テラ株式会社の樹状細胞ワクチン療法と抗がん剤を併用した膵臓がん患者の予後予測因子について「World Journal of Gastroenterology」に掲載

平成 27 年 11 月 25 日
各 位
会 社 名 テ ラ 株 式 会 社
代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 矢﨑 雄一郎
( コー ド番 号: 21 9 1 )
問 合 せ 先 執行役員管理本部長 小 塚 祥 吾
電 話 0 3- 55 72 -6 59 0


テラ株式会社の樹状細胞ワクチン療法と抗がん剤を併用した
膵臓がん患者の予後予測因子について「World Journal of Gastroenterology」に掲載
~血漿中の IL-6 及び IL-8 濃度と予後の関連性を調査~


当社(本社:東京都港区、代表取締役社長:矢﨑 雄一郎)は、平成 22 年 8 月に学校法人慈恵大学
東京慈恵会医科大学附属柏病院消化器・肝臓内科(以下「東京慈恵会医科大学附属柏病院」)と
共同研究契約を締結し、進行膵臓がん及び進行胆道がんを対象として、抗がん剤(塩酸ゲムシタビン)
を併用した、新規ペプチドである WT1 クラスⅡペプチド及び WT1 クラスⅠペプチドを用いた樹状細胞
ワクチン療法 ※1 の安全性並びに有効性を評価するための第Ⅰ相臨床研究を進めてまいりました。
この度、本臨床研究について、治療前後の測定データを解析し予後予測因子の探索を行った結果が、
(平成 27 年第 21 巻 39 号)に掲載されました※2。
「World Journal of Gastroenterology」


膵臓がんは難治性がんの一つで極めて予後不良な疾患であり、わが国では、毎年 30,000 人以上の方
が膵臓がんで亡くなっています(出典:人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部編)。当社の

契約医療機関における樹状細胞ワクチン療法の膵臓がんの累計症例数は、平成 27 年 9 月末現在で
9,800 症例中 1,900 症例以上となっており、あらゆるがん種の中で最も実績を積んでおります。その
ため、樹状細胞ワクチン療法がどのような患者により効果が出るか、予後を予測できる因子の解明が
求められてきました。
そのような中、東京慈恵会医科大学附属柏病院は当社との臨床研究※3 を通じて、樹状細胞ワクチン
療法においてどのような患者に治療効果があるのかという予後予測因子の検討を進めており、この度、
その研究成果が論文発表されました。


本研究は、抗がん剤を併用した、WT1 クラスⅡペプチド及び WT1 クラスⅠペプチドを用いた樹状細
胞ワクチン療法において、7 例の膵臓がん患者の治療前後の血漿中に含まれるインターロイキン ※4
(以下「IL」)濃度を解析しています。
1年以上の長期生存を認めた例(3/7 例)の治療期間において、WT1 特異的遅延型アレルギー反応
(Delayed Type Hypersensitivity、以下「DTH 反応」 ※5 がみられ、治療前と比較して IL-6 と IL-8

の濃度の低下が継続して観察されました。さらに、樹状細胞ワクチンを 5 回投与した時点で、高 IL-6
(2pg/ml 以上)の患者と比較すると、低 IL-6(2pg/ml 未満)を示した患者では全生存期間(OS)が
統計学的有意に延長していました(全生存期間:582~1,050 日)。病態が進行すると、WT1 特異的
DTH 反応は顕著に減少し、がん末期では陰性となりました。また、長期投与期間中の IL-6 と IL-8 の
血漿中濃度の低下は、WT1 特異的 DTH 反応や全生存期間と関連していました。
以上の結果から、長期投与期間中における血漿中の IL-6 と IL-8 低濃度は、膵臓がん患者の抗がん
剤と WT1 クラスⅡペプチド及び WT1 クラスⅠペプチドを用いた樹状細胞ワクチン療法の併用における
予後予測因子である可能性が示唆されました。



当社は、今後も樹状細胞ワクチン療法における研究を推進し、より良い細胞医療の開発・普及に
取り組んでまいります。


なお、本件による今期業績への影響は軽微であります。



【※1】樹状細胞ワクチン療法
本来、血液中に数少ない樹状細胞(体内に侵入した異物を攻撃する役割を持つリンパ球に対して、
攻撃指令を与える司令塔のような細胞)を体外で大量に培養し、患者のがん組織や人工的に作製した
がんの目印である物質(がん抗原)の特徴を認識させて体内に戻すことで、樹状細胞からリンパ球にが
んの特徴を伝達し、そのリンパ球にがん細胞のみを狙って攻撃させるがん免疫療法です。


【※2】
「World Journal of Gastroenterology」
(平成 27 年第 21 巻 39 号)
Prognostic significance of plasma interleukin-6/-8 in pancreatic cancer patients receiving
chemoimmunotherapy.


【※3】東京慈恵会医科大学附属柏病院との臨床研究
平成 26 年 7 月に「Clinical Cancer Research」(平成 26 年第 20 巻 4228 頁)にて、進行膵臓がんに
対する WT1 クラスⅠ及びクラスⅡペプチドを用いた樹状細胞ワクチン療法の安全性及び有効性の評価
について発表しています。WT1 クラスⅡペプチド及び WT1 クラスⅠペプチドを用いた樹状細胞
ワクチン療法と抗がん剤の併用が、病勢制御に寄与する可能性が示唆されています。


【※4】インターロイキン
リンパ球や単球、マクロファージなどが産生する、免疫反応に関与する物質のこと。


【※5】遅延型アレルギー反応(Delayed Type Hypersensitivity)
体内に異物が侵入した際に、リンパ球等が異物を排除しようとする免疫が働きますが、再び同じ
異物が侵入すると、その異物の特徴を覚えたリンパ球等が直ちに反応して異物を排除します。このよ
うな、異物の特徴を覚えたリンパ球が作られたかどうかを確かめる方法として遅延型アレルギー反応
(Delayed Type Hypersensitivity:DTH)が利用されています。がん免疫療法において DTH が生じる
ことは、メモリーT 細胞が誘導されたことを示す指標となります。




以 上





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