機能性ペプチドによる毛髪成長促進効果を発見

2021 年 2 月 26 日
各 位

会 社 名 株式会社アジュバンコスメジャパン
代表者名 代表取締役会長兼社長 中村 豊
(コード:4929 東証第1部)
問合せ先 取締役管理本部本部長 中川 秀男
(TEL 078-351-3136)


機能性ペプチドによる毛髪成長促進効果を発見
新たな育毛製品、スカルプケア製品への応用可能性を見出しました




当社と、国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター 器官誘導チーム(辻孝チームリ
ーダー、以下「理化学研究所」という。)の共同研究チームは、化粧品で利用されている特定の機能性
ペプチドが毛髪の成長促進効果を有することを発見しました。
毛髪は、毛包という器官の毛母細胞が毛乳頭の指令を受けて増殖することにより生み出される上皮細
胞の集合体で、その内部が線維化したものです(図 1) 。毛髪は、人々の社会性や生活の質に深く関
係するため、脱毛症の改善に向けて、様々な育毛成分の探索や多数の商品が製品化されており、現在で
も科学的なエビデンスに基づく男性型脱毛症のみならず女性の脱毛症にも有効な新規育毛成分が世界中
で期待されています。
今回、共同研究チームは新たな育毛成分の発見を目指し、成分の探索を行いました。その結果、化粧
品成分として用いられる特定の機能性ペプチド(アミノ酸が重合したもの、以下「機能性ペプチド A」
という。)がミノキシジルと同等に毛髪を成長させることを発見すると共に、この機能性ペプチド A
が、毛髪の成長を制御する毛乳頭細胞における育毛に関連する生理活性物質の遺伝子の発現を誘導する
ことを明らかにしました(図 2)。
本研究成果は、機能性ペプチド A が育毛効果を有することから皮膚科学の研究に貢献すると共に、こ
の機能性ペプチド A を育毛のための機能特化成分として応用することにより、これまでにない育毛製品
やスカルプケア製品、化粧品などへの応用が期待されます。当社は、この度の研究成果を活かし、人々
の健康長寿やヘルスケア製品への応用を進めていきます。
本研究成果から、当社と理化学研究所は共同でこの機能性ペプチド A の育毛効果において特許出願を
すると共に、次の通り第 25 回日本臨床毛髪学会学術集会(2020 年 11 月 30 日開催)にて発表いたしま
した。



[外部発表]
演題名:ペプチドによる毛幹成長促進効果に関する研究
発表者名:中村荘太 1)
共同演者名:高橋秀樹 1), 向井佑紀美 1), 永谷貴弘 1), 増田健二 1), 辻孝 2)
1) アジュバンコスメジャパン 2) 理化学研究所 生命機能科学研究センター
1.本研究の目的と概要
本研究では、育毛に有効な素材の探索と作用機序の解析を目的として、理化学研究所が保有する評価系を導入し、
共同研究チームにて多様な物質のスクリーニングを実施しました。さらに育毛作用の解析及び作用機序の解析を行
いました。毛包は再発生を繰り返す唯一の生物体器官であり、生涯にわたり毛種に特徴的な毛周期リズムを繰り返
す性質を持ちます。また、毛幹伸長は日数を経るにしたがって伸長速度が変わり、毛周期における成長期と退行期
に二分されます。
今回の研究では、スクリーニングにより発見した成分のみならず、既に育毛効果が確認されている「ミノキシジル」
を解析対象に加え、次の二段階に分け評価しました。最初に、51 種類の素材について、毛周期長が約 20 日の生体モ
デルを用いて毛幹伸長速度と最大毛幹長を測定することにより、スクリーニングを行いました。次に、育毛効果の
作用機序を明らかにするため、ヒト由来毛乳頭細胞に各成分を添加し、その遺伝子発現を解析しました。
2.育毛効果物質のスクリーニングとその結果
51 種類の素材について、毛周期長約 20 日の生体モデルを用いて毛幹伸長速度と最大毛幹長を測定した結果、コン
トロールでは毛幹の成長促進は認められなかった一方で、ミノキシジル及び機能性ペプチド A において毛幹伸長速
度と毛幹長の有意な上昇が認められました(図 3、4)
3.有効成分の毛乳頭細胞における育毛関連遺伝子発現の誘導効果の解析
育毛効果の作用機序を明らかにするために、ヒト由来毛乳頭細胞に各成分を添加し、その遺伝子発現を解析した結
果、毛包周囲の毛細血管の増殖や新生を促進する働きを持つ成長因子「VEGF」と、毛母細胞の増殖・分裂を促進する
働きを持つ成長因子「FGF-7」ともに発現量が増加し、ミノキシジルと同等またはそれ以上の濃度依存性が認められ
ました(図 5)。




4.本研究の結論と今後の展望
本研究成果では、機能性ペプチド A がミノキシジルと同等に毛髪を成長させることを発見し、毛髪の成長を制御す
る毛乳頭細胞における育毛に関連する生理活性物質の遺伝子の発現を誘導することを明らかにしました。
一般的に、男性型脱毛症の原因は毛髪の軟毛化による成長期の短縮、女性型脱毛症の原因は休止期の延長によるも
のと考えられています。また、最近の報告では VEGF が成長期毛包を増加させることや、FGF-7 が休止期毛包を減少
させることが挙げられています。それ故に、機能性ペプチド A が VEGF と FGF-7 のいずれの遺伝子発現も促進し得る
ことは、今後の皮膚科学の研究に貢献すると共に、新たな育毛製品やスカルプケア製品、化粧品への展開が期待さ
れます。
当社は、この度の研究成果を活かし、人々の健康長寿やヘルスケア製品への応用を進めてまいります。


以上

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