スーパーコンピュータ「富岳」Graph500のランキング結果についてービッグデータの処理で重要となるグラフ解析で最高の評価ー

2022 年 11 月 15 日
各位
株式会社フィックスターズ
代表取締役社長 三木 聡
(コード番号: 3687 東証プライム)
問合せ先 取締役管理本部長 堀 美奈子
(電話番号:03-6420-0751)


スーパーコンピュータ「富岳」
Graph500 のランキング結果について
-ビッグデータの処理で重要となるグラフ解析で最高の評価-

理化学研究所(理研)、九州大学、株式会社フィックスターズ、富士通株式会社による共同研究グループ※は、
スーパーコンピュータ「富岳」[1]のフルスペックを用いた測定結果で、大規模グラフ解析に関するスーパーコンピ
ュータの国際的な性能ランキングである「Graph500」の BFS 部門において、世界第 1 位を 6 期連続で獲得し
ました。


このランキングは、現在米国テキサス州ダラスのケイ・ベイリー・ハッチソン・コンベンション・センター・ダラスお
よびオンラインで開催中の HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議
「SC22」に合わせて、Graph500 Committee から 11 月 14 日(日本時間 11 月 15 日)に発表されます。
大規模グラフ解析の性能は、大規模かつ複雑なデータ処理が求められるビッグデータの解析における重要な
指標です。




スーパーコンピュータ「富岳」
※共同研究グループ
理化学研究所 計算科学研究センター プログラミング環境研究チーム
チームリーダー 佐藤三久(サトウ・ミツヒサ)
上級技師 児玉祐悦(コダマ・ユウエツ)
技師 中尾昌広(ナカオ・マサヒロ)
九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所
教授 藤澤克樹(フジサワ・カツキ)
株式会社フィックスターズ
エグゼクティブエンジニア 上野晃司(ウエノ・コウジ)


1.「富岳」測定結果
共同研究グループは、「富岳」のフルスペックである 158,976 ノード[2](432 筐体)を用いて、通信性能の最適化
などを行うことにより、約 2.2 兆個の頂点と 35.2 兆個の枝から構成される超大規模グラフに対する幅優先探
索問題を調和平均 0.34 秒で解きました。「Graph500」のスコアは、102,955GTEPS(ギガテップス)[3]です。


<関連リンク>
Graph500 ランキング
https://graph500.org


2.Graph500 について
実社会における複雑な現象は、大規模なグラフ(頂点と枝によりデータ間の関連性を示したもの)として表現さ
れる場合が多いため、コンピュータによる高速なグラフ解析が必要とされています。例えば、ソーシャル・ネット
ワーキング・サービスなどでは、「誰と誰がつながっているか」といった関連性のあるデータを解析する際にグラ
フ解析が用いられます。さらに Society 5.0[4]に向けた取り組みにおいて、IoT(Internet of Things)などの技術
で取得された大量のデータをグラフに変換して計算機で高速処理することにより、新しい価値を産み出す新規
ビジネスの開拓が推進されています。これらは新しい産業の創出と廃棄物排出の削減の両立を目的としてお
り、「持続可能な開発目標(SDGs)[5]」のうち特に 9(産業・技術革新・社会基盤)および 11(持続可能なまちづく
り)の推進に大きく寄与することが期待されています。このような多種多様な応用力を持つグラフ解析の性能を
競うのが「Graph500」です。


「Graph500」には、BFS(Breadth-First Search:幅優先探索)部門と SSSP(Single-Source Shortest Path:
単一始点最短路)部門があり、2010 年に始まり(SSSP 部門は 2017 年 11 月から)、そのランキングは年に 2
回(6 月と 11 月)更新されます。BFS 部門では頂点間の枝の長さが同じグラフを扱うのに対し、SSSP 部門で
は頂点間の枝の長さが異なるグラフを扱います。


「Graph500」では大規模グラフを扱うため、グラフのデータを複数台のノードに分散して配置する必要があり、
「富岳」のような大規模ネットワークを持つシステムでは通信性能の最適化も重要になります。共同研究グルー
プは、スーパーコンピュータ上で大規模なグラフを高速に解析できるソフトウェアの開発を進めており、これまで
の成果として下記(1)~(3)の先進的なソフトウェア技術を高度に組み合わせることにより、今後予想される実
データの大規模化および複雑化に対応可能な世界最高レベルの性能を持つグラフ探索ソフトウェアの開発に
成功しています注 1)。


(1)複数のノード間におけるグラフデータの効率的な分割方法
(2)冗長なグラフ探索を削減するアルゴリズム
(3)スーパーコンピュータの大規模ネットワークにおける通信性能の最適化


「Graph500」の BFS 部門における第 1 位獲得は、「富岳」が科学技術計算でよく用いられる規則的な計算だ
けでなく、不規則な計算が大半を占めるグラフ解析においても高い性能を発揮することを実証したものであり、
幅広い分野のアプリケーションに対応できる「富岳」の優れた汎用性を示すものです。また、ハードウェアの性
能を最大限に活用できるソフトウェアを開発した共同研究グループの技術力の高さを示すものでもあります。今
後、共同研究グループは、さらなる通信性能の最適化に加えて、冗長な探索の削減や各ノードにおけるメモリ
使用量の均一化などに取り組む予定です。


<関連リンク>
理研 計算科学研究センター
https://www.r-ccs.riken.jp/jp/


注 1)

本研究では以下の成果(アルゴリズムやプログラム)を活用しています。



1: 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 CREST「ポストペタスケール高性能計算に資するシステムソフトウェア技術の創出(研究

総括:佐藤三久)」における研究課題「ポストペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤(研究代表者:藤澤克樹、拠点代表者:鈴

村豊太郎)」



2: 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 CREST「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化(研究総括:

喜連川優)」における研究課題「EBD:次世代の年ヨッタバイト処理に向けたエクストリームビッグデータの基盤技術(研究代表者:松岡聡)」



3: 大規模グラフ解析プログラムの GitHub レポジトリ

https://github.com/suzumura/graph500/



参考文献

1.Koji Ueno, Toyotaro Suzumura, Naoya Maruyama, Katsuki Fujisawa, Satoshi Matsuoka, ”Efficient Breadth-First Search on Massively

Parallel and Distributed Memory Machines”, Data Science and Engineering, Springer, March 2017, Volume 2, Issue 1, pp 22-35, 2017.

2.Koji Ueno, Toyotaro Suzumura, Naoya Maruyama, Katsuki Fujisawa, Satoshi Matsuoka , "Extreme scale breadth-first search on

supercomputers". 2016 IEEE International Conference on Big Data (Big Data): 1040–1047. 2016.



3.補足説明
[1] スーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」
スーパーコンピュータ「京」の後継機。2020 年代に、社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界
をリードする成果を生み出すことを目的とし、電力性能、計算性能、ユーザーの利便性・使い勝手の良さ、画期
的な成果創出、ビッグデータや AI の加速機能の総合力において世界最高レベルのスーパーコンピュータとし
て 2021 年 3 月に共用を開始した。
現在「富岳」は日本が目指す Society 5.0 を実現するために不可欠な HPC インフラとして活用されている。


[2] ノード
スーパーコンピュータにおけるオペレーティングシステムが動作できる最小の計算資源の単位。「富岳」の場合
は、一つの CPU(中央演算装置)と 32GiB(ギビバイト)のメモリから構成される。


[3] GTEPS(ギガテップス)
TEPS は Traversed Edges Per Second の略であり、「Graph500」ベンチマークの実行速度を表すスコア。
「Graph500」ベンチマークでは与えられたグラフの頂点とそれをつなぐ枝を処理する。「Graph500」におけるコ
ンピュータの速度は 1 秒間あたりに処理した枝の数として定義されている。GTEPS の G は 10 の 9 乗を表
し、GTEPS は 1 秒あたりに処理した枝の数を 10 の 9 乗で割った値である。GTEPS 値の計算には、64 試行
における調和平均が使用されている。


[4] Society 5.0
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、
新たな社会を指すもので、第 5 期科学技術基本計画において日本が目指すべき未来社会の姿として初めて
提唱された。IoT、ロボット、AI(人工知能)、ビッグデータといった社会の在り方に影響を及ぼす新たな技術をあ
らゆる産業や社会生活に取り入れ、経済発展と社会的課題の解決を両立していく新たな社会の実現を目指
す。


[5] 持続可能な開発目標(SDGs)
2015 年 9 月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」にて記載された 2016
年から 2030 年までの国際目標。持続可能な世界を実現するための 17 のゴールと 169 のターゲットで構成さ
れ、発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本も積極的に取
り組んでいる。(外務省ホームページから一部改変して転載)




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Tel: 03-6420-0751

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