量子化学計算によって化学反応の経路を自動探索するAFIR法のプログラムライセンスに関する契約を締結

PRESS RELEASE 2021/2/22




量子化学計算によって化学反応の経路を自動探索する

AFIR 法のプログラムライセンスに関する契約を締結
~化学反応の理解と予測を促進する AFIR 法の最新機能が GRRM20 で利用可能に~



【概要】
北海道大学(北海道札幌市,総長:寳金清博)と HPC システムズ株式会社(本社:東京都港区,代表取締
役:小野鉄平)は,量子化学計算 *1 によって化学反応の経路を自動探索する Artificial Force Induced
Reaction(AFIR)法*2 のプログラムライセンスに関する契約を締結しました。これにより,HPC システ
ムズ株式会社から発売されるプログラム,GRRM20 にて,AFIR 法の最新機能が利用可能になります。


【契約の内容・意義】
AFIR 法は,北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の前田 理拠点長らの研究
グループにて開発が行われてきた反応経路自動探索法です。同手法は,分子や錯体の中の部分構造間に
力を加えることで誘起される構造変化を量子化学計算によって調べ,対応する反応経路*3 を予測する手
法です。その際,力を加える部分構造の取り方や初期相対配置を次々と変化させ,様々な構造変化を系
統的に調べることにより,多数の反応経路を自動探索することが可能です。


GRRM20 では,超並列計算(数百経路の同時計算),与えた反応温度や反応時間において速度論的に重
要な安定構造からのみ探索を実行する速度論ナビゲーション,周期境界条件を課した反応経路自動探索,
酵素反応の解析においてタンパク質の大規模構造変化を取り入れることができる多構造マイクロ反復
法などの新機能が利用できるほか,個々の反応経路計算も高速化されています。また,巨大分子用構造
最適化アルゴリズムが搭載されており,半経験的な量子化学計算などの簡便なポテンシャル計算法と組
み合わせることで,数百原子の系においても AFIR 法による構造探索が行えるようになっています。さ
らに,簡単な外部スクリプト*4 によって情報学的手法や経験則などを探索手順に反映させるオプション
が利用でき,ユーザーが自動探索高速化の手法開発に参加することも可能です。


研究グループでは,これらの新機能を用いて,新規化学反応の予測,有機合成反応の速度論解析,結
晶構造探索,表面反応の速度論解析,大規模構造変化を伴う酵素反応の機構解析などを行ってきました。
GRRM20 を用いることで,研究グループが発表してきた先進的な予測計算や機構解析が,広く一般に実
施できるようになると期待されます。
【北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)について】
ICReDD(Institute for Chemical Reaction Design and Discovery/アイクレッド)
は,文部科学省国際研究拠点形成促進事業費補助金「世界トップレベル研究拠点プ
ログラム(WPI) に採択され,
」 2018年10月に本学に設置されました。WPIの目的は,
高度に国際化された研究環境と世界トップレベルの研究水準の研究を行う「目に見
える研究拠点」の形成であり,ICReDDは国内にある13の研究拠点の一つです。
ICReDDでは,自然界のあらゆるところに存在する化学反応を,化学者の経験に基
づいた直感や偶然に頼るのではなく,計算科学と情報科学による予測に基づいて合
理的に設計し発見する戦略を構築しています。このような化学反応の制御技術は,
豊かな未来社会を創造するための根幹技術となり得ます。そのために,「Revolutionize Chemical
Reaction Design and Discovery」をスローガンに,新しい化学反応や材料の創出を目指して計算科学・
情報科学・実験科学の融合研究を推進しています。詳しくは https://www.icredd.hokudai.ac.jp/ja を
ご参照ください。


【HPC システムズについて】
HPC システムズ(https://www.hpc.co.jp/)は,ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野のニ
ッチトップ企業です。科学技術計算用高性能コンピュータとシミュレーションソフトウェア販売,科学
技術計算やディープラーニング(深層学習)AI 環境を構築するシステムインテグレーションサービス,
シミュレーションソフトウェアプログラムの並列化・高速化サービス,計算化学ソフトウェアプログラ
ム,マテリアルズ・インフォマティクスアルゴリズム開発・販売,受託計算サービス・科学技術研究開
発支援,創薬研究開発や素材・材料研究開発分野向けサイエンスクラウドサービスまでをワンストップ
で提供しています。


お問い合わせ先
<研究内容に関すること>
北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点 拠点長 前田 理(まえだ さとし)
TEL 011-706-8118 メール smaeda@eis.hokudai.ac.jp
<GRRM20 の販売に関すること>
HPC システムズ株式会社 代表取締役 小野鉄平(おの てっぺい)
TEL 03-5446-5531 メール hpcs_sales@hpc.co.jp
お問い合わせ https://www.hpc.co.jp/contact/company_form/
配信元
北海道大学総務企画部広報課(〒060-0808 札幌市北区北 8 条西 5 丁目)
TEL 011-706-2610 FAX 011-706-2092 メール kouhou@jimu.hokudai.ac.jp


【用語解説】
*1 量子化学計算 … 原子の電子分布や座標をもとに,分子の電子分布を計算し,分子の構造や物性な
どを解析,予測する手法。
*2 AFIR 法 … 化学反応において,コンピュータ上で仮想的な力を加え,出発物質が最終物質に変化し
て行く過程を自動的に見つけ出す手法。
*3 反応経路 … 化学反応において出発物質が最終物質に変化して行く過程のこと。
*4 スクリプト … 人間が読み書きしやすい簡易なプログラミング言語で書かれた,コンピュータへ
の命令の集合体。

6638