スーパーコンピュータ「京」がGraph500において5期連続で世界1位を獲得 ービッグデータの処理で重要となるグラフ解析で最高の評価ー

2017 年 6 月 23 日
各位
株式会社フィックスターズ
代表取締役社長 三木 聡
(コード番号: 3687 東証一部)
問合せ先 取締役管理本部長 堀 美奈子
(電話番号:03-6420-0751)


スーパーコンピュータ「京」が Graph500 において 5 期連続で世界 1 位を獲得
-ビッグデータの処理で重要となるグラフ解析で最高の評価-



九州大学と東京工業大学、理化学研究所、スペインのバルセロナ・スーパーコンピューティング・センター、
富士通株式会社、株式会社フィックスターズによる国際共同研究グループは、2017 年 6 月 21 日(現地時間)
に公開された最新のビッグデータ処理(大規模グラフ解析)に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ラ
*1
ンキングである Graph500 において、スーパーコンピュータ「京(けい) による解析結果で、2016 年 11

月に続き 5 期連続(通算 6 期)で第 1 位を獲得しました。


大規模グラフ解析の性能は、大規模かつ複雑なデータ処理が求められるビッグデータの解析において重要とな
るもので、
「京」は正式運用開始から 5 年以上が経過していますが、今回のランキング結果によって、現在で
もビッグデータ解析に関して世界トップクラスの極めて高い能力を有することが実証されました。今後、本成
果の広範な普及のため、プログラムをオープンソース化し、大規模高性能グラフ処理のグローバルスタンダー
ドを確立して行く予定です。


本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 CREST「ポストペタスケール高性能計
算に資するシステムソフトウェア技術の創出」
(研究総括:佐藤 三久 理研計算科学研究機構)における研究
課題「ポストペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤」 研究代表者 藤澤 克樹
( : 九州大学、
拠点代表者:鈴村 豊太郎 バルセロナ・スーパーコンピューティング・センター:2017 年 3 月終了)および
「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化」
(研究総括:喜連川 優 国立情報学研究
所)における研究課題「EBD:次世代の年ヨッタバイト処理に向けたエクストリームビッグデータの基盤技術」
(研究代表者:松岡 聡 東京工業大学)の一環として行われました。
*5
ノード プロブレム *4
順位 システム名称 設置場所 ベンダ 国名 *6
GTEPS
数 スケール
1 京 理研 富士通 日本 82,944 40 38,621
計算科学研究機構
2 神威太湖之光 無錫国立スーパーコン NRCPC 中国 40,768 40 23,756
(Sunway TaihuLight) ピューティングセンタ
3 Sequoia ローレンス・リバモア研 IBM 米国 98,304 41 23,751
4 Mira アルゴンヌ研 IBM 米国 49,152 40 14,982
5 JUQUEEN ユーリッヒ研 IBM 独 16,384 38 5,848
2017 年 6 月 21 日に公開された Graph500 上位 5 位(http://graph500.org/?page_id=254)


1. Graph500 とは
近年活発に行われるようになってきた実社会における複雑な現象の分析では、多くの場合、分析対象は大規
模なグラフ(節と枝によるデータ間の関連性を示したもの)として表現され、それに対するコンピュータによ
る高速な解析(グラフ解析)が必要とされています。例えば、インターネット上のソーシャルサービスなどで
は、「誰が誰とつながっているか」といった関連性のある大量のデータを解析するときにグラフ解析が使われ
ます。また、サイバーセキュリティや金融取引の安全性担保のような社会的課題に加えて、脳神経科学におけ
る神経機能の解析やタンパク質の相互作用分析などの科学分野においてもグラフ解析は用いられ、応用範囲が
大きく広がっています。こうしたグラフ解析の性能を競うのが、2010 年から開始されたスパコンランキング
「Graph500」です。
*2
規則的な行列演算である連立一次方程式を解く計算速度(LINPACK )でスーパーコンピュータを評価する
*3
TOP500 においては、「京」は 2011 年(6 月、11 月)に第 1 位、その後、2017 年 6 月 19 日に公表された
最新のランキングでも第 8 位につけています。一方、Graph500 ではグラフの幅優先探索(1 秒間にグラフの
*4
たどった枝の数(Traversed Edges Per Second ; TEPS )という複雑な計算を行う速度で評価されており、計
算速度だけでなく、アルゴリズムやプログラムを含めた総合的な能力が求められます。
*5
今回 Graph500 の測定に使われたのは、「京」が持つ 88,128 台のノード の内の 82,944 台で、約 1 兆個の
*6
頂点を持ち 16 兆個の枝から成るプロブレムスケール の大規模グラフに対する幅優先探索問題を 0.45 秒で解
くことに成功しました。ベンチマークのスコアは 38,621GTEPS(ギガテップス)です。Graph500 第 1 位獲
得は、「京」が科学技術計算でよく使われる規則的な行列演算だけでなく、不規則な計算が大半を占めるグラ
フ解析においても高い能力を有していることを実証したものであり、幅広い分野のアプリケーションに対応で
きる「京」の汎用性の高さを示すものです。また、それと同時に、高いハードウェアの性能を最大限に活用で
きる研究チームの高度なソフトウェア技術を示すものと言えます。
「京」は、国際共同研究グループによる「ポ
ストペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤」および「EBD:次世代の年ヨッタバイト処理
に向けたエクストリームビッグデータの基盤技術」 2 つの研究プロジェクトによってアルゴリズムおよびプ

ログラムの開発が行われ、2014 年 6 月に 17,977GTEPS の性能を達成し第 1 位、また「京」のシステム全体
を 効率良く 利用可能 にする アルゴリ ズムの改 良が行 われ 2 倍近く性 能を向 上させ、 2015 年 7 月に
38,621GTEPS を達成し第 1 位でした。そして今回のランキングでもこの記録は神威太湖之光等の新しいシス
テムに比べても大幅に高いスコアであり、世界第 1 位を 5 期連続(通算 6 期)で獲得しました。
2. 今後の展望
大規模グラフ解析においては、アルゴリズムおよびプログラムの開発・実装によって性能が飛躍的に向上す
る可能性を示しており、研究グループでは今後も更なる性能向上を目指していきます。また、上記で述べた実
社会の課題解決および科学分野の基盤技術へ貢献すべく、スーパーコンピュータ上でさまざまな大規模グラフ
解析アルゴリズムおよびプログラムを研究開発していきます。


3. 関連サイト
・ Graph500 の詳細について(英語) http://graph500.org/


補足説明
*1 スーパーコンピュータ「京(けい)」
文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プ
ログラムの中核システムとして、理研と富士通が共同で開発を行い、2012 年に共用を開始した計算速度
10 ペタフロップス級のスーパーコンピュータ。 (けい) は理研の登録商標で、10 ペタ
「京 」 (10 の 16 乗)
を表す万進法の単位であるとともに、この漢字の本義が大きな門を表すことを踏まえ、「計算科学の新た
な門」という期待も込められている。


*2 LINPACK
米国のテネシー大学の J. Dongarra 博士によって開発された規則的な行列計算による連立一次方程式の解
法プログラムで、TOP500 リストを作成するために用いるベンチマーク・プログラム。ハードウェアのピ
ーク性能に近い性能を出しやすく、その計算は単純だが、応用範囲が広い。


*3 TOP500
TOP500 は、世界で最も高速なコンピュータシステムの上位 500 位までを定期的にランク付けし、評価
するプロジェクト。1993 年に発足し、スーパーコンピュータのリストを年 2 回発表している。


*4 TEPS (Traversed Edges Per Second)
Graph500 ベンチマークの実行速度をあらわすスコア。Graph500 ベンチマークでは与えられたグラフの
頂点とそれをつなぐ枝を処理する。Graph500 におけるコンピュータの速度は 1 秒間あたりに調べ上げた
枝の数として定義されている。G(ギガ)は 10 の 9 乗(10 億)を表す接頭辞。


*5 ノード
スーパーコンピュータにおけるオペレーティングシステム(OS)が動作できる最小の計算資源の単位。
「京」の場合は、ひとつの CPU(中央演算装置)、ひとつの ICC(インターコネクトコントローラ)、
および 16GB のメモリから構成される。


*6 プロブレムスケール
Graph500 ベンチマークが計算する問題の規模をあらわす数値。グラフの頂点数に関連した数値であり、
プロブレムスケール 40 の場合は 2 の 40 乗(約 1 兆)の数の頂点から構成されるグラフを処理すること
を意味する。


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