スーパーコンピュータ「富岳」がGraph500において4期連続で世界第1位を獲得

2021 年 11 月 16 日
各位
株式会社フィックスターズ
代表取締役社長 三木 聡
(コード番号: 3687 東証一部)
問合せ先 取締役管理本部長 堀 美奈子
(電話番号:03-6420-0751)


スーパーコンピュータ「富岳」が
Graph500 において 4 期連続で世界第 1 位を獲得
-ビッグデータの処理で重要となるグラフ解析で最高レベルの評価-


理化学研究所(理研)、九州大学、株式会社フィックスターズ、富士通株式会社による共同研究グループ※は、
スーパーコンピュータ「富岳」[1]のフルスペックを用いた測定結果で、大規模グラフ解析に関するスーパーコン
ピュータの国際的な性能ランキングである「Graph500」において、世界第 1 位を 4 期連続で獲得しました。
このランキングは、現在米国ミズーリ州セントルイスのアメリカズ・センター及びオンラインで開催中の HPC(ハ
イパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議「SC21」に合わせて、Graph500
Committee から 11 月 15 日(日本時間 11 月 16 日)に発表されます。
大規模グラフ解析の性能は、大規模かつ複雑なデータ処理が求められるビッグデータの解析における重要な
指標です。




スーパーコンピュータ「富岳」
※共同研究グループ
理化学研究所 計算科学研究センター
プログラミング環境研究チーム
チームリーダー 佐藤 三久(さとう みつひさ)
上級研究員 児玉 祐悦(こだま ゆうえつ)
技師 中尾 昌広(なかお まさひろ)
九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所
教授 藤澤 克樹(ふじさわ かつき)
株式会社フィックスターズ
エグゼクティブエンジニア
上野 晃司(うえの こうじ)


1.「富岳」測定結果 .
共同研究グループは、「富岳」のフルスペックである 158,976 ノード[2] (432 筐体)を用いて、通信性能の最適
化などを行うことにより、約 2.2 兆個の頂点と 35.2 兆個の枝から構成される超大規模グラフに対する幅優先
探索問題を調和平均 0.34 秒で解きました。「Graph500」のスコアは、102,955GTEPS(ギガテップス)[3]で
す。
なお、2021 年 11 月時点の「Graph500」のランキング第 2 位は、中国の「Sunway TaihuLight」で、測定結果
は 23,756GTEPS です。すなわち、今回「富岳」は第 2 位と約 4 倍以上の性能差をつけたことになります。


<関連リンク>
Graph500 ランキング
https://graph500.org


2.Graph500 について .


実社会における複雑な現象は、大規模なグラフ(頂点と枝によりデータ間の関連性を示したもの)として表現さ
れる場合が多いため、コンピュータによる高速なグラフ解析が必要とされています。例えば、ソーシャル・ネット
ワーキング・サービスなどでは、「誰と誰がつながっているか」といった関連性のあるデータを解析する際にグラ
フ解析が用いられます。さらに Society 5.0[4] に向けた取り組みにおいて、IoT(Internet of Things)などの技
術で取得された大量のデータをグラフに変換して計算機で高速処理することにより、新しい価値を産み出す新
規ビジネスの開拓が推進されています。これらは新しい産業の創出と廃棄物排出の削減の両立を目的として
おり、「持続可能な開発目標 (SDGs) [5]」のうち特に 9 (産業・技術革新・社会基盤) および 11(持続可能なま
ちづくり)の推進に大きく寄与することが期待されています。このような多種多様な応用力を持つグラフ解析の
性能を競うのが「Graph500」です。「Graph500」は 2010 年に始まり、そのランキングは年に 2 回(6 月と 11
月)更新されます。


「Graph500」では 1 兆個の頂点を超えるような大規模グラフを扱うため、グラフのデータを複数台のノードに
分散して配置する必要があり、「富岳」のような大規模ネットワークを持つシステムでは通信性能の最適化も重
要になります。共同研究グループは、スーパーコンピュータ上で大規模なグラフを高速に解析できるソフトウェ
アの開発を進めており、これまでの成果として下記(1)~(3)の先進的なソフトウェア技術を高度に組み合わせ
ることにより、今後予想される実データの大規模化および複雑化に対応可能な世界最高レベルの性能を持つ
グラフ探索ソフトウェアの開発に成功しています注 1)。
(1) 複数のノード間におけるグラフデータの効率的な分割方法
(2) 冗長なグラフ探索を削減するアルゴリズム
(3) スーパーコンピュータの大規模ネットワークにおける通信性能の最適化


「Graph500」の第 1 位獲得は、「富岳」が科学技術計算でよく用いられる規則的な計算だけでなく、不規則な計
算が大半を占めるグラフ解析においても高い性能を発揮することを実証したものであり、幅広い分野のアプリ
ケーションに対応できる「富岳」の優れた汎用性を示すものです。また、ハードウェアの性能を最大限に活用で
きるソフトウェアを開発した共同研究グループの技術力の高さを示すものでもあります。今後、共同研究グルー
プは、さらなる通信性能の最適化に加えて、冗長な探索の削減や各ノードにおけるメモリ使用量の均一化など
に取り組む予定です。


<関連リンク>
理研 計算科学研究センター
https://www.r-ccs.riken.jp/jp/


注 1)

本研究では以下の成果(アルゴリズムやプログラム)を活用しています。



1: 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 CREST「ポストペタスケール高性能計算に資するシステムソフトウェア技術の創出(研究

総括:佐藤三久)」における研究課題「ポストペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤(研究代表者:藤澤克樹、拠点代表者:鈴

村豊太郎)」



2: 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 CREST「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化(研究総括:

喜連川優)」における研究課題「EBD:次世代の年ヨッタバイト処理に向けたエクストリームビッグデータの基盤技術(研究代表者:松岡聡)」



3: 大規模グラフ解析プログラムの GitHub レポジトリ

https://github.com/suzumura/graph500/



参考文献

1. Koji Ueno, Toyotaro Suzumura, Naoya Maruyama, Katsuki Fujisawa, Satoshi Matsuoka, ”Efficient Breadth-First Search on

Massively Parallel and Distributed Memory Machines”, Data Science and Engineering, Springer, March 2017, Volume 2 Issue 1,

pp 22-35, 2017.

2. Koji Ueno, Toyotaro Suzumura, Naoya Maruyama, Katsuki Fujisawa, Satoshi Matsuoka , "Extreme scale breadth-first search on

supercomputers". 2016 IEEE International Conference on Big Data (Big Data): 1040–1047. 2016.
3.補足説明


[1] スーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」
スーパーコンピュータ「京」の後継機。2020 年代に、社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界
をリードする成果を生み出すことを目的とし、電力性能、計算性能、ユーザーの利便性・使い勝手の良さ、画期
的な成果創出、ビッグデータや AI の加速機能の総合力において世界最高レベルのスーパーコンピュータとし
て 2021 年 3 月に共用を開始した。
「富岳」は富士山の異名で、山の高さがスーパーコンピュータ「富岳」の性能の高さを表し、山の裾野の広さが
スーパーコンピュータ「富岳」のユーザーの拡がりを意味する。また、富士山は海外での知名度も高く、名称とし
て相応しいこと、さらにはスーパーコンピュータの名称は山にちなんだ名称の潮流があることなどから理研が選
考した。


[2] ノード
スーパーコンピュータにおけるオペレーティングシステムが動作できる最小の計算資源の単位。「富岳」の場合
は、一つの CPU(中央演算装置)と 32GiB(ギビバイト)のメモリから構成される。


[3] GTEPS(ギガテップス)
TEPS は Traversed Edges Per Second の略であり、「Graph500」ベンチマークの実行速度を表すスコア。
「Graph500」ベンチマークでは与えられたグラフの頂点とそれをつなぐ枝を処理する。「Graph500」におけるコ
ンピュータの速度は 1 秒間あたりに処理した枝の数として定義されている。GTEPS の G は 10 の 9 乗を表
し、GTEPS は 1 秒あたりに処理した枝の数を 10 の 9 乗で割った値である。GTEPS 値の計算には、64 試行
における調和平均が使用されている。


[4] Society 5.0
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、
新たな社会を指すもので、第 5 期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初め
て提唱された。IoT、ロボット、AI、ビッグデータといった社会の在り方に影響を及ぼす新たな技術をあらゆる産
業や社会生活に取り入れ、経済発展と社会的課題の解決を両立していく新たな社会の実現を目指すこととして
いる。


[5] 持続可能な開発目標 (SDGs)
2015 年 9 月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」にて記載された 2016
年から 2030 年までの国際目標。持続可能な世界を実現するための 17 のゴールと 169 のターゲットで構成さ
れ、発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本も積極的に取
り組んでいる。(外務省ホームページから一部改変して転載)


4.問い合わせ先 .


*今般の新型コロナウイルス感染症対策として、理化学研究所では在宅勤務を実施しておりますので、メール
にてお問い合わせ願います。
<問い合わせ>
理化学研究所 計算科学研究センター プログラミング研究チーム
技師 中尾 昌広(なかお まさひろ)
E-mail:masahiro.nakao[at]riken.jp


富士通株式会社 富士通コンタクトライン(総合窓口)
TEL:0120-933-200
受付時間:9 時~12 時および 13 時~17 時 30 分(土曜・日曜・祝日・富士通指定の休業日を除く)
お問い合わせフォーム
https://contactline.jp.fujitsu.com/customform/csque04802/873532/


<機関窓口>
理化学研究所 神戸事業所 計算科学研究推進室
広報グループ 岡田 昭彦
https://krs2.riken.jp/m/media-form


理化学研究所 広報室 報道担当
E-mail:ex-press[at]riken.jp


国立大学法人九州大学 広報室
E-mail:koho[at]jimu.kyushu-u.ac.jp


株式会社フィックスターズ マーケティング担当
TEL:03-6420-0751
E-mail:press[at]fixstars.com


富士通株式会社
広報 IR 室 担当:山本、松苗
電話:03-6252-2174(直通)


スーパーコンピュータ「富岳」(富士通公開ページ)
https://www.fujitsu.com/jp/fugaku/
※上記の[at]は@に置き換えてください。

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