加速器を用いたBNCT治療システムおよびBNCT線量計算プログラムの医療機器製造販売承認を取得

2020 年 3 月 12 日
各 位
会 社 名 住友重機械工業株式会社
代表者名 代表取締役社長 下村 真司
(コード番号 6302 東証第一部)
問合せ先 コーポレート・コミュニケーション部長
渡辺 美知子
(TEL.03-6737-2333)



加速器を用いた BNCT 治療システムおよび BNCT 線量計算プログラムの医療機器製造販
売承認を取得
~世界初の BNCT 用医療機器~



当社は、加速器を用いた BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)治療システムに関して、ステラファーマ株式
会社(本社:大阪府大阪市、社長:浅野智之)と共同で頭頸部がんを対象とする臨床試験を実施して
まいりました。この結果を受けて、2019 年 10 月 11 日に医療機器製造販売承認申請しておりました
BNCT 治療システム NeuCureTM、ならびに BNCT 線量計算プログラム NeuCureTM ドーズエンジンについて、
本日、
厚生労働省より新医療機器としての承認を取得しましたのでお知らせいたします。
これにより、
当社の製品が世界で初めて BNCT に使用する医療機器としての承認を得たことになります。


製造販売承認を取得した2つの製品


【BNCT 治療システム NeuCureTM(ニューキュア)

医療機器製造販売承認番号 :30200BZX00084000 令和 2 年 3 月 11 日付


BNCT に使用することを目的とした中性子照射装置です。


【BNCT 線量計算プログラム NeuCureTM ドーズエンジン】
医療機器製造販売承認番号 :30200BZX00083000 令和 2 年 3 月 11 日付


輪郭情報および照射条件を基に BNCT により与えられる線量分布を計算し、治療計画の決定を支援
するプログラムです。


これらの製品について、切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がんに対するホウ素中性子捕捉
療法への使用が承認されました。今後、先駆け審査指定品目として、頭頸部がんと同様に指定を受け
ている再発悪性神経膠腫ついても、製造販売承認申請を予定しています。


なお、これらの製品は、以下の医薬品と組合わせて使用します。



(併用医薬品) 一般名:ボロファラン(10B) 販売名:ステボロニンⓇ点滴静注バッグ 9000 mg/
300 mL
※上記併用医薬品に関しては、令和 2 年 2 月 26 日開催された薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生
審議会医薬品第二部会)にて審議され承認が了承されています。


各製品の特長


【BNCT 治療システム NeuCureTM(ニューキュア)

本システムは、当社が約 50 年間にわたり蓄積してきた物理研究用および医療用サイクロトロンと
そのビーム制御技術にもとづいて開発した高電流タイプ 30MeV AVF サイクロトロンとそのビーム制
御システムをベースに、2007 年から開始した京都大学複合原子力科学研究所(大阪府泉南郡熊取町)
との共同研究により開発した医療用中性子照射装置です。サイクロトロンから取り出される陽子ビー
ムを中性子に変換するターゲットにはベリリウムを用い、医療機関等に求められる安全性、安定性に
優れているのが特徴で、病院内への設置が可能になりました。




加速器を用いた BNCT システムおよび BNCT 用サイクロトロン

BNCT 治療室および移動式治療台


【BNCT 線量計算プログラム NeuCureTM ドーズエンジン】
BNCT の線量計算は、中性子の挙動を体内構成元素と合わせて詳細にシミュレーションする必要があ
ることから、モンテカルロ法による計算プログラムが必須になります。本プログラムではモンテカル
ロコードに、PHITS と呼ばれる計算コードを使用しています。PHITS は国立研究開発法人日本原子力研
究開発機構において開発された、グローバルに使用実績のある汎用モンテカルロコードです。当社は
この PHITS に対して、BNCT の線量計算を可能にする機能に加え、セキュリティチェックを含む外部
I/F などの機能を追加し BNCT 線量計算専用のドーズエンジンとして開発しました。腫瘍輪郭の設定や
線量計算後の各種計画評価、レポート出力などのユーザインタフェースには RaySearch 社が製造販売
する汎用放射線治療プログラムの RayStation を用いており、これとの併用で治療計画システムを構
成します。


ユ-ザ-




RayStation

セキュリティ
チェック


実行

PHITS




NeuCureTM ドーズエンジン




BNCT 治療計画システムの構成と当社ドーズエンジン





治療計画画面の例




市場性と目標


BNCT は臨床研究において日本が世界をリードするユニークな放射線治療法であり、患者様により良
い新たな医療を提供できるものと確信しています。今後、機器およびプログラムと同様に薬剤が製造
販売承認を受けた後は、日本だけでなく世界に対して BNCT およびその成績を関係者の皆様とともに
発信し、新たな市場をグローバルに創造していきます。BNCT がグローバルに認知されるためにはある
程度時間が掛かるものと想定していますが、長期的には累積で 100 施設以上の販売を目標と掲げ、事
業活動を展開したいと考えています。また引き続き製品の改良、開発についても努力を続けていきま
す。



参考 1:BNCT は、がんの放射線治療の一種であり、その治療法は、がん患者にがん細胞に選択的に取
り込まれるホウ素(Boron-10)を含有する BNCT 用ホウ素薬剤を投与し、がん細胞内にホウ素
(Boron-10)を選択的に取り込ませた後、体外からエネルギーの低い中性子を照射するという
ものです。このとき、体内ではホウ素(Boron-10)原子核が中性子を捕獲して核分裂反応を起
こし、この核反応により細胞にダメージを与えるエネルギーをもつα粒子(ヘリウム原子核)
と Li 反跳核(リチウム原子核)が放出されます。これらの荷電粒子は、体内ではそれぞれ約 9
μm および約 4μm の飛程しか持たず、この飛程はおよそ細胞1個分の大きさに相当します。こ
れらの特徴により、理論的には、周囲の正常な細胞等をほとんど傷つけることなく、ホウ素
(Boron-10)を取り込んだがん細胞を細胞レベルで選択的に破壊することが可能となります。

参考 2:当社は、加速器利用による BNCT 治療システムについて、2007 年より京都大学複合原子力科学
研究所と共同開発を進め 2009 年に同システムを同研究所に設置しました。その後、2015 年に
南東北病院、2019 年に大阪医科大学などにも同システムを納入しました。一方、京都大学な
どと非臨床試験および第Ⅰ相臨床試験を経て 2016 年から第Ⅱ相臨床試験を開始しました。
2017 年に先駆け審査指定制度による指定を受けました。


参考3:PHITS“Particle and Heavy Ion Transport code System”は、国立研究開発法人日本原子力
研究開発機構(JAEA)において開発されたモンテカルロコードで、世界中に 4,000 名以上のユ
ーザを持ち、様々な放射線挙動をシミュレートした実績のある汎用モンテカルロコードです。


参考4:RayStation は、スウェーデンに本拠地を置く RaySearch 社が製造販売する治療計画ソフトウ
ェアです。世界各国で使用され、その機能や性能において、ユーザから高い評価を得ています。
柔軟なプラットフォーム環境に、最適化ツールを含む様々な先進的ツールや、各種放射線治療
手法・機種を統合しているのが特徴です。X 線(DRT, IMRT, VMAT)、陽子線、重粒子線をサポ
ートしており、住友重機械の陽子線治療システムもサポートしています。RaySearch 社は、2000
年にカロリンスカ研究所(ストックホルム/スウェーデン)からのスピンオフで設立された会
社で、
先進ソフトウェアの技術開発をベースに、がん放射線治療分野に RayStation を含む様々
なソフトウェア製品を供給しています。RayStation のソフトウェア製品は、65 カ国以上の
2,600 以上の施設で使用されています。



以 上





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