毛髪内部の『タンパク質の密度の二重構造』が加齢と共に変化することを発見

News Release
2015 年 9 月 14 日



毛髪内部の『タンパク質の密度の二重構造』が

加齢と共に変化することを世界で初めて発見

株式会社ミルボン (代表取締役社長・佐藤龍二) は、大型放射光施設 SPring-8*1 を用いた毛髪の研究を
通じて、毛髪内部の外縁部とその内側でタンパク質の密度が異なる「タンパク質の密度の二重構造」を発
見しました。また、加齢に伴い髪の根元が倒れ始めた女性の毛髪内部ではこの二重構造が不均一に崩れて
いくことを世界で初めて確認しました。ミルボンでは、この知見を来春発売予定のヘアケア製品に応用し
ていきます。これらの研究成果は、以下の外部発表にて報告しました。


【外部発表】
発表会:山口東京理科大学 第 234 回コロキウム
発表タイトル:"放射光を利用した頭髪用化粧品の開発 ~放射光を用いた毛髪内構造の検討~"
発表者:渡邉 紘介, 山中 良介, 鈴田 和之 , 前田 貴章, 伊藤 廉
発表日:2015 年 9 月 11 日


【研究の背景】
美しいヘアデザインを保つ上で、髪の根元の立ち上がりは重要な要素の一つと言われています。年齢を
重ねていくことで、毛髪が細くなる・本数が減るなどの加齢変化によって、根元が立ち上がりにくくなる
ことは知られていました。この現象について研究する中、美容師の方々へのヒアリングにおいて、先述の
加齢変化が起きる前に、毛髪が根元から毛流れに沿って倒れ始めるケースが多くあると分かりました(図
1)。こういった根元の倒れ始めの原因は分かっておらず、それに対する解決策も現状では存在していませ
ん。そこでミルボンでは、この根元の倒れ始めの原因を明らかにするために研究を行いました。


【研究の成果】
~「タンパク質の密度の二重構造」の発見~
髪の根元が立ち上がった女性 10 人の毛髪の根元部分を、大型放射光施設 SPring-8 にて顕微 FT-IR 法*2
を用いて調べたところ、タンパク質を示すと知られるアミドⅢバンド*3 のピークの強度において、外縁部
の強度がその内側より高いことを発見しました(図 2)。このことは、毛髪の外縁部にはタンパク質の密度
のより高い領域が存在し、「タンパク質の密度の二重構造」が形成されていると考えられます。




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~加齢に伴う根元の倒れ始めと二重構造の崩れ~
加齢に伴い髪の根元が倒れ始めた女性 10 人の毛髪について同様に調べたところ、根元の立ち上がった
毛髪と異なり、タンパク質の二重構造が不均一に崩れていくことを確認しました(図 3)。この結果から、
加齢に伴って起こる二重構造の不均一な崩れが根元の倒れ始めの一つの要因になっていると分かりまし
た。
~今回の研究の新規性~
これまで、顕微 FT-IR などを用いて、毛髪内部の情報を捉えた例はありましたが、毛髪内部でタンパク
質の密度の二重構造を形成し、加齢と共にその密度差が変化することを確認した例はありませんでした。


【今後の予定】
SPring-8 を用いて毛髪内部のタンパク質の密度を解析することにより、毛髪に起こる加齢変化の新たな
要因を分子レベルで明らかにすることが出来ました。さらに、こうした加齢変化を効果的にケアする方法
も突き止めています。毛髪内部のタンパク質の二重構造とそのケアに関する知見については、以下の外部
発表で報告予定です。


【外部発表予定】
発表会:平成 27 年度 繊維学会秋季研究発表会
発表タイトル:"赤外顕微鏡を用いた毛髪内構成成分分布の検討"
発表者:渡邉 紘介, 山中 良介, 鈴田 和之 , 前田 貴章, 伊藤 廉
発表日:2015 年 10 月 22~23 日


発表会:第 67 回 日本生物工学会 大会
発表タイトル:"Age-related change of components distribution in Japanese woman’s hair using
infrared microscope "
発表者:渡邉 紘介, 山中 良介, 鈴田 和之 , 前田 貴章, 伊藤 廉
発表日:2015 年 10 月 26 日




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図 1 根元の立ち上がりの違い

根元が倒れ始めることで、分け目やつむじが目立ち始め、ヘアデザインに影響が出てくる




図 2 毛髪内におけるアミドⅢのピーク面積の相対値

毛髪には、外縁部がその内側よりもタンパク質の密度の高い二重構造になっていると発見された




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図 3 根元の倒れ始めと二重構造の不均一な崩れの関係

根元が倒れ始めた人では、タンパク質の密度の二重構造が不均一に崩れていくことが確認された



本実験の一部は、(公財)高輝度光科学センター(SPring-8/JASRI)の産業利用一般課題研究 2015A1654 で行
われた成果である。




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≪用語解説≫
*1 大型放射光施設 SPring-8
播磨科学公園都市(兵庫県)にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設(同クラスのものは
アメリカとヨーロッパ、世界で 3 台しかない)。SPring-8 の名前は Super Photon ring-8 GeV(80 億電子
ボルト)に由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた
時に発生する強力な電磁波のこと。SPring-8 では、この放射光を用いてナノテクノロジー・バイオテク
ノロジー・産業利用まで幅広い研究が行われている。


*2 顕微 FT-IR 法
顕微 FT-IR 法とは、顕微フーリエ変換赤外分光(Fourier Transform-Infrared Spectroscopy)法のこと
で、化合物の構造推定を行う分析装置である。赤外線を分子に照射すると、分子を構成している原子間の
振動エネルギーに相当する赤外線を吸収する。この吸収を調べることによって化合物の構造推定を行う
のが赤外分光法である。顕微 FT-IR 法は特に、FT-IR 単体では測定の出来ない微小領域の分析において
有用な手法の一つである。この手法は、各種工業製品の品質管理や科学捜査、生物医学領域における組成
分析など、様々な分野において活用されている。


*3 アミドⅢバンド
アミドⅢバンドとは、赤外分光法によって得られた毛髪のピークのうち、タンパク質に存在するペプチ
ド結合の C-N 伸縮振動(下図の赤枠内),N-H 変角振動(下図の青枠内)の構造を表す 1240 cm-1 付近の
ピークである。




■リリースに関するお問い合わせ先
広報室 大阪市都島区善源寺町 2-3-35
TEL 06-6928-2331 FAX 06-6925-2301
株式会社ミルボン/本社:大阪市都島区、社長:佐藤龍二、証券コード:4919(東証1部)

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