株主の皆さまへ #3

株主の皆さまへ #3


はじめに


昨年 4 月から始めた「株主の皆さまへ」レターですが、今回は 2 月 29 日に「株主の皆
さまへ #2」を出してからまだ 1 カ月半しか経過していないため、簡潔に書かせて頂きま
す。


マガシーク株式会社(以下「マガシーク」。運営する通販サイトは MAGASEEK と表
記)の M&A やその PMI(Post Merger Integration)の具体的な内容などは前回のレター
をご参照下さい。


2023 年度(24 年 2 月期)の実績に関して


2023 年度はグループ取扱高(グループ会社間取引相殺前、以下同様)286 億円 / 昨年
対比 + 17%、営業利益 16.8 億円 / 昨年対比 + 70%、と大きく伸長しました。
特に RBKJ(Reebok Japan)M&A の PMI を通じてグループ収益性が大幅に高まった事
から「大増益の年」となりました。


しかしながら国内ファッション業界に大きな影響を与えた暖冬や大手出店ブランドの
LOCONDO 退店、またそれを打開するために広告宣伝を強化したものの期待以上の効果
が得られなかった事などが背景に、期初に掲げた年度計画「取扱高 300 億円、営業利益
17.5 億円」には若干、届きませんでした。


その意味では 100 点満点の実績とは言えないものの「2030 年に取扱高 1000 億円、営業
利益 100 億円」の長期ビジョンを目指した大きな流れとしては順調に来ていると認識して
います。


直近の M&A に関して


本年度の 24 年度(25 年 2 月期)ですが、Reebok Japan の成長戦略に加えて 24 年 1〜3
月にかけて株式取得した、マガシーク、BRANDELI、FASCINATE、TCB jeans の 4 社の
M&A によってジェイドグループはますます成長し続ける見込みです。


こんなにも M&A を連発し、ジェイドグループは何をしようとしているのか?
今回のレターではまずはその話をしようと思っていますが、ジェイドグループの M&A


は大きく 2 つのパターンに分類されます。


1つ目は「既存市場のシェア拡大と PMI 効果の最大化」のパターンで、最初の2つ、マ
ガシークと BRANDELI はこれに当たります。Reebok Japan もこれに該当します。
ファッション「EC」市場はまだまだ成長して行く市場であるもののファッション市場全
体が伸びて行く事は見込みにくく、またファッション EC 市場においても競争が激化して
来ている面は否めません。競争市場において一定の収益性を維持しながら拡大し続けるた
めには「規模」は欠かせないポイントで、その目安が前回のレターでも書いた「市場の 2
位」以内になります。


ではどうやって 2 位以内のポジションを構築するか?
競争がまだ激化していない成長市場においては積極投資による有機的な成長(Organic
Growth)余地は大きくなります。
例えば QR コード決済市場が立ち上がった段階では PayPay が積極投資をして大きなシ
ェアを獲得しましたが、これはまだ明確な勝者がいない成長市場だから有効だったのであ
って、現在これを他社が模倣しても PayPay の 1/10 のシェアも取れないでしょう。
このように時が経って競争が激化し、市場が成熟して行くにつれて積極投資による
Organic Growth の余地は限定的になって来ます。ではもう為す術が無いのかと言えばそう
ではなく、競争が激化するにつれて、単独では競争に付いて来れなくなるプレイヤーの数
が増えて来るため、それらのプレイヤーとの合従連衡を通じた M&A による成長余地が大
きくなって来ます。


そしてその意味ではジェイドグループが過去全ての M&A の PMI に成功し、その統合自
体をパッケージ化した事はファッション EC モール市場という競争市場においては「圧倒
的な武器」になる、と考えています。


なおジェイドグループのこの「圧倒的な武器」の正体、それを一言で言えば「IT と物流
の統合」と「ジェイドグループ 3 つの事業とのシナジー」になります。
前者に関しては前回のレターで詳述したため、今回は後者に関して書かせて頂きますと
ジェイドグループにおいては EC モール事業、プラットフォーム(B2B)事業、ブランド
事業という 3 つの事業が存在します。これらはそれぞれが独立した事業ではなく、それぞ
れが「相互補完的」
、要は、1 つの事業が成長すれば残りの 2 つの事業も成長する、という
特徴を持っています。


例えば BRANDELI は株式取得と同時に「IT と物流の統合」を完了し、BRANDELI と
LOCONDO 間の品揃え共有を開始したため、翌月から売上も収益性も大幅に増やす事が


できました。M&A の投資回収はわずか 1 カ月で完了し、これからのジェイドグループに
おいて売上と利益をもたらしてくれる存在になってくれそうです。
この効果は EC モール事業のサイト間シナジーによるものですが、加えて BRANDELI
出店ショップ様の一部からプラットフォーム B2B サービスにご興味を持って頂いたり
(EC モール事業 ⇔ プラットフォーム事業間のシナジー)
、Reebok のアウトレット商品
が BRANDELI で売れたり(EC モール事業 ⇔ ブランド事業間のシナジー)と、他の事業
とのシナジーも徐々に具現化されています。
単に IT と物流を統合するだけでなく、このような事業間シナジーを創出するまでの流
れをパッケージ化できているため「圧倒的な武器」であると認識しています。


最後にマガシークにおいては市場シェア 2 位というポジションの構築や PMI による収
益性向上のアップサイド、という面だけでなく、株式会社 NTT ドコモ(以下「ドコモ」
と言います)や伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠」と言います)との業務提携を通じた
「援護射撃効果」までも存在する事も以前のレターで申し上げた通りです。


今後も我々はファッション EC モール市場だけでなく 8 兆円と言われる国内ファッショ
ン市場において M&A を通じた取扱高と市場シェアの拡大をしながら、PMI パッケージと
いう圧倒的な武器を駆使して収益性の拡大も実現します。


ジェイドグループが M&A を連発している理由、その2は「ブルーオーシャンへの新規
参入」になります。具体的に我々が M&A を通じて新規参入によって強化しようとしてい
る領域は「越境 EC 市場」で、FASCINATE、TCB jeans の M&A はこのパターンに該当
します。


Reebok Japan では現在、10 店舗の直営店を運営していますが、近年の円安トレンドを
受けてインバウンド比率はますます高まっています。また円安トレンドにおいては輸入事
業が厳しくなる反面、輸出事業にとっては追い風になる事は株主の皆さまであれば容易に
想像頂けるかと思います。


しかしながら越境 EC 事業をちゃんとやろうと思うと、言語の壁、物流の壁、広告の運
営、各国の法令順守など、やらなければならない壁はたくさん存在します。
その壁をいち早く乗り越えるべく、売上規模としてはどちらも数億円規模かもしれない
けども、越境 EC 売上割合が非常に高い FASCINATE と TCB jeans にグループに加わって
頂く事で、我々としてもそのノウハウを享受させてもらいつつ、ブルーオーシャンである
越境 EC 市場をグループとして育てて行く、これがこの 2 社の M&A の目的になります。




今年度はマガシークの PMI に多くの時間を割かれるため、本腰を入れるのは 25 年度か
らになると思いますが、今年度はこのような「新規参入のための M&A」をしつつ、まず
は土台を整えて行きたいと考えています。


そしてこの越境 EC という事業も立ち上がり始めたら 3 つの事業が全てパワーアップし
圧倒的な武器が「最強の武器」になる未来も描いています。


2024 年度、2025 年度計画


これらを踏まえた 24 年度(25 年 2 月期)
、25 年度(26 年 2 月期)のグループ計画値は
以下になります。現在、ジェイドグループが発表している中期計画は 24 年度までですが
今回は 25 年度までの新中期計画として位置付けています。


⚫ 2024 年度: 取扱高: 550 億円 (+ 92%)、営業利益: 17 億円 (+ 1%)
⚫ 2025 年度: 取扱高: 605 - 630 億円 (+ 10 / + 15%)、営業利益: 35 - 40 億円
(+ 105% / + 135%)


24 年度の取扱高はマガシークの M&A によって大幅増になるものの、営業利益は微増に
留まる見込みです。
その理由としてはそもそも昨年度のマガシーク営業利益はほぼ 0 で、PMI プロセスは 1
年間に亘って実行して行くため、24 年度からすぐに PMI 効果をさせる事はできません。
マガシークはこれまでの他の M&A 企業と比べて取扱高規模も大きくまた事業も多岐に亘
っているため、PMI は丁寧に進めて行きます。
また PMI プロセスにおいては様々な統合コストや償却費用等も発生する予定です。例え
ば倉庫移管するにあたっては当然ながら引越し費用や原状回復費用が発生しますし、シス
テム統合にあたってはこれまでの無形資産償却コストなども発生します。
さらにはこれまでのマガシークは何とか最終黒字を確保するため、成長投資を抑制して
黒字を確保していた面も否めないため、たとえ一時的にコスト増になろうとも必要な水準
まで投資額を引き上げて行きます。
その意味では 24 年度は営業利益の最大化を焦る事なく丁寧にグループ統合を進めつつ
投資も再開して行く「増収の年」と位置付けています。


そして翌年の 2025 年度ですが、24 年度のグループ統合を経てジェイドグループ全体と
してはまたもや「大増益の年」になる見込みです。
これまでの M&A 同様、統合さえ完了すれば多くの外部コストを内製化し、またグルー
プ集約する事で多くのコスト削減や収益性向上を実現できる事は目に見えているため、25


年度からはきちんと利益という果実を収穫して行きます。
さらに利益を増やすだけでなくマガシークの M&A を通じて実現した、ドコモと伊藤忠
との業務提携のパワーを最大限に具現化し、集客と品揃えというファッション EC モール
市場において最重要な2つを強化し続けます。これによって 25 年度は利益増だけでなく
「取扱高も二桁増」という指標も実現します。


ここまで整えば、25 年〜30 年の 5 年間の平均成長率としておよそ +10%を継続して行
ければ 2030 年度には取扱高 1000 億円に届きますし、25 年度以降もマガシークの収益性
改善の余地は多少残るため「限界利益率 16%、固定費 60 億円、営業利益 100 億円」も現
実的な水準になって来ます。


要は、この 2 年間の計画を実現して行けば、長期ビジョンは射程圏内に入って来る。そ
のように考えています。


おわりに


昨年の暖冬からこのレターに書いている現在に至るまで、この半年間は、ファッション
EC 市場は厳しい戦いを強いられています。やっと冬が来たかと思えば今度は冬が長引き
そしていよいよ春が来るかと思えば間もなく真夏日が予想され、春物の販売機会を大きく
失っている中、ファッション EC 市場だけでなくファッション市場全体においても望まし
い状況とは言えません。


しかしながら上記の通り、ジェイドグループには PMI パッケージという圧倒的な武器が
あるため正に「ピンチをチャンスに変えられる」のが我々の強みです。また長期ビジョン
を実現するまでのロードマップを明確に描く事ができたのは大きな前進であると考えてい
ます。


最後に改めて長期ビジョン「2030 年度に取扱高 1000 億円、営業利益 100 億円」を実現
するまでのロードマップをまとめると以下になります。


⚫ 24 年度: マガシークの統合と経営改革を実現し、取扱高 550 億円を実現する
⚫ 25 年度: 統合改革効果を通じて営業利益 35 - 40 億円を実現しつつ、ドコモ & 伊藤
忠とのパートナーシップを通じて +10%以上の成長率を実現する
⚫ 26 年度以降:ドコモ & 伊藤忠とのパートナーシップに加えて、越境 EC 市場とい
う新規事業や更なる M&A も含めて、30 年度までに取扱高 1000 億円、営業利益
100 億円を実現する


描いたロードマップを着実に歩み続けます。これからもジェイドグループの応援の程、
よろしくお願いします。


2024 年 4 月 15 日


ジェイドグループ株式会社 代表取締役社長 CEO


田中 裕輔





14486

新着おすすめ記事