TCFD提言に基づく情報開示に関するお知らせ

2023年2月14日
各 位
会 社 名 株式会社ムゲンエステート
代表者名 代表取締役社長 藤田 進一
( コード番号:3299 東証プライム )
問合せ先 常務執行役員 管理本部長 大久保 明
( TEL. 03-6665-0581 )

TCFD 提言に基づく情報開示に関するお知らせ

当社は、金融安定理事会(FSB)により設置された「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォー
ス) ※提言に基づく情報開示を行いましたので、下記のとおりお知らせいたします。






近年、気候変動は大きな社会経済リスク及び機会をもたらす要因となっており、世界各国で脱
炭素化の動きが広がっています。
当社グループの主力事業である買取再販事業は、中古不動産の再生・流通を促し、今ある資源
を有効活用する環境に優しいビジネスモデルとなります。一方で、水害など気候変動によるさま
ざまな影響を受ける可能性もあり、気候変動への対応が事業の持続可能性に不可欠であると認識
しております。持続可能な社会の実現のため、環境に配慮した事業活動への取り組みの一環とし
て、2022 年 12 月に TCFD 提言に賛同することを表明いたしました。
この度、気候変動が当社グループの事業に及ぼす影響についてシナリオ分析を実施した上で、
TCFD が推奨する「ガバナンス」
「戦略」
「リスク管理」
「指標と目標」に基づき別紙のとおり開示い
たしました。




※ G20 からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)が 2015 年に設立。気候変動によるリスク及び
機会が経営に与える財務的影響を評価し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」
について開示することを推奨しています。
(TCFD ウェブサイト:https://www.fsb-tcfd.org/)




以上
TCFD 提言に基づく情報開示




【TCFD 提言に基づく情報開示】


ムゲンエステートグループ(以下、当社グループ)は、経営の考え方の根幹であり社名の
由来でもある『夢現』(夢を現実に)を社是として掲げ、お客様の夢を実現することで会社
としても成長し、ステークホルダーを含めたすべての人の夢の実現を目指してまいります。
そのために、ミッションを『不動産に新たな価値を創造し、すべての人の豊かな暮らしと
夢に挑戦する』とし、行動の基軸として『速さを追求』
『あくなき挑戦』
『多様な連携』『先
を見通す』
『貫く責任』の 5 つのバリューを定め、持続的な成長とサステナビリティ経営の
推進に取り組んでおります。


この度、当社グループは持続可能な社会の実現のため、環境に配慮した事業活動への取り
組みの一環として、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同するとと
もに、気候変動に起因する事業等のリスク・機会の把握と適切な情報開示を行ってまいりま
す。




■TCFD 提言が求める開示推奨項目
要求項目 ガバナンス 戦略 リスク管理 指標と目標

項目の詳細 気候関連のリスク及び 気候関連のリスク及び 気候関連のリスクに対す 気候関連のリスク及び

機会に係る組織のガバ 機会に係る事業(ビジ る組織の識別・評価・管 機会を評価する際に用

ナンス体制の開示 ネス・戦略・財務計 理プロセスの開示 いる指標と目標の開示

画)への影響の開示




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【ガバナンス】


当社グループは、事業を通して持続可能な社会の実現を推進するために、代表取締役社長
を委員長とした「サステナビリティ委員会」を設置しております。


同委員会は原則年に 2 回以上開催するものとし、気候変動課題を含む当社グループのサ
ステナビリティ課題について、審議・検討を行い、サステナビリティ活動に関する全体計画
の立案、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行っております。


また、サステナビリティ委員会にて審議された重点課題及び対応方針については、取締役
会にその推進状況を報告し、必要に応じて取締役会にて審議及び対応の決定を行ってまい
ります。


役割 担当
委員長 代表取締役社長
委員メンバー 取締役会が選任した委員及び事業部門責任者や社外取締役
※必要に応じて社外専門家の招集を行う。

事務局 経営企画部門
設置時期 2022 年7月




2022 年度はサステナビリティ委員会を2回開催し、以下について議論を行いました。


開催月 議題
第1回 9月  ESG 経営について研修
 CDP への回答について報告
 気候変動 ガバナンス・リスク管理について(TCFD 対応)
 人材ビジョン・育成方針・人材戦略について(人的資本対応)
第2回 11 月  気候変動 戦略・指標と目標について(TCFD 対応)
 TCFD 提言への賛同について
 As is-To be・施策と KPI について(人的資本対応)




-2-
■サステナビリティ推進体制図




-3-
【戦略】


シナリオ分析


TCFD 提言では、気候変動に起因する事業への影響を考察する為、複数の気候関連シナリ
オに基づき検討を行う「シナリオ分析」を行うことが推奨されており、当社グループでも不
確実な将来に対応した戦略立案・検討を行うため、下記のようにシナリオ分析を実施いたし
ました。


今回、初年度のシナリオ分析として、2050 年時点を想定し、現状を上回る気候変動対策
が行われず、異常気象の激甚化が想定される「4℃シナリオ」と、脱炭素に向けて野心的な
気候変動対策の実施が想定される「1.5℃シナリオ」を参考に、定性・定量の両面から考察
を行いました。



■4℃シナリオ (脱炭素社会への移行に伴うリスク:小 異常気象などの物理的なリスク:大)

2100 年時において、産業革命時期比で 3.2℃~5.4℃(約4℃)の平均気温上昇が想定されるシナリオ。

気候変動問題を軽減するための積極的な政策・法規制等は敷かれず、異常気象の激甚化が顕著に表れる。

【参考シナリオ】IEA Stated Policies Scenario、RCP8.5




■1.5℃シナリオ (脱炭素社会への移行に伴うリスク:大 異常気象などの物理的なリスク:小)

2100 年時において、産業革命時期比で 1.5℃未満の平均気温上昇が想定されるシナリオ。

カーボンニュートラル実現を目指し、気候変動問題を抑制するために現状以上の厳しい政策・法規制等が敷かれる。

【参考シナリオ】IEA Net Zero Emissions by 2050、Sustainable Development Scenario、RCP2.6



気候変動問題を軽減するための積極的な政策・法規制等は敷かれず、異常気象の激甚化が顕著に表れるシナリオ
考察の結果、いずれのシナリオにおいても、気候変動起因による主なリスクとして、洪水
(参考シナリオ)IEA Stated Policies Scenario、RCP8.5
や高潮による保有資産への物理的な被害が想定されております。今後の対応として、ハザー
ドマップを意識した不動産立地選定基準の強化等、事業のレジリエンス性を高めるために、
より一層の災害対策を講じてまいります。


一方、機会として 1.5℃シナリオにおいては、脱炭素社会への移行に伴う ZEB・ZEH 化に
よる再エネ・省エネ関連のリフォーム工事の需要増加や、中古不動産の環境価値向上による
事業収益機会の増加が想定されております。今後も環境に配慮した事業活動を通じて、脱炭
素社会への貢献を行うとともに、気候変動の抑制に寄与してまいります。



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■自社グループに想定される気候関連リスク及び機会一覧


想定され
上段:当社事業への影響(リスク/機会) リスク/機会の財務影響評価
区分 項目 想定される事象 る発生期
下段:対応
間 4℃シナリオ 1.5℃シナリオ
【当社事業への影響(リスク)】
当社事業活動に伴うGHG排出量(Scope1,2)に対して、カーボンプライシングが発生し、
事業活動に伴うGHG排出量に対する、炭素税 操業コストが増加
中期
や排出権取引などのカーボンプライシングの ー 小
~長期 【対応】
公布
社有車の電気自動車への変更を検討、建物の省エネ化・再生可能エネルギー由来の電力メ
ニューへの変更を進め、GHG排出量を削減
【当社事業への影響(リスク)】
再エネ政策やエネルギーミックスの変化によ 中期 再エネ需要の高まりに伴った電力価格の増加による、操業コストの増加
ー 小
る電力価格の増加 ~長期 【対応】

策 固定資産物件において、照明のLED化や日照センサーを導入し、省エネを推進
脱 ・ 【当社事業への影響(リスク)】
炭 規 開発事業において、建築物の省エネ性能に対する規制が強化もしくは義務化された場合、
素 制 工事コストが増加
省エネルギー政策によるZEBおよび、ZEH-Mに 中期
社 ー 大
関する規制強化 ~長期 【対応】

へ 環境に関連する行政動向や関連技術の把握、および工事コストの最適化を進めるととも
の に、ZEB・ZEH-M基準を満たす物件の開発を検討
移 【当社事業への影響(リスク)】
行 資源循環に関する規制強化により、施工に用いる資材の価格高騰や、環境負荷が高い建築
に プラスチック規制や建築リサイクル法の強化 中期 材料のコストが増加 ー 中
伴 による資材コストの変化 ~長期
い 【対応】
発 使用資材について、環境配慮型資材への転換を検討
生 【当社事業への影響(リスク)】
す 環境性能に優れた建築材料や技術を導入しない場合、ステークホルダーからのサービス需
る 技 中期 要が低下
リ 不動産・建築業に関する脱炭素技術の進展 ー 小
術 ~長期
ス 【対応】
ク 環境に配慮した事業活動の継続と適切な開示
【当社事業への影響(リスク)】
ZEH-M以外の環境性能に優れていない物件の需要が減少し、空室の発生や賃料の減少が発
市 中期 生
脱炭素社会に伴う顧客の行動変化 ー 中
場 ~長期
【対応】
環境性能に配慮した物件づくり、および仕入
【当社事業への影響(リスク)】
気候変動を含むESGへの取り組みが不十分である場合、顧客や投資家からのレピュテー
評 ステークホルダーのESG/サステナビリティに 短期 ションが低下する ー 大
判 起因する評判変化 ~長期
【対応】
環境に配慮した事業活動の継続と適切な開示
【当社事業への影響(リスク)】
台風や高潮などの発生頻度や強度が強まることで、自社拠点および保有資産への物理的被
急 短期 害が発生。また、自社およびサプライチェーンの営業停止により収益機会の損失が発生
気 異常気象の激甚化による物理的被害の増加 大 大
性 ~長期 【対応】
候 保有資産のうち、災害関連を起因として物理的被害の発生可能性について、適切な情報を
物変
開示
理動
的起 【当社事業への影響(リスク)】
な因 中期 沿岸部や水害ハザードマップの該当地域に位置する在庫物件の資産価値が減少
リで 海面の上昇および水害リスクの増加 大 小
~長期 【対応】
ス発
不動産の立地選定基準強化および保有資産の災害対策強化
ク生 慢
す 【当社事業への影響(リスク)】

る 平均気温の上昇により、店舗運営における空調コストが増加
中期 また、屋外作業可能時間の短縮など、労働・施工条件への影響が発生
平均気温の上昇 小 小
~長期
【対応】
気象パターンの変化に配慮した働き方・労働条件の検討

政 【当社事業への影響(機会)】
策 省エネ政策の強化に伴い、関連のリフォーム工事需要が増加。また、環境性能に優れた物
脱炭素政策に伴う、関連施工および物件の需 中期 件(ZEB、ZEH-M)の需要も増加
・ 小 大
要増加 ~長期
規 【対応】
制 環境に関連する行政動向や、関連技術の把握および導入の検討
【当社事業への影響(機会)】
新築不動産の建設と比較し、買取再販が資源保全や産廃およびGHG排出量が削減されるこ
機 市 脱炭素社会への移行に伴う、買取再販事業の 中期 とから需要が増加 小 大
会 場 需要増加 ~長期
【対応】
環境性能に配慮した物件づくり、および仕入
【当社事業への影響(機会)】
温度上昇の抑制に寄与する保水タイル設置物件の販売機会増加や室内の断熱性を高めるリ
慢 中期 フォームの需要が増加
平均気温の上昇 大 中
性 ~長期
【対応】
買取再販事業および開発事業での物件工事の際に、「環境に優しい設備の設置」を推進




-5-
時間軸の定義 - 想定される発生期間 –

記載項目 項目の定義

長期 11 年~30 年後に発生が想定されるもの

中期 4 年~10 年後に発生が想定されるもの

短期 0 年~3 年後に発生が想定されるもの



評価の定義 - 財務影響の評価 –

記載項目 項目の定義

大 1 億円超の財務的影響が想定されるもの

中 1000 万円超~1 億円以内の財務的影響が想定されるもの

小 1000 万円以内の財務的影響が想定されるもの




■事業拠点及び保有固定資産の水害リスク


事業の拠点及び保有する固定資産については、国や自治体のハザードマップ等を考慮し
水害リスクを評価しました。


洪水リスク

再現期間(年) 洪水浸水深 拠点数 割合
200~299cm 1 4.5%
200年に一度
範囲外 1 4.5%
300cm以上 5 22.7%
200~299cm 8 36.4%
50年~100年に一度
50cm未満 2 9.1%
範囲外 5 22.7%



高潮リスク

再現期間(年) 高潮浸水深 拠点数 割合
300cm以上 3 13.6%
200~299cm 3 13.6%
1000年に一度 50cm未満 2 9.1%
床下 2 9.1%
範囲外 12 54.5%


-6-
【リスク管理】


当社グループでは、経営戦略を策定・実行する上で、事業目的の達成を阻害する要因をリ
スクと特定し、経営の影響度と発生頻度で分類し、アセスメント結果を基に当社グループと
しての重要リスクを決定しております。重要リスクの中でもそのリスクが顕在化した場合、
事業に重大な影響を及ぼすものをモニタリング対象リスクとして、リスク対策の進捗など
を重点的にモニタリングし、全社的なリスク対策の強化を図っております。
経営戦略を実行する上で、潜在するリスクが発生しないように適切な対応を定めるリス
クマネジメント体制を構築するとともに、重大なリスクが発現した場合の損失を最小限に
抑えるクライシスマネジメント体制も整えております。


気候変動に起因するリスクについては「サステナビリティ委員会」にて、各部門よりリス
クを抽出し、定性・定量の両面から評価を行った上、リスクマネジメント・コンプライアン
ス委員会に報告を行うことで、当社グループ全体のリスクマネジメントに統合をしており
ます。




■リスク管理体制図




-7-
【指標と目標】
当社グループでは、自社事業活動における GHG 排出量(Scope1,2)を指標とし、環境に配
慮した事業活動を推進してまいります。
中期的な削減目標として、2030 年度に売上高あたり 46%削減(2021 年度比)を掲げると
ともに、長期的な目標として、パリ協定の目標を参考に 2050 年度カーボンニュートラルを
目指してまいります。


今後、事業の成長や新規事業への参入に伴う GHG 排出量の増加が想定されますが、再エネ
の導入や非化石証書利用の検討も視野にいれ、長期的な目標達成のために事業の脱炭素化
を推進してまいります。
Scope3(自社以外の間接排出量)の排出量の削減は重要課題と認識しております。早期に
当社グループの排出量実績の把握、削減方法の検討及び削減目標値の設定を実施してまい
ります。


2022 年度の Scope1 排出量は 2021 年度から微増となっております。Scope2は、固定資産
の一部を再エネ由来の電力調達に変更致しました。一方で、2021 年9月以降に開所した 5
営業所や固定資産の増加により、排出量は 2021 年度に比べて増加しております。
その結果、
Scope1・2 合計で 236.4t-CO₂となり、2021 年度に比べて 43.7t-CO₂増加しました。
排出原単位では、2022 年度の売上高が減収だったこともあり、2021 年度に比べて Scope1
が 12.3%増、Scope2 が 36.6%増、Scope1・2 合計で 33.4%増の結果となっております。
2023 年度は排出量の削減を検討していくとともに、売上計画を達成することで、排出原
単位での削減を目指してまいります。



2021年度(基準年度) 2022年度 2030年度削減目標
排出総量 排出原単位 排出総量 排出原単位 増減率
排出原単位
(t-CO₂) (t-CO₂/億円) (t-CO₂) (t-CO₂/億円) (基準年度比)
Scope1・2 192.7 0.5674 236.4 0.7567 33.4%
Scope1 25.9 0.0763 26.8 0.0856 12.3%
2021年度比46%削減
Scope2 166.8 0.4912 209.7 0.6711 36.6%

対象範囲:ムゲンエステートグループ




-8-
(t-CO₂) Scope1 (t-CO₂/億円) (t-CO₂) Scope2 (t-CO₂/億円)
30 0.12 250 1

0.9
28 0.11 200
0.8
26 0.1 150 0.7

24 0.09 100 0.6

0.5
22 0.08 50
0.4
20 0.07 0 0.3


総排出量 排出原単位 総排出量 排出原単位




※Scope1…燃料の使用に伴う温室効果ガスの排出量。
当社においては、主に社用車(ガソリン車)の使用による排出が対象となります。
※Scope2…電力の使用に伴う温室効果ガスの排出量。
当社においては、固定資産からの排出が Scope2の 9 割以上を占めております。
※排出原単位…売上高当たりの GHG 排出量




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