カイコで生産した抗体から糖鎖構造が均一である抗体を作製する技術開発の成功について

平成 27 年 7 月 23 日
各 位
会 社 名 株 式 会 社 免 疫 生 物 研 究 所
(コード番号:4570)
本店所在地 群馬県藤岡市中字東田 1091 番地1
代 表 者 代表取締役社長 清 藤 勉
問 合 せ 先 取締役事業統括推進本部長 中 川 正 人
電 話 番 号 0274-22-2889(代表)
U R L http://www.ibl-japan.co.jp



カイコで生産した抗体から糖鎖構造が均一である抗体を作製する
カイコで生産した抗体から糖鎖構造が均一である抗体を作製する
糖鎖構造が均一である抗体を作製
技術開発の成功について
技術開発の成功について

この度、当社は、公益財団法人野口研究所との共同研究として、遺伝子組換えカイコを用
いて生産した抗体に付加されている糖鎖を均一化する技術の開発に成功し、さらに、糖鎖を
均一化した抗体が高い抗体依存性細胞障害(ADCC)活性(※1)を有することを確認しまし
たので、お知らせいたします。



【背景】
当社は、遺伝子組換えカイコを用いて抗体を生産することに成功し、さらに、カイコ生産
抗体の糖鎖にはコアフコースが含まれないことを発見し、カイコにより高い ADCC 活性を有
する抗体医薬品が製造できる可能性を示してきました。
一方、公益財団法人野口研究所は、卵黄から均一なシアリルグリコペプチド(SGP)を量
産する技術や糖鎖を化学合成する技術など各種均一糖鎖を獲得する技術を有しており、これ
ら均一糖鎖をタンパク質に転移させる「糖鎖リモデリング技術」を開発していました。
当社と公益財団法人野口研究所は、平成 24 年 10 月 1 日に共同研究契約を締結し、両者が
有する基盤技術を融合することにより、カイコで生産した抗体から糖鎖構造が均一である抗
体を作製する技術の開発に取り組んでまいりました。
一般に、糖タンパク質に付加されている糖鎖の構造は不均一であることが知られています
が、抗体医薬品などのバイオ医薬品の製造においては、その品質管理の観点から、構造の不
均一性は好ましくなく、糖鎖構造を均一化することが望まれています。また、特定の構造の
糖鎖がタンパク質の活性に寄与する場合、活性の高い構造の糖鎖のみを有する糖タンパク質
の生産技術が望まれています。


【本共同研究の方法】
この共同研究では
① 当社が抗 HER2 ヒト化モノクローナル抗体(トラスツズマブ)(※2)を生産する遺伝
子組換えカイコを作出し、カイコの繭から糖鎖にコアフコースを含まないトラスツズ
マブを精製。
② (公財)野口研究所がトラスツズマブに付加されている不均一な糖鎖を切断する複数
のエンド酵素の最適な組み合わせを決定し、糖鎖を切断したトラスツズマブを調製。


③ (公財)野口研究所が予め調製しておいた数種類の均一糖鎖を、エンド酵素改変体を
用いて、糖鎖を切断したトラスツズマブに転移。
④(公財)野口研究所が糖鎖均一化トラスツズマブの ADCC 活性を測定。


【本共同研究の成果】
本共同研究により、数種類の糖鎖均一化トラスツズマブを調製することに成功しました。
さらに、これら糖鎖均一化トラスツズマブの ADCC 活性を測定し、構造の異なる糖鎖によ
って ADCC 活性が異なること、また、糖鎖にコアフコースが含まれないため ADCC 活性が飛躍
的に高まることを見出しました。
糖タンパク質の基礎研究において、構造が不均一であるために糖鎖の活性を
糖タンパク質の基礎研究において、構造が不均一であるために糖鎖の活性を正確に評価
、構造 糖鎖の活性
できない問題を解決する手段として、本技術が大変有用な実験ツールとなること
問題を解決する手段として、本技術が大変有用な実験ツールとなることが期待で
できない問題を解決する手段として、本技術が大変有用な実験ツールとなることが期待で
きます。
また、当社は、本研究の成果が将来的には、遺伝子組換えカイコを用いた抗体医薬品製
また、当社は、本研究の成果が将来的には、遺伝子組換えカイコを用いた抗体医薬品製
造における新しい可能性を示すものと考えています。
造における新しい可能性を示すものと考えています。



尚、本研究成果の詳細につきましては、米国の科学雑誌『PLOS ONE』(7 月 22 日付、オ
米国の科学雑誌『
米国の科学雑誌 ONE』
ンライン)に掲載されました。また、本技術の発明について、平成 26 年 4 月 25 日に特許
ンライン)に掲載されました。 本技術の発明について、平成
本技術の発明について、
出願を完了しています。

以上


【用語説明】
(※1)抗体依存性細胞障害(ADCC)活性
抗体が抗原となる細胞や病原体に結合すると、その抗体がマクロファージや NK 細胞等の
エフェクター細胞を呼び寄せ、細胞や病原体を殺傷します。これを、抗体依存性細胞障害
(ADCC)活性といいます。ADCC 活性は、抗体医薬品の抗腫瘍作用において、大変重要なメ
カニズムと考えられています。抗体に付加されている糖鎖にコアフコースが含まれないと、
ADCC 活性は飛躍的に上昇します。


(※2)抗 HER2 ヒト化モノクローナル抗体(トラスツズマブ)
HER2 は、ヒト上皮増殖因子受容体ファミリーに属する増殖因子受容体であり、ヒト乳癌
細胞等において高発現が認められます。HER2 に対するヒト化抗体である「抗 HER2 ヒト化モ
ノクローナル抗体(トラスツズマブ)」は、抗腫瘍作用をもつ抗体医薬品(ハーセプチン)
として、 トラスツズマブの主な抗腫瘍メカニズムは、
乳癌や胃癌の治療に用いられています。
ADCC 活性であると考えられています。





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