当社に関するスポンサード企業レポート発行について

2021 年 4 月 12 日
各 位


上場会社 フジテック株式会社
代表者 代表取締役社長 内山 高一
(コード番号 6406)
問合せ先責任者 専務執行役員財務本部長 土畑 雅志
(TEL 072-622-8151)


当社に関するスポンサード企業レポート発行について


当社は、投資家とのコミュニケーションを円滑にし、当社に対するご理解を深めていただ
くためスポンサード企業レポートを発行いたしましたので、お知らせいたします。当企業レ
ポートは株式会社キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリーに作成を依頼しておりま
す。当社株への推奨はなく、当社のビジネスモデル、業界動向、業績推移、長期的な事業戦
略といったすでに公表されている内容を投資家の皆様にわかりやすく説明するために作成
したものです。詳細につきましては、別添資料をご参照ください。





内容: 企業レポート(スポンサード)
執筆企業: 株式会社キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリー
発行日: 2021 年 4 月 12 日


以 上




-1-
企業レポート
産業機械・東証 1 部 担当アナリスト
2021 年 4 ⽉ 12 ⽇

⿊⽥真路

フジテック(6406) 星野英彦 CMA

キャピタルグッズ・リサーチ&アド
バイザリー


エレベータの専業⼤⼿、⾼い FCF 創出能⼒を有し、情報開⽰および株主還元強化を進める

 フジテック(以下、同社)は、エレベータ&エスカレータの専業⼤⼿。空調機市場におけるダイキン⼯業に似た⽴ち位置にあり、
国内では総合電機メーカーと競合。他社に先駆けて海外展開・現地化を積極化、世界初の製品・技術を有し、海外の⽶
OTIS、フィンランドの KONE に対して規模、歴史で劣るが、顧客ニーズ対応⼒などを武器に、安定的な利益成⻑が続いている。

 CGRA では、エレベータのグローバル市場を推定 750 億ドルと試算。2030 年に向けて年率 2%程度の成⻑を予想する。市場
の半分は建設投資に左右される新設案件が占め、中国やインド、メコン川流域などで⾼成⻑が⾒込まれる。残り半分を占める
保守・修理&モダニゼーション(リニューアル)市場は、先進国を中⼼に年率 3%程度の安定成⻑が期待される。

 同社においても、売上⾼の約半分を新設案件が占め、残り約半分は保守・修理&モダニゼーション案件が占める。同社は、リー
マンショック時およびコロナ禍においても営業⿊字を確保、20/3 期当期利益は過去最⾼を更新、安定的な FCF の創出が続い
ている。21/3 期業績に関しても、3Q 決算発表時に上⽅修正され、同時に通期 1 株予想配当⾦の増配も発表された。

 CGRA では、世界最⼤の中国市場における既納⼊案件の更新需要の顕在化もあり、同社は中⻑期的な業績安定性も⾼いと
判断している。また、時価総額の約 25%に達するネットキャッシュと安定的な B/S、⾼い FCF 創出能⼒を有している。2020 年
12 ⽉ 4 ⽇には「戦略的⽅向性」を発表、OPM および ROE 10%以上に加え、新たに公約配当性向 50%以上(21/3 期
予想 1 株配当⾦ 60 円)、ガバナンス体制の強化策なども発表された。また、決算説明資料などの各種情報開⽰も積極化し
ており、今後は ESG などの⾮財務情報やキャッシュマネジメントなどに関する各種 KPI などの開⽰も期待されよう。


(フジテックの連結業績および各種株価データ︓億円、円、%)
トレーディング・データ 業績推移 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3会予
株価(21/3/31) 2,358 円 売上⾼ 1,771 1,674 1,688 1,708 1,812 1,690
52週レンジ 2,846〜1,177 円 営業利益 144 127 107 103 134 133
時価総額 2,011 億円 経常利益 152 131 119 119 147 147
発⾏済株式総数 85,300 千株 親会社当期利益 88 86 89 92 99 93
平均売買代⾦(20⽇) 4.2 億円 EPS 109.4 106.4 109.8 114.1 122.5 114.7
会社予想PER 20.6 倍 ROE 9.7 9.4 9.2 9.1 9.5 -
PBR(20/3末) 1.1 倍 1株配当⾦ 30.00 30.00 35.00 45.00 50.00 60.00
予想1株配当⾦ 60.00 円 配当性向 27.4 28.2 31.9 39.4 40.8 52.3
予想配当利回り 2.5 % FCF 36 74 65 74 67 -
ROIC(20/3) 11.0 % NetCash 348 405 454 485 528 -


本レポートは投資の勧誘・推奨・助⾔を意図したものではなく、当該企業に関する情報提供を⽬的として当社独⾃の視点から作成されています。
また、本レポートに記載されている内容は公表された情報に基づき作成されておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。
本レポートの著作権は(株)キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリーに帰属しており、無断転写を禁じます。本レポートの内容は、今後予告なし
に変更される場合があります。当社及び本レポートは投資家の投資判断に関知することはなく、投資に関する決定はご⾃⾝の判断で⾏って頂くよう
お願い申し上げます。
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⽬ 次
(1)フジテックで注⽬される 3 つのポイント︓p3-4
(2)事業内容とビジネスモデル︓p5-10
・事業内容︓p5
・ビジネスモデル︓p6-7
・フジテックの 3 つの特徴︓p8
・国内外における納⼊実績︓p9
・歴史と沿⾰︓p10
(3)エレベータ業界の事業環境と競合分析︓P11-23
・エレベータ業界の歴史︓p11
・エレベータの仕組み︓p12
・フジテックの最近機種の説明︓p13
・エレベータ市場の規模と企業シェア︓p14
・エレベータ市場の牽引役は何か︓p15
・COVID-19 の市場影響︓p16
・今後の需要⾒通し︓p17
・国内エレベータの市場動向︓p18
・国内競合企業の分析︓p19
・ジャパンエレベーターサービスに関する CGRA の⾒解︓p20
・海外競合企業の分析︓p21-23
(4)戦略的⽅向性と SWOT&5Forces 分析︓P24-31
・「戦略的⽅向性」を発表︓p24-27
・SWOT 分析︓p28
・5Forces 分析︓p29-30
・リスク分析︓p31
(5)業績動向︓p32-38
・過去の業績推移︓p32
・21/3 期業績動向︓p33
・国内における業績動向︓p34
・東アジアにおける業績動向︓p35
・南アジアにおける業績動向︓p36
・北⽶・欧州における業績動向︓p37-38
(6)財務および⾮財務分析と株価バリュエーション︓p39-p47
・財務分析︓p39-40
・⾮財務分析︓p41
・ガバナンス体制︓p42
・情報開⽰を積極化︓p43
・株主還元策︓p44-45
・最近の株価および株価バリュエーション︓p46-47
(7)東京ショールーム⾒学︓p48
(8)連結損益計算書と貸借対照表とキャッシュフロー︓p49-50


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(1)フジテックで注⽬される 3 つのポイント
ポイント①︓アフター事業に⽀えられた安定的な業界
エレベータ市場は都市化の進展、中間所得層の拡⼤、⼈⼝の⾼齢化、更新需要(モダニゼー 市場の約半分が保
ション=リニューアル)の顕在化、更には省エネニーズの⾼まりなどを背景に、今後も安定的な市 守メンテ事業に⽀え
られ、業界の寡占化
場拡⼤が⾒込まれる。同市場の半分を安定的な売上計上が⾒込まれる保守・修理&モダニゼ
も進んだ業界
ーション事業が占めているうえ、今後は世界最⼤のエレベータ市場である中国において設置後
20 年以上を経過した案件の更新需要の顕在化が期待される。

そのような市場環境において、エレベータ業界は、トップ 5 社が世界市場の 7 割を占め、国内に
おいても 5 社に絞られた寡占化が進んでいる。国内では主要顧客であるゼネコン業界の収益性
改善や建物の付帯設備の⾼付加価値化の進展が進んでいるうえ、海外競合企業においては
豊富な保守・メンテ台数に⽀えられた 12-14%もの⾼い営業利益率と安定的な FCF の創出
が⾒られている。したがって、同業界は景気変動の影響を受けにくく、かつ安定的にキャッシュの
創出が可能な業界と⾔えよう。

ポイント②︓FCF 創出能⼒が⾼い
同社はリーマンショック時ならびに今回のコロナ禍においても営業⿊字を確保しており、マクロ経済 リーマンショックおよび
リスクに対する収益抵抗⼒が強い特徴が窺える。売上⾼の約半分を安定的な売上計上が⾒ コロナ禍においても営
業⿊字を維持
込まれる保守・修理&モダニゼーション事業が占めている点が主因。今後も先進国におけるエレ
ベータの⾼付加価値化需要およびアジア地域を中⼼とした新興国における新設需要増に加え、
過去 20 年以上前に納めた機器の更新需要(モダニゼーション=リニューアル)の顕在化が⾒
込まれる。同時に、安定的な利益計上(過去 10 年平均連結営業利益 108 億円)および
FCF の創出(過去 10 年平均 68 億円)が継続可能と CGRA では⾒ている。

また、21/3 期会社予想連結営業利益は、3Q 決算時に 107 億円から 133 億円へ上⽅修
正された。20/3 期においては、2Q および 3Q 決算時に上⽅修正しており、対外発表業績計
画に対する達成のこだわりが感じられる。

ポイント③︓情報開⽰および株主還元を積極化
同社は対外公表の中計⽬標値を達成する確度が⾼いうえ、株主還元を積極化している。16 情報開⽰に加え、株
年 4 ⽉開始の 3 か年中計「No limits Push Forward Together」では、19/3 期売上⽬ 主還元を積極化

標 1,700 億円、営業利益 103 億円、営業利益率(OPM)6%を想定していた。19 年 4
⽉開始の新中計「Innovation Quality & Speed」においては、22/3 期⽬標連結売上⾼
1,800 億円、連結営業利益 130 億円、営業利益率 7.2%に加え、新たに⽬標 ROE 8%
以上が明⽰されたが、ともに 1 年⽬で⽬標値をクリアした。

2020 年 12 ⽉ 4 ⽇発表の「戦略的⽅向性」では、各国の市場成⻑率を上回る事業成⻑の
確保、早期に営業利益率 10%以上の確保、利益率向上を通じた ROE 10%以上の維持に
加え、新たに基本配当性向 50%以上(21/3 期まで 5 期連続の増配)および発⾏済株式
数約 5%の⾃⼰株式消却が明記された。同時に、指名報酬諮問委員会の設置や買収防衛
策の⾮継続などのガバナンス体制の強化も発表された。

上記の状況などを背景に、外国⼈保有株⽐率も 16/3 期末の 30%から 20/3 期末には 40%
へ上昇、株価バリュエーションの切り上がりも⾒られている。


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図表 1︓保守・修理事業が売上⾼の約半分を占める
(百万円) 安定的な保守・修理事業が売上成⻑をけん引 (%) 20/3 期は過去最⾼の
240,000 60.0
売上⾼を確保、うち保
保守・修理事業 新設事業 保守・修理売上⾼⽐率(右)
55.0 守・修理事業が 48.7%
200,000
を占める
50.0

160,000
45.0


120,000 40.0


35.0
80,000

30.0

40,000
25.0


0 20.0





図表 2︓安定的な FCF の創出が期待可能
(百万円) 安定的なFCFの創出がネット・キャッシュの積み上げに貢献 (百万円) 同社は安定的に FCF を
70,000 14,000
創出可能な収益構造を
ネット・キャッシュ(左) FCF(右)
60,000 12,000
有し、ネット・キャッシュが
積みあがる状況にある
50,000 10,000


40,000 8,000


30,000 6,000


20,000 4,000


10,000 2,000







図表 3︓株主還元を積極化

(%、円) 1株配当⾦と配当性向の上昇が続く (%) 同社は安定的な増配と
70.0 4.0
配当性向(左、%)
配当性向の引き上げを
60.0 1株配当⾦(左、円) 3.5 継続している
配当利回り(右、%)
3.0
50.0

2.5
40.0
2.0
30.0
1.5

20.0
1.0

10.0 0.5


0.0 -





出所︓会社資料から CGRA 作成




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(2)事業内容とビジネスモデル
事業内容︓エレベータなどの空間移動システムの⼤⼿専業メーカー
同社は、1948 年⼤阪市⻄区で創業を始めた富⼠輸送機⼯業株式会社を前⾝としたエレベ フジテックは⽇本を代表
ータおよびエスカレータを始めとする空間移動システムの⼤⼿専業メーカー。創業者は現社⻑で するエレベータおよびエス
カレータの専業メーカー
ある内⼭⾼⼀⽒の⽗にあたる故内⼭正太郎名誉会⻑(2003 年 7 ⽉ 23 ⽇没)。戦後の
復興を願い、同社を設⽴した。

現在、世界 24 の国と地域に展開、国内2、海外8(アメリカ、インド、⾹港、台湾、韓国、中
国 3)の計 10 ⼯場を有する。1974 年に社名を現在のフジテックに変更すると同時に、東京
証券取引所および⼤阪証券取引所 1 部に指定替えした。

国内競合である⽇⽴製作所は 1932 年、三菱電機は 1935 年にエレベータの⼀貫製造を開
始、⼀⽅、東芝はフジテックに約 10 年遅れて 1958 年に同市場に本格参⼊した。

20/3 期の地域別売上⾼(1,812 億円は 4 期ぶりの過去最⾼売上⾼)は、⽇本が 40%、
中国を含む東アジアが 35%、北南⽶が 15%、シンガポールやインドなどを含む南アジアが 10%。

国内競合との競争を避けるために、海外展開を積極化してきた
同社は先⾏する国内メーカーとの競争を避けるため、海外進出を積極化させる独⾃戦略を展 他社に先駆けて海外展
開してきた。まず、1964 年の⾹港を⽪切りに、68 年には韓国、72 年にはシンガポール、77 年 開を積極化
にアメリカ、79 年にはアルゼンチンとマレーシア、80 年には台湾、81 年にはサウジアラビア、エジ
プト、フィリピン、82 年には欧州初となる UK に進出するなど、アジア地域を中⼼に海外拠点を
整備してきた。中国市場に関しては、95 年に中国中紡集団公司と合弁会社「華昇フジテック」
を設⽴、97 年には中国河北省廊坊市に華昇フジテックの新⼯場が稼働。2001 年には上海
市に合弁会社「上海華昇フジテック」を設⽴、02 年に上海華昇フジテックのエスカレータ⼯場が
稼働。03 年には上海 RD センター、06 年には上海調達センターを設⽴した。

世界初となる技術・製品を数多く輩出
同社は海外展開と同時に技術開発を強化、世界初となる独創的な製品・技術も数多く発表 専業メーカーの強みを⽣
してきた。具体的には、1976 年に世界に先駆けて分速 600m の超⾼速直流ギヤレス・エレベ かした世界初となる製品
ータ、78 年には世界初のマイコン制御標準型エレベータを市場投⼊。88 年にはファジーコンピュ 群を多数発表

ータを活⽤したエレベータ群管理システム、93 年にはエレベータ・マルチ AV システム「オービス」、
95 年にはニューロコンピュータを活⽤したエレベータ群管理システム「ニューロス」および世界初の
ロープレス・リニアエレベータの実証試験に成功。2001 年には世界初となるダブルデッキ・エレベ
ータ「フレックス-DD」、2002 年にはエレベータ新駆動システム「タロンドライブ⽅式」などの開発・
製品化に成功した。

加えて、業界初となる製品および技術としては、2002 年に「遮煙エレベータ乗場ドア」、2009
年にレーザー⽅式ひも状態物体検出装置「ドアエッジセンサー」を開発している。

コロナ禍において空間環境の衛⽣⾯が議論される中、同社は 2003 年に世界初となるエレベー
タ⽤プラズマクラスターイオン発⽣装置「イオンフル」を商品化、最近では⾮接触ボタンの「エアータ
ップ」が好評を博しているうえ、エレベータ内に冷房機を標準装備するなど、他社に先駆けてエレ
ベータ空間環境の改善に努めている。




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・ビジネスモデル
製販⼀貫体制を有するエレベータ・エスカレータの専業メーカー
同社は開発から設計、⽣産、販売および据え付け、保守・修理&モダニゼーション(=リニューアル) 製販⼀貫体制を武器に、
までの⼀貫した事業を⾃社でグローバル展開している。関係会社は 34 社、うち連結⼦会社は 19 グローバル展開

社。海外⼦会社は 1-12 ⽉決算である。

売上⾼の約半分が新設されるビルに組み込まれる新規案件のエレベータ&エスカレータ事業。残り
半分は新設案件の納⼊後の保守・修理事業および設置されて 20 年以上が経過した機器の更
新・近代化(モダニゼーション=リニューアル)事業が占める。

6 つの経営資本についてのポイント
知的資本である研究・開発に関しては、国内を中⼼に上海 RD センターなどにおいて現地ニーズに 効率の良い研究開発を
応じた製品開発を⾏っている。また、2020 年にはインドで研究塔(タワー)の建設に着⼿。20/3 実施

期の研究開発費は約 22 億円、対売上⾼⽐率は 1.2%(過去 5 年平均研究開発費は年間約
23 億円)に留まるが、世界初の技術や商品を⽣み出す、効率の良い研究・開発を⾏っている。

製造資本である⽣産に関しては、国内 2 ⼯場(滋賀県彦根、兵庫県豊岡)、海外8⼯場(中 インドおよび台湾で⽣産
国 3 ⼯場、台湾、韓国、⾹港、インド、アメリカ)が担う。20/3 期における年間⽣産⾼の 39%が 能⼒を増強中
⽇本、同じく 39%を東アジア(中国、台湾、⾹港、韓国)、13%を北⽶、9%が南アジア(イン
ドなど)であった。国内では⾃動化省⼈化設備の導⼊に伴う⽣産能⼒の拡⼤を図り、インド(年
間 2,000 台体制の構築中)や台湾⼯場(年間 1,000 台体制を構築中)では能⼒増強投資
を実施中。20/3 期設備投資は約 33 億円(対売上⽐率 2%)、減価償却費は約 31 億円。



図表 4︓製販⼀貫体制が同社の強み




出所︓フジテック「戦略的⽅向性」




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⼈的資本に関しては、20/3 期末の連結従業員数 10,292 名。過去 10 年間で 32%増加。ま
た、フィールドエンジニアの強化を⽬指し、「エクスペリエンスセンター」をシンガポール(2019 年 6
⽉)、インド(2019 年 8 ⽉)、東京(2020 年 10 ⽉)に開設。据付・メンテナンスの技術⼒
強化、品質向上を図るグローバルな⼈材育成を強化している。

財務資本としては、20/3 期の総資産 1,936 億円(有利⼦負債 42 億円、前受⾦を除く Net 強固な財務基盤を有し、
Cash294 億円)、株主資本 1,191 億円、株主資本⽐率は 55.3%である。CGRA では、同社 投資余⼒は⼤きい

は成⻑のための⼗分な設備投資や M&A、研究開発投資余⼒を有していると考える。なお、財務
資本をベースとしたアウトプットは、売上⾼ 1,812 億円、営業利益 134 億円(営業利益率
7.4%。16/3 期過去最⾼益 144 億円に対して 93%⽔準)、ROE 9.5%、FCF67 億円を稼
ぐ収益構造を確保している。

社会関係資本に関しては、「⼈と技術と商品を⼤切にして、新しい時代にふさわしい、美しい都市
機能を、世界の国々で、世界の⼈々とともに創ります」という経営理念のもと、「安全・安⼼」の追求
による質の⾼い社会インフラの整備を推進する。また、上記の「エクスペリエンスセンター」ではショール
ームを併設、ブランディングの強化を図っている。

⾃然資本としては、各種環境規制に適合した素材を採⽤、最新技術の導⼊によって省エネを実現
するとともに、タイムリーな保守・メンテや効率のよいロジスティックで環境負荷の低減を図る。なお、同
社は GHG などの排出削減⽬標は提⽰していないが、環境負荷の軽減実績を明記しているうえ、
今後は各種 KPI の発表を予定している模様。

売上⾼の約半分を保守・修理事業が占める
同社は⽇本および中国を中⼼としたアジア地域と⽶国市場を主要なターゲットとし、連結売上⾼に 売上⾼の半分をアフター
占める新設案件⽐率は 51%、保守・修理&モダニゼーションなどのアフターマーケット事業が 49% マーケット事業が占める

を占める。また、海外売上⽐率は 60%、中国事業は連結売上⾼の約 3 割を占める。



図表 5︓海外売上⾼⽐率は 60%に達する

20/3期における地域別売上構成⽐(%)




35%
20/3期売上⾼は過去
40%
最⾼の1,812億円。海
外売上⾼⽐率は60%




10%
15%



⽇本 北⽶欧州 南アジア 東アジア(中国含む)


出所︓会社資料から CGRA 作成



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・フジテックにおける 3 つの特徴
CGRA では、同社のビジネスモデルを⽀える 3 つの特徴(=強み)を(1)専業メーカーによ
る製販⼀貫体制、(2)顧客に密着した事業展開⼒、(3)顧客ニーズを具現化する製品
化⼒、と考えており、以下にポイントをまとめてみた。

(1)専業メーカーによる製販⼀貫体制
同社はエレベータおよびエスカレータに特化した専業メーカーであり、開発から設計、⽣産、販売 同社は空調機のダイ
および据付、更には保守・修理&モダニゼーションまでを⾃社で⾏う⼀貫体制を有する。また、マ キン⼯業に似た業界
の⽴ち位置にある
イコンやモータ、インバータなどのキーパーツの内製化も進んでいる。

規模と歴史に関しては、欧⽶競合企業に及ばないものの、世界各国で事業展開し、顧客ニー
ズをくみ上げ、数多くの世界初および業界初となる技術・製品開発に成功している。従って、同
社は、業界は異なるものの、空調機の専業メーカーであるダイキン⼯業と似通った⽴ち位置にあ
る企業であると CGRA は考える。

(2)顧客に密着した事業展開⼒
同社は顧客ニーズを速やかに製品開発に反映させるべく、各事業が深く連携した事業運営を⾏ 顧客ニーズを反映さ
っている。例えば、コロナ禍の 2020 年 4 ⽉に販売を開始した新標準機「XIOR」は、新機能⾮ せた製品開発⼒に
定評がある
接触ボタン「エアータップ︓AirTap」とエレベータ内の混雑度合いを⽰す「混雑度表⽰」を標準
搭載している。「エアータップ」は、病院などの医療現場や⾷品加⼯⼯場などにおいて衛⽣⾯を
強化したいとの顧客ニーズをもとに開発をスタート、約 2 年を経て他社に先駆けて製品化に成
功、コロナ禍において⼤変な反響を呼んでいる。

「混雑度表⽰」に関しては、独り住まいの⼥性が夜間に 1 ⼈でエレベータに乗ることへ不安を感
じるとの顧客の声に基づき、同社の⼥性スタッフが中⼼となって開発した機能である。また、同社
は東京と⼤阪のショールーム(=クリエイティブスタジオ)に顧客の稼働中のエレベータをリアルタ
イムでチェックする「セーフネットセンター」を併設、地震などの不測の事態における万全のサポート
体制を完備、顧客に密着した⾼い事業展開⼒を有している。

(3)顧客ニーズを具現化する製品化⼒
同社は上記のような顧客の声をいち早く捉え、他社に先駆けて製品化する能⼒に⻑けている。 同社はキーエンスに
研究開発費は年間 25 億円程度であるが、数多くの世界初、業界初の製品化に成功しており、 似た製品化⼒を有
する
様々な⾃動化・省⼒化ニーズを捉え、早期に製品化を実現するキーエンスに似た製品化⼒を
有していると⾔えよう。

この背景には、営業と開発との連携、⼯場での⾼い量産化技術、滋賀県彦根の本社にある⾼
さ 170m の研究塔(タワー)と隣接する Wing Square では分速 1,000m 級の超⾼速機
を始めとする様々なタイプのエレベータやエスカレータに関する多種多様な技術開発を可能する
開発体制などがあると⾔えよう。また、様々な新たなニーズが⽣まれる中国における上海 RD セ
ンターとの連携、⼤学などとのオープンイノベーションにも積極的であることで実現している。




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・国内外における主な実績案件
国内外における主な納⼊実績
近年の国内における主要納⼊実績としては、東京ワールドゲート、渋⾕ MIYASHITA PARK、 主な国内外の納⼊
渋⾕スクランブルスクエア、渋⾕フクラス(東急プラザ渋⾕)、 渋⾕ソラスタ、渋⾕ストリーム、渋 案件を紹介
⾕ソラリス、ハイアットリージェンシー横浜、⼤⼿町プレイス、HOTEL THE MITSUI KYOTO、
上野フロンティアタワー、JR 横浜タワー、JP タワー名古屋、クロスゲート⾦沢などが代表的案件。
また、GINZA PLACE では⾮接触ボタン「エアータップ」への更新⼯事を実施。

⼀⽅、海外における主要納⼊実績としては、⽶国ではニューヨークの マディソンスクエアパークタワ
ー 、 610 レ キ シ ン ト ン ア ベ ニ ュ ー 、 Pyramid57 や Sky 、 ニ ュ ー ジ ャ ー ジ ー の New
Meadowlands、シカゴの Soldier Field、シンシナティの Paul Broun Stadium、 デイトン
の Dayton Childrenʼs Hospital など。シンガポールでは Marina One、マレーシアでは
Convention Centre、台湾では Miramar Entertainment Park、建設中のフーボン⽣命
本社ビル。韓国では Hana Financial Group や Korea Design Center。 ⾹港では
Government Complex。UAE では Dubai International Airport などが代表的案件。

主なモダニゼーション⼯事としては、シンガポールのワンラッフルズプレイス、⽶国ダラスのバンク・オ
ブ・アメリカ・プラザ 、⾹港・Three Garden Road、英国・HSBC 本社などがある。

グローバル・エレベータ市場の 65%が居住⽤
同社は空調機⼤⼿のダイキン⼯業と同じく、関⻄を地盤とする企業である。居住⽤と⾮居住⽤ グローバル・エレベータ
の商業施設に分類すると、居住⽤のウエイトが多い模様。オフィスビルは施⼯主およびゼネコンが 市場は居住⽤が
65%、商業施設向
顧客、マンションでは施⼯主が新規案件の顧客となるが、マンションにおけるアフターサービス事業
けが 25%を占める
に関しては管理組合が顧客となる。グローバル・エレベータ市場の 65%が居住⽤、25%が商業
施設、10%を公共施設が占める

図表 6︓エレベータ市場の 65%を居住⽤、25%を商業施設が占める

⽤途別グローバルエレベータ市場(%)




10%




25% 65%




居住⽤施設 商業施設 公共施設



出所︓会社資料などから CGRA 作成




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・歴史と沿⾰
フジテックの歴史と沿⾰
同社は、1948 年に故内⼭正太郎名誉会⻑が⼤阪市⻄区で創業を始めた富⼠輸送機⼯業
株式会社が前⾝。1974 年に現在のフジテックに社名変更した。

⽣産および販売拠点︓アジア地域を中⼼に積極的に海外市場へ展開
1964 年︓フジテック・ホンコン設⽴

1965 年︓⼤阪製作所稼働

1968 年︓フジテック・コリア設⽴

1972 年︓フジテック・シンガポール設⽴

1974 年︓フジテック・ベネズエラ設⽴

1977 年︓フジテック・アメリカ・インク設⽴

1979 年︓フジテック・アルゼンチンおよびフジテック・マレーシア設⽴

1980 年︓フジテック・タイワン設⽴

1981 年︓フジテック・サウジアラビア、エジプト、フィリピンを設⽴

1982 年︓アメリカ・オハイオに世界最⼤規模のエレベータ⼯場建設、フジテック・UK 設⽴

1985 年︓フジテック・パシフィック設⽴

1989 年︓兵庫県の豊岡⼯場が稼働、フジテック・インドネシア設⽴

1992 年︓インドネシアのバダム⼯場が稼働、フジテック・カナダ設⽴

1995 年︓韓国の仁川⼯場が稼働、合弁会社「華昇フジテック」を設⽴

1997 年︓中国河北省廊坊市に華昇フジテック⼯場が稼働

2000 年︓エレベータの主⼒⼯場として滋賀製作所が稼働

2001 年︓中国・上海市に合弁会社「上海華昇フジテック」設⽴

2002 年︓上海華昇フジテックのエスカレータ⼯場が稼働、華昇フジテック第 2 ⼯場完成

2003 年︓中国・上海に開発拠点「上海 RD センター」を設⽴

2004 年︓フジテック・インドとフジテック・ベトナムを設⽴

2005 年︓上海 RD センターの新社屋が完成、フジテック・UAE 設⽴

2006 年︓本社・研究開発・⽣産の各機能を統合した「ビッグウイング」が滋賀県彦根に完成、

2006 年︓中国・上海に上海調達センターを設⽴

2010 年︓エスカレータ開発・⽣産拠点「ビッグステップ」、アフター拠点「ビッグフィット」が完成

2011 年︓インド・チェンナイのエレベータ⼯場が稼働

2012 年︓フジテック・タイを設⽴

2014 年︓フジテック・ランカ(スリランカ)を設⽴

2015 年︓フジテック・ミャンマーを設⽴

2016 年︓台湾新⽵⼯場のリニューアルが完成

2018 年︓創業 70 周年




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(3)エレベータ業界の事業環境と競合分析
エレベータ業界の歴史
1853 年、EG オーチスは⾮常落下防⽌装置付きエレベータの特許を取得するとともに、現 ⽶ UTX からスピンア
OTIS を設⽴した。1862 年に Roebling 社がエレベータ⽤のワイヤーロープの製造を始め、従 ウトした OTIS が業
界のリーダー
来の切れ易い⿇ロープから現在も使⽤されているワイヤーロープへ変更が進んだ。

動⼒源に関しても、蒸気を使⽤したものから直流電動機を⽤いた電動タイプへ進化が進み、
1889 年に OTIS がニューヨークのデマレストビルに初めてウオームギア減速機付の直流電動機
駆動エレベータ(巻胴式)を納⼊した。ただし、巻き上げ式なので、ビルが⾼層化すると、ロープ
が⻑くなり、巻き上げ機も⼤型化する⽋点があった。この問題を解消したのが、エレベータ籠とつり
合い錘の重量をバランスさせ、巻き上げ機で効率よく駆動させるトラクション式エレベータである。

トラクション式エレベータは欧州で開発されたものの、当時の欧州は市場規模が⼩さかったため、
OTIS は 1903 年にニューヨークのビバ・ビルディングとシカゴのマジェスティック・ビルディングに初め
てトラクション式ギヤレス・エレベータを納⼊した。

1920 年頃に⽇系エレベータメーカーが台頭
⽇本において最初に導⼊されたエレベータは、1875 年に王⼦製紙の⼗条⼯場に設置された荷 1948 年以降、国内
役⽤の⽔圧式である。乗⽤エレベータは、1890 年に OTIS が初めて東京浅草の「浅草⼗⼆ エレベータ市場が本
格的な成⻑期を迎
階」に納⼊した。その後も、⽇本銀⾏本店などで OTIS 製の採⽤が相次いだものの、1915 年
えた
に我が国初の国産化エレベータ「東松式エレベータ」が⼤阪の伊藤丸紅呉服店に設置された。
1919 年には我が国最初の法⼈組織である⽇本エレベータ製造、1920 年頃には帝国エレベ
ータ、⽇本重機製造、内外エレベータなどが誕⽣した。1926 年頃の⽇本のエレベータ稼働台
数は約 2 千台、うち約 800 台が OTIS、約 1,000 台が⽇本エレベータ製造製であった模様。

⾼性能・ハイエンドエレベータ市場は、1923 年に発⽣した関東⼤震災以降に関しても、OTIS
を始めとする外国メーカーの独壇場であった。OTIS に遅れて⽇本市場に参⼊したのが⽶国ウエ
スチィングハウス(WH)である。しかし、1930 年代から第⼆次世界⼤戦までは、国産品の採
⽤が奨励されたこともあり、国産メーカーの台頭が⽬覚ましかった。

OTIS は 1941 年に⽶国からの派遣役員が帰国、事業の縮⼩を始め、1951 年に東洋 OTIS
として再出発を果たした。WHに関しても、販売を三菱電機に委託、1935 年に三菱電機は
WH との技術提携を⽣かし、エレベータの⼀貫製造販売を開始した。また、⽇本エレベータ製造
は 1936 年に⽇⽴製作所に買収された。その後、1948 年、⺠間向けエレベータの製造禁⽌
令が解除、建設省が管轄となり、東京都昇降機安全条例が制定され、市場は復活に向かった。

同社は⺠間向けエレベータの製造禁⽌令が解除された 1948 年に、前⾝の富⼠輸送機⼯業
株式会社を設⽴。東芝は 1958 年に東洋オーティスと資本提携。その後、1966 年に資本提
携を解消、府中⼯場に⼀貫⽣産体制を敷き、エレベータ事業へ本格参⼊した。




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・エレベータの仕組み
製品説明︓ロープ式の機械室なしタイプが主流
2019 年度の⽇本国内における新設エレベータ(前年⽐ 3%増の 24,435 台)を機種別に 現在はロープ式の
みると、ロープ式が 79%、油圧式が1%、その他⼩型タイプ(ホームエレベータなど)が 20%を 「機械室なし」エレベ
ータが主流
占めた。また、ロープ式は機械室の有無で区分けされ、「機械室なし」が全体の 73%、「機械室
あり」が 6%を占めた。

ロープ式には 2 タイプあり、かつては建物の上層部の巻上機でロープを巻き取る巻胴式が⾒られ
たが、1900 年以降は籠とバランサー錘をバランスさせて、上部にある巻上機で効率的に駆動す
るトラクション式が主⼒となっている。

かつてのトラクション式は、エレベータの上部において、巻上機や減速機、制御盤などを配置した
機械室が設けられた。しかし、KONE 社が 1996 年に初めて巻上機をエレベータ籠が移動する
昇降路内の上層のエレベータレールに取り付けた「機械室なし」エレベータを製品化(⽇本では
東芝が KONE と技術提携して初めて製品化、同社は三菱電機とともに 2 年遅れて巻上機を
昇降路の底部に設置するタイプの製品化に成功)に成功した。

⽇本では 2000 年の建築基準法の⼤幅緩和を契機に、「機械室なし」の普及が進み、現在で
は建物⽤エレベータの⼤半が「機械室なし」となっている。「機械室なし」エレベータのメリットとして
は、建物上部に突出したスペースがなくなることで、⽇影や北側斜線制限がなくなる点などが挙
げられる。

図表︓「機械室なし」エレベータの構造




出所︓(⼀社)⽇本エレベータ協会 HP




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・フジテックの最新機種
新製品「XIOR」を投⼊
同社新製品の標準型マシンルームレス・エレベータ「エクシオール︓XIOR」は、エレベータボタンに 専業メーカーとしての
触れないで操作できる⾮接触ボタン「エアータップ︓AirTap」を標準採⽤した。⾚外線センサー こだわりが感じられる
製品群を市場投⼊
に⼿をかざすことで⾏先登録が可能。⾏先ボタンは抗菌ボタンを標準採⽤しているうえ、新型コ
ロナウイルスの減少結果が実証されたシャープ株式会社のプラズマクラスターイオン発⽣装置「イ
オンフル」を基本仕様に採⽤している。COVID-19 を契機とした公衆衛⽣に対する意識の⾼ま
りもあり、市場の反響は⼤きい。

加えて、業界初となるエレベータ専⽤冷房機を標準装備しているうえ、業界最速となる分速
120m の最⼤定格速度をラインナップ(分速 45、60、90、105、120)、エレベータの待ち
時間の短縮化と輸送能⼒の向上を実現している。液晶モニターにおいても業界最⼤となる 8.4
インチの⼤型液晶モニターを搭載、エレベータかご内の混雑状況を乗り場のインジケータで 5 段
階表⽰する「混雑度表⽰」も標準装備している。

オプション機能には、エレベータの運転で発⽣する回⽣エネルギーを発電設備に戻し、建物内で
有効活⽤する「回⽣システム」をラインアップ。ギア付きモータからギヤレスモータに置き換え、最新
のインバータ制御の採⽤の伴い、エレベータ消費電⼒の最⼤ 45%削減を実現した。

図表 7︓「XIOR」の特徴




出所︓フジテック「戦略的⽅向性」


⾼速エレベータに関しては世界最速の技術を有する

上記のエクシオールは標準型エレベータであるが、⾼層ビル⽤の⾼速エレベータに関しては、受注
⽣産であり、顧客へカスタマイズ対応している。現在、同社は北京から新幹線でおよそ 2 時間の
「河北省張家⼝」において、⼭の中を頂上まで突き抜けた世界最⻑の昇降⼯程 638 メー トル
(ギネスに申請・登録予定)、頂上へは約 1 分 20 秒で到着できる分速 720 メートル(時
速 43km)のエレベータを受注し、設置を予定している。同社は⾼層・⾼速エレベータに関して
も、海外競合を凌駕する技術レベルを有すると⾔えよう。




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・市場規模と企業シェア
新設はアジア・太平洋地域が最⼤の市場
2020 年における⾦額ベースのグローバル・エレベータ市場は、750 億ドル程度と CGRA は推測 中国市場がグローバ
している。うち中国を中⼼とするアジア・太平洋地域が約 65%、北⽶・南⽶地域が約 18%、 ル新設市場の約
30%、台数ベースで
欧州他地域が 17%程度を占める。台数ベースのグローバル新設市場は、推定 100 万台。う
は約 6 割を占める
ち中国市場が約 63%、EMEA は 20%、アジア・太平洋地域が 13%、北南⽶地域が 5%を
占める。カテゴリー別では居住⽤が 65%程度、商業施設が 25%、公共施設向けが 10%。

既設の稼働台数は、推定 1,800 万台。うち中国市場が 39%を占めるものの設置後 20 年
以上の台数は 5%に過ぎず、今後は更新需要の顕在化が期待される。次いで欧州を中⼼とす
る EMEA 市場が 37%、北南⽶が 10%、アジア・太平洋地域が 14%を占める。

⽇本市場では、⽇⽴製作所、三菱電機、フジテック、東芝による寡占化が進んでおり、4 社で
国内市場の推定 9 割程度を占めると推測される。国内市場における同社の市場シェアは 3 位
と推測されるが、連結ベース⽐較では 4 社中 4 番⼿の位置付けとなる。

トップ 5 社がグローバル市場の約 7 割を占める業界
グローバルベースの市場シェアを⾒ると、⽶国オーティス(OTIS)が 1 位、推定シェアは 18% 世界最⼤⼿は⽶
(売上規模約 128 億ドル)を占める。2 位はスイスのシンドラー(Schindler)で推定シェア OTIS 、 2 位 は
Schindler、3 位は
17%(106 億スイスフラン)。3 位はフィンランドのコネ(KONE)が推定 17%(99 億ユー
KONE
ロ)。トップ 3 社は、継続的な M&A で成⻑を加速させてきたが、近年は世界シェアトップの
OTIS に対して、シンドラーと KONE が猛追している状況にある。

4 位は 2019 年にエレベータ事業を売却したドイツのティッセンクルップ(ThyssenKrupp)で
推定 11%(67 億ユーロ)。市場シェアの低下が⾒られている模様。5 位は 2020 年 10 ⽉
に台湾の永⼤機電⼯業(2019 年売上⾼約 500 億円、営業利益約 30 億円)の発⾏済
株式数 51.1%を取得した⽇⽴製作所が約 8%。6 位が三菱電機、7 位が東芝、8 位がフジ
テックと推測される。

図表 8︓新設および既設エレベータ市場の地域別台数

既設エレベータの地域別稼働台数(1,800万台、2020年) 新設エレベータの年間地域別設置台数(100万台、2019年)
(万台) (万台)



















中国 EMEA アジアパシフィック 北⽶ 南⽶ その他 中国 EMEA アジアパシフィック 北⽶ 南⽶ その他




出所︓各社資料より CGRA 作成




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・市場の牽引役
グローバル・エレベータ市場の牽引役は何か
中⻑期のエレベータ市場を⾒るうえでのポイントは以下の 4 点

① 都市化の進展︓コロナの影響が読めない点は否めないが、都市部における⼈⼝増加は今 先進国はエレベータ
後も世界的に続く⾒通し。安定的なエレベータの新設需要が期待可能。 の⾼度化、新興国で
は新設需要&更新
② 中間所得層の⼈⼝増加︓世界的に中間所得層の⼈⼝増加が予想され、安⼼・安全な
需要が需要を牽引
住空間、インフラニーズが⾼まる⽅向へ。
③ ⾼齢化に伴う安全な移動⼿段ニーズの⾼まり︓労働者の⾼齢化や⼈⼿不⾜が産業⽤
ロボット需要を喚起するように、世界的な⾼齢化社会の到来は、安全な移動⼿段のニー
ズを押し上げよう。
④ 更新需要の顕在化︓エレベータは設置されてから 20-30 年程度で更新される。今後は
先進国での更新需要増に加え、中国などでも更新需要の顕在化が期待可能。

コロナ禍で⾮接触や空間環境の改善ニーズなどが⾼まる
コロナ禍においては、建設投資の停滞が懸念されるものの、以下のようなデジタル投資の加速、 コロナを契機に新たな
⾮接触化、エレベータ空間の環境改善などのニーズの強まりが予想される。 付加価値ニーズが⽣
まれる
① デジタル化や近代化投資が増加︓IOT やデジタル技術を活⽤したエレベータの運⾏管理
や混雑度合いの⾒える化、待ち時間の短縮化、⾮接触型ボタンの採⽤、エレベータ空間
環境の殺菌などの新たな付加価値増も期待可能
② ESG 強化を背景とした省エネニーズの⾼まり︓オフィスビルにおける電⼒消費量のうちエレ
ベータは約 3%(空調機は約 3 割)を占める。20 年前に⽐べ、モータの⼩型化、LED ラ
イトの採⽤などもあり、近代化に伴い⼀般的に 30%程度の省エネ効果が期待可能。
③ 安全機能強化ニーズ︓ドアが閉まる際、ペットのリードや点滴チューブなどの細⻑い物の挟
み込みをセンサーなどで検知、事故を未然に防ぐなどのニーズが世界的に⾼まる⽅向にある。


図表 9︓既設エレベータの設置後年数別構成⽐と台数

グローバル既設エレベータの設置後年数別構成⽐(%) グローバル既設エレベータの設置後年数別台数(万台)




10年以下 10-20年 21-30年 30年以上 10年以下 10-20年 21-30年 30年以上



出所︓各種資料から CGRA 作成


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・COVID-19 の市場影響
エレベータ市場は緩やかな回復傾向を強め始めた
同社が 2021 年 2 ⽉ 9 ⽇に発表した 21/3 期 3Q 決算説明会資料によると、感染拡⼤の影 ここにきてエレベータ
市場にも回復傾向
響が遅れて新規受注および売上⾼に顕在化する懸念があるものの、総じてエレベータ市場には
が⾒られ始めた
持ち直しの動きが⾒られ始めている模様。

新設受注に関しては、概ね各国ともに官庁系や⼤型案件は発注活動が継続されているものの、
その他はまばらな状況にある模様。⼀⽅、⼯事の進捗状況に関しては、新設・モダニゼーション
案件ともに⼯事現場での延期や閉鎖⾏動が縮⼩されている。保守事業に関しては、社会基盤
の維持(エッセンシャル産業)として継続されている様⼦である。

⻑期的な⽅向性は不変だが、⽬先は市場にばらつきが⾒られそう
Schindler が 2021 年 2 ⽉ 17 ⽇に発表した Full year 2020 results では、COVID-19 コロナ影響は⼩売業
に伴い、⻑期的なファンダメンタルズに構造的な変化の動きは⾒られていないと指摘している。新 などの商業施設向け
需要に悪影響が懸
設案件に関しては、住宅および公共施設向け需要の安定成⻑が続くものの、商⽤施設市場は
念される
低成⻑が⾒込まれる。⼀⽅、既存エレベータのモダニゼーションと保守事業に関しては、モダニゼ
ーションを中⼼に安定成⻑が続く⾒通しである。

ただし、⼩売業界やホテルなどでは需要回復ペースは緩やかであり、同時にエレベータメーカー間
の価格競争が続く⾒通し。⼀⽅で、⾮接触や遠隔操作などのスマート・ソリューションのニーズは
今後も強まるうえ、オフィスでの業務活動が⾃宅での業務へとシフトすると同時に、オフィススペー
スを縮⼩させる動きが継続しそうだ。いずれにせよ、都市化などのメガトレンドに加え、インフラ公
共投資は今後も継続される⾒通し。


図表 10︓Schindler 社のコロナ後の市場⾒通し




出所︓Schindler, results presentation 2020




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・今後の需要⾒通し
2030 年に向けたグローバル・エレベータ市場の⾒通し
2020 年のグローバル・エレベータ市場は、推定 750 億ドル(2019 年⽔準から微減)。2030 CGRA では今後の市
年に向けたグローバル・エレベータ市場は、COVID-19 問題を契機に、世界的な建設投資の 場成⻑率を年率
2%程度を想定
⾜踏みが⾒られるものの、年率 2%程度の成⻑が可能と CGRA では予想する。

市場の約 50%を占める新設案件は年率 2%成⻑(先進国は 1-2%、中国、インド、ミャンマ
ー、メコン川流域などの新興国は 2-3%成⻑を予想)、⼀⽅で約 50%を占める保守・メンテナ
ンス&近代化(更新需要)市場は、年率 3-4%成⻑が期待可能と⾒る。欧⽶やシンガポー
ルなどの先進国では 2-3%成⻑、中国などでは 4-5%成⻑が⾒込まれる。

新設案件は、基本的に建設投資に左右されるものの、前出のような中⻑期的なエレベータの⾼
度化ニーズが期待され、競争過多に伴う単価下落リスクは伴うものの、総じて安定的な市場形
成が⾒込まれる。⼀⽅、サービス・メンテナンス市場は、新規案件に付随した市場形成が期待さ
れる(新設案件の 10%程度の売り上げ貢献と推定)。

今後は中国における近代化更新需要の顕在化が期待可能
稼働中のグローバル・エレベータの約 3 割強が設置されて 20 年を経過(約 20%が 30 年以 今後は中国において
上)している。近代化(更新需要)需要は、欧州を中⼼に北南⽶、⽇本、シンガポールを中 近代化案件の顕在
化が期待される
⼼としたアジア・パシフィック地域においても継続的な顕在化が⾒込まれる。

中国はグローバル・エレベータ市場推定 750 億ドルのうち 3 割程度を占め、巨⼤な新設市場に
対して、サービス・メンテナンス&近代化(更新需要)市場は 5%程度にとどまる。しかし、
2030 年以降は更新需要(近代化)の⾶躍的な増加が⾒込まれると CGRA は考える。

図表 11︓グローバル・エレベータ需要⾒通し

売上構成⽐ 台数構成⽐ 市場成⻑率 牽引役 牽引地域
⾼付加価値化
先進国 35% 1-2% DX 各先進国
新設 50% 都市化
⼈⼝増 中国
新興国 65% 2-3% 都市化 インド
DX アジア
更新期 欧⽶
先進国 65% 2-3% 近代化 ⽇本
既設 50% シンガポール
(保守メンテ) 更新期 中国
(近代化) 新興国 35% 4-5% 近代化 アジア
- -



出所︓CGRA 予想、作成




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・国内エレベータの市場動向
国内エレベータ市場と国内事業の業績動向
国内の主要顧客であるゼネコンの業績動向をみると、以下の 4 点が⾒て取れる。

① 上場しているゼネコン 29 社合計の営業利益率は、10/3 期の 0.3%をボトムに改善、 今後の国内市場は、
18/3 期には 8.8%へ上昇した。しかし、19/3 期以降は⾼⽔準ながらも低下傾向にある。 近代化需要増に加
え、エレベータに対す
コロナ影響もあり、低下傾向が持続するリスク含みと CGRA は予想する。
る付加価値の増加
② ⾮居住⽤建物の単位⾯積当たり建設投資額は、13/3 期の 1 ㎡約 22 万円をボトムに
が期待可能
20/3 期には約 37 万円へ上昇している。
③ 建設完成⼯事に占める維持修繕⼯事は、構成⽐が 05/3 期の 23%から 13/3 期には
30%へ上昇した。⽬先は建設投資の 37%を占める関東圏において東京オリンピック関連
新設⼯事の反動減が懸念されるものの、修繕⼯事額⾃体は増加傾向にあり、構成⽐も
28%⽔準を維持している。
④ ⼤⼿ゼネコンにおける海外受注は、回収リスクなどを懸念、受注総額の 5%に過ぎない。

したがって、国内の建設市場は、東京オリンピック関連事業の反動減が懸念されるものの、経済
対策としての公共⼯事および維持修繕投資の増加が⾒込まれる。加えて、単位⾯積当たりの
建設単価上昇、ゼネコン各社の収益性改善もあり、エレベータ業界にとっては、⽐較的堅調な
市場環境が期待されよう。

図表 12︓国内建設業界の収益環境は改善⽅向
(兆円) ゼネコン29社の売上⾼合計と営業利益率の推移 (%) (億円) 国内建設投資は維持修繕⼯事が増加傾向
700,000
16.0 14.0
ゼネコン29社の合計売上⾼(左) 新設⼯事
14.0 600,000
12.0 維持修繕⼯事
営業利益率(右)
12.0 500,000
10.0
10.0
400,000
8.0
8.0
6.0 300,000
6.0
4.0 200,000
4.0

2.0 100,000
2.0

- - -




(円) ⾮居住⽤建設投資の㎡当たり単価の推移 グラフ タイトル
400,000
国内建設投資は関東地域が37%占める(%)
350,000


300,000

250,000 37

200,000


150,000


100,000 10

50,000 11

-

関東 中部 近畿 東北 その他



出所︓建設ハンドブック 2020 より CGRA 作成


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・国内競合企業の分析
国内では総合電機メーカーが競合相⼿
同社の国内競合企業は、⽇⽴製作所(同社モビリティ事業のビルシステム・ビジネスユニット)、 国内では総合電機メ
三菱電機(重電システム事業のビル・エレベータ事業)、東芝(東芝エレベータ)の 3 社であ ーカーと競合するなど、
業界内での⽴ち位
る。つまり、3 社はともに総合電機メーカーであるが、同社は関⻄地域を地盤とした独⽴系の専
置はダイキン⼯業に
業エレベータメーカーである。
似ている

似通った⽴ち位置にある機械メーカーとしては、空調機⼤⼿のダイキン⼯業が挙げられる。ダイキ
ン⼯業も国内競合企業は上記総合電機 3 社に加え、シャープ、パナソニック、富⼠通ゼネラル
など。ダイキン⼯業は、同社と同じく、独創的な製品群を市場投⼊する⼀⽅、M&A を積極化、
海外市場での基盤を強化することで世界 No.1 の空調機メーカーへと成⻑を遂げた。

⽇⽴製作所︓20/3 期におけるビルシステム事業の売上⾼は前年⽐ 5%減の 5,915 億円、
営業利益は同 7%増の 578 億円、営業利益率は 9.8 %。売上⾼の約 53%を中国事業、
43%が⽇本、残り 4%をアジア・中近東が占める。

LUMADA を活⽤した遠隔保全事業への注⼒、中国およびタイ製機種の市場投⼊に伴うアジ
ア・中近東での新設市場に注⼒。21/3 期は好調な中国事業をけん引役に増収増益決算を
確保する⾒通し。

三菱電機︓20/3 期における重電システム事業の売上⾼は 1 兆 3,074 億円。うちビル・エレ
ベータ事業の構成⽐は推定 4 割強。営業利益も同様に、重電システム事業の営業利益 823
億円のうち 3 割強程度を占め、営業利益率は 5%前後と推測される。

昇降機事業は、国内売上⾼が約 55%、残り 45%が海外売上⾼。つながるエレベータで新た
な価値提供、ビル管理の省⼒・省エネ化を提案。中国、インド、アセアン地域に注⼒する⽅針。

東芝︓20/3 期における昇降機、照明、空調機を含む同社ビルソリューション事業の売上⾼は、
前年⽐ 2%増の 5,701 億円、うち昇降機は約 4 割を占めると推測される。ビルソリューション
事業の営業利益は、昇降機および照明事業が牽引、同 72%増の 291 億円(営業利益率
5.1%)へ⼤幅な伸⻑が⾒られた。

図表 13︓業界内の競合環境はダイキン⼯業に類似
業態 企業名 業態 企業名
専業 フジテック 専業 ダイキン⼯業
総合電機 ⽇⽴製作所 総合電機 ⽇⽴製作所
総合電機 三菱電機 総合電機 三菱電機
国内競合 総合電機 東芝 総合電機 東芝
機械 三精テクノロジーズ 家電 パナソニック
家電 シャープ
専業 富⼠通ゼネラル
専業 OTIS(⽶) 家電 Gree electric(中国)
専業 KONE(フィンランド) 総合電機 Samsung electronics(韓国)
海外競合 専業 Schindler(スイス) 専業 Carrier(⽶)
機械 SMEI(中国) 専業 Trane Technologies(⽶)
専業 CANNY(中国) 専業 Johnson control(⽶)

出所︓CGRA 作成


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・ジャパンエレベーターサービスに関する CGRA の⾒解
JES の売上⾼は過去 5 年間でほぼ倍増
エレベータの保守・メンテナンスを専⾨に⼿掛けるジャパンエレベーターサービスホールディングス株 JES は独⽴系保守メ
式会社(以下 JES)の業績が急成⻑を遂げている。20/3 期売上⾼は前年⽐ 19%増の ンテナンス市場で約
25%シェアを誇るトッ
213 億円(過去 5 年でほぼ倍増)、うち保守・保全業務が 70%、残りはリニューアル他の事
プ企業
業が占める。

同営業利益は同 34%増の 27 億円(過去 5 年で約 4.6 倍)、営業利益率は 12.7%を
有する。20/3 期における契約台数は約 55,000 台であり、単価は約 39 万円(過去 5 年で
19%上昇)。国内におけるエレベータの保守・メンテナンス市場はメーカ系が 8 割、独⽴系が 2
割のシェアを有し、うち JES は独⽴系市場で 25%シェアを有するトップ企業である。

JES は製品の製造を⾏わないため、⼯場の固定費負担などが少なく、他社が納⼊した既設エレ
ベータ設備の保守・メンテナンス事業のみを低コスト(JES 推定 2-5 割安)で請け負うビジネス
モデルを有している。2004 年の保守契約台数は 5,000 台、2012 年には 20,000 台、2017
年には 40,000 に達し、東証マザーズ市場に上場した。2018 年には東証⼀部へ市場変更、
国内企業の M&A を強化、2020 年 9 ⽉末の保守台数は 60,800 台に達している。

保守・メンテナンス市場は独⽴系とメーカー系で棲み分けができている
フジテックの場合、エレベータの新規案件に対して、保守・メンテナンス契約を請け負う⽐率は。 保守メンテナンス市
ほぼ 100%。また、同社によると、納⼊した案件の保守・メンテナンス契約を JES にとられるケー 場は独⽴系とメーカ
ー系で棲み分けが出
スは相当少ない模様。⼀般的にエレベータの稼働率が低い低層マンションや商業ビルの場合、
来ている
マンションの管理組合がエレベータの保守・メンテナンスを発注するため、資⾦的に余裕がない管
理組合では独⽴系の保守・メンテナンス企業へ発注するケースが⾒られる。ただし、その後の修
理⾯の技術優位性などを評価、再びフジテックへ戻る顧客も多い模様。

従って、CGRA では、財政的に余裕のない管理組合が発注する保守メンテナンス市場において
は JES を含む独⽴系企業が成⻑余地を有するものの、⾼層マンションや⼤規模な商業施設で
はメーカー系保守メンテナンス企業が今後も⾼シェアを維持すると考える。




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・海外競合企業の分析
欧⽶企業は積極的に M&A を実施
海外における主な競合企業は、世界シェア No.1 を誇り、2020 年 4 ⽉に⽶ United 海外競合は特に中
Technologies ( UTX ) か ら 分 社 ・ 独 ⽴ し た ⽶ 国 Otis Elevator Company ( 以 下 国市場において企業
買収による規模の拡
OTIS)、スイスの Schindler、フィンランドの KONE Corporation(以下 KONE)が代表
⼤戦略が顕著
的。また、中国ローカルの競合企業としては上海机电(SMEIC)や康⼒电梯(CANNY)
などが挙げられる。

欧⽶トップ 3 社は、⻑い歴史と豊富な実績、更には中国市場を中⼼とした積極的な M&A 戦
略を背景に急成⻑を遂げてきた。

OTIS︓最古の歴史を有する OTIS は、世界中で業界最多となる 200 万台のエレベータとエ OTIS の サー ビ ス 事
スカレータの保守・メンテナンスを⼿掛ける。OTIS の 20/12 期における売上⾼は前年⽐ 3% 業における営業利益
減の 128 億 US ドル(うち新設案件が同 5%減の 54 億ドル、サービスが同 1%減の 74 億 率は約 22%

ドル︓サービス事業の売上構成⽐ 58%)。営業利益は同 10%減の 16 億 39 百万 US ド
ル、OPM は 12.8%。新設案件の営業利益は同 19%減の 3 億 18 百万 US ドル、OPM は
5.9%。サービス事業の営業利益は同 1%増の 16 億 11 百万 US ドル、OPM は驚異の
21.8%である。UTX から分社・独⽴したため、株主資本がマイナスになっており、ROE の算出
はできないが、ROIC は 55.6%。20 年 12 ⽉末のネットデットは 42 億 US ドル、FCF は 13
億ドル。株主還元に関しては、公約配当性向 40%以上と⾃社株取得を発表。従業員数は
約 69,000 名、従業員 1 ⼈当たり売上⾼は 1,941 万円(ドル 105 円換算)。

KONE︓KONE は 140 万以上のエレベータとエスカレータの保守・メンテナンスを⼿掛ける。 KONE は株主還元
20/12 期売上⾼は前年⽐微減の 99 億 39 百万ユーロ(うち新規案件が同微増の 53 億 を積極化、20/3 期
配当性向は 128%
40 百万ユーロ、メンテナンス&モダニゼーションが同 1%減の 45 億 99 百万ユーロ︓メンテナン
ス事業の売上構成⽐ 46%)。また、中国売上⽐率は約 30%。営業利益は同 2%増の 12
億 13 百万ユーロ、OPM は 12.2%。20/12 期 ROE は 29.7%、ROIC は 26.4%。FCF
は約 14 億ユーロであり、20 年 12 ⽉末のネットキャッシュは 19 憶 54 百万ユーロ。株主資本
⽐率は 45.5%。配当性向は 128%(DPS は過去 5 年間で約 1.5 倍)。従業員数は
61,380 名、従業員 1 ⼈当たり売上⾼は 2,024 万円(ユーロ 125 円換算)。

Schindler︓20/12 期売上⾼は、前年⽐ 6%減の 106 億 40 百万 CHF。中国事業が 2 Schindler も配当性
桁増収を確保、売上⾼の 45%を占める EMEA も堅調に推移したが、同 27%を占める⽶国 向が約 60%
およびその他市場の減収が響いた。営業利益は、同 18%減の 10 億 32 百万 CHF、OPM は
9.7%。20/12 期 ROE は 19.6%、ROIC は 17.9%。FCF は 9 億 74 百万 CHF。20 年
12 ⽉末のネットキャッシュは 19 億 51 百万 CHF、株主資本⽐率は 35.8%。1 株配当は
4.0 CHF、配当性向は 59.5%。従業員数は 66,674 名、従業員 1 ⼈当たり売上⾼は
1,867 万円(スイスフラン 117 円換算)




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図表 14︓海外競合企業との ROE ⽐較
2020/3⽉末時点のPBR=ROE*PER⽐較
フジテックはダイキン⼯
PBR ROE PER 業と同様、海外競合
Fujitec 1.1 9.5 11.4 に⽐べて ROE が相
OTIS -7.6 - 32.5 対的に低い
KONE 10.9 29.7 36.7
Schindler 6.6 19.6 35.5

Daikin 2.7 12.0 22.6
Carrier 5.2 31.7 16.8
Lennox -614.0 - 29.6
Trane Technologies 5.5 13.3 41.2

出所︓各種資料より CGRA 作成、海外競合は 20/12 ⽉時点


図表 15︓フジテックの従業員 1 ⼈当たり売上⾼は低い

(百万円) 主要企業の従業員1⼈当たり売上⾼⽐較 フジテックは海外競合

に⽐べて従業員 1 ⼈

当たり売上⾼が相対
20 的に低い













Fujitec Schindler OTIS KONE



出所︓各社資料より CGRA 作成


図表 16︓売上規模と営業利益率の関係
主要企業における売上⾼と営業利益率の関係 フジテックは売上規模
16,000
が⼩さいものの、相
OTIS
14,000
Schindler
対的に⾼い OPM を
12,000
KONE
確保している
円ベース売上⾼(億円)




10,000

8,000

国内B社 国内C社
6,000

4,000
国内A社
フジテック
2,000

-
- 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0
営業利益率(%)



出所︓各種資料より CGRA 作成


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・競合企業との⽐較分析結果
同社 20/3 期売上⾼は過去最⾼の前年⽐ 6%増の 1,812 億円、営業利益は同 30%増の 同社は成⻑ポテンシ
134 億円(過去最⾼は 16/3 期の 144 億円)、営業利益率は 7.4%であった。CGRA で ャル余⼒を有しており、
中⻑期的な成⻑性
は、同社は国内競合 3 社と⽐較して、業績安定性が相対的に⾼く、収益性も三菱電機と東
が評価されそう
芝を上回っていると⾒ている。ただし、20/3 期末従業員 1 ⼈当たり売上⾼は 1,761 万円に
留まり、従業員 1 ⼈当たり売上⾼が海外競合に⽐べて相対的に低い。

① 保守メンテ企業の買収は効果的
OTIS および KONE におけるサービス&メンテナンス事業の 1 件当たり売上⾼は約 40 万円
(ジャパンエレベータは約 39 万円)。OTIS は 200 万台、KONE は 140 万台の保守台数
を確保しており、売上および利益の厚みの差につながっている。同社は 2020 年、英国で保守・
メンテ企業を買収したが、新設需要が少ない地域での保守・メンテ企業の買収は効果的といえ
よう。また、ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社も国内において保守・メンテ企
業の M&A を積極化している。

② 従業員 1 ⼈当たり売上⾼の上昇が期待される
同社は国内競合に⽐べて相対的に収益性が⾼いうえ、前受⾦および貸倒引当⾦の推移を⾒
る限り、採算重視の営業を展開していると推測される。しかし、海外競合に⽐べ、保守・修理事
業における歴史と実績に乏しく、相対的に収益性が劣る。また、OTIS や KONE は同社に⽐べ
て従業員 1 ⼈当たり売上⾼が 10-15%程度⾼い(特にアジア市場で差が顕著)。仮に同社
も海外競合企業と同程度の従業員 1 ⼈当たり売上⾼を確保するならば、10%台の OPM の
確保は容易と推測される。

③ ROE は⽇本企業の特徴として海外競合に⽐べて相対的に低い
ROE に関しては、同社と業界における⽴ち位置が似ているダイキン⼯業に関しても、海外競合
に⽐べて低位にとどまっている。これは、⽇本企業の特徴として株主資本が海外競合に⽐べて相
対的に⼤きい点(リスク対応⼒が強い)が挙げられる。このため、同社の ROE および ROIC が
海外競合に⽐べて低い要因は同社固有の理由ではなく、⽇本的経営によるところが⼤きい。

④ 同社の中⻑期的な成⻑性が評価されそうだ
PBR=ROE(株主資本の何倍の当期利益を稼いでいるか)×PER(株価は何年分の利益
成⻑を織り込むか)の算式が成り⽴つ。OTIS の 20/12 期 PER は 32.5 倍、KONE は同
36.7 倍であり、ともに株価が⻑期の利益成⻑を織り込んでいると⾔えよう。ダイキン⼯業の PER
も同様に 22.6 年分の利益成⻑を株価が織り込んでいることになる。20/3 期における同社
PER は 11.4 倍であったが、同社の安定的な利益成⻑と株主還元策の強化、⾮財務情報を
含む情報開⽰の積極化などを背景に、⾒直される可能性もありそうだ。




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(4)戦略的⽅向性と SWOT&5Forces 分析
新たな株主還元策を含む「戦略的⽅向性」を発表
同社は 2019 年 4 ⽉ 17 ⽇、19 年 4 ⽉から始まる 3 か年新中計「Innovation, Quality ポストコロナの環境が
& Speed」を発表、ドル 105 円を前提に、22/3 期に⽬標売上⾼ 1,800 億円、営業利益 ⾒えてきた段階で新
たな中計が発表され
130 億円(OPM 7.2%)、ROE 8.0%以上を⽬指してきた。
る公算⼤
20/3 期は期初時点で売上⾼ 1,710 億円、営業利益 104 億円を想定していたものの、2Q
時点で売上⾼を 1,730 億円、営業利益を 120 億円へ、3Q 時点で同 1,800 億円、同 135
億円へ上⽅修正、20/3 期実績売上⾼は 1,812 億円、営業利益 134 億円(OPM
7.4%)、ROE 9.5%で着地、中計 1 年⽬にして 22/3 期⽬標値をクリアした。

このため、同社は 2020 年 12 ⽉ 4 ⽇付で「戦略的⽅向性」を発表した。ただし、コロナ禍が継
続していることもあり、時間軸および数値⽬標は開⽰しない反⾯、新たに株主還元策およびガ
バナンス体制の強化が提⽰された。

⽬指す姿︓当社は経営理念を第⼀に、持続的な成⻑とすべてのステークホルダーの価値創造
に努める

中⻑期の重点領域︓①アフターマーケット事業への注⼒/成⻑市場への事業拡⼤、②収益性
の向上

中⻑期的な⽅向性︓以下の 6 点

① 売上拡⼤︓各国の市場成⻑性を上回る事業成⻑の確保 中⻑期的な⽅向性
② 営業利益率︓早期に 10%以上の確保 は 6 点︓成⻑投資
の拡⼤が注⽬される
③ ROE︓利益率向上を通じて 10%以上を維持
④ 成⻑投資の拡⼤︓重点領域への積極的な投資による新たな成⻑
⑤ 株主還元強化︓基本配当性向 50%以上
⑥ ⾃⼰株式消却︓約半数(発⾏済株式数対⽐約 5%)の消却

図表 17︓中⻑期的な企業価値向上を⽬指す⽅針




出所︓フジテック「戦略的⽅向性」



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・ガバナンス体制の強化
ガバナンス体制に関しては、新たに指名・報酬諮問委員会の設置に加え、買収防衛策の⾮継 ガバナンス体制を強
続が発表された。 化


今回は、コロナ禍が継続していることもあり、中計の時間軸および数値⽬標は⾮開⽰とされ、定
性的な⽬標値のみの開⽰となった。しかし、ポストコロナの市場および業績動向の不透明感が
払しょくされた時点で、時間軸を伴う定量的な数字⽬標が開⽰される⾒通し。

図表 18︓ガバナンス体制の更なる強化を進める




出所︓フジテック「戦略的⽅向性」



<フジテックの⽬指す姿>
同社の経営理念は「⼈と技術と商品を⼤切にして、新しい時代にふさわしい、美しい都市機能
を、世界の国々で、世界の⼈々とともに創ります」を掲げている。

また、持続的な成⻑に向けて経営理念を第⼀に事業活動を実践するとともに、SDGs への積極
的な取り組みを通じ、すべてのステークホルダーの価値創造に努めるとしている。

「FUJITEC VALUES」

環境︓事業と環境の共⽣を図りながら、持続可能な発展を⽬指す

社会︓⾼品質な商品を、世界の国々で世界の⼈々に提供

お客様・利⽤者︓お客様密着=お客様のニーズの把握と具現化

サプライヤー・取引先・従業員︓協働・共存共栄・⼈材育成

株主︓資本市場との対話を重視し、持続的な企業価値の向上を⽬指す




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・フジテックの⽬指す姿と重点領域

図表 19︓フジテックの⽬指す姿と⽅向性




出所︓フジテック「戦略的⽅向性」




図表 20︓フジテックが掲げる事業上の重点領域




出所︓フジテック「戦略的⽅向性」




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<事業上の重点領域>
同社は、規律ある投資の積極的な推進により、以下 3 つの重点領域で事業を拡⼤し、新たな
成⻑フェーズへの移⾏を⽬指す⽅針。


① アフターマーケット事業への注⼒
② 成⻑市場での事業拡⼤ + 規律ある投資/M&A
③ 収益性向上




アフターマーケット事業への注⼒
① モダニゼーション事業の拡⼤︓開発・⽣産・販売・グローバル連携を強化
モダニゼーションに特化した機器の開発
対象機種を選ばないモダニゼーションパッケージ商品の市場投⼊
グローバル⽣産・調達を活⽤したコスト競争⼒の向上
② 保守事業の拡⼤︓スマートメンテナンスの推進とグローバル展開
地図データと連携した保守情報管理システムの機能向上
ビックデータ解析と AI 活⽤による保守効率の向上
IoT を⽤いた⾃動診断の⾼度化と次世代リモートメンテナンスの実現

成⻑市場での事業拡⼤
① 中国市場︓販売体制強化とコストダウンによる継続的な成⻑
機種統合と⽣産⾃動化によるコストダウン推進
販売体制強化による新設事業とアフターマーケット事業強化
⽣産調達体制の拡充
② 南アジア市場︓インドおよびメコン地域の成⻑市場での事業拡⼤
インドを⽣産供給拠点としたグローバル標準機種の拡販
シンガポールを軸とした事業体制強化と拠点網拡充
インド市場に特化した戦略商品の投⼊

収益性向上
① 利益率拡⼤︓設計・調達・⽣産⾰新による利益率拡⼤
グローバル供給体制の活⽤
デザインシュミレータ、3D-CAD 等を活⽤した設計・⽣産の⾃動化と省⼈化
カスタム機種の設計・⽣産⾰新によるコストダウン
② 据付コスト⾰新︓据付の省⼒化によるコストダウン
据付専⽤ツールの開発と据付⼯法の刷新
据付機器のプレアッセンブルによる据付現場の効率化
エキスパート⼈財育成と据付協⼒会社との連携強化




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・SWOT 分析
専業メーカーの強みを発揮
同社の特徴および外部環境、更には内外競合企業を加味しながら、以下に SWOT および 売上単価および売上
5Forces 分析を試みた。 規模に改善余地が
ありそう
強み(Strength)︓製販⼀貫体制に加え、顧客ニーズに密着した対応、海外での豊富な
実績、専業メーカーとしての⾼い知験とサービス⼒および製品開発⼒、相対的に強い B/S、選
別受注およびリスク管理体制

弱み(Weakness)︓規模のデメリット、海外での営業交渉⼒

機会(Opportunity)︓近代化(更新需要)の顕在化、保守・メンテを中⼼とした M&A
戦略、選別受注および製品値上げ

脅威(Threat)︓中国などの新興国地域における新興メーカーの台頭(ただし、現地メーカ
ーは品質が低く、⼊札では同社とバッティングしない)、保守・メンテナンス事業における価格低
下、グローバルメーカー同⼠の価格競争の激化

規模は⼩さいが、⾼収益体質企業へのポテンシャルが感じられる
「強み」に関しては、空調機のダイキン⼯業と同様、専業メーカーとしての強みである細やかな顧 ⾼収益企業へ転じる
客対応⼒、国内他社に先⾏して海外進出を果たした実績と現地化、世界初の製品を数多く ポテンシャルがありそう

世に提供した技術⼒は定性的な観点から同社の特徴といえよう。更には貸倒引当⾦や前受⾦
の対売上⾼⽐率などを⾒る限り、同社の選別受注や管理体制の⾼さがうかがえる。

「弱み」に関しては、他社に⽐べて企業規模が⼩さい点が挙げられる。同社は、マイコンを始め、
モータやインバータなどの主要機器の内製化が進んでいるものの、各種鋼材などのボリューム・ディ
スカウントが得られない点などが考えられる。ただし、次ページ以降で述べる同社の各種リスクに
関しては、新規の同社固有リスクは 04/3 期以降加わっていない。

「機会」に関しては、製品⾃体の差別化が難しいものの、細やかなサービス、エレベータ室内の環
境改善などの差別化戦略、強い B/S を活⽤した保守・修理企業の買収(近年、ジャパンエレ
ベータサービスホールディングスも国内企業の M&A を強化)も有効と考える。ただ、海外競合
に⽐べて従業員 1 ⼈当たり売上⾼が 10-15%程度低い点を改善させる策次第では、更なる
OPM の改善ポテンシャルがあると CGRA は考える。

「脅威」に関しては、コロナ禍において、各社ともに価格競争の激化を懸念している。ただし、エレ
ベータは安全が最優先される機器であるうえ、市場の寡占化が進んでいる。このため、CGRA で
は新興企業の台頭には限界があると考える。




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・5Forces 分析
価格競争リスクは少なそうだ
前項では同社の SWOT 分析を試みた。ここでは 5Forces 分析を⾏ってみたい。SWOT 分析 各社ともに価格競争
と似通った分析ではあるが、買い⼿と売り⼿の交渉⼒など業界における同社の⽴ち位置などが をリスク視するコメント
が多いものの、実際
理解できよう。
の業績⾯への影響は
業界内の競争︓欧⽶企業は M&A を通じた成⻑戦略、⽇系企業は中国およびアジア市場を 軽微

中⼼とした事業展開を実施しているうえ、グローバル・エレベータ市場の 70%を上位 5 社が占め
ている。また、価格よりも安全性が優先される市場である。海外競合企業は 12-14%(サービ
ス事業の OPM は約 20%程度)程度の営業利益率を安定的に確保している。

新規参⼊の脅威︓⽇本国内においては、三菱電機、⽇⽴ビルシステム、東芝エレベータ、⽇本
オーティス・エレベータ、フジテックの5⼤メーカーと系列メンテナンス⼦会社が市場の 90%以上を
占めている。基本的には新規納⼊メーカーが保守・メンテナンス契約を結ぶケースが多い。しかし、
メンテナンスを中⼼に⼿掛ける JES が⼯場を持たない低固定費体質を武器に低層マンション向
けエレベータを中⼼に保守台数の拡⼤を続けている。しかし、先進国では新規メーカーの参⼊は
ない。中国では現地企業が台頭しているが、オーナーが建物の資産価値を維持するために外資
メーカー品を志向する傾向が強い。

代替品の脅威︓エレベータの代替品は⾒当たらない。

売り⼿の交渉⼒︓同社はマイコンを内製しているうえ、かつては、インバータやモータを外部購⼊
(富⼠電機を中⼼)していたが、ほほ内製化が進んでおり、サプライヤーからのコスト増リスクや
調達リスクが軽減している。同時に納期の短縮化および在庫圧縮効果が⾒られている。

買い⼿の交渉⼒︓国内ではゼネコンの収益性が改善⽅向にあり、上場 29 社の OPM は 13/3
期の 1.4%から 18/3 期には 8.8%へ上昇、国内エレベータ各社の OPM を上回る状況にあ
る。また、延床⾯積当たりの建設投資単価の上昇に⾒られるように、エレベータなどの付帯設備
の⾼付加価値化が⾒られている。具体的には⾮接触ボタンの採⽤、エレベータ室内での空気環
境改善ニーズや、省エネニーズ、効率的運⾏システム、など。ただし、ゼネコン各社のマージンはピ
ークアウトの様相にあり、今後は価格低下圧⼒の強まりも考えられよう。

規模の拡⼤と従業員 1 ⼈当たり売上⾼を引き上げる戦略が求められる
海外競合に⽐べて規模のデメリットはあるものの、専業メーカーとしての特徴を⽣かした細やかな
サービスや⾼い技術⼒を武器に、互⾓に戦えている印象を受ける。

コロナ禍での新たなニーズの誕⽣、省エネニーズの⾼まりなどに加え、エレベータ内環境の改善な
どの業界に先⾏した同社独⾃の製品供給などから、今後も差別化戦略を武器とした安定的な
利益成⻑が維持可能と CGRA は考える。加えて、M&A などを通じた規模の拡⼤、従業員 1
⼈当たり売上⾼を引き上げる差別化・付加価値戦略などが求められるであろう。




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図表 21︓現状 SWOT&5Forces 分析

〜SWOT分析〜

強み(Strength) 弱み(Weekness)
専業メーカーとしてのこだわり 相対的に規模が⼩さい
⾼い製品具現化⼒ 海外での営業・価格交渉⼒
海外市場での現地展開⼒
製販⼀貫体制による事業スピードの速さ
収益重視の選別受注体制


機会(Oppotunity) 脅威(Threats)
中国などでの更新需要の顕在化 海外競合間の値下げ競争
強いB/Sを活⽤したM&A 中国などでの新興企業の台頭
値上げの可能性 保守・修理事業の売価低下



〜5Forces分析〜
業界内の競争
各社ともに収益性向上を⽬指しており、価格競争には陥らない可能性が⾼い
寡占化が進んでおり、価格競争は懸念されても業績数値には表れてこない


新規参⼊の脅威
第⼀に安全が求められる市場であるため新規参⼊の脅威は少ない


代替品の脅威
真空を利⽤した移動技術が登場する可能性はあるが安全性に疑問


売り⼿の交渉⼒
既にマイコン、インバータ、モータ類を内製しており、調達⾯のリスクは軽減されている


買い⼿の交渉⼒
顧客の収益環境も好転、コロナを契機に新たな付加価値が求められている
ただし、ゼネコンの収益性ピークアウトが懸念材料




考えられる今後の事業戦略は何か
・図表15で⽰す通り、相対的に収益性は⾼いが、売上規模の拡⼤が求められる
・保守・メンテ企業などの買収は効果的
・従業員1⼈当たり売上⾼を海外競合並みへ引き上げたい


出所︓CGRA 作成




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・リスク開⽰と分析
同社固有のリスクは少ない印象
同社 20/3 期有価証券報告書で明記されているリスクは以下の 12 点。1 年前との⽐較では ここ近年、同社固有
の新規リスクは⾒られ
⑫の新型コロナ感染症リスクが新たに追加されている。
ていない
⑪の IT 関連リスクは 16/3 期、⑦の原材料リスクは 05/3 期から新たに加筆された。残りのリス
ク項⽬に関しては、2004/3 期以降、変更はない。


① 政治・経済状況︓同社は世界 24 の国と地域に 10 の⽣産拠点と多数の販売拠点を有

し、グローバル展開を⾏っている。事業を⾏っている国または地域の政治・経済状況の変動

リスク、更には昇降機を取り巻く各種建物の投資を左右する公共投資や建設投資に影響

を受ける側⾯を有している。

② 新商品の開発︓⼤⼿メーカー間の開発競争は厳しく、先端技術に適応できなければ市場

から追放されてしまう可能性がある。

③ 価格競争︓内外市場において、世界規模で事業展開している有⼒企業を含む競合企

業との厳しい競争が続いている。市場占有率上昇による経営的優位性を指向する流れは

今後も継続するうえ、商品・サービスの価格競争が熾烈化している。

④ 製造者責任︓予期せぬ製品の⽋陥などで場合によっては⼈⾝事故に⾄る可能性がある

⑤ 合弁事業︓中国では合弁事業を展開している。合弁事業の解消などはリスクとなろう

⑥ グローバル事業展開に潜在するリスク

⑦ 原材料価格︓鋼材やワイヤーロープなどの値上がりはコスト増要因

⑧ 資⾦調達︓⾦利の⼤幅な上昇リスク

⑨ 為替相場の変動︓予想を超える急速かつ⼤幅な為替変動

⑩ 株価の変動︓保有する有価証券の下落リスク

⑪ IT(情報技術)関連リスク︓予期せぬ不正アクセスや情報漏洩など

⑫ 新型コロナ感染症リスク

価格競争の激化を懸念する意⾒が聞かれるが影響は⼩さそう
海外企業の各種説明会資料を⾒る限り、各社ともに価格競争の激化を懸念したコメントが散 国内新規案件の受
⾒される。同社の上記リスクでも同様に、価格競争は今に始まったわけではない。OTIS および 注回復遅れが懸念
される
Schindler の 2020/10-12 ⽉期における営業利益増減分析を⾒ても、価格低下影響は思
いのほか⼩さいうえ、KONE においては価格上昇が利益押し上げ要因になっている。したがって、
価格競争に関しては、懸念されるほど影響は⼤きくないと CGRA では考える。

ここにきて海外市場への収益依存度が⾼い KONE や Schindler の受注環境は底打ちから改
善傾向を⾒せ始めている。⽇本国内におけるゼネコン各社の収益性悪化および東京オリンピック
の反動減などを加味すると、国内市場における新規受注の回復遅れがリスク視されそうだ。




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(5)業績および財務&⾮財務分析
連結受注⾼と売上⾼の推移
連結受注⾼は、16/3 期に過去最⾼となる前年⽐ 7%増の 1,913 億円を記録、過去 6 年 近年の営業利益は
間でほぼ倍増した。受注残は 19/3 期に過去最⾼の 2,082 億円に達し、16/3 期以降の受 踊り場状況にある

注残は安定的に年商 1.1 年分を確保している。この結果、20/3 期の売上⾼は、4 期ぶりに
過去最⾼となる前年⽐ 6%増の 1,812 億円を記録した。なお、受注⾼を売上⾼で除した BB
レシオは、10/3 期以降、20/3 期まで 10 期連続で 1 倍を上回って推移している。

近年の営業利益は踊り場が続いている
連結営業利益に関しては、受注⾼と同じく 16/3 期に過去最⾼の前年⽐ 7%増の 144 億円
(営業利益率 8.2%)に達し、過去 4 年間で 2.7 倍(12/3 期営業利益は 54 億円)に
急成⻑を遂げた。その後は踊り場状況が続いており、20/3 期売上⾼は過去最⾼を更新したも
のの、海外を中⼼とした⼈員増加に伴う固定費負担増、国内での物流費などの変動費負担
増などが響き、20/3 期営業利益は 134 億円(営業利益率 7.4%)にとどまった。

20/3 期の当期利益は税率低下もあり、過去最⾼を更新
連結経常利益は、16/3 期に過去最⾼となる前年⽐ 2%増の 152 億円を確保、親会社株 20/3 期は売上⾼と
主に帰属する連結当期利益に関しては、売上⾼と同様、20/3 期に 2 期連続の過去最⾼とな 当期利益が過去最
⾼を更新
る同 8%増の 99 億円に達した。特別利益の計上や税率の低下などが主因である。

海外事業の採算改善が顕在化し始めている
連結受注⾼は 16/3 期に過去最⾼を記録、過去 6 年で受注額がほぼ倍増した。特に、13/3
期以降は中国における新設事業が急成⻑、業績の牽引役となった。営業利利益に関しては、
16/3 期に過去ピークを記録した後、踊り場が続いているものの、中国事業における戦略の変更、
インド事業の採算改善、国内における新製品投⼊効果(単価上昇効果)、シンガポールなど
でのアフターマーケット事業の伸⻑などから、同社業績の再加速局⾯が到来しつつあると CGRA
では考える。

図表 22︓連結受注⾼および売上⾼と営業利益の推移




出所︓会社資料などから CGRA 作成


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・21/3 期の業績動向
21/3 期業績計画は 3Q 決算発表と同時に上⽅修正された
COVID-19 の悪影響が懸念される 21/3 期 3Q(4-12 ⽉)の連結受注⾼は、前年⽐ 5% 新規受注に課題を
減の 1,286 億円(国内は同 3%増の 558 億円、海外は同 11%減の 728 億円)、同期 残すが、事業環境は
改善傾向を強める
間の売上⾼は同 8%減の 1,240 億円、BB レシオは 1.04 倍を確保した。

中国での新設⼯事の回復や採算改善、シンガポールなどでのアフターサービス事業における保守
業務が堅調であることに加え、修理及びモダニゼーション事業も総じて回復傾向にあること、イン
ド事業の採算改善などが主因。

21/3 期 3Q(4-12 ⽉)連結営業利益は、前年⽐ 3%増の 100 億円(期初計画進捗率
93%)、営業利益率は 8.1%。経常利益は同 1%減の 109 億円(同 95%)、親会社株
主に帰属する当期利益は同 3%減の 71 億円を確保した。

この結果、同社は 3Q 決算発表と同時に通期業績計画を上⽅修正、売上⾼を 1,650 億円
→前年⽐ 7%減の 1,690 億円、営業利益 107 億円→同 1%減の 133 億円(営業利益
率 7.9%)、経常利益 115 億円→同横ばいの 147 億円、当期利益 75 億円→同 6%減
93 億円へ引き上げた。

四半期ベースの業績はボラティリティが⼤きい
四半期ベースで業績推移をみると、21/3 期 3Q(10-12 ⽉)における受注⾼は、前年⽐ 5%
減の 418 億円、売上⾼は同 2%減の 476 億円にとどまったが、営業利益は同 40%増の 50
億円を確保した。ただし、図表 23 が⽰す通り、同社四半期業績は、海外競合と⽐較してもボ
ラティリティが⼤きいことに留意が必要である。

図表 23︓主要 4 社の四半期売上⾼と営業利益の推移




出所︓各社資料より CGRA 作成




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・国内における業績動向
国内事業は連結営業利益の 37%を占める
地域別売上⾼における 20/3 期の国内売上⾼は、4 期連続の過去最⾼となる前年⽐ 5%増 新規受注の回復遅
れが懸念される
の 725 億円(売上構成⽐ 40%)となった。

所在地ベースの 20/3 期における国内売上⾼も 4 期連続で過去最⾼を更新、前年⽐ 3%増
の 748 億円を確保した。同営業利益に関しては、増収ながらも新設案件の増加、⼈件費負
担増、物流費などの変動費負担増などで前年⽐ 6%減の 49 億円、営業利益率は 6.5%に
留まった。連結営業利益に占める国内⽐率は 37%。

過去最⾼営業利益は、18/3 期に記録した 57 億円、同様に営業利益率も 8.5%である。

国内事業の 21/3 期業績計画は若⼲上⽅修正された
21/3 期会社側業績計画は 3Q 決算発表時に上⽅修正され、通期国内売上計画は期初計
画の 700 億円から前年⽐ 5%減の 710 億円へ+10 億円増額、営業利益も 50 億円から
前年⽐ 6%増の 52 億円(営業利益率 7.3%)へ+2 億円増額修正された。

コロナ禍において、建設⼯事の延伸や中断が響き減収となるが、新設⼯事において 2020 年 4
⽉に販売を開始した新製品「エクシオール」投⼊に伴う販売価格の改善、⾼採算であるアフター
サービス事業の保守事業が堅調に推移しており、減収ながらも増益を確保できる⾒通し。

⽣産⾯へのコロナ影響に関しては特段顕在化していない模様。ただし、今後に関しては、ゼネコ
ン各社の収益性悪化、東京オリンピック⼯事の反動減などから新規受注の回復遅れが懸念視
される。

図表 24︓国内事業は新規受注の回復遅れが懸念される

(%) 国内事業の営業利益率の推移
10.0

9.0

8.0

7.0

6.0

5.0

4.0

3.0

2.0

1.0

0.0




出所︓会社資料より CGRA 作成




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・東アジアにおける業績動向
東アジア事業は連結営業利益の 40%を占める
中国、⾹港、台湾、韓国などを含む所在地ベースの東アジア売上⾼は、中国事業が好調であ 中国市場に⼤きくい
った 16/3 期に過去最⾼の 846 億円を記録した。しかし、その後は 19/3 期まで減収局⾯が 依存する地域。収益
性の改善が進む
続いたものの、20/3 期は前年⽐ 8%増の 747 億円と増収に転じた。20/3 期の同営業利益
は、前年⽐ 134%増の 53 億円(構成⽐ 40%)、営業利益率は 7.1%であった。過去最
⾼営業利益は、16/3 期に記録した 75 億円。営業利益率は、10/3 期にリーマンショック後の
最⾼となる 10.5%を確保したものの、18/3 期には 3.2%にまで低下が⾒られた。

同社は直販体制が基本だが、中国では独特の商習慣などを加味、合弁事業かつ代理店販売
を⾏っている。上記のように営業利益率が低下した背景には、代理店が新設中⼼の中国市場
において、住宅向けを中⼼に安価なボリュームゾーンに注⼒した影響が顕在化したためである。こ
のため、同社としては、製品値上げに加え、選別受注および代理店のインセンティブ⾒直しなどを
実施、収益性重視策に転じた結果、営業利益および利益率ともに改善傾向を強めている。

2030 年以降は中国での更新需要の顕在化が本格化しよう
同社は 1964 年に初の海外法⼈を⾹港に設⽴した。⾹港市場では同社市場シェアは⾼く、納 1964 年、⾹港での
⼊ストック台数が多いため、収益性も⾼い。また、世界最⼤のエレベータ市場である中国は市場 最⼤かつ最⾼ 28 階
建てのサンヒンビル向
の 95%を新設案件が占めている。しかし、2030 年以降は更新需要(=近代化)の顕在化
け案件を受注
が⾒込まれるうえ、安全⾯からメーカー保守を優先させる法規制の導⼊が進んでいる模様。

東アジア事業の 21/3 期業績計画は⼤幅に上⽅修正された
21/3 期会社側業績計画は、上⽅修正され、東アジアにおける売上⾼は期初計画の 640 億
円から前年⽐ 6%減の 700 億円へ+60 億円増額、営業利益も 36 億円から前年⽐ 2%増
の 54 億円(営業利益率 7.7%)へ+18 億円増額修正された。中国における新設⼯事の
減少、中国⼯場からの海外出荷減を主因に減収となるが、中国⼯場におけるコスト削減および
⾹港における保守案件の売上計上が利益⾯を押し上げる⾒通し。

図表 25︓東アジア事業の収益率が改善傾向を強める




出所︓会社資料より CGRA 作成




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・南アジアにおける業績動向
南アジア事業は連結営業利益の 16%を占める
シンガポール、マレーシア、インドなどを含む所在地ベースの南アジア売上⾼は、18/3 期に過去 同社内において所在
最⾼となる 172 億円に達し、その後は主⼒のシンガポール市場の低迷もあり、20/3 期は前年 地ベース営業利益
率が最も⾼い地域
⽐ 1%減の 164 億円であった。しかし、20/3 期の営業利益は、過去最⾼となる前年⽐ 17%
増の 21 億円(連結営業利益構成⽐ 16%)、営業利益率は 13.0%を確保した。売上貢
献度が⼤きいシンガポールでの新設⼯事の採算改善に加え、インド事業における収益性改善な
どが⼤幅増益に寄与した。なお、リーマンショック後における過去最⾼営業利益率は、11/3 期に
記録した 16.8%である。

南アジア事業の 21/3 期営業利益は過去最⾼を更新する⾒通し
21/3 期会社側業績計画は、上⽅修正され、南アジア売上⾼は期初計画の 160 億円から前
年⽐ 15%減の 140 億円へ-20 億円減額修正された。しかし、営業利益に関しては、17 億
円から過去最⾼となる前年⽐ 8%増の 23 億円(営業利益率 16.4%)へ+6 億円増額修
正され、営業利益率は概ね過去最⾼⽔準に達する⾒通し。

売上⾼が⽰す通り、南アジアにおける需要環境⾃体は芳しくないが、主⼒市場であるシンガポー
ルにおけるアフター事業の伸⻑、更にはインド第⼀⼯場における機種の絞り込みなどの改善効果
が寄与する⾒通し。

シンガポールではトップシェアを有する
同社は 1966 年に業界史上最⼤契約となるシンガポール HDB 向けに 300 台もの受注を獲 シンガポールにおける
得、1972 年には同じく HDB 向けに 5 年間でエレベータ 2,000 台(100 億円)もの業界史 同社市場シェアはトッ
プクラス
上最⼤受注を獲得、同年にシンガポールに現地法⼈を設⽴した。シンガポールでの同社シェア
はトップクラスであり、豊富なストックを背景に、収益性も⾼い。今後はインドネシアやスリランカ、イ
ンドでの新設案件の増加が⾒込まれる。新規案件の増加は、収益性の低下要因に働くものの、
⻑期的には更新需要の顕在化が期待される。また、ベトナム、フィリピン、ミャンマーは今後の新
たな市場として強化・注⼒している。

図表 26︓南アジア事業は営業利益率 20%が⾒えてきた




出所︓会社資料より CGRA 作衛



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・北⽶・欧州における業績動向
北⽶・欧州事業は連結営業利益の 7%を占める
所在地ベースの北⽶・欧州売上⾼は、20/3 期に 2 期ぶりの過去最⾼となる前年⽐ 6%増の 欧⽶事業は収益性
254 億円(同地域は⽶国市場が⼤半を占める)となった。同営業利益は、過去最⾼となる が相対的に低い

前年⽐ 17%増の 10 億円(連結営業利益構成⽐ 7%)、営業利益率は 4.1%であった。
欧州地域は⼩幅の営業損失を計上したとみられるが、⽶国における新設案件およびモダニゼー
ション案件の伸⻑に加え、カナダでも新設⼯事が増加、更に英国地域も増収を確保、2 桁営業
増益を確保した。

同社は、21/3 期連結業績計画を上⽅修正したものの、北⽶・欧州における売上⾼は期初計
画の 250 億円から前年⽐ 8%減の 235 億円へ-15 億円下⽅修正された。しかし、北⽶・欧
州地域における営業利益計画に関しては、期初計画の前年⽐ 43%減の 6 億円(営業利益
率 2.6%)が据え置かれた。英国での新設⼯事増に加え、買収した英国⼦会社のアフター事
業の貢献が⾒られたものの、ロックダウンによる⽶国での新設案件の減少が響いた模様。

⽶国市場はシェア上昇が⾒られ、英国では保守市場に商機あり
同社は国内競合に先⾏する格好で 1977 年にフジテック・アメリカをニューヨークに設⽴した。当
時の⽶国市場は OTIS と WH が 2 強の地位を築き、顧客からは第 3 のエレベータメーカーを求
める機運が⾼まっていた。そのような中、マイコン制御などの新技術や現地対応⼒および現地⽣
産が評価され、1984 年にはワールドフィナンシャルセンターなどのシンボリック案件の受注獲得に
成功した。図表 29 が⽰す通り、近年の同社⽶国売上⾼は他社を上回る成⻑を⾒せている。

欧州は⾼層ビルが少ないうえ、⼤⼿競合のみならず地場の中⼩企業が乱⽴しており、競争が厳
しい。しかし、英国は 1999 年にロンドンの HSBC ビルにエレベータを 35 台納⼊した実績がある
うえ、ロンドンでは⾼層ビルの新設も進んでいる。このため、同社はロンドンでの保守・メンテナンス
市場には参⼊余地が⼤きいと判断、2020 年 2 ⽉ 10 ⽇に英国にある昇降機の販売・据付・
保守を⼿掛ける Amalgamated Lifts Limited を買収した。

図表 27︓北⽶・欧州事業は収益性に課題を残す




出所︓会社資料より CGRA 作成




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図表 28︓欧州 KONE と Schindler の地域別売上構成⽐

KONEの地域別売上構成(%) Schindlerの地域別売上構成⽐(%)






41 20/12期売上⾼は99
39 Schindlerの20/12期
売上⾼は106億CHF。 45
億ユーロ。欧⽶が売上
⾼の約6割を占める 売上⾼の72%を欧⽶が
占める










EMEA Americas Asia&Pacific EMEA Americas Asia-pacific




出所︓会社資料から CGRA 作成




図表 29︓⽶国建設投資額と主要企業の北⽶売上⾼の推移

⽶国建設投資額と各社の北⽶売上⾼の推移 (百万円)
4,000 30,000


3,500
25,000

3,000

20,000
2,500


2,000 15,000


1,500
KONE(左、M Euro) 10,000
Schindler(左、M CHF)
1,000
⽶国建設投資(左、10億ドル)
フジテック(右) 5,000

線形 (フジテック(右))

- 0
CY12 CY13 CY14 CY15 CY16 CY17 CY18 CY19 CY20


出所︓会社資料などから CGRA 作成。フジテックは 3 ⽉末決算企業、他社は 12 ⽉末決算企業




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(6)財務・⾮財務分析と株価バリュエーション
リスク対応⼒の強い B/S を維持
20/3 期末の連結株主資本⽐率は 55.2%(過去 10 年平均は 55.5%)、単体ベースの CCC は 82.5 ⽇で相
利益準備⾦は 437 億円に達しており、約 49 億円(=21/3 期予想 DPS60 円)の年間配 対的に良好

当総額に対して潤沢な配当原資を確保していると⾔えよう。

有形固定資産回転率(売上⾼÷過去 2 年平均有形固定資産)は 5.5 回(5 年前は 3.6
回)、空調機を⼿掛けるダイキン⼯業の 4.8 回を上回る資本効率の良いビジネスモデルを有し
ている。

⼀⽅、運転資⾦動向をみると、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル︓棚卸資産回転⽇数+
売上債権回転⽇数-買⼊債務回転⽇数)は 82.5 ⽇。こちらもダイキン⼯業の 131 ⽇を⼤き
く下回っているうえ、前受⾦を除かない場合でも 130 ⽇となる。

安定的な FCF を創出可能な収益構造を確保
過去 10 年間の平均フリーキャッシュフロー(FCF)は 68 億円を確保、20/3 期末の有利⼦
負債 42 億円に対して、528 億円(前受⾦を除くと 294 億円)のネット・キャッシュ状態にあ
る。10 年前のネット・キャッシュは 111 億円。当時の有利⼦負債残⾼は 102 億円であり、有
利⼦負債の削減が進む⼀⽅、現預⾦が 10/3 期末の 213 億円から 20/3 期末には 570 億
円へ拡⼤している。

20/3 期末には⽉商 1.6 か⽉分(234 億円、総資産の 12%)の前受⾦を有する。⼀⽅、
⼯事損失引当⾦は、営業利益の約 39%に相当する 52 億円ではあるが、総資産の 2.7%に
とどまり、総資産および営業利益ともに損失引当⾦の割合が低下傾向にある。選別受注および
中国での営業体制の⾒直し効果などが顕在化していると推測される。

ROE は 10%弱で踊り場が続く。株主資本が過⼤な印象
20/3 期末の ROE は 9.5%。14/3 期の 9.8%をピークに 10%⽬前で⾜踏み状態にある。 ROE は 10%⼿前で
ROE 9.5%をデュポンモデルに分解すると、売上⾼当期利益率は 5.5%(14/3 期 5.2%)、 ⾜踏み。株主資本
が主因
総資産回転率は 0.96(同 1.06)、財務レバレッジは 1.8(同 1.8)となっており、株主資
本が過⼤な印象を受ける。実際、同社株主資本は、14/3 期末の 846 億円から 20/3 期末
には約 1.26 倍の 1,070 億円へ増加している。

⼀⽅、ダイキン⼯業における 20/3 期 ROE は 12.0%。総資産回転率は 1.0、財務レバレッジ
は 1.9 だが、売上⾼当期利益率が 6.7%(営業利益率 10.4%)を確保している点が同社
との ROE の差に表れている。

したがって、同社 ROE の改善には、差別化戦略や値上げなどによる P/L の収益性改善に加え、
B/S を活⽤した成⻑戦略などが効果的と CGRA では考える。




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図表 30︓ROE に先⾏する格好で ROIC が上昇傾向へ




デュポンモデル︓% 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3
売上⾼当期利益率 5.2 5.1 5.0 5.1 5.2 5.4 5.5
総資産回転率(売上⾼÷総資産) 1.1 1.0 1.0 1.0 0.9 0.9 1.0
財務レバレッジ(総資産÷⾃⼰資本) 1.8 1.9 1.9 1.9 1.8 1.8 1.8
ROE 9.8 9.4 9.7 9.4 9.2 9.1 9.5

NOPAT 11,296 12,384 13,462 11,867 9,780 9,836 13,514
投下資本 95,820 114,262 109,293 109,127 116,232 117,697 122,921
投下資本収益率(ROIC)︓% 11.8 10.8 12.3 10.9 8.4 8.4 11.0




図表 31︓CCC が少し⾼⽌まり傾向にある




出所︔会社資料より CGRA 作成




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・⾮財務分析
今後の課題
様々なリスクが存在する中、企業の持続的成⻑には社会課題の解決を伴う企業価値および社 ⾮財務情報の開⽰
が待たれる
会価値の向上が求められる。ここ数年、投資資⾦もアクティブなものからパッシブ化の動きを強め
ており、ESG ファンドへの資⾦流⼊が続いている。

ESG や SDGs などの⾮財務情報の開⽰は、⻑期投資家のみならず、すべてのステークホルダー
にとって必要不可⽋なものになりつつあると⾔えよう。また、エーザイ株式会社の柳良平 CFO は、
「解散価値である PBR1 倍以上の部分に関しては⾮財務データで説明可能」とされるなど、企
業側も積極的な情報開⽰で資本コストの低下を通じた企業価値の向上を⽬指している。

今後は⾮財務データの KPI 設定が求められよう
同社の収益構造は、規模と歴史の差はあれ、海外競合である OTIS や KONE と同様、新規 今後は定量的な⾮
案件+安定的な保守・メンテ事業+モダニゼーション事業の収益貢献が期待可能であり、安定 財務情報の KPI が
求められよう
的なキャッシュの創出が可能である。従って、事業のサスティナビリティは相対的に⾼く、株価は⻑
期の利益創出期待を織り込む可能性が⾼い。

同社はフジテックレポートの発⾏ならびに CSR の⼀環としての社会活動やエネルギー使⽤量や
廃棄物発⽣量および⽬標量を報告している。また、取締役 9 名のうち 5 名を社外取締役が占
め、指名報酬諮問委員会を設置するなどガバナンス体制の強化が進んでいる。しかし、E と S に
対しては、今後の同社サスティナビリティを説明するまでには⾄っておらず、今後の課題であると⾔
えよう。SDGs に関しても、コーポレート戦略の柱の 1 つとしているが、定性的な内容にとどまって
おり、定量的な KPI の開⽰と達成に向けた諸施策が必要と⾔えよう。

ち な み に 、 Schindler は 再 ⽣ エ ネ ル ギ ー の 積 極 活 ⽤ 、 GHG を ス コ ー プ 3 レ ベ ル で 管 理
(SWISS CLIMATE が監査)、⼯場での労働災害の低減、⼥性社員の増加、所有⾞の
CO2 削減など、サスティナビリティを意識した経営を⾏っている。OTIS も役員の 3 分の1を⼥
性、カーボン排出量や廃棄物、リサイクル率などの ESG 開⽰を強化している。

図表 32︓今後は⾮財務情報に関する各種 KPI の発表が期待される




出所︓フジテック「戦略的⽅向性」

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2021-4-12




・コーポレート・ガバナンス体制
更なる強化へ向けた施策を発表
同社は資本市場におけるニーズの変化や、あらゆる経営環境の変化へ備えるため、ガバナンス強化 指名・報酬諮問委員会
に取り組み、より強固な経営基盤の構築を⽬指す⽅針である。 を設置

「戦略的⽅向性」の発表と同時に、取締役の指名・報酬などの決定に関する⼿続きの客観性・透
明性を⾼め、コーポレート・ガバナンス体制の⼀層の充実を図るため、社外取締役を主要な構成員
とする指名・報酬諮問委員会の設置を決定した。

指名・報酬諮問委員会は、2021 年 2 ⽉に設置され、取締役会の決議により選定された 3 名以
上の委員で構成される。委員の過半数は独⽴社外取締役とし、委員⻑は独⽴社外取締役である
委員の互選により、独⽴社外取締役から選定される。

同社の取締役数は 9 名、うち社外取締役は 5 名で、社外取締役は独⽴性を有する。取締役会 社外取締役は 5 名
の議⻑は内⼭社⻑。18 年時点での同社取締役数は 7 名、うち社外取締役 3 名(佐伯照道⽒、
杉⽥伸樹⽒、⼭添茂⽒)であったが、2019 年以降は現在の取締役数 9 名、うち社外取締役 5
名となり、定量的な増員が⾒られた。

社外取締役の佐伯照道⽒は弁護⼠出⾝、⼤阪弁護⼠会会⻑などを歴任。杉⽥伸樹⽒は名古
屋⼤学経済学部教授、内閣府経済社会総合研究所所⻑などの要職を歴任。⼭添茂⽒は丸紅
株式会社の取締役副社⻑執⾏役員、みずほキャピタルパートナーズ株式会社社外監査役などを
歴任。遠藤邦夫⽒は本⽥技研⼯業の財務・経理などの要職ならびに取締役・監査役を歴任。⼭
平恵⼦⽒はサンヨーホームズ株式会社の代表取締役社⻑、上新電機株式会社の社外取締役な
どを歴任。

加えて、同社は買収防衛策の⾮継続を決定した。買収防衛策は、2007 年 5 ⽉ 11 ⽇開催の取 買収防衛策は⾮継続へ
締役会において、導⼊を決議、2022 年 6 ⽉開催の定時株主総会まで有効である。しかし、必要
性が相対的に低下したと判断、2022 年 6 ⽉開催の定時株主総会の終結時をもって継続しない
ことを決議した。

図表 33︓取締役のスキルドマテリアル




出所︓フジテックレポート 2020


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・情報開⽰を積極化
ESG や SDGs を意識した内容へ開⽰の強化が進む
同社は「戦略的⽅向性」の中で、⽬標 ROE、更には公約配当性向を開⽰した。決算発表に 情報開⽰の強化が
関しても、従来は年 2 回の決算説明会の開催と説明会資料の開⽰に留まっていたが、2020 ⾏われてきた

年から四半期決算の説明資料を作成、HP 上で開⽰している。
2019 年には従来の Annual report がフジテックレポートに名称を改め、ページ数も 2019 年
の 35 ページから 2020 年には 49 ページへ拡張している。社⻑メッセージが拡充され、ESG や
SDGs や⼈財育成策の説明に加え、新たに社外取締役のメッセージが加筆されている。

今後は⾮財務情報に関する KPI の開⽰が期待される
このように、同社は情報開⽰姿勢を強化しているが、過去の実績値の開⽰に留まっており、中 ESG 投資家のニーズ
⻑期的な同社事業のサスティナビリティを説明すべく⾮財務情報の⽬標 KPI の開⽰はほとんど を満たす⾮財務情
報の開⽰が求められ
⾏われていない。⻑期保有の投資家あるいは ESG 投資家の投資資⾦を呼び込むには不⼗分
よう
と CGRA では考える。これら投資家とのエンゲージメントには⾮財務情報の⼀段の開⽰に加え、
時間軸を伴う GHG(温室効果ガス)の削減⽬標などの KPI 開⽰に期待したい。

情報開⽰と同時に資本コストの低下が期待されよう
各種 KPI などの⾮財務情報開⽰の積極化が実現すれば、ベータ値の低下を通じた資本コスト
の低減が期待される。ポストコロナに向けた業績回復も相まって、ROIC モデルから試算される理
論株価の上昇が⾒込まれよう。

中国需要に左右されつつも期初予想に対する達成の確度は良好
16/3 期および 18/3 期は、中国需要が予想外の減速を⾒せたため、期初業績計画が下⽅修 業績ガイダンスは基
正された。しかし、同社は基本的に保守的な業績ガイダンスを公表する傾向がうかがえる。 本的に保守的

20/3 期は期初予想を 2 度増額、21/3 期も 3Q 時決算に期初計画を上⽅修正した。特に
中国需要が回復する局⾯では業績計画が上振れる傾向が⾒られる。また、過去 3 回の中計
を振り返ると、作成時期が業績悪化時と重なっているため、保守的な⽬標値を開⽰する傾向が
あり、中計 1 年⽬で⽬標値をクリアしている。

図表 34︓中国次第だが、同社業績ガイダンスは保守的な傾向が⾒られる
(億円) 期初会社計画営業利益と着地実績との差異












16/3期と18/3期は中国需要の下振
57 75 れが期初計画からの下振れ要因




期初予想 実績



-



出所︓会社資料などから CGRA 作成


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・株主還元策
新たに公約配当性向 50%以上を発表
同社は 2020 年 12 ⽉ 4 ⽇発表の「戦略的⽅向性」の中で、新たに公約配当性向 50%以 株主還元策を強化
上を明記した。従来は、利益還元の充実を経営の最重要課題と捉えつつ、企業基盤の⻑期
的安定を図るための内部留保を考慮した配当を⾏うことを基本⽅針とし、20/3 期は 40%、前
中計では 40-50%を配当性向の⽬安としてきた。

従って、同社は 2021 年 2 ⽉ 9 ⽇付で今 21/3 期業績予想を上⽅修正(予想 EPS を
92.62 円→114.69 円)した際、予想 1 株配当⾦(DPS)も期初予想の 50 円(配当性
向 54%)から 60 円(同 52%)へ増配を発表した。

配当性向の上昇を伴う増配を継続
同社は段階的に増配を実施してきた。10/3 期における DPS は 10 円であったが、業績悪化が
⾒られた 11/3-12/3 期は 12 円、16/3-17/3 期は 30 円を据え置いたものの、17/3 期以
降は 4 期連続で増配を⾏い、20/3 期は 50 円、21/3 は 60 円へ引き上げる計画である。

配当性向を⾒ても、11/3 期の 14.8%をボトムに緩やかに上昇、18/3 期には 32%、20/3
期には 41%、21/3 は 52%に達する⾒通し。配当利回りを⾒ても、16/3-18/3 期は平均
2.5%、19/3-20/3 期は平均 3.6%へ上昇、魅⼒的な配当利回りを提供してきた。

外国⼈持株⽐率は 40%を超えたが、個⼈投資家は減少
上記のような株主還元策の強化などを背景に、外国⼈持ち株⽐率も 16/3 期の 30%から 株主構成が変化
20/3 期には 40%を超える⽔準に達した。ただし、⼀⽅で個⼈投資家の持ち株⽐率が 16/3
期の 20%から 20/3 期には 16%へ低下、株主数も 4,008 名から 3,424 名へ減少した。

プレミアム優待倶楽部の株主優待を新設
このため、同社は個⼈投資家への還元強化の側⾯から、2021 年 2 ⽉ 9 ⽇付で、プレミア優
待倶楽部の株主優待を新設した。同社株 200 株以上を保有する投資家に対して、保有株
数に応じたポイントを様々な優待商品(家電や各種⾷料品など)へ交換が可能。

今後は同社株式の保有期間に応じた追加ポイントの付与、更には個⼈投資家向けの IR 説明
会などの開催にも期待したい。




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図表 35︓継続的な増配を維持

(%、円) 1株配当⾦と配当性向の上昇が続く 21/3 期まで 4 期連
(%)
70.0 4.0 続で増配
配当性向(左、%)
60.0 3.5
1株配当⾦(左、円)
配当利回り(右、%) 3.0
50.0
2.5
40.0
2.0
30.0
1.5
20.0
1.0

10.0 0.5

0.0 -





図表 36︓利益成⻑を上回るペースでの株主還元を継続
配当性向も上昇へ




図表 37︓個⼈が減少し外国⼈投資家の保有⽐率が上昇
(名) 株主数および外国⼈投資家および個⼈投資家の保有⽐率の推移 (%) 外国⼈投資家保有
6,000 45.0 ⽐率が上昇へ
株主数(左) 個⼈投資家の保有⽐率(右) 外国⼈投資家の保有⽐率
40.0
5,000
35.0

4,000 30.0

25.0
3,000
20.0

2,000 15.0

10.0
1,000
5.0

0 0.0





出所︓会社資料より CGRA 作成


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・直近の株価および株価バリュエーション
海外競合との株価バリュエーション⽐較
図表 14 では、同社の海外競合および⽴ち位置が似ているダイキン⼯業の属する空調機業界 海外競合企業のバリ
における各社の 20 年 3 ⽉末時点(海外企業は 20/12 ⽉末)における PBR を ROE と ュエーションは同社を
上回る
PER の関係からチェックしてみた。

同社は 2021 年 2 ⽉ 9 ⽇発表の 21/3 期 3Q 決算時において、21/3 期業績計画を上⽅
修正したことなどから、株価は上昇傾向を強め、2021 年 2 ⽉ 15 ⽇に上場来⾼値となる
2,836 円を付けた。その後は利益確定に押され、2,400 円前後での推移が続いている。3 ⽉
31 ⽇時点の株価は 2,358 円、会社計画 PER は 20.6 倍。配当利回りは 2.5%。20/3 ⽉
末 BPS で計算される PBR は 1.79 倍となる。

同社の海外競合である KONE の 21/12 期予想 PER は 34.5 倍、同 PBR は 11.4 倍。⽶
OTIS の予想 PER は 26.3 倍、同 PBR は-9.9 倍。Schindler は同 PER が 34.8 倍、PBR
が同 6.9 倍で評価されている。

ダイキン⼯業の予想 PER は海外競合を上回る
ダイキン⼯業に関しては、21/3 期業績計画を既に 3 度上⽅修正、期初計画の営業利益 ⾮財務情報の開⽰
次第ではマルチプル
1,500 億円(EPS 341.78 円)が 21 年 2 ⽉ 9 ⽇発表の 3Q 決算時に 2,320 億円
の上昇が期待可能
(EPS 512.67 円)へ修正された。

株価に関しては、20 年 12 ⽉ 2 ⽇に上場来⾼値である 24,440 円に達し、ここにきて 22,000
円前後で推移している。3 ⽉ 31 ⽇の終値は 22,320 円。会社計画 PER は 43.5 倍。配当
利回りは 0.7%。20/3 期末 BPS で試算される PBR は 4.6 倍で評価されている。

ダイキン⼯業の海外競合である⽶ Carrier の 21/12 予想 PER は 22.4 倍、同 PBR は 5.1
倍。Lennox の同 PER は 28.5 倍、同 PBR は-124 倍。Trane の同 PER は 31.3 倍、同
PBR は 6.6 倍で推移している。

ダイキン⼯業の予想 PER は、海外競合を上回っており、好調な業績に加え、⾮財務情報の積
極開⽰や ESG 説明会などの開催などから、今後のサスティナビリティの⾼さが株価に反映されて
いる印象。

同社に関しては、株価⾃体は上場来⾼値に到達したが、海外競合と⽐較して株価バリュエーシ
ョンが相対的に低位に推移している。ESG や SDGsなどの⾮財務情報の開⽰、株式市場への
情報発信などによって今後はマルチプルの改善が期待されよう。




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図表 38︓6 ヶ⽉株価チャート
⽬先の同社株価は
利益確定の売りに押
された




図表 39︓1 年株価チャート

海外競合を上回る
株価パフォーマンスを
実現




図表 40︓5 年株価チャート


同社株価は上場来
⾼値を更新




出所︓Market screener より CGRA 作成



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(7)東京ショールーム⾒学
新製品「XIOR」を展⽰
東京の南北線⽩⾦⾼輪駅から直結している NBF プラチナタワー9 階に同社のショールーム(名 エレベータのハードの
称クリエイティブスタジオ)を併設した東京本社がある。2021 年 3 ⽉ 5 ⽇(⾦)、同ショール みならずソフト⾯の施
設も充実
ームを訪問、まず、空間移動システムのスペシャリストである同社の紹介ビデオを鑑賞した。

1948 年に創業した同社は、⾼性能と製販⼀貫体制を武器に、1964 年から海外展開を強
化、現在では 24 の国と地域に展開している。約 2 万点の構成部品からなるエレベータの拠点
である滋賀の Big Wing では、商品開発センター、実験塔(タワー)、⼯場を備える。エスカレ
ータは兵庫の Big Step。また、アフターサービスも⾃社で展開、物流・サービス拠点である Big
Fit では、24 時間 365 ⽇体制を敷いている。Big Fit にはトレーニングセンタを併設しているう
え、海外でもトレーニング拠点を構え、⼈材育成をグローバルに展開している。

ショールームでは 2020 年 4 ⽉に市場投⼊した新製品「XIOR」を展⽰、昨年 12 ⽉から標準
仕様にした⾮接触ボタン「エアータップ」を 3 種類展⽰、実際に⾮接触ボタンの操作を体験する
ことが可能。同社エレベータは、⾮常時に 4 か国語で対応しているうえ、エレベータの到着⾳もユ
ニバーサルデザインが加味されており、エレベータの専業メーカーとしてのこだわりが感じられる。

また、エレベータ内に冷房機を他社に先駆けて標準採⽤、実際の操作や⾵向などが体感できる。
エレベータかご内の側⾯を利⽤して様々な映像を放映、操作盤がスクロール可能なタッチパネル
仕様になっているタイプやエレベータ扉にプロジェクションマッピングで画像を投影、混雑状況が外
から把握可能なものなども展⽰されていた。

遠隔監視の「Safe Net センター」を併設
同ショールーム(名称クリエイティブスタジオ)の隣には、稼働しているエレベータの状況をリアルタ 万全のサポート体制
イムでチェックする「セーフネットセンター」を併設している。神奈川から北海道エリアを東京センター を実現
で対応、神奈川以⻄は⼤阪の同センターでカバーしている。地震・⽔害などの広域災害が発⽣、
⼀⽅のセンターが不通になった際には、互いにバックアップする体制が確⽴されている。両センター
において緊急事態が発⽣した場合の BCP 体制も構築済であり、万全のサポート体制を完備し
ている。

同センターでは、①遠隔監視による運航データなどを蓄積・分析し、保全計画をカスタマイズ、故
障予防と最適保全を提供、②電磁ブレーキや各種スイッチなどを⾃動診断、予兆を捉えて、故
障予防と迅速な保全が可能、③地震時などのいざという時の早期復旧をサポートする、などの
機能を有する。同社の効率の良いサービス体制(現在、全国 160 を超える拠点ネットワークで
対応)の構築にも寄与している。このような遠隔監視システムは、海外でも同様のサービスを提
供している模様である。

東京フィットを訪問
2021 年 3 ⽉ 24 ⽇、東京都⼤⽥区にある東京フィットを訪問した。東京フィットは①中間加
⼯機能を有する物流拠点、②フィールドエンジニアの⼈財育成施設(エレベータの実機 6 台、
エスカレータ 3 台を展⽰)を備える。注⽬の⾮接触ボタン「エアータップ」を初めて納⼊した施設
でもある。同社は東京と⼤阪の物流拠点において、デポ機能のみならず外装組み⽴てなどの流
通加⼯を施すことで現場での負荷を軽減、⽣産性改善につなげる⽅針。



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(8)連結損益計算書と貸借対照表および CF
・図表 41︓連結損益計算書
百万円、% 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3会
売上⾼ 102,053 105,061 117,468 147,054 165,297 177,128 167,442 168,795 170,759 181,232 169,000
 前年⽐ -3.8 2.9 11.8 25.2 12.4 7.2 -5.5 0.8 1.2 6.1 -6.7
売上原価 81,694 84,017 90,982 114,244 129,547 137,879 130,578 133,361 134,792 141,009 -
 原価率 80.1 80.0 77.5 77.7 78.4 77.8 78.0 79.0 78.9 77.8 -
粗利益 20,359 21,044 26,486 32,810 35,750 39,249 36,864 35,434 35,967 40,223 -
 粗利率 19.9 20.0 22.5 22.3 21.6 22.2 22.0 21.0 21.1 22.2 -
販売管理費 15,138 15,681 17,314 19,939 22,262 24,800 24,177 24,769 25,654 26,848 -
 販売管理費率 14.8 14.9 14.7 13.6 13.5 14.0 14.4 14.7 15.0 14.8 -
営業利益 5,221 5,363 9,172 12,871 13,488 14,449 12,687 10,665 10,313 13,375 13,300
 前年⽐ -1.3 2.7 71.0 40.3 4.8 7.1 -12.2 -15.9 -3.3 29.7 -0.6
 営業利益率 5.1 5.1 7.8 8.8 8.2 8.2 7.6 6.3 6.0 7.4 7.9
経常利益 5,447 5,799 10,066 14,187 14,826 15,162 13,110 11,911 11,922 14,682 14,700
 前年⽐ -10.0 6.5 73.6 40.9 4.5 2.3 -13.5 -9.1 0.1 23.2 0.1
法⼈税 -3,647 2,508 2,973 4,343 4,318 4,244 3,134 2,487 2,540 2,987 -
親会社当期利益 7,569 2,607 5,507 7,664 8,356 8,807 8,564 8,857 9,220 9,916 9,300
 前年⽐ 86.4 -65.6 111.2 39.2 9.0 5.4 -2.8 3.4 4.1 7.5 -6.2


地域別受注⾼ ⽇本 49,753 49,316 56,619 66,087 71,937 71,580 67,179 70,648 77,846 74,634 -
東アジア 38,060 43,641 54,414 75,698 82,534 88,475 74,298 79,755 69,597 77,173 -
南アジア 8,823 10,001 11,126 15,716 16,606 16,843 18,837 16,142 16,889 16,134 -
北⽶欧州 0 0 0 0 0 0 0 0 0 28,053 -
北⽶ 13,253 10,173 11,680 18,881 18,338 24,208 24,334 25,186 25,919 0 -
欧州 610 703 318 793 470 326 667 507 290 0 -
⼩計 110,499 113,834 134,157 177,175 189,885 201,432 185,315 192,238 190,541 195,994 -
調整額 -4,940 -5,709 -6,247 -11,386 -11,062 -10,150 -10,349 -10,215 -11,534 -9,674 -
合計 105,559 108,125 127,910 165,789 178,823 191,282 174,966 182,023 179,007 186,320 -
BBレシオ︓倍 1.03 1.03 1.09 1.13 1.08 1.08 1.04 1.08 1.05 1.03 -


受注残⾼ 合計 100,713 97,996 108,972 143,881 166,745 195,339 184,738 199,602 208,183 207,817 -


所在地別売上⾼ ⽇本 52,430 50,816 52,865 62,408 65,514 65,001 65,572 67,646 72,485 74,751 71,000
東アジア(中国含む) 33,241 39,445 48,692 66,363 76,240 84,606 72,594 70,442 69,308 74,748 70,000
南アジア 9,669 9,794 10,590 13,024 15,499 17,075 15,586 17,191 16,572 16,379 14,000
北⽶欧州 0 0 0 0 0 0 0 0 0 25,445 23,500
北⽶ 10,814 10,123 11,431 14,165 17,735 22,360 22,092 23,871 23,721 0 -
欧州 622 542 389 673 601 508 407 511 323 0 -
⼩計 106,776 110,720 123,967 156,633 175,589 189,550 176,251 179,661 182,409 191,323 178,500
調整額 -4,723 -5,659 -6,499 -9,579 -10,292 -12,422 -8,809 -10,866 -11,650 -10,091 -9,500
合計 102,053 105,061 117,468 147,054 165,297 177,128 167,442 168,795 170,759 181,232 169,000


所在地別営業利益 ⽇本 1,578 1,897 3,447 4,605 5,149 5,199 5,445 5,728 5,206 4,891 5,200
東アジア(中国含む) 2,968 2,263 4,178 6,670 7,328 7,500 4,540 2,257 2,269 5,297 5,400
南アジア 1,620 1,595 1,486 1,779 1,558 1,626 1,720 1,936 1,851 2,135 2,300
北⽶欧州 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1,047 600
北⽶ -960 -387 118 -26 -582 137 930 920 936 0 0
欧州 18 -7 -12 5 -1 -43 -54 -67 -43 0 0
⼩計 5,224 5,361 9,217 13,033 13,452 14,419 12,581 10,774 10,219 13,370 13,500
調整額 -3 2 -45 -162 36 30 106 -109 94 5 -200
合計 5,221 5,363 9,172 12,871 13,488 14,449 12,687 10,665 10,313 13,375 13,300


所在地別営業利益率 ⽇本 3.0 3.7 6.5 7.4 7.9 8.0 8.3 8.5 7.2 6.5 7.3
東アジア(中国含む) 8.9 5.7 8.6 10.1 9.6 8.9 6.3 3.2 3.3 7.1 7.7
南アジア 16.8 16.3 14.0 13.7 10.1 9.5 11.0 11.3 11.2 13.0 16.4
北⽶欧州 - - - - - - - - - 4.1 2.6
北⽶ -8.9 -3.8 1.0 -0.2 -3.3 0.6 4.2 3.9 3.9 - -
欧州 2.9 -1.3 -3.1 0.7 -0.2 -8.5 -13.3 -13.1 -13.3 - -
⼩計 4.9 4.8 7.4 8.3 7.7 7.6 7.1 6.0 5.6 7.0 7.6
調整額 0.1 0.0 0.7 1.7 -0.3 -0.2 -1.2 1.0 -0.8 0.0 2.1
合計 5.1 5.1 7.8 8.8 8.2 8.2 7.6 6.3 6.0 7.4 7.9


地域別売上⾼ ⽇本 52,430 50,816 49,805 58,338 61,508 60,381 62,797 64,935 69,050 72,519 -
北⽶欧州 10,814 10,123 12,265 15,062 18,272 22,767 22,370 24,178 24,713 27,260 -
欧州 622 542 0 0 0 0 0 0 0 0 -
南アジア 9,669 9,794 10,736 13,726 16,315 18,264 16,619 18,238 17,715 17,290 -
東アジア(中国含む) 33,241 39,445 43,124 58,072 67,251 72,425 62,226 57,708 56,614 64,160 -
その他 -4,723 -5,659 1,538 1,856 1,951 3,291 3,430 3,736 2,667 3 -
合計 102,053 105,061 117,468 147,054 165,297 177,128 167,442 168,795 170,759 181,232 -
国内⽐率︓% 51.4 48.4 42.4 39.7 37.2 34.1 37.5 38.5 40.4 40.0 -
海外⽐率︓% 48.6 51.6 57.6 60.3 62.8 65.9 62.5 61.5 59.6 60.0 -
-
新設⽐率︓% - - 50.8 53.8 56.7 55.4 52.8 51.9 50.2 51.3 -
アフター⽐率︓% - - 49.2 46.2 43.3 44.6 47.2 48.1 49.8 48.7 -




フジテック(6406) 49
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・図表 42︓連結貸借対照表とキャッシュフロー
百万円 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3
流動資産 現預⾦ 21,359 25,150 31,446 41,212 51,674 43,698 45,749 49,856 52,244 57,024
受取⼿形売掛⾦ 26,213 25,457 31,039 42,116 53,184 52,502 50,455 53,411 54,680 61,626
棚卸資産 9,636 11,188 13,886 19,928 20,553 21,074 20,660 21,862 21,291 19,319
その他 4,679 3,634 4,363 8,015 6,723 6,030 6,171 2,401 2,966 2,915
流動資産合計 61,887 65,429 80,734 111,271 132,134 123,304 123,035 127,530 131,181 140,884
固定資産 有形固定資産 29,517 28,594 28,759 29,982 32,885 33,828 32,968 34,388 33,948 32,188
無形固定資産 2,788 2,506 3,136 3,876 4,311 4,063 3,893 4,029 3,874 3,640
投資その他 投資有価証券 4,434 4,281 5,020 5,980 7,977 7,596 8,312 10,569 8,796 7,172
その他 6,191 6,401 4,992 3,155 2,549 3,080 4,796 5,986 6,890 9,697
固定資産計 42,930 41,782 41,907 42,993 47,722 48,567 49,969 54,972 53,508 52,697


流動負債 ⽀払⼿形買掛⾦ 10,567 11,567 13,403 17,019 15,247 14,415 15,148 16,150 16,010 14,938
電⼦記録債務 0 0 0 0 5,281 3,969 4,529 4,714 5,386 5,273
短期借⼊⾦ 2,389 1,832 600 541 7,911 7,405 3,774 3,451 3,298 3,990
1年内返済⻑期借⼊⾦ 2,312 11 1,474 507 352 556 329 524 256 217
⼯事損失引当⾦ 2,394 2,900 3,434 5,345 6,421 6,762 7,214 5,957 4,695 5,206
前受⾦ 6,607 9,607 11,752 17,325 22,533 20,584 18,801 21,841 21,176 23,417
その他 7,424 7,484 9,290 13,611 13,661 13,290 14,308 14,184 15,420 17,042
流動負債計 31,693 33,401 39,953 54,348 71,406 66,981 64,103 66,821 66,241 70,083
固定負債 ⻑期借⼊⾦ 1,287 1,500 67 1,271 1,379 926 1,177 435 221 0
退職給付債務 0 0 0 4,789 1,103 2,996 3,204 3,145 3,781 4,076
退職給付引当⾦ 4,375 4,122 4,037 0 0 0 0 0 0 0
その他 300 274 313 354 1,347 562 676 279 523 707
固定負債計 5,962 5,896 4,417 6,414 3,829 4,484 5,057 3,859 4,525 4,783
負債合計 37,656 39,298 44,371 60,762 75,235 71,465 69,160 70,680 70,766 74,866


株主資本 資本⾦ 12,533 12,533 12,533 12,533 12,533 12,533 12,533 12,533 12,533 12,533
資本剰余⾦ 14,565 14,565 14,565 14,565 14,565 14,566 14,568 14,568 14,569 14,571
利益剰余⾦ 55,744 57,228 61,520 67,406 75,239 81,822 87,955 94,381 96,087 102,355
⾃⼰株式 -128 -130 -134 -1,077 -7,825 -15,357 -15,199 -15,081 -10,630 -10,400
株主資本合計 82,715 84,197 88,485 93,427 94,512 93,564 99,857 106,401 112,559 119,059


その他包括 有価証券評価差額 404 455 1,021 1,538 2,435 1,972 2,478 3,215 2,200 1,194
為替換算調整勘定 -20,309 -21,514 -17,589 -9,863 -3,540 -5,364 -8,582 -8,308 -11,000 -11,935
退職給付調整 0 0 0 -532 -86 -1,453 -1,276 -943 -951 -1,387
合計 -19,904 -21,058 -16,568 -8,857 -1,191 -4,845 -7,293 -6,036 -9,752 -12,145
新株引受 0 0 0 36 56 61 61 61 40 40
⾮⽀配持ち分 4,350 4,777 6,355 8,895 11,243 11,626 11,222 11,396 11,075 11,760
純資産合計 67,161 67,916 78,272 93,501 104,620 100,406 103,847 111,822 113,922 118,714
総資産合計 104,817 107,214 122,643 154,263 179,855 171,871 173,007 182,502 184,688 193,580


営業CF 税前当期利益 4,836 5,955 9,830 13,984 14,806 15,036 13,055 11,811 12,524 14,493
減価償却 2,253 2,204 2,083 2,237 2,373 2,748 2,751 2,915 3,055 3,131
売上債権増減 1,336 388 -3,355 -5,929 -7,102 -1,297 -701 -2,088 -3,540 -8,236
棚卸資産増減 2,298 -1,693 -1,618 -3,403 1,136 -1,356 -962 -734 -699 1,190
仕⼊債務増減 -655 1,103 829 1,105 1,726 -1,325 2,575 691 1,793 -568
その他 602 2,780 1,743 4,663 3,844 -760 1,121 2,399 -1,124 4,481
合計 10,670 10,737 9,512 12,657 16,783 13,046 17,839 14,994 12,009 14,491
法⼈税 -1,513 -1,052 -1,599 -3,363 -6,030 -4,114 -3,479 -3,124 -2,420 -3,413
営業CF 9,157 9,685 7,913 9,294 10,753 8,932 14,360 11,870 9,589 11,078


投資CF 定期預⾦預け⼊れ -5,379 -6,437 -5,268 -10,902 -11,763 -15,203 -20,379 -16,872 -14,325 -16,040
定期預⾦払い戻し 4,189 3,327 6,695 9,929 13,414 13,919 16,650 15,584 13,097 13,396
有形固定資産取得 -2,914 -1,338 -1,544 -2,007 -3,867 -4,210 -3,610 -2,973 -2,848 -2,562
その他 1,475 496 -115 325 1,597 175 382 -1,084 1,916 865
投資CF -2,629 -3,952 -232 -2,655 -619 -5,319 -6,957 -5,345 -2,160 -4,341


財務CF 短期借⼊増減 -2,972 -556 -1,290 -189 7,079 -451 -3,631 -399 -75 726
⻑期借⼊ 0 216 0 1,722 523 340 708 0 227 0
⻑期借⼊返済 -1,068 -2,311 -11 -1,568 -710 -532 -676 -505 -747 -253
⾃⼰株取得 0 0 -3 -1,012 -6,894 -7,666 0 0 0 0
配当⾦ -1,029 -1,122 -1,216 -1,776 -2,338 -2,265 -2,431 -2,432 -3,241 -3,647
その他 -603 -406 -528 -1,000 -885 -958 -727 -522 -362 -626
財務CF -5,672 -4,179 -3,048 -3,823 -3,225 -11,532 -6,757 -3,858 -4,198 -3,800


換算差額 -449 -59 1,168 2,568 2,790 -865 -1,569 467 -1,371 -657
増減額 407 1,495 5,801 5,384 9,699 -8,784 -923 3,134 1,860 2,280
期⾸現⾦&同等物 7,839 8,223 9,718 15,519 20,903 30,602 21,833 20,910 24,043 25,902
調整 -20 0 0 0 0 15 0 0 0 0
期末現⾦&同等物 8,223 9,718 15,519 20,903 30,602 21,833 20,910 24,043 25,902 28,181


FCF 6,528 5,733 7,681 6,639 10,134 3,613 7,403 6,525 7,429 6,737




フジテック(6406) 50
2021-4-12




<担当アナリスト>

⿊⽥真路 パートナー、シニアアナリスト

1992 年 4 ⽉に勧⾓総合研究所(現みずほ証券)に⼊社、産業調査部に配属。1999 年
9 ⽉にジャーディン・フレミング証券(現 JP モルガン証券)、ゴールドマン・サックス証券を経て、
2020 年 1 ⽉迄、クレディ・スイス証券に在籍。ゴールドマン・サックス証券ではバイスプレジデン
ト、クレディ・スイス証券ではディレクター。⼀貫して機械・造船重機セクターを担当。2020 年 6
⽉にパートナーとして、CGRA に参画。(⼀社)⽇本証券アナリスト協会の機械業界ディスクロ
ージャー委員

星野英彦 CMA 代表取締役・チーフアドバイザー

1987 年 4 ⽉に新⽇本証券(現みずほ証券)⼊社、企業調査部に配属。1997 年にジャー
ディン・フレミング証券(現 JP モルガン証券)、2000 年にドイツ証券、2006 年に UBS 証券
で 2016 年 4 ⽉まで在籍。セルサイドアナリストとして機械、造船、重機、プラントセクターを 28
年間にわたって担当。(⼀社)⽇本証券アナリスト協会で機械ディスクロージャー部会の副部会
⻑を 10 年以上に渡って歴任。2003 年より 2016 年迄、マネージングディレクター。2017 年
6 ⽉に株式会社キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリー(CGRA)を設⽴、代表取締役に就
任。(⼀社)⽇本証券アナリスト協会認定アナリスト



株式会社 キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリー
機械セクターに特化したアドバイザリー企業。主な業務内容は(1)資本市場のニーズを満たし
つつ、経営にフィードバック可能な統合報告書の作成サポート、(2)中計作成や事業戦略、
各種 IR&SR に関する助⾔業務、(3)各種資料作成と英訳業務、(4)⻑期投資家と経
営層に役⽴つ企業分析スポンサード・レポートの作成など。




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