0.9 0.9 1.0 1.0 1.1 1.1 1.1
棚卸資産回転日数(日) 54.3 61.8 51.2 49.9 51.8 47.0 47.1 51.2 55.1 55.6
売上債権回転日数(日) 172.5 183.3 157.5 160.0 157.1 149.5 154.4 146.2 147.3 146.6
仕入債務回転日数(日) 50.9 54.8 48.1 51.9 51.1 47.8 43.9 36.1 36.6 35.5
自己資本比率(%) 74.2 80.1 78.5 79.8 80.4 74.5 76.7 79.6 80.9 83.3
CCC( 日 ) 175.9 190.3 160.6 158.0 157.8 148.7 157.6 161.4 165.9 166.6



出所:会社資料より CGRA 作成

日本ピラー工業(6490) 36
2021-11-17




<担当アナリスト>
黒田真路 パートナー、執行役員・シニアアナリスト

1992 年 4 月に勧角総合研究所(現みずほ証券)に入社、産業調査部に配属。1999 年 9 月に
ジャーディン・フレミング証券(現 JP モルガン証券)、ゴールドマン・サックス証券を経て、2020 年 1 月
迄、クレディ・スイス証券に在籍。ゴールドマン・サックス証券ではバイスプレジデント、クレディ・スイス証券
ではディレクター。一貫して機械・造船重機セクターを担当。2020 年 6 月にパートナーとして CGRA に
参画。(一社)日本証券アナリスト協会の機械業界ディスクロージャー部会の委員を歴任

星野英彦 CMA 代表取締役・チーフアドバイザー

1987 年 4 月に新日本証券(現みずほ証券)入社、企業調査部に配属。1997 年にジャーディン・
フレミング証券(現 JP モルガン証券)、2000 年にドイツ証券、2006 年に UBS 証券で 2016 年 4
月まで在籍。セルサイドアナリストとして機械、造船、重機、プラントセクターを 28 年間にわたって担当。
(一社)日本証券アナリスト協会で機械ディスクロージャー部会の副部会長を 10 年以上に渡って歴任。
2003 年より 2016 年迄、マネージングディレクター。2017 年 6 月に株式会社キャピタルグッズ・リサー
チ&アドバイザリー(CGRA)を設立、代表取締役に就任。(一社)日本証券アナリスト協会認定ア
ナリスト




株式会社 キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリー

機械セクターに特化したアドバイザリー企業。主な業務内容は(1)資本市場のニーズを満たしつつ、
経営にフィードバック可能な統合報告書の作成サポート(2021 年実績 4 社)、(2)中計作成や
事業戦略および資本政策、各種 IR&SR に関する助言業務、(3)各種 IR 資料作成と英訳業務、
(4)長期投資家と経営層に役立つ企業分析スポンサード・リサーチレポート(実績 4 社)の作成、
(5)M&A のセカンドオピニオンなど。




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