皮膚安全性の評価方法に関する学会発表のお知らせ

2023 年 10 月 19 日


各 位
会 社 名
代表者の役職氏名 代 表 取 締 役 社 長 小田 博英
上場市場・コード 東証プライム市場 4923

お問い合わせ先 取 締 役 経 営 企 画 部 長 山﨑 正哉
電 話 番 号 0774-44-4923

皮膚安全性の評価方法に関する学会発表のお知らせ

コタ株式会社(京都府久世郡久御山町)は、美容製品(主にシャンプー)に含まれている界面
活性剤(注1)の刺激性・かゆみの評価方法及びその抑制方法について、神戸大学 辻野義雄
特命教授(以下、辻野教授)及び高木昌宏 客員教授(以下、高木教授)と共同研究を進め、その
成果を以下の通り学会発表いたしました。
なお、当該成果を応用した界面活性剤による「かゆみを抑制する方法」については特許出願
済みであり、今後、ヘアケア製品の開発に応用していく予定です。


1.学会の概略
発 表 学 会 :IFSCC Congress 2023(国際化粧品技術者会連盟 本大会 2023)
発表タイトル:Surfactant-induced skin delicate irritation and its evaluation by human
stinging test and model membrane dynamics(和訳:界面活性剤により引き
起こされるかゆみのヒトスティンギング試験及び膜ダイナミクスによる評価)


2.本研究の背景及び発表の概要
中長期、かつ繰り返し界面活性剤に接触する機会が多い美容師の中には、慢性的な「かゆみ」
等の症状に悩み、美容師という仕事の継続を断念される場合もあり、界面活性剤によるかゆみの
抑制は、美容業界にとって重要な課題となっております。
一方、界面活性剤による「かゆみ」については、主観的な感覚であることから、研究を進める
うえで必須となる定量的な評価が難しく、
「かゆみ」に関する評価方法を含めた研究は未だ途上で
あるという状況です。
そのような中、高木教授の研究室では、界面活性剤が与えるかゆみや刺激性を評価するための
方法として、リポソーム(注2)に界面活性剤が作用したときの膜構造変化の観察による刺激の
程度を推測する研究を進めておりました。そこで当社は、辻野、高木両教授と共同研究を実施し、
「ヒトのかゆみを定量的に評価する手法」及び「かゆみを抑制する方法」を探索いたしました。
まず、界面活性剤が与えるかゆみを数値化するために、当社内の被験者に対して複数のアミノ


酸系界面活性剤を使用した皮膚への貼付試験を行い、界面活性剤によるかゆみを「ヒトかゆみ
スコア」として数値化し、影響が大きい界面活性剤を同定いたしました。また、得られた結果を
リポソームの構造変化を数値化した「リポソームスコア」と比較し、ヒトが感じるかゆみとリポ
ソームには相関があることを明らかにするとともに、かゆみを抑えることができる界面活性剤の
存在を確認いたしました。


3.今後の展望
これらの成果により、業界に先駆けた新規の皮膚かゆみ評価・改善法の開発、かゆみの少ない
シャンプー等の製品開発への応用が期待されます。


4.業績への影響
2024 年3月期の業績に与える影響はございません。




注1:シャンプー等の洗浄成分として用いられ、水に溶けやすい部分(親水部)と水に溶け
にくい部分(疎水部)の両方の性質を持つ分子であり、炭素鎖(炭素と水素からなる
疎水部)の炭素の数(鎖長)によって洗浄力等が異なります。




注2:細胞膜の成分であるリン脂質で構成されたカプセル状の分子集合体です。


以 上





(参考資料)
① 炭素鎖の異なるアミノ酸系界面活性剤のかゆみ評価
炭素数が異なる複数のアミノ酸系界面活性剤による「かゆみ」の評価試験を実施したところ、
「ヒトかゆみスコア」は炭素数に応じて変化し、特に炭素数 12 の界面活性剤は、相対的に影響が
大きいことが判明いたしました。なお、当該結果は、リポソームスコアとも一致いたしました。




② 短鎖長の界面活性剤を添加した場合のかゆみ評価
かゆみを誘起しやすい界面活性剤に、短鎖長脂肪酸を含む界面活性剤(短い炭素鎖を疎水部に
有する界面活性剤)を添加して同様の試験を実施いたしました。その結果、「ヒトかゆみスコア」
は顕著に減少し、リポソームスコアについても同様に減少いたしました。





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