当社に関するスポンサード企業レポート発行のお知らせ

2021 年9月1日
各 位
会社名 株式会社椿本チエイン
代表者名 代表取締役社長 古世 憲二
(コード番号 6371 東証第一部)
問合せ先 経営企画室長 西田 努
TEL (06)6441-0054



当社に関するスポンサード企業レポート発行のお知らせ

当社は、株主・投資家の皆様とのコミュニケーションを円滑にし、当社に対するご理解を深めていただくた
め、スポンサード企業レポートを発行いたしました。当企業レポートは株式会社キャピタルグッズ・リサーチ
&アドバイザリーに作成を依頼しております。当社株への推奨はなく、当社のビジネスモデル、業界動向、業
績推移、
長期的な事業戦略など、
すでに公表されている内容を分かりやすく説明するために作成したものです。
詳細につきましては、別添資料をご参照ください。


以 上
企業レポート

東証 1 部・機械 担当アナリスト
2021 年 9 月 1 日

黒田真路

椿本チエイン(6371) 星野英彦 CMA

キャピタルグッズ・リサーチ&アド
バイザリー


「2030 年のありたい姿」に向けて、新中計は新事業の種まきを実施する方針
 2021 年 6 月 14 日、椿本チエイン(以下、同社)は、2030 年に向けた長期ビジョン 2030 と中期経営計画 2025
(22/3~26/3)を発表した。今後 5 年間は 2030 年のありたい姿(Linked Automation テクノロジーにより、社会課題の
解決に貢献する企業グループを目指します)の達成に向けた種まき期間との位置づけで、5 年間累計 FCF500~600 億円を新
規事業へ積極投資する方針である。既存事業の収益力強化などで 26/3 期には売上高 3,000~3,200 億円、営業利益率
9~11%(営業利益 270~352 億円:参考値)、ROE 8%以上を目指す。配当性向は先行投資を優先するため、30%基
準が維持されたものの、利益成長での増配を目指す考えである。

 同社チェーン事業およびモーションコントロール(MC)事業は、各種モータの動力を伝動させるなどの市場シェア 1 位を誇る部品・
機器類を多数扱っている。また、チェーン事業の一部商品と MC 事業の受注高は、安川電機のモーションおよびロボット事業の受
注高に連動するため、隠れた FA・モータ関連事業と言えよう。一方、チェーン事業やモビリティ事業の海外競合である米 Rexnord、
米 BorgWarner は M&A を通じた事業転換や多角化を進める反面、英 RENOLD は既存ビジネスに固執、債務超過に陥って
いる。資本市場は環境の変化対応力を評価する傾向にあり、新中計で示された同社種まきの早期実現に期待したい。

 CGRA では、同社 PBR が 0.69 倍、PER 9.9 倍に留まっている理由として、自動車エンジン用タイミングチェーンを扱うモビリティ
事業(旧自動車部品事業)が電気自動車(BEV)の普及に伴い、構造的な需要減と同時に、総資産の 32%を占めるセグ
メント資産の減損リスクを資本市場が懸念している可能性を考えている。しかし、欧州 VW、トヨタ自動車などの日本勢は水素と
CO2 を触媒反応で合成した e-fuel や水素エンジンの開発を強化、内燃機を残したままで CO2 削減対策を進めようとする動き
もある。また、同社が注力する Enedrive チェーンは BEV の「モータ+ギヤ」よりも優位性が高い「モータ+チェーン」へ変更すること
を狙ったものである。これら製品の採用次第では株式市場における同社株のディスカウントが見直される可能性もあろう。

(椿本チエインの連結業績および各種株価データ:億円、円、%)
トレーディング・データ 業績推移 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3会予
株価(21年8月27日) 3,340 円 売上高 1,987 2,157 2,385 2,264 1,933 2,250
52週レンジ 2,620~3,585 円 営業利益 216 206 217 161 88 160
時価総額 1,279 億円 経常利益 220 217 216 166 110 170
発行済株式総数 38,281 千株 親会社当期利益 145 146 137 115 87 125
平均売買代金(20日) 2.7 億円 EPS 390.1 387.4 364.0 308.7 235.2 337.7
会社予想PER 9.9 倍 ROE 9.9 9.2 8.1 6.7 4.8 -
PBR(21/3末) 0.69 倍 1株配当金 120.00 120.00 120.00 120.00 75.00 110.00
予想1株配当金 110.00 円 配当性向 30.8 31.0 33.0 38.9 31.9 32.6
予想配当利回り 3.3 % FCF 120 102 -78 60 183 -
ROIC(21/3) 2.8 % NetCash -3 76 -60 -85 68 -

注:17/3~19/3 期 EPS および 1 株配当金は株式併合後ベースへ調整済

本レポートは投資の勧誘・推奨・助言を意図したものではなく、当該企業に関する情報提供を目的として当社独自の視点から作成されています。
また、本レポートに記載されている内容は公表された情報に基づき作成されておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。
本レポートの著作権は(株)キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリーに帰属しており、無断転写を禁じます。本レポートの内容は、今後予告なし
に変更される場合があります。当社及び本レポートは投資家の投資判断に関知することはなく、投資に関する決定はご自身の判断で行って頂くよう
お願い申し上げます。
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目 次
(1)椿本チエインで注目される 3 つのポイント:p3~4
(2)事業内容とビジネスモデル:p5~9
・事業内容:p5
・主力製品の説明:p6
・ビジネスモデルと6つの経営資本:p7~8
・歴史と沿革:p9
(3)中期経営計画と SWOT&5Forces 分析:P10~12
・長期ビジョン 2030 および中期経営計画 2025 を発表:p10
・中計経営計画 2025 の CGRA 注目ポイント:p11
・SWOT&5Forces 分析:p12
(4)業績動向とセグメント別推移:p13~19
・過去の業績説明と 22/3 期業績予想:p13
・チェーン事業の市場概況と業績見通し:p14
・モーションコントロール事業の市場概況と業績見通し:p15
・モビリティ事業の市場概況と業績見通し:p16~18
・マテハン事業の市場概況と業績見通し:p19
(5)財務および非財務分析:p20~22
・財務分析:p20
・非財務分析およびガバナンス体制:p21~22
(6)連結損益計算書と貸借対照表およびキャッシュフロー:p23~24




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(1)椿本チエインで注目される 3 つのポイント
ポイント①:長期ビジョン 2030 および中期経営計画 2025 を発表
2021 年 6 月 14 日、同社は長期ビジョン 2030 および中期経営計画 2025 を発表した。同社業 26/3 期を最終年度と
績は米中貿易摩擦、世界的な COVID-19 の悪影響などを背景に、20/3 期および 21/3 期と悪化 する中期経営計画
局面が続いた。しかし、四半期業績は 2020 年 4~6 月期でボトムアウト、自動車生産および民間設 2025 を発表
備投資環境の好転に伴い、回復局面を迎えている。5 月 11 日に開示された 22/3 期会社予想営
業利益は前期比 80%増の 160 億円(営業利益率 7.1%)、予想 1 株配当金は 110 円(前
期実績 75 円)と、大幅な増益および増配ガイダンスが発表された。

一方、新中計の最終年度である 26/3 期には目標売上高 3,000~3,200 億円、目標営業利益率
9~11%(営業利益 270~352 億円:参考値)、過去最高益の更新を目指している(図表 1)。
新中計期間は 2030 年のありたい姿に向けた危機意識を伴った種まき期間として位置付けられ、今後
5 年間で創出する FCF500~600 億円のうち 6 割を新規事業展開へ配分する方針である。

ポイント②:海外競合はスピード感を伴った事業再編に着手
同社の競合企業としては、米 BorgWarner、米 Rexnord corporation、英 RENOLD、非上場で 資本市場は環境の変
ある米 The Diamond chain company などが挙げられる。BorgWarner は 2019 年に車載用 化対応力を評価する
傾向にある
電池企業である ROMEO など、2020 年には EV 向けモータなどを手掛ける Delphi Technologies
を買収、EV 時代に向けた布石を急ピッチで進めている。また、Rexnord は M&A を通じて各種バルブ
や住宅の水回り機器などの営業利益率約 23%を誇る Water management 事業を手掛けてい
る。これらスピード感を伴った事業転換や多角化が評価され、図表 2 が示す通り、両社の PER は高評
価されている。一方、チェーンなどの事業から脱却が出来ていない RENOLD は債務超過に転じ、バリュ
エーションが試算できない状況にある。椿本チエインに関しても、RENOLD ディスカウントが株価に響い
て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る 。 同 社 が 新 中 計 で 掲 げ る 営 業 利 益 率 9~11 % が 見 え て く る と 、
BorgWarner と同様に PER15 倍、中計目標 ROE8%以上が確保できれば、PBR=ROE(0.08)
×PER(15)=1.2 倍程度に評価される可能性もあろう。

ポイント③:同社 PBR は減損リスクを過度に織り込んでいる印象
リーマン・ショック以降の同社 PBR は、業績悪化局面において一時的に 1 倍を割り込む傾向がみられ 非タイミングチェーンビ
たものの、低 PER 構造が続く自動車部品業界のバリュエーション・ディスカウントの影響を受けつつも、 ジネスの早期具現化
に期待したい
1~1.5 倍のレンジ内で推移してきた。しかし、19/3 期以降の PBR は、自動車業界の構造的な変化
(電動化)に伴う内燃機関向けタイミングチェーンの需要減への懸念を背景に、低下傾向が著しい。
モビリティ事業のセグメント資産は総資産の 32%を占めており、現在の PBR 0.69 倍はモビリティ事業
の減損リスクを織り込んだ水準とも考えられる(図表 3)。

当面のモビリティ事業の業績は安定的な推移が見込まれそうだが、2030 年に向けては新中計での種
まき効果の 1 つとして非タイミングチェーンビジネスの収益貢献の顕在化が期待される(特に、BEV 用
ギヤの代替として Enedrive チェーンが採用される可能性がある)。ここにきて VW などの欧州自動車
メーカーおよびトヨタ自動車が先導する格好で既存の内燃機関を活用した e-fuel や水素エンジンの議
論も高まり始めている。既存の完成車メーカーの内燃機関を活用した CO2 排出削減策の動向次第
では、株式市場で議論される同社の EV(電気自動車)リスクとモビリティ事業の減損リスクが緩和さ
れる可能性もありそうだ。




椿本チエイン(6371) 3
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図表 1:中期経営計画 2025 を発表
(百万円) 26/3期を最終年度とする中期経営計画2025を発表 (%)
350,000 16.0 26/3 期に営業利益率
連結売上高(左目盛) 連結営業利益(左目盛) 営業利益率(右目盛) 9~11%を目指す「中期
300,000 14.0
26/3期に売上高3,000∼3,200億円、営業利益率9∼11%、
経営計画 2025」を発表
ROE 8%以上を目指す方針 12.0
250,000

10.0
200,000
8.0
150,000
6.0

100,000
4.0

50,000 2.0


0 0.0
14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3(会予) 26/3 (中計)



図表 2:資本市場は変化対応力を評価している
各社の予想PERと過去3ヶ年平均営業利益率
16.0 変化対応力を有する企
14.0
業は高い収益性とバリュ
エーションを誇る
過去3ヶ年平均営業利益率(%)




12.0

10.0

8.0

6.0

4.0

2.0

0.0
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0
予想PER(倍)


図表 3:同社 PBR は過度なリスクを織り込んでいる水準
(百万円) PBRはモビリティ事業の減損リスクなどを織り込んでいる印象 (倍) 同社 PBR はモビリティ事
350,000 1.6
モビリティ事業以外のセグメント資産 業の減損リスクを織り込
300,000
モビリティ事業のセグメント資産 1.4 み、0.69 倍で推移
PBR(右目盛)
1.2
250,000

1.0
200,000
0.8
150,000
0.6

100,000
0.4

50,000 0.2

0 0.0





出所:会社資料などから CGRA 作成

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(2)事業内容とビジネスモデル
・事業内容
チェーンは各種産業機械や自動車、二輪車などにおいて、動力の伝達および回転運動を直線運動へ 産業用チェーンや自動
変換させる部品である。同社は産業用および自動車エンジン用タイミングチェーンの大手メーカーであり、 車向けタイミングチェー
ンシステムは世界シェ
産業用スチールチェーンの世界シェアは同社推定 16%、自動車エンジン用タイミングチェーンシステムに
ア No.1
おいても 37%を確保、ともに世界シェア 1 位を誇る。

現在、同社は①約 2 万種類の動力伝動用・搬送用チェーンを扱うチェーン事業、②減速機、直線作
動機、軸継手、締結具、クラッチ、モジュールなどの動力の変・減速や伝達などを担う各種機器を扱うモ
ーションコントロール事業(MC 事業)、③自動車エンジンで使用され、燃費改善、エンジンの小型化
などに寄与するタイミングチェーンシステムを中心とするモビリティ事業、④搬送・仕分けシステムや超低
温での自動保管も可能な保管システムなどを手掛けるマテハン事業の、計 4 セグメントを有する。

2013 年以降、新規ビジネスの開拓を強化、EV 用充電器機能と停電時には非常用電源として双方
向での充放電が可能である「eLINK」や各種ソフトウェア、IoT 対応遠隔監視プラットフォーム、植物工
場の自動化などのアグリビジネスを手掛けている。

チェーン、MC、モビリティの 3 事業が安定収益源
21/3 期連結売上高は前期比 15%減の 1,933 億円、営業利益は同 45%減の 88 億円(営業
利益率 4.6%)であった。チェーン事業が連結売上高の 31%、精機事業(現 MC 事業)が同
10%、自動車部品(現モビリティ事業)が同 30%、マテハン事業が同 28%、その他事業が同 1%
を占める。営業利益に関しては、チェーン事業が 78 億円(営業利益率 12.8%)、自動車部品事
業が 37 億円(同 6.4%)、精機事業も 8 億円(同 4.1%)を確保したものの、マテハン事業が
22 億円の営業赤字、その他事業も 3 億円の赤字に転じ、消去 9 億円を計上した。

過去最高売上高は 19/3 期に記録した 2,385 億円、営業利益も同様に 217 億円である。しかし、
過去最高営業利益率は 08/3 期の 11.8%、ROE も同様に 12.8%である。

図表 4:主要セグメントにおける製品および顧客業種
事業名 売上構成比(%) 主要製品 主要顧客業界や用途
ドライブチェーン 各種製造工場
小形コンベヤチェーン (自動車、製鉄、工作機械、
チェーン事業 31% 大形コンベヤチェーン 液晶、IT、飲料、食品など)
トップチェーン 鉱山、マイニング関連
ケーブルホース支持案内装置など 水処理設備など
減速機 各種製造工場
直線作動機 (自動車、製鉄、工作機械、
モーションコントロール事業 軸継手 液晶、IT、飲料、食品など)
(旧精機事業) 10% 締結具 射出成形機
クラッチ 洗車機、車検機械
モジュール 医療用機器関連
各種制御機器 農業機械関連
タイミングチェーンシステム 自動車エンジン
(ローラ&サイレントチェーン、 (ICE、HV)
モビリティ事業 テンショナなど) 四輪駆動用トランスファー
30%
(旧自動車部品事業) 電動化対応製品 電気自動車(EV)
(Enedrive Chainシリーズ) 自動二輪車用スターターなど
車載用ワンウェイクラッチなど
物流業界向けシステム 物流倉庫・配送センター
ライフサイエンス分野向けシステム 製薬会社。細胞等研究機関
新聞印刷工場向けシステム 製紙・新聞印刷工場
マテハン事業 自動車業界向けシステム 自動車製造工場
28%
粉粒体搬送コンベヤ バイオマス発電所
金属切り屑搬送・クーラント処理装置 工作機械を使用する加工工場
その他搬送・仕分け・保管システム その他製造工場など
メンテナンスなど
アグリビジネス 植物工場
その他事業 1% モニタリングビジネスなど 各種工場など


出所:会社資料などから CGRA 作成。売上構成比は 21/3 期実績

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・主力製品の説明
高い信頼性が同社世界シェア No.1 の源泉
同社の祖業であるチェーンは、他の追随を許さない耐摩耗性能(摩擦寿命)や世界最高水準の伝
動能力を持ち、更には耐環境チェーン、無給油チェーンなどの商品を有している。チェーンの構造は単
純であるが、高い性能と信頼性、豊富な製品ラインナップなどを背景に世界シェア 16%(1 位)の座
を確保している。同社が世界シェア 37%(1位)を誇る自動車エンジン用タイミングチェーンシステム
は、チェーンを中心にテンショナやレバー・ガイド、スプロケットなどを完成車メーカーへ納入している。

図表 5:ローラチェーンおよびタイミングチェーンシステムの構造




出所:同社 HP

電動シリンダは油圧や空圧と比較して省エネ・環境特性が高い
電動シリンダは同社 MC 事業売上高の約 2 割を占め、国内市場シェア 76%(1 位)を誇る。同社
電動シリンダ(商品名:パワーシリンダ)は、油圧や空気圧を使わないため、コンパクトかつ設置・取り
扱いが簡単である。また、図表 6 が示す通り油圧シリンダや空圧シリンダと比較して CO2 排出量、電
力消費量が極めて少ない優位性を誇る。なお、同社 MC 事業には、国内シェア 56%を誇る締結具
(商品名:パワーロック)、ウオーム減速機も国内シェア 36%、カムクラッチも同 90%など国内シェア
1 位の製品が多く、隠れた FA・モータ関連事業(連結売上高の推定約 3 割)と言えよう。

図表 6:パワーシリンダの優位性




出所:同社 HP


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・ビジネスモデルと 6 つの経営資本
典型的な景気敏感企業だが不況抵抗力が強い
チェーン、MC、マテハンの 3 事業(3 事業合計売上構成比 69%)の需要動向は、民間設備投資 連結売上高の推定 3
に左右される。ただし、チェーンと MC は消耗品的な側面も有するため、鉱工業生産指数や米 ISM 指 割が各種産業用モー
タの需要動向に連動
数などに連動し、比較的不況抵抗力が強い。MC 製品群はもとより、動力伝動用チェーンやスプロケッ
する傾向がある
トなども産業用モータに付随して使用されることが多く、売上高の推定 3 割が FA・モータ関連製品とい
えよう。モビリティ事業(同 30%)に関しては、グローバル自動車生産台数に連動しつつも、新規案
件の獲得などが奏功、自動車生産台数をアウトパフォームする傾向がある。

過去の業績を振り返ると、リーマン・ショック後の 10/3 期営業利益は 08/3 期の 198 億円から 47 億
円(営業利益率 4.2%)へ落ち込んだものの、営業黒字を確保した。COVID-19 の悪影響が顕在
化した 21/3 期営業利益に関しても 88 億円(営業利益率 4.6%)の黒字を確保、不況期におけ
る利益水準が切り上がる傾向にあり、不況抵抗力が強まっている印象を受ける。

同社のビジネスモデルは、動力伝動や搬送用の産業用チェーンをコアに、減速機、軸継手、締結具な
どの各種機器類、更には自動車エンジン用タイミングチェーンなどのパーツやユニットの販売を行いつつ、
システム製品であるマテハンなどへ多角化展開を行っている。今後は顧客ニーズの変化に対して、製品
の高付加価値化や複合化、ソリューション提案力強化などで事業の垂直展開を図る方針である。

図表 7:椿本チエインは不況抵抗力が強い
(百万円) (%)
椿本チエインのヒストリカル業績推移
250,000 16.0
連結売上高(左軸) 連結営業利益(左軸)
14.0
営業利益率(右軸)
200,000
12.0


10.0
150,000

8.0

100,000
6.0


4.0
50,000
2.0


0 0.0

(会予)


出所:会社資料などから CGRA 作成

6 つの経営資本についてのポイント
製造資本である生産面に関しては、チェーン事業は京田辺工場、MC 事業は長岡京工場、モビリティ
事業とマテハン事業は埼玉工場がマザー工場である。21/3 期の設備投資は 82 億円(対売上高比
率 4.3%)、減価償却費は 126 億円(同 6.6%)であった。同社はモビリティ事業の売上高 1,000
億円を目指した積極的な設備投資を実施、18/3 期設備投資は 181 億円(同 8.4%)に達した。
その後の設備投資は正常化しているものの、減価償却費は高止まった状況にある。同社は 26 の国と
地域に 81 社の関係会社を有し、21/3 期の海外売上高比率は 57%である。



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知的資本に関しては、21/3 期の研究開発費は 42 億円、対売上高比率は 2.2%(過去 5 年平
均研究開発費は年間 44 億円、同 2.1%)である。研究開発スタッフはグループ全体で約 400 名
(連結従業員数の約5%)、他社との差別化および顧客ニーズを満たした製品開発を行っている。

人的資本に関しては、21/3 期末の連結従業員数は 8,535 名(過去 5 年で 956 名増)である。
役割・成果主義をベースに、「多様性」をキーワードとした人事制度改革を推進しているうえ、「海外トレ
ーニー制度」を設けて、グローバル人材の育成に取り組んでいる。米 CCC の買収効果もあるが、外国
籍の従業員が連結従業員数の約 50%を占める。また、女性従業員比率の向上と積極的な役職登
用を目指しているうえ、若手技術者の育成のために「つばきテクノスクール」を開校、技術レベルの底上
げを図っている。なお、21/3 期従業員 1 人当たり売上高は 22 百万円であり、日本精工の 25 百万
円、安川電機の 30 百万円、ダイフクの 40 百万円に対して相対的に低位にとどまった。

財務資本としては、21/3 期の総資産 3,073 億円(有利子負債 411 億円、ネット・キャッシュ 68
億円)、自己資本 1,857 億円、自己資本比率は 60.5%である。財務資本をベースとしたアウトプッ
トは、21/3 期連結売上高が 1,933 億円、営業利益 88 億円(営業利益率 4.6%。19/3 期過
去最高営業利益 217 億円に対して 41%水準)、ROE 4.8%、営業 CF278 億円(過去 5 年
平均 250 億円)、フリーCF183 億円(同 77 億円)を稼ぐ収益構造を有している。

社会関係資本に関しては、企業理念「TSUBAKI SPIRIT」に掲げる「動かすことに進化をもたらし、社
会の期待を超えていきます。」を通じた企業活動が、持続可能な社会の実現や技術革新による企業
価値の向上と同時に、SDGs の貢献につながることを目指している。

自然資本としては、2000 年時点で「環境基本方針」を策定、持続可能な社会の実現に貢献すべく、
中長期の視点で環境に優しいモノづくりと製品供給に努めている。生産現場では、2030 年をゴールと
した環境長期目標を達成するため、環境会計の導入のみならず、各種 KPI を定めて環境負荷低減
を進めている。同時に、製品ライフサイクルの視点で CO2 削減などを加味した製品開発と供給、SDGs
市場に向けた製品供給を積極化することで間接的に地球環境保全に貢献する事業展開を行ってい
る。具体的には、21/3 期連結売上高の約 17%にあたる約 320 億円(計 254 商品)をエコ商品
(SDGs 配慮商品)に認定、販売を強化している(注:対象は日本国内。海外生産は含まず)。

図表 8:椿本チエインのアウトプットとアウトカム

アウトプットとアウトカム アウトプットとアウトカム
特許件数約2,000
件。産業用チェー 顧客ニーズを満 ネット・キャッシュ68 投資余力の確
知的資本 ンとタイミング たす製品・サービ 財務資本 億円、過去5年平均 保と安定的な
チェーンは世界 スの提供 設備投資141億円 格付の維持
シェアNo.1


安定的かつ高品質 企業理念と基本方
過去5年平均営 SDGsおよびESG
製造資本 業CF250億円
な製品・サービスの 社会関係資本 針を共有し、サステ
を重視
提供 ナビリティを強化



海外従業員比 グローバル人材の 2030年度に国内 循環社会に貢献
人的資本 率約50%。女性 育成や女性従業員 自然資本 CO2排出量を2013 地球温暖化防
従業員比率9% の登用 年度比46%削減 止に貢献




出所:会社資料などから CGRA 作成




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・歴史と沿革
モビリティ事業は 2 度目の課題に直面
1917 年、第一次世界大戦のさなか、創業者である椿本説三が自転車用チェーンの製造を開始した モビリティ事業は新たな
ことが同社の始まりである。1923 年に外国製チェーンのカタログをヒントに産業機械用チェーンの製造を リスクと同時に飛躍の
チャンスが到来
開始、1928 年には自転車チェーンの製造を中止し、機械用チェーンの製造に転換した。1937 年に
は同社製チェーンを組み込んだ大規模なコンベヤプラントを初納入、コンベヤ(現マテハン)事業が立
ち上がった。1957 年には自動車エンジン用タイミングチェーンの生産を開始、自動車部品(現モビリテ
ィ)事業へ参入した。1958 年には大形チェーン減速機を開発、精機(現 MC)事業が立ち上がっ
た。2013 年以降は新規ビジネスの開拓にも注力している。1980 年代前半には自動車エンジン用タ
イミングチェーンがゴムベルトに置き換わる構造問題に直面したが、1995 年頃には逆にチェーンに回帰
する動きが強まった。現在は自動車の CASE(コネクティビリティの C、オートノマスの A、シェアードの S、
エレクトリックのE)が新たな課題として台頭している。

図表 9:セグメント別の沿革と主なイベント
椿本チエイン チェーン事業 MC事業 モビリティ事業 マテハン事業 新規ビジネス
1917年 大阪市大淀区(現、北区)で創業
1928年 機械用チェーンの生産に転換
1931年 海軍省指定工場に認定
1937年 マテハン事業へ進出
1938年 大阪・鶴見工場竣工
1949年 大証・東証に株式上場 舶用チェーン英ロイド検定合格
1951年 米国へローラチェーン初輸出
1953年 JIS認定工場に認定
1957年 タイミングチェーンの生産開始
1958年 大形チェーン減速機を開発
1961年 天井走行コンベヤを自動車工場へ納入
1962年 埼玉工場が竣工
1965年 ボルグワーナと合弁会社設立
1966年 埼玉工場内に部品工場竣工
1966年 小形ギヤモートル発売
1967年 パワーシリンダ発売
1970年 台湾に初の海外拠点を設立
1971年 米国に販売会社設立 京都(現長岡京)工場竣工
1972年 オランダ、カナダなどに子会社設立
1976年 RSローラチェーン世界トップ品質達成
1970年代後半 FA高度システムを多数納入
1980年 タイミングベルトの納入開始
1982年 兵庫工場が竣工
1984年 チェーンからベルトへ転換が進展
1985年 リニア式搬送装置を発売
1986年 北米で現地生産を開始
1986年 プラチェーンの社内生産開始
1989年 タイミングチェーン北米生産開始
1992年 岡山工場が竣工 高速自動仕分装置「リ二ソート」発売
1993年 ハイポイドモートル発売
1995年頃 ベルトからチェーンへ回帰進む Amazon創業
1996年 給紙AGVを発売
1998年 リニパワージャッキ発売
1998年 サイレントチェーンを発売
2000年 環境基本方針を制定
2001年 京田辺工場が竣工
2002年 精機事業ユニットを分社化 創薬支援機器「ラボストッカ」発売
2003年 リスクマネジメント基本方針制定 (ツバキエマソンを設立) 米テスラ・モーターズが創業
2004年 執行役員制度を導入
2006年 山久チエイン買収 2輪向けスタータクラッチ発売 4輪駆動用PDチェーン発売
2007年 08/3期に過去最高営業利益を達成
2008年 ジップチェーン・リフタ開発販売
2009年 オートエンジニアリングラボ開設
2010年 独カーベルシュレップを買収
2011年 リフトマスタを発売 環境対応型Zerotechシリーズ商品化
新規ビジネス
2012年 中国に製造子会社を設立 米メイフランを買収
2013年 ツバキエマソンを100%子会社化 EV充電システム「eLINK」発売
2014年 「長期ビジョン2020」策定 (ツバキE&Mに改称) インドネシア工場が竣工 アグリビジネスに本格参入
2016年 100周年モデル「G8」シリーズ 発売 17/3期に過去最高営業利益達成 IoT対応遠隔監視ソフトを販売
2017年 創業100周年、「TSUBAKI SPIRIT」制定 ツバキE&Mを吸収合併 世界8カ国12工場体制を確立
2018年 19/3期に過去最高営業利益達成 19/3期に過去最高営業利益達成 19/3期に過去最高営業利益達成 自動車のCASE議論が本格化 米セントラル・コンベヤを買収
2019年 戦略策定・監督と業務執行を完全分離
2020年 サステナビリティ基本方針を制定



出所:会社資料などから CGRA 作成




椿本チエイン(6371) 9
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(3)中期経営計画と SWOT&5Forces 分析
長期ビジョン 2030 および中期経営計画 2025 を発表
2021 年 6 月 14 日、同社は長期ビジョン 2030 および新中期 5 ヶ年計画「中期経営計画 2025」
(22/3 期~26/3 期)を発表した。

2030 年のありたい姿を、「Linked Automation テクノロジーにより、社会課題の解決に貢献する企
業グループを目指します。」とし、「人にやさしい社会の実現」、「安心・安全な生活基盤の構築」、「地
球にやさしい社会の創造」の 3 テーマを取り組むべき社会課題として掲げた。

中計基本方針は、「既存事業での収益力を強化するとともに、長期ビジョン 2030 の実現に向け持続
的成長につながる新事業の種まき期間とする」である。数値目標は図表 10 に示すが、今回、初めて
資本効率の KPI として目標 ROE 8%以上が明記された。

<具体的な方針>

① 持続的成長が可能となる次世代ビジネスの創出:社会課題の解決に対応する新事業分野への
進出、新商品・新技術の創出と育成
② 既存事業のさらなる市場地位確立と収益力の強化:グローバルトップ商品およびニッチトップ商品
の競争優位性の維持・強化と価格競争力の向上による販売の拡大
③ モノづくり改革および人づくり強化による事業基盤の強化
④ ESG への取り組み強化:CO2 排出総量の削減(E)、製品を通じた社会価値向上(S)、ガ
バナンス強化と事業基盤強化(G)

<持続的成長が可能となる次世代ビジネスの創出に向けた具体的方策>

① ヒューマンアシスト:医療福祉や農業など、一般消費者向け自動化・省人化機器の開発と提供
② メンテナンス:メンテナンスサービスを強化、「コト売り」ビジネスの強化・拡大
③ アグリビジネス:植物工場などのアグリビジネスにおける自動化・スマート化を提案
④ ライフサイエンス:再生医療分野へ参画、細胞培養プロセス自動化設備の製造・販売
⑤ エネルギー・インフラ:EV 充電インフラ市場へ参入、V2X 充放電器および太陽光発電、蓄電池と
の連携システム提案
⑥ モビリティ:EV 向けクラッチや Enedrive チェーン、各種駆動部品などモビリティパーツビジネス強化
⑦ 新事業探索:独立した専任部門を新設し、新事業の芽を継続的に生み出す
⑧ 収益力の強化:市場情報とモノづくりのリンクによる競争力強化と人財活用
⑨ モノづくり DX:モノづくり DX 改革(生産の見える化、AI 的データ分析など)

図表 10:中期経営計画 2025 の数値目標




*その他事業グループおよび新事業開発関連費用は含まず
出所:同社長期ビジョン 2030 および中計経営計画 2025 説明資料

椿本チエイン(6371) 10
2021-9-1




・中期経営計画 2025 の CGRA 注目ポイント
今後 5 年間は新規成長への種まきを積極的に行う
今回発表された長期ビジョン 2030 および中期経営計画 2025 のポイントは以下の 4 点。

① SDGs を前面に打ち出し、「Linked Automation テクノロジーにより、社会課題の解決に貢献す
る企業グループを目指す」(2030 年のありたい姿)。
② 今後 5 年間は、「既存事業の成長に加え、M&A などの革新手法で既存事業規模を拡大する。
加えて、2030 年の売上規模 5,000 億円に向けて新規成長のための種まき期間と位置付け、新
技術開発、M&A、アライアンスなどにより事業領域を拡大させる」。
③ 今回、新たに ROE 8%以上が KPI に設定された。財務分析は後述するが、同社 B/S は相対的
に改善余地が大きい。事業部段階まで管理指標を落とし込み、収益性・資本効率の改善による
企業価値の向上が期待される。
④ 今後 5 年間の累計フリーキャッシュフロー500∼600 億円に対して、新規事業展開への投資 300
~360 億円、配当性向 30%を基準とした配当金 200∼240 億円(DPS110∼130 円)を
計画している。なお、戦略的成長投資に関しては外部資金調達も検討する方針である。


CGRA では、同社競合である米 BorgWarner や Rexnord のように M&A を通じた成長機会の取
り込みや業態変化も有効と考えるが、三菱ケミカルが「KAITEKI レポート」で示している定量的なリスク
と対策の開示、更には TCFD のシナリオ分析、組織的 ESG 経営の実行が求められると考える。

図表 11:中期経営計画 2025 の財務戦略




図表 12:今後 5 年間の資金使途




出所:同社中期経営計画 2025 説明資料

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2021-9-1




・SWOT & 5Forces 分析
高い市場シェアを誇る部品メーカーの強みを発揮
同社の特徴および外部環境、更には内外競合企業を加味しながら、以下に SWOT および 5Forces MC 事業における優位
分 析 を 試 み た 。 図 表 に 同 社 の 強 み ( Strength ) 、 弱 み ( Weakness ) 、 機 会 性などの資本市場への
説明強化に期待した
(Opportunity)、脅威(Threat)を示したが、同社株価バリュエーションを見る限り、資本市

場は弱みとリスクに対する対応策の説明が不十分と認識している感がある。強みに関しても、チェーンお
よび MC 事業の高い市場シェアや技術優位性などの対外説明が不足している印象である。

価格競争リスクは少なそうだ
5Forces 分析は SWOT 分析と似通った分析ではあるが、買い手と売り手の交渉力などの業界におけ
る立ち位置の理解に有効である。

業界内の競争:チェーン事業の競争環境は比較的和らいでいる印象があるものの、MC 事業およびモ
ビリティ事業の競争環境は引き続き厳しい。マテハン事業は競争環境が厳しいものの、コア商品を中心
としたソリューション提供に特化した戦略を実行している。新規参入の脅威:特にない。代替品の脅
威:内燃機関が不要な電気自動車(EV)は同社タイミングチェーンには構造問題だが、内燃機関
が不要な電気自動車であっても「モータ+ギヤ」→「モータ+チェーン」として採用が進む場合、チェーン
需要が維持される可能性もある。産業用チェーンに関しても代替品は見当たらない。売り手側の交渉
力:各種鋼材コストの上昇はリスクであり、22/3 期会社側業績予想に織り込み済である。ただし、過
去の経緯を見る限り、同社は製品値上げで対処している。買い手側の交渉力:自動車向けビジネス
に関しては、例年、売価低下リスクを伴う。しかし、産業機械向けに関しては、製品値上げなども実施
しており、高い市場シェアと生産性改善策を武器に、買い手に対する交渉力は強いとの印象を受ける。

図表 13:椿本チエインの SWOT およびリスク・課題分析

<強み> <弱み>
• リスク:材料価格の上昇など
高い市場シェアと豊富な実績 多角化への展開力(新中計で打 チェーン事業 • 課題:欧州生産拠点の確立とアフターサービ
高い生産改革ノウハウ 開する方針) ス体制の確立
強いB/Sと高い収益性

• リスク:国内市場への高い収益依存度
SWOT分析 MC事業 • 課題:海外市場開拓と複合化商品および新
<機会> <脅威>
商品開発、収益体質の立て直し
産業用チェーン市場の用途拡大 タイミングチェーンの構造的な市
場消滅
製造業・非製造業における自動
化・省力化・省エネニーズ マテハン市場の競争激化
• リスク:タイミングチェーン市場の構造的消滅
BEV向け差別化商品の開発販売
モビリティ事業
• 課題:差別化商品および新商品開発



• リスク:海外子会社の収益変動と競争激化
マテハン事業 • 課題:システムインテグレーションビジネスと
アフターサービス事業の強化・拡大




出所:CGRA 作成




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(4)業績動向とセグメント別推移
・過去の業績説明と 22/3 期業績予想
過去の売上推移:需要創出能力が高まっている
連結売上高を見ると、リーマン・ショック後のボトム売上高は 10/3 期の 1,127 億円であり、その後 9 今後は同社固有の要
年間で売上高は 2.1 倍になった。また、21/3 期売上高は直近ピークである 19/3 期水準から 19% 因として、減価償却負
低下の 1,933 億円へ落ち込んだものの、リーマン・ショック後の売上高は 08/3 期ピークから 33%減 担の減少と CCC の収
益性改善が期待可能
少しており、過去と比較して同社の需要創出能力(=不況抵抗力)が高まっている印象である。連
結営業利益に関しても 19/3 期に過去最高の 217 億円(営業利益率 9.1%)に達し、リーマン・
ショック後の 10/3 期ボトム営業利益 47 億円から 9 年間で 4.6 倍(同期間の同社株価は約 5.6
倍)に拡大した。リーマン・ショック後の 10/3 期における営業利益は 08/3 期ピーク営業利益 198 億
円から 76%減少の 47 億円へ落ち込んだものの、21/3 期営業利益は 19/3 期直近ピーク比で約
59%減の 88 億円にとどまっている。

近年の営業利益率の鈍化は固定費負担の重さも一因
一方、営業利益率をみると、過去最高営業利益率は 08/3 期に記録した 11.8%であるが、過去最
高営業利益を計上した 19/3 期営業利益率は 9.1%に低下している。要因としては、①モビリティ事
業を中心とした積極的な設備投資に伴う固定費負担が重い、②08/3 期はマテハン事業の営業利益
率が 11.9%を確保(ダイフクは同 8.9%)、などが主因である。しかし、減価償却費は 20/3 期でピ
ークアウト、マテハン事業の収益性改善が期待され、今後は営業利益率の改善も期待できそうだ。

22/3 期業績予想は保守的な印象
22/3 期会社予想売上高は前期比 16%増の 2,250 億円、営業利益は同 80%増の 160 億円 22/3 期業績予想お
(OPM7.1%)、当期利益は同 44%増の 125 億円(EPS 337.7 円)。予想 1 株配当金は前 よび予想1株配当金
期比 35 円増配の 110 円(配当性向 32.6%)である。一見、大幅な増益予想に見えるが、売上 も保守的な印象
高および営業利益水準ともに 2 年前の 20/3 期並みの水準である。トヨタ自動車を始めとする完成車
各社ならびに自動車部品メーカー、軸受メーカー各社の 22/3 期業績計画は 20/3 期水準を上回る
企業が大半である。また、1 株予想配当金は 110 円(配当性向 32.6%)であり、20/3 期 1 株
配当金実績の 120 円(配当性向 38.9%。期初計画は 30.0%)よりも低い。業績予想のみなら
ず予想 1 株配当金も相対的に保守的な印象が残ると CGRA は考える。

図表 14:連結受注高および売上高と営業利益の推移
(百万円)
年度ベースの受注高、売上高、営業利益の推移
(百万円)
(百万円) 四半期ベースの売上高と営業利益の推移 (百万円)
300,000 35,000 70,000 7,000

連結受注高(左軸) 連結売上高(左軸) 営業利益(右軸) 連結売上高(左軸) 営業利益(右軸)
30,000 60,000 6,000
250,000


25,000 50,000 5,000
200,000

20,000 40,000 4,000

150,000
15,000 30,000 3,000

100,000
10,000 20,000 2,000


50,000 10,000 1,000
5,000



11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 (会予) 1QA 2QA 3QA 4QA 1QA 2QA 3QA 4QA 1QA 2QA 3QA 4QA 1QA 2QA 3QA 4QA 1QA 2QA 3QA 4QA 1QA 2QA 3QA 4QA 1QA



出所:会社資料から CGRA 作成

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・チェーン事業の市場概況と業績見通し
消耗品としての安定的な需要創造が期待可能
産業用チェーンは、新設される設備や装置へ搭載されるものと、消耗品(交換部品)として既存の設 消耗品的側面を有す
備や装置に納入される需要がある。このため、チェーン需要は鉱工業生産指数などに連動する傾向が る同社の安定収益頭

あると同時に、工作機械受注に代表される設備投資需要が盛り上がる場合、代理店の在庫積み増
し効果も加わって、予想以上に伸長する場面も見られる。図表 15 は年度ベースのチェーン事業売上
高と工作機械(日本工作機械工業会ベース)および運搬機械(日本産業機械工業会ベース)の
合算受注高の動向を見たものである。チェーン事業は消耗品的側面も有するため、合算受注高に対
してボラティリティが少ないことが見て取れる。今回の新中計では「アフターサービスビジネスの強化」も掲
げられており、今後の同社売上高は安定度が高まると考えられる。

今後のチェーン需要に関しては用途拡大もあり、堅調な成長を予想
今後の産業用チェーンのグローバル需要に関しては、①世界的な人口増加、各国における生活水準
の向上、GDP の成長、②無給油チェーンや耐環境チェーン、嚙み合い式チェーン(ジップチェーン)な
どの採用用途拡大、③製造業のみならず非製造業における省力化・自動化ニーズの高まり、などを背
景に年率 3-5%の成長が可能と CGRA は考える。

ここ 3 年間は同社の稼ぎ頭に転じている
チェーン事業の 21/3 期売上高は、連結売上高の約 31%を占める 613 億円(前期比 9%減)、
営業利益は同 88%を占める約 78 億円(同 7%減、営業利益率 12.8%)であった。かつてはモビ
リティ事業が連結営業利益の半分強を占めていたが、近年は新規顧客の採用増や市場シェアの上昇、
生産性改善効果の顕在化などもあり、チェーン事業が同社の稼ぎ頭に転じている。

22/3 期業績予想は減益計画だが、保守的な印象
22/3 期会社側業績予想は、売上高が前期比 7%増の 658 億円(上期 330 億円、下期 328 22/3 期会社側業績
億円)、営業利益は同 15%減の 67 億円(上期 35 億円、下期 32 億円)、営業利益率は 予想は各種リスクを織
り込み保守的な印象
10.2%が提示された。売上高に関しては、20/3 期の 675 億円を若干下回り、営業利益は 20/3
期実績 84 億円(営業利益率 12.4%)を大きく下回る。同社は、①コロナ禍で圧縮した販管費や
人件費の正常化、②各種材料価格の上昇、③高採算である米国需要の減少、などを掲げているが、
保守的な印象と CGRA は考える。

図表 15:チェーン事業の受注および業績推移
(百万円) チェーン受注高と工作機械+運搬機械合算受注高の推移 (百万円) (百万円)
チェーン事業の売上高、営業利益および営業利益率の推移 (%)

100,000 2,800,000 80,000 16.0
チェーン受注高(左軸) 工作機械+運搬機械合算受注高(右軸) 売上高 営業利益 営業利益率(右軸)
90,000
2,400,000 70,000 14.0
80,000
60,000 12.0
70,000 2,000,000

50,000 10.0
60,000
1,600,000
50,000 40,000 8.0
1,200,000
40,000
30,000 6.0
30,000 800,000
20,000 4.0
20,000
400,000 10,000 2.0
10,000

0 0 0 0.0
10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 (会予)



出所:各種資料などから CGRA 作成


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・モーションコントロール事業の市場概況と業績見通し
設備投資への依存度が高いため、ボラティリティが若干高い
MC 事業(旧精機事業)は、減速機や電動シリンダ、軸継手、締結具など、各種機械の可動・駆動 MC 事業製品は産業
部に組み込まれる、あるいは産業用ロボットや各種機械に搭載される産業用モータに付随して使用さ 用モータに付随して使
用される商品も多く、
れる商品を扱っている。従って、産業用チェーンよりも新設設備・装置への搭載部品として納入されるウ
安川電機のモーション
エイトが高く、チェーンに比べて受注のボラティリティが高い。図表 16 は四半期ベースで見た同社 MC 事 +ロボット事業の合算
業の受注高と安川電機のモーション(サーボモータ+インバータ)およびロボット事業の合算受注高を 受注高が先行指標
見たものであるが、安川電機の受注高に遅行しながらも高い連動性が見て取れる。

グローバル MC 関連需要は年率 7%成長を予想
CGRA では、今後の MC 事業におけるグローバル需要は、チェーンと同様、マクロ景気動向に連動する
格好でシクリカルグロースの動きを見せつつ、年率 7%程度の成長が可能と見る。ただし、同社 MC 事
業は国内売上高比率が 76%(21/3 期)と高いうえ、単品販売の比率が高く、グローバルの市場成
長率を下回って推移してきたと見られる。今後は海外への事業展開およびスマートモーションユニット
(複合化新商品)の開発・販売が成長の鍵を握ると考えられる。

最近の営業利益率低下は同社固有の一時的な側面も含まれる
MC 事業における 21/3 期営業利益率は 4.1%(20/3 期は 9.2%、19/3 期は 13.1%)へ低下
した。これは、①商品の再編を進める過程で、先行して販売を中止した商品がある、②モノづくりを強
化する過程で、開発人員の増加と設備投資に伴う償却負担が重い、③市場投入予定である新商品
の立ち上げが遅れている、などの同社固有の一時的要因が挙げられる。

22/3 期は営業利益率の改善度合いを注視したい
22/3 期会社側業績予想に関しては、売上高が前期比 12%増の 221 億円(上期 107 億円、下 今後は具体的な新製
期 114 億円)、営業利益は同 59%増の 13 億円(上期 4 億円、下期 9 億円)、営業利益率 品の開発と資料投入
が待たれる
は 5.9%(上期は 3.7%、下期は 7.9%)が提示された。なお、22/3 期から MC 事業からモビリティ
事業へ AP クラッチ(売上高約 20 億円)が移管された。売上高に関しては、AP クラッチの移管分を
加味すると、20/3 期の 238 億円並みの水準であるが、営業利益に関しては 20/3 期実績 21 億円
(営業利益率 9.2%)を下回る計画である。

図表 16:安川電機のモーション+ロボット受注に遅行して推移
(百万円) MC事業受注高と安川電機モーション+ロボット合算受注動向 (百万円) (百万円) MC事業の売上高、営業利益および営業利益率の推移 (%)

10,000 160,000 30,000 16.0
椿本チエインMC事業受注高(左軸) 売上高 営業利益 営業利益率(右軸)
9,000 14.0
安川電機モーション+ロボット合算受注高(右軸) 140,000
25,000
8,000
120,000 12.0
7,000
20,000
100,000 10.0
6,000

5,000 80,000 15,000 8.0

4,000
60,000 6.0
3,000 10,000
40,000
4.0
2,000
20,000 5,000
1,000 2.0


0 0.0
1QA
2QA
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1QA
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1QA
2QA
3QA
4QA
1QA
2QA
3QA
4QA
1QA




10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3(会予)





出所:各種資料などから CGRA 作成


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2021-9-1




・モビリティ事業の市場概況と業績見通し
一時は 20%近い営業利益率を確保したが・・
モビリティ事業(旧自動車部品事業)は、自動車の低燃費を実現させるためのダウンサイジング化 2025 年に向けて安定
(=タイミングチェーンはエンジンの小型化に最適)の流れの中で急成長、18/3 期には売上高が過 的に 10%以上の営
業利益率の確保を目
去最高となる 795 億円(過去 5 年で 1.6 倍)に達した。営業利益に関しては、17/3 期に過去最
指す
高となる 123 億円を確保、営業利益率は 16.5%(過去最高営業利益率は 15/3 期の 17.8%)
を記録した。16/3 期以降、売上高 1,000 億円を目指した積極投資を行ったため、減価償却負担
増や人員増に伴う固定費負担増が見られ、その後の営業利益率は緩やかな下降線をたどった。

21/3 期売上高は前期比 19%減の 577 億円、営業利益は同 36%減の 37 億円(営業利益率
6.4%)となったが、21 年 1-3 月期の営業利益は前年同期比 47%増の 20 億円、営業利益率は
11.8%へ回復した。21 年 4-6 月期営業利益は 21 億円(同 12.6%)と回復傾向を強めている。

2025 年頃までは 10%台の営業利益率の確保が可能と見られる
モビリティ事業における設備投資は、18/3 期に 120 億円へ拡大したものの、世界 8 カ国 12 工場生 2021 年 4-6 月期に
産体制が整い、21/3 期には 33 億円へ減少した。減価償却費に関しても 20/3 期の約 69 億円を おける営業利益率は
12.6%を確保
ピークに緩やかな減少局面を迎えている。従って、生産効率の一段の改善、固定費負担の減少もあり、
営業利益率 10%台の安定的確保は可能と CGRA は考える。

22/3 期予想売上高は前期比 25%増の 723 億円(上期 360 億円、下期 363 億円)、営業利
益は同 115%増の 80 億円(上期 38 億円、下期 42 億円)、営業利益率は 11.1%が提示され
た。20/3 期売上高 709 億円を若干上回るが、AP クラッチの移管を加味すると、ほぼ同水準である。
営業利益に関しては、20/3 期実績 58 億円(営業利益率 8.2%)を上回る内容である。ただし、
直近の四半期営業利益率は既に 12%台を確保しており、会社予想はクリア可能と言えそうだ。

図表 17:モビリティ事業の売上高、営業利益および営業利益率の推移
(百万円) モビリティ事業の売上高、営業利益および営業利益率の推移 (%)
90,000 20.0
売上高(左軸) 営業利益(左軸) 営業利益率(右軸)
80,000 18.0

16.0
70,000
14.0
60,000
12.0
50,000
10.0
40,000
8.0
30,000
6.0
20,000
4.0

10,000 2.0

0 0.0
10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3(会予)




出所:会社資料より CGRA 作成




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同社モビリティ事業はグローバル自動車生産台数を上回って成長
モビリティ事業の売上高は、自動車の低燃費を狙ったエンジンのダウンサイジング化を背景に急成長、ゴ
ム製タイミングベルトからスチール製タイミングチェーンへのシフト、市場シェアの獲得などもあり、グローバル
自動車生産台数を大きく上回る成長率を見せてきた(図表 18 参照)。

モビリティ事業のターゲットである ICE+HV 市場は、完成車各社の新規エンジン投入計画に基づくと、
少なくとも 2025 年辺りまでは安定的に推移する見通しである。今後に関しては、同社の継続的なグ
ローバル市場シェア上昇などが期待され、グローバル自動車生産台数を上回る堅調な売上推移が維
持可能と考えられる。また、HV(ハイブリッド車)化はエンジンチェーンの構造上に大きな変化はなく、
HV だから単価が低下する傾向は見られていない模様である。

2025 年以降にも EV 化が顕著化しそう
同社は新中計の中で、2025 年までの自動車生産台数とモビリティ事業の売上高予想を開示、次世 中計最後の 26/3 期
代エンジン向け環境対応商品による既存ビジネスエリアの拡大などから 22/3 期売上計画 723 億円 には売上高 1,000 億
円を目指す方針
に対して、23/3 期は 800 億円規模、26/3 期には 1,000 億円の売上高を計画している。

CGRA では自動車各社の電動化戦略および各国政府の規制強化の動きなどを分析、2030 年に向
けたグローバル自動車生産台数の構造変化に関して、①ICE(Internal Combustion Engine)
+HV(Hybrid Vehicle)のグローバル生産台数は 2025 年辺りまで高水準横ばいで推移する、②
HV は 2030 年に向けて市場の 4 割程度を占める主力車種となる、③NEV: New Energy
Vehicles(BEV: Battery Electric Vehicle+FCV: Fuel Cell Vehicle)は 2026 年辺りから新
車投入が加速、2030 年にはグローバル自動車生産台数の 25%程度に達する、④ICE は 2025 年
あたりから市場縮小が顕著となり、2030 年には市場構成比が 34%程度へ、などと予想する。

図表 18:モビリティ事業売上高は自動車生産台数をアウトパフォーム
(百万円) モビリティ事業売上高とグローバル自動車生産台数の推移 (万台) (万台)
グローバル自動車生産台数の構成変化 (%)
100,000 15,000 12,000 30.0
HV ICE NEV(BEV,FCV) NEV比率(右目盛)
90,000 モビリティ事業売上高(左軸) グローバル生産台数(右軸) 13,500
10,000 25.0
80,000 12,000

70,000 10,500
8,000 20.0
60,000 9,000

50,000 7,500 6,000 15.0

40,000 6,000

30,000 4,500 4,000 10.0

20,000 3,000
2,000 5.0
10,000 1,500

0 0 0 0.0
10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3(会予)
2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030 (暦年)




出所:各種資料などから CGRA 作成、自動車生産台数は CGRA 予想




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BEV(電気自動車)はタイミングチェーンが不要
1980 年代半ば、完成車メーカーの志向が軽量化と静音化などへシフトする中、スチール製のタイミング FCV ( Fuel Cell
チェーンがゴム製のタイミングベルトへ置き換わる動きが見られた。しかし、1995 年辺りからエンジンの小 Vehicle)の場合はタ
イミングチェーンが不要
型・高性能化ニーズの高まりなどを背景に、タイミングチェーンへ回帰する動きが強まり、同社モビリティ事
になる
業の営業利益は 17/3 期に過去最高の 123 億円、売上高は 18/3 期に同 795 億円に達した。

しかし、2017 年頃から自動車の CASE(コネクティビリティの C、オートノマスの A、シェアードの S、エレ
クトリックのE)の議論が始まり、地球温暖化対策と ESG 機運の高まりを背景に、自動車の電動化
議論が加速している。駆動部がモータのみとなる BEV(Battery Electric Vehicle) では、エンジン
を不要とするため、タイミングチェーンも不要となる。このことが同社 PBR 低下の一因と考えられる。しか
し、HV・PHV 車ではエンジンが搭載されるため、タイミングチェーンも採用が続く見通しである。

Enedrive チェーンと e-fuel および水素エンジンが今後の鍵を握る
BEV では小型高速モータの採用が進むと見られ、「モータ+ギヤ」構造が一般的と考えられている。しか BEV においては「モータ
し、ギヤよりもチェーンの方がレイアウトの自由度が高く、動力の伝達効率も高いうえ、質量やコストなど +チェーン」構造にメリ
ットが多い
に関しても優位性が高い。引き続き同社 Enedrive チェーンの採用動向に注目したい。

e-fuel は、水を電気分解した H2(水素)と CO2 を触媒反応で合成した液体の炭化水素燃料で
あり、欧州 VW やトヨタ自動車などが開発を主導している。完成車各社は、既存の内燃機技術を温
存することで、アップルなどの新規参入企業の抑止につなげたいうえ、日本勢は HV 技術で優位に立ち、
米中韓メーカーは EV を志向する傾向が強い。そのような中、欧州完成車メーカーと日本の完成車メー
カーを中心に e-fuel を模索する動きもみられる。また、トヨタ自動車が主導する水素エンジンは、従来
のガソリンエンジンから燃料供給と燃料噴射系の機構を変更、圧縮気体水素を燃焼させることで動力
を発生させるため、走行中に CO2 は発生しない。e-fuel および水素エンジンの展開次第では、株式
市場が懸念する「エンジン用タイミングチェーンは EV 時代に需要が消滅する」との見方から「安定収益
を稼げる事業」へ変化する可能性もあると CGRA は考える。

図表 19:EV 向けチェーン対ギヤの特性分析と同社製品マッピング




出所:会社 HP および中期経営計画 2025 説明資料



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・マテハン事業の市場概況と業績見通し
マテハン市場は e コマース(EC)向けを中心に安定成長が続きそう
マテハン(物流機器)市場は、バブル経済崩壊以降、構造的な需要低迷期が続いたものの、1994 マテハン市場は急成長
年に米 Amazon 社が創業、2015 年頃から EC 市場が本格的に立ち上がり、世界的な小口運送需 が続いてきた

要の急増と人手不足を追い風に急拡大してきた。世界シェア推定 15%を誇る世界最大手のダイフク
の業績は、15/3 期に売上高 2,673 億円、 営業利益 149 億円であったものが、4 年後の 19/3 期
売上高は過去最高の 4,596 億円、営業利益も過去最高の 547 億円へ急成長を遂げた。

マテハン事業の CCC を除く営業利益率は改善方向
マテハン事業の売上高は、2018 年 6 月に米セントラルコンベヤ(CCC)を買収、e コマースなどの物 買収した CCC を除く
流投資増などを背景に、20/3 期に過去最高の 642 億円に達した。しかし、リーマン・ショック以降の営 営業利益率は改善傾
向を強める
業利益に関しては、15/3 期に記録した 19 億円(営業利益率 4.3%)がピークである。その後は米
国における自動車工場の閉鎖や COVID-19 の悪影響などで CCC の業績が悪化、21/3 期には 22
億円の営業赤字に転じた。ただし、CCC を除く営業利益率は 5.3%を確保しており、収益性改善効
果が顕在化している印象である。22/3 期会社側業績予想は CCC の収益改善を織り込み、売上高
は前期比 24%増の 662 億円(上期 284 億円、下期 378 億円)、営業利益は黒字の 15 億円
(営業利益率 2.3%。上期 1 億円、下期 14 億円)が提示された。CCC では競合 Dearborn
Mid-west Company から Jeff Brinker 氏を新社長として招聘、プロジェクト管理体制強化、つば
きグループとしてのシナジー効果の発揮、既存および新興自動車メーカーとの関係強化を図り、収益体
質の強化を図る方針である。

ダイフクとの営業利益率の違いはサービス事業にある
ダイフクの 21/3 期営業利益率は 9.4%と相対的に高い。ダイフクの場合、推定営業利益率 15%を 今後はアフターサービス
誇るサービス事業が売上高の 25%を占め、本体の営業利益率は 7%程度と CGRA は試算する。ま 事業の強化 などの戦
略が求められよう
た、ダイフクの国内事業(国内売上構成比 35%)営業利益率は 5%程度と見られ、海外市場で
高い収益性を確保している模様である。椿本チエインの場合、サービス(メンテナンス)売上高比率が
20%程度と相対的に低く、国内売上構成比が高い。従って、CGRA では、アフターサービス事業の強
化および米 CCC の収益改善、更にはエンジニアリング力の強化、システムインテグレーションビジネスの
拡大などの戦略が収益性改善の鍵を握っていると考える。

図表 20:マテハン事業の売上高、営業利益および営業利益率の推移
(百万円) マテハン事業の売上高、営業利益および営業利益率の推移 (%)
75,000 10.0
売上高 営業利益 営業利益率(右軸)
65,000 8.0


55,000 6.0


45,000 4.0


35,000 2.0


25,000 0.0


15,000 -2.0


5,000 -4.0


-5,000 -6.0
10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 (会予)


出所:会社資料より CGRA 作成

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(5)財務および非財務分析
・財務分析
良好な B/S を維持するが、運転資金管理に課題
21/3 期末の連結自己資本比率は 60.5%(5 年前に比べて 4.6%上昇)を確保、配当の原資と 良好な B/S を有する
なる単体ベースの利益剰余金(21/3 期末)は 968 億円に達しており、22/3 期予想 1 株配当金 ものの、他社比較では
改善の余地がありそう
110 円(配当総額約 41 億円)、新中計期間中の配当総額 200~240 億円に対して潤沢な配
当原資を有していると言えよう。

21/3 期末における有形固定資産回転率(売上高÷過去 2 年平均有形固定資産)は 1.66 回
(19/3 期ピークで 2.07 回)であり、工具を手掛ける OSG の 1.32 回を上回るものの、トランスミッ
ションなどの自動車部品を扱うアイシンの 2.43 回、軸受などを手掛ける日本精工の 1.96 回を下回っ
ている。16/3 期以降のモビリティ事業への積極投資に加え、米中貿易摩擦、COVID-19 影響などに
よる減収が響いていると考えられる。

21/3 期末の運転資金動向をみると、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル:棚卸資産回転日数
+売上債権回転日数-仕入債務回転日数)は 154.8 日(過去 5 年平均 134.0 日)。こちらも
日本精工の 120.9 日(同 99.9 日)よりも長期化している。特に、棚卸資産回転日数および売上
債権回転日数が長い。売上高の 28%を占めるマテハン事業が影響しているものと思われたが、マテハ
ン最大手であるダイフクの CCC は 98.8 日であり、マテハン事業以外にも課題があると CGRA は考え
る。ちなみに内燃機関用チェーンおよび産業機械用チェーンを手掛ける大同工業の 21/3 期 CCC は
145 日である。

B/S 上ののれんは 25 億円に過ぎないが、投資有価証券が 285 億円(自己資本に対して約 15%)
と多い。ガバナンスの観点からも政策保有株の解消に課題が残る印象である。

FCF の安定創出が可能であり、ネット・キャッシュ状態を確保
過去 5 年間の平均営業キャッシュフローは 250 億円、同フリーキャッシュフローは 77 億円を確保、
21/3 期末の有利子負債 411 億円に対して、480 億円(現預金 418 億円+有価証券 61 億
円)の手元流動性を有し、68 億円のネット・キャッシュ状態にある。18/3 期は 76 億円のネット・キャ
ッシュであったが、過去 2 期間は有利子負債の増加を背景にネット・デットに転じたものの、21/3 期は
運転資本の圧縮、設備投資抑制などを背景に 3 期ぶりにネット・キャッシュに転じた。

ROE10%を目指すには B/S 改革が求められると CGRA は考える
リーマン・ショック後の ROE は 15/3 期の 10.9%をピークに低下、21/3 期は 4.8%にとどまった(過 政策保有株の整理な
去最高は 08/3 期に記録した 12.8%)。ROE 4.8%をデュポンモデルに分解すると、売上高当期利 ども求められよう

益率は 4.5%(15/3 期 7.2%)、総資産回転率(売上高÷過去 2 期間平均総資産)は 0.6
回(同 0.8 回)、財務レバレッジ(過去 2 期間平均総資産÷同自己資本)は 1.7 倍(同 1.9
倍)であり、自己資本が過大な印象を受ける。実際、同社自己資本は、15/3 期末の 1,404 億円
から 21/3 期末には約 1.3 倍の 1,857 億円へ増加した(総資産は同約 1.2 倍)。

他社を例に挙げると、日本精工の 15/3 期 ROE は過去最高の 15.2%に達した。その際、売上高当
期利益率は 6.4%と椿本チエインよりも収益性で劣るものの、総資産回転率は 0.9 回、財務レバレッ
ジは 2.6 倍であった。したがって、椿本チエインにおける ROE の改善には、収益性改善に加え、棚卸資
産や営業債権の圧縮、政策保有株式の売却、外注の活用(=有形固定資産の圧縮)、株主還
元強化などの B/S 改革が求められると CGRA は考える。



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図表 21:ROE のデュポンモデル分解
デュポンモデル 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3
売上高当期利益率:% 4.7 5.0 5.7 7.2 6.3 7.3 6.8 5.8 5.1 4.5
総資産回転率(売上高÷総資産) 0.8 0.7 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.6
財務レバレッジ(総資産÷自己資本) 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 1.8 1.7 1.7 1.7 1.7
ROE:% 7.9 7.7 9.3 10.9 9.0 9.9 9.2 8.1 6.7 4.8

NOPAT:百万円 7,309 7,724 10,546 13,622 14,690 15,439 15,096 17,138 12,076 6,348
投下資本:百万円 123,740 145,103 158,166 181,198 180,632 190,852 196,346 219,226 217,564 228,662
ROIC:% 5.9 5.3 6.7 7.5 8.1 8.1 7.7 7.8 5.6 2.8


図表 22:棚卸資産と売上債権に改善余地あり
(日) 椿本チエインのCCC構成項目の推移
180.0
棚卸資産回転日数(日)
160.0 売上債権回転日数(日)
仕入債務回転日数(日)
140.0
CCC
120.0

100.0

80.0

60.0

40.0

20.0

0.0


出所:会社資料より CGRA 作成

・非財務分析およびガバナンス体制
非財務情報思考が必要な時代が到来
企業の持続的成長には、社会課題の解決を伴う事業活動を通じた経済価値および社会価値の向上
が求められる。近年は ESG および SDGs の議論とともに、投資資金もアクティブからパッシブ化の動きを
強めており、ESG ファンドへの資金流入が続いている。

ESG や SDGs などの非財務情報の開示は、長期投資家のみならず、すべてのステークホルダーにとって
必要不可欠なものになりつつある。製品の価格や性能、効率の良い生産活動も大事であるが、いかに
環境に優しいモノづくりを通じて、いかに環境に優しいエコ商品を生産するかなどのアウトカムが企業のブ
ランディングや営業戦略に重要な時代が到来している。既にトヨタ自動車はサプライヤー各社へ CO2 削
減を義務付け始めたが、今後はカーボンニュートラルな企業からのみ部品を調達する完成車メーカーや
産業機械メーカーが登場する可能性もあろう。

各種 KPI の開示が進むが、リスク分析に課題を残す
同社は 2019 年に従来のコーポレートレポートから統合報告書へ名称を改め、ESG 強化および SDGs
の開示を行っている。2020 年版「つばきグループ統合報告書」(71 ページ)では、各 ESG 項目に
沿ったマテリアリティ(重要課題)を設定、環境に関しては、CO2 排出総量の削減(国内グループ会
社では 2030 年までに 2013 年度比で 46%削減)や廃棄物リサイクル率、PRTR(有害化学物
質)物質排出量などの項目に関して 2030 年度を最終ターゲットとした KPI を掲げている。


椿本チエイン(6371) 21
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ガバナンスに関しては、リスクマネジメントとコンプライアンスの観点から KPI を定め、強化を進めている。
今後に関しては、改定コーポレートガバナンスコードで開示が求められる TCFD に加え、中長期視点で
のリスク開示と対策および機会の説明、組織横断的な ESG 活動の強化などが求められよう。

ガバナンス体制の強化が進む
同社ガバナンス体制の歴史を振り返ると、まず 2004 年度に執行役員制度を導入、社外取締役を 1 新中計戦略に必要な
名選任、社外監査役は 1 名から 2 名へ増員した。2013 年度には社外取締役を 1 名から 2 名へ増 取締役会のスキルマト
員した。2015 年度には CEO(最高経営責任者)と COO(最高執行責任者)を分離するマネジ リクスの開示に期待し
メント改革を実施した。2017 年度には社外取締役を 2 名から 3 名(社外比率 30%:当時)へ たい

増員した。2018 年度には執行役員が事業部長を務める体制へ移行した。2019 年度は取締役会
による戦略策定・監督と執行役員による業務執行を明確に分離するとともに、取締役と執行役員の兼
務を廃止、指名・報酬委員会を設置した。

指名・報酬委員会は、社外取締役 3 名で構成され、CEO がオブザーバーとして委員会に出席してい
る。委員長は阿部修司氏である。

2021 年 7 月現在、同社の取締役数は 7 名、うち社外取締役は 3 名(社外比率 42.9%)であ
る。取締役会には 7 名のほか、常勤監査役 2 名と社外監査役 2 名が出席し、大原代表取締役会
長兼 CEO が取締役会の議長を務める。なお、同社取締役の女性比率は 14%(1名)である。

社外取締役の阿部修司氏は、2013 年 6 月に同社社外取締役に就任。ヤンマーディーゼル株式会
社(現ヤンマーホールディングス株式会社)取締役副社長、ヤンマー農機株式会社(現ヤンマーアグ
リ株式会社)代表取締役社長を歴任されている。安藤圭一氏は、2017 年 6 月に同社社外取締
役に就任。株式会社三井住友銀行代表取締役兼副頭取執行役員、新関西国際空港株式会社
代表取締役社長兼 CEO などを歴任。塩野義製薬(株)および(株)ダイヘンの社外取締役を兼
職されている。北山久恵氏は、2020 年 6 月に同社社外取締役に就任。有限責任あずさ監査法人
専務役員などを歴任。北山公認会計士事務所代表(現任)であり、(株)荏原製作所の社外取
締役を兼職されている。

今後は新中計戦略の着実な遂行に必要な取締役のスキルマトリクスなどの開示説明に期待したい。

企業価値の向上には株価意識の高まりも必要か
同社は 2020 年 6 月 26 日開催の定時株主総会において、社外取締役を除く取締役に対し、株主 株価意識を高める諸
との一層の価値共有を進めることを目的に、譲渡制限付株式報酬制度を導入した。ただし、役員報 策が必要との印象を
酬の固定報酬比率は約 70%(前年の 50%から上昇)と高く、インセンティブ効果が働きにくいと言 受ける
えよう。因みに、日本精工の固定報酬比率は 40%である。中期経営計画 2025 の確実な達成に向
けて、インセンティブ効果を狙った同社役員の同社株式保有の増加や従業員持ち株制度の拡充、各
種 ESG 関連の KPI に紐づいた報酬制度の導入などによって、社員一丸となって企業価値および社会
価値向上を図る意識統一作りも有効ではないかと CGRA は考える。




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2021-9-1




(6)連結損益計算書と貸借対照表およびキャッシュフロー
・図表 23:連結損益計算書
(百万円、%) 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3
売上高 144,896 150,002 178,022 196,738 203,976 198,762 215,716 238,515 226,423 193,399 225,000
増収率 4.8 3.5 18.7 10.5 3.7 -2.6 8.5 10.6 -5.1 -14.6 16.3
売上原価 104,156 107,396 126,132 137,014 142,241 138,191 152,630 171,959 166,158 145,764 -
原価率 71.9 71.6 70.9 69.6 69.7 69.5 70.8 72.1 73.4 75.4 -
販売管理費 28,657 30,027 34,536 38,296 40,164 38,924 42,392 44,767 44,118 38,737 -
販管費率 19.8 20.0 19.4 19.5 19.7 19.6 19.7 18.8 19.5 20.0 -
営業利益 12,081 12,579 17,354 21,427 21,570 21,647 20,694 21,789 16,146 8,896 16,000
増益率 9.6 4.1 38.0 23.5 0.7 0.4 -4.4 5.3 -25.9 -44.9 79.9
営業利益率 8.3 8.4 9.7 10.9 10.6 10.9 9.6 9.1 7.1 4.600 7.1
営業外収支 59 235 639 836 539 357 1,049 -167 552 2,129 1,000
経常利益 12,140 12,813 17,993 22,263 22,109 22,004 21,743 21,622 16,698 11,025 17,000
増益率 9.3 5.5 40.4 23.7 -0.7 -0.5 -1.2 -0.6 -22.8 -34.0 54.2
経常利益率 8.4 8.5 10.1 11.3 10.8 11.1 10.1 9.1 7.4 5.7 7.6
特別損益 -233 -168 -421 321 -1,665 -429 -579 -2,189 111 1,133 -
特別利益 73 6 6 365 75 10 0 4 533 1,190 -
特別損失 306 174 427 44 1,740 439 579 2,193 422 57 -
税前利益 11,907 12,645 17,572 22,583 20,444 21,575 21,164 19,433 16,809 12,158 -
法人税住民税+調整額 4,469 4,750 6,856 8,163 7,643 6,721 6,422 5,577 5,123 3,377 -
税率 37.5 37.6 39.0 36.1 37.4 31.2 30.3 28.7 30.5 27.8 -
少数株主利益 623 464 503 267 33 257 75 75 109 75 -
親会社株主に帰属する当期利益 6,815 7,431 10,213 14,153 12,768 14,597 14,667 13,781 11,576 8,706 12,500
増益率 11.8 9.0 37.4 38.6 -9.8 14.3 0.5 -6.0 -16.0 -24.8 43.6
当期利益率 4.7 5.0 5.7 7.2 6.3 7.3 6.8 5.8 5.1 4.5 5.6
連結EPS 36.63 39.69 54.58 75.65 68.24 390.15 387.44 364.03 308.71 235.23 337.70

セグメント売上高
チェーン 51,692 50,250 55,828 61,721 63,998 60,600 67,338 72,023 67,526 61,312 65,800
モーションコントロール(旧精機) 21,364 19,664 21,612 22,557 21,975 21,563 24,156 25,591 23,813 19,697 22,100
モビリティ(旧自動車部品) 43,509 49,397 60,674 66,978 73,473 75,147 79,545 78,992 70,949 57,777 72,300
マテハン 27,977 30,246 39,565 45,169 44,354 41,043 44,187 61,827 64,212 53,618 66,200
その他 2,913 2,846 2,719 2,968 3,186 3,001 3,331 3,548 3,542 3,941 2,200
消去 -2,559 -2,402 -2,378 -2,658 -3,011 -2,594 -2,843 -3,469 -3,622 -2,948 -3,600
連結売上高 144,896 150,002 178,022 196,738 203,976 198,762 215,716 238,515 226,423 193,399 225,000

セグメント利益
チェーン 3,462 3,586 3,763 5,002 6,172 7,102 8,502 10,292 8,406 7,862 6,700
モーションコントロール(旧精機) 2,512 1,955 2,273 2,400 2,427 2,218 3,060 3,340 2,189 816 1,300
モビリティ(旧自動車部品) 4,846 6,494 10,119 11,916 12,258 12,385 10,258 8,734 5,791 3,714 8,000
マテハン 878 531 1,192 1,940 659 706 416 402 647 -2,202 1,500
その他 170 143 63 123 84 -1 -40 -43 20 -330 -300
消去 213 -130 -56 46 -30 -763 -1,502 -936 -907 -964 -1,200
連結営業利益 12,081 12,579 17,354 21,427 21,570 21,647 20,694 21,789 16,146 8,896 16,000

セグメント利益率
チェーン 6.7 7.1 6.7 8.1 9.6 11.7 12.6 14.3 12.4 12.8 10.2
モーションコントロール(旧精機) 11.8 9.9 10.5 10.6 11.0 10.3 12.7 13.1 9.2 4.1 5.9
モビリティ(旧自動車部品) 11.1 13.1 16.7 17.8 16.7 16.5 12.9 11.1 8.2 6.4 11.1
マテハン 3.1 1.8 3.0 4.3 1.5 1.7 0.9 0.7 1.0 -4.1 2.3
その他 5.8 5.0 2.3 4.2 2.6 0.0 -1.2 -1.2 0.6 -8.4 -13.6
連結営業利益率 8.3 8.4 9.7 10.9 10.6 10.9 9.6 9.1 7.1 4.6 7.1




注:同社は 22/3 期からセグメントの呼称を変更。精機事業をモーションコントロール(MC)事
業とし、AP クラッチをモビリティ事業へ移管。自動車部品事業をモビリティ事業に改称。チェーン事
業と MC 事業を統括するパワトラ事業統括を設置した。

17/3~19/3 期連結 EPS は株式併合後の数値に修正済み

出所:会社資料より CGRA 作成




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2021-9-1



・図表 24:連結貸借対照表とキャッシュフロー
(百万円、%) 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3
流動資産 86,630 96,782 100,626 116,619 116,536 125,400 132,144 143,949 134,083 145,185
現金・預金 9,661 19,678 13,518 17,504 20,195 26,332 29,590 33,647 29,019 41,869
受取手形・売掛金 42,886 41,844 44,337 47,338 48,726 50,760 55,612 59,807 57,046 55,377
有価証券 4,468 560 7,877 12,020 7,533 7,965 4,646 4,114 3,965 6,189
棚卸資産 25,893 29,298 29,625 33,574 33,153 33,875 37,676 41,884 40,278 38,389
その他流動資産 3,722 5,402 5,269 6,183 6,929 6,468 4,618 4,495 3,773 3,360
固定資産 105,135 119,055 128,213 142,122 137,570 141,814 151,429 161,966 160,015 162,147
有形固定資産 82,761 90,481 96,852 101,613 102,777 105,435 113,285 116,946 118,579 115,059
無形固定資産 1,716 5,381 5,807 5,132 4,352 3,841 2,968 12,787 11,361 10,695
投資その他資産 20,657 23,192 25,554 35,376 30,444 32,537 35,175 32,233 30,074 36,391
資産合計 191,765 215,837 228,840 258,742 254,106 267,215 283,574 305,916 294,098 307,332
流動負債 54,544 57,543 62,003 59,435 55,525 66,558 70,797 82,617 67,081 61,690
支払手形・買掛金 27,779 26,488 25,269 25,902 24,986 25,462 34,148 33,701 27,030 25,674
短期借入金・1年以内償還長期借入金 10,594 11,868 18,847 11,761 10,547 20,225 11,292 22,779 17,139 11,953
その他流動負債 16,171 19,187 17,887 21,773 19,992 20,872 25,356 26,137 22,912 24,064
固定負債 40,885 49,696 45,208 55,014 52,766 44,439 43,012 47,844 50,961 58,147
SB・CB 0 0 0 10,000 10,000 10,000 10,000 15,000 15,000 15,000
長期借入金 16,810 24,638 17,690 15,146 14,269 4,409 5,288 5,992 9,369 14,214
その他固定負債 24,075 25,058 27,518 29,868 28,497 30,030 27,723 26,851 26,592 28,933
負債合計 95,430 107,239 107,212 114,449 108,291 110,997 113,809 130,461 118,043 119,838
非支配株主持分 6,412 6,577 3,194 3,851 3,774 3,744 1,848 1,720 1,695 1,703
自己資本 89,923 102,019 118,433 140,439 142,041 152,474 167,917 173,734 174,360 185,791
負債・資本合計 191,766 215,837 228,840 258,742 254,106 267,215 283,574 305,916 294,098 307,332

(百万円、%) 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3
営業活動によるキャッシュフロー 11,626 15,350 19,761 22,189 19,090 25,434 27,657 24,197 20,275 27,890
税金等調整前当期純利益 11,907 12,645 17,572 22,583 20,444 21,575 21,164 19,432 16,809 12,159
減価償却費 7,403 7,360 8,745 9,476 10,402 10,342 11,005 12,366 12,739 12,682
運転資本の増減 -2,265 832 -220 -4,110 -3,721 -2,804 720 -5,847 -3,318 3,143
法人税等の支払額 -4,667 -4,695 -6,099 -7,193 -9,785 -6,126 -6,664 -7,354 -5,089 -3,810
その他 -752 -792 -237 1,433 1,750 2,447 1,432 5,600 -866 3,716

投資活動によるキャッシュフロー -10,487 -18,401 -17,166 -14,306 -13,593 -13,420 -17,389 -32,088 -14,241 -9,560
投資有価証券の取得 -712 -512 -223 -548 -194 -229 -11 -212 -15 -252
投資有価証券の売却 3 14 665 0 0 19 0 328 215 166
有形固定資産の取得 -7,553 -11,121 -13,232 -9,384 -13,750 -14,151 -15,542 -17,273 -14,661 -9,723
有形固定資産の売却 193 187 104 356 147 135 167 198 171 689
子会社出資金の取得 0 -6,334 0 0 0 0 0 -15,457 0 0
その他 -2,418 -635 -4,479 -4,730 207 807 -2,001 327 48 -440

フリーキャッシュフロー 1,138 -3,050 2,594 7,882 5,496 12,013 10,268 -7,890 6,034 18,329

財務活動によるキャッシュフロー -5,460 6,325 -3,196 -2,647 -5,476 -4,084 -13,191 12,679 -10,385 -4,354
長期債務の調達・返済 -6,151 9,880 -642 -1,239 -1,540 -688 -9,410 15,780 -2,398 1,213
短期債務の調達・返済 2,460 -1,949 -175 1,135 -190 913 1,042 1,813 376 -1,687
配当金の支払 -1,302 -1,310 -1,497 -2,432 -3,554 -3,928 -4,544 -4,731 -4,541 -3,330
その他 -467 -296 -882 -111 -192 -381 -279 -183 -3,822 -550

現金及び現金同等物に係る換算差額 -118 793 1,378 741 -957 -649 374 -414 -358 730
現金及び現金同等物の増減額 -4,440 4,068 776 5,976 -937 7,279 -2,548 4,374 -4,708 14,706
現金及び現金同等物期首残高 17,308 13,916 20,194 21,291 27,360 26,422 34,142 31,712 36,087 31,378
現金及び現金同等物期末残高 13,916 20,194 21,291 27,360 26,422 34,142 31,712 36,087 31,378 46,084


総資産回転率(回) 0.77 0.74 0.80 0.81 0.80 0.76 0.78 0.81 0.75 0.64
有形固定資産回転率(回) 1.77 1.73 1.90 1.98 2.00 1.91 1.97 2.07 1.92 1.66
流動資産回転率(回) 1.72 1.64 1.80 1.81 1.75 1.64 1.68 1.73 1.63 1.39
棚卸資産回転日数(日) 88.75 93.79 85.26 84.18 85.61 88.52 85.55 84.44 90.24 98.49
売上債権回転日数(日) 99.48 103.09 88.35 85.04 85.95 91.35 89.99 88.31 94.19 106.09
仕入債務回転日数(日) 61.90 66.02 53.06 47.47 45.53 46.32 50.43 51.91 48.95 49.73
自己資本比率(%) 46.89 47.27 51.75 54.28 55.90 57.06 59.21 56.79 59.29 60.45
CCC(日) 126.33 130.85 120.55 121.75 126.03 133.55 125.12 120.84 135.48 154.85



出所:会社資料より CGRA 作成

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<担当アナリスト>
黒田真路 パートナー、シニアアナリスト

1992 年 4 月に勧角総合研究所(現みずほ証券)に入社、産業調査部に配属。1999 年 9 月に
ジャーディン・フレミング証券(現 JP モルガン証券)、ゴールドマン・サックス証券を経て、2020 年 1 月
迄、クレディ・スイス証券に在籍。ゴールドマン・サックス証券ではバイスプレジデント、クレディ・スイス証券
ではディレクター。一貫して機械・造船重機セクターを担当。2020 年 6 月にパートナーとして、CGRA
に参画。(一社)日本証券アナリスト協会の機械業界ディスクロージャー委員(現任)

星野英彦 CMA 代表取締役・チーフアドバイザー

1987 年 4 月に新日本証券(現みずほ証券)入社、企業調査部に配属。1997 年にジャーディン・
フレミング証券(現 JP モルガン証券)、2000 年にドイツ証券、2006 年に UBS 証券で 2016 年 4
月まで在籍。セルサイドアナリストとして機械、造船、重機、プラントセクターを 28 年間にわたって担当。
(一社)日本証券アナリスト協会で機械ディスクロージャー部会の副部会長を 10 年以上に渡って歴任。
2003 年より 2016 年迄、マネージングディレクター。2017 年 6 月に株式会社キャピタルグッズ・リサー
チ&アドバイザリー(CGRA)を設立、代表取締役に就任。(一社)日本証券アナリスト協会認定ア
ナリスト



株式会社 キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリー

機械セクターに特化したアドバイザリー企業。主な業務内容は(1)資本市場のニーズを満たしつつ、
経営にフィードバック可能な統合報告書の作成サポート、(2)中計作成や事業戦略、各種 IR&SR
に関する助言業務、(3)各種資料作成と英訳業務、(4)長期投資家と経営層に役立つ企業分
析スポンサード・レポートの作成など。




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