スポンサードリサーチレポート発行のお知らせ

NEWS RELEASE



2024 年 4 月 10 日

地主株式会社 東証プライム 3252




スポンサードリサーチレポート発行のお知らせ


各位


株式会社ストラテジー・アドバイザーズ(https://www.strategy-advisors.co.jp/)によ
り、当社に関するスポンサードリサーチレポートが発行されましたので、お知らせいたしま
す。

当レポートは、投資家の皆様への情報提供を目的として同社に作成を依頼したものです。
当社のビジネスモデルである、建物を持たずに、土地のみに投資を行う独自の不動産投資手
法である JINUSHI ビジネスの誕生のきっかけや、競争優位性、事業戦略、中長期展望とい
った情報をわかりやすくまとめられております。

詳細につきましては、次ページ以降をご参照ください。




以上




【本件に関する問い合わせ先】
地主株式会社 IR 広報室(山下・海﨑) TEL:03-5220-2902
地主 | 3252(東証プライム)

Company Report 株式会社ストラテジー・アドバイザーズ
藤野 敬太
2024 年 4 月 9 日


投資家・テナントに支持される JINUSHI ビジネ 株価・出来高

スで地主リートの成長とともに日本の大地主へ
(円) (千株)
出来高(右軸) 株価(左軸)
2,600 600
2,500


2,400

2,300
2,200 300
地主(以下、同社)は、自ら建物を建てず「土地のみに投資」をする、国内唯一の底地 2,100


に特化した不動産金融商品メーカー。多種多様なテナントと 20~50 年程度の定期借地
2,000

1,900

契約を締結し、仕入れた土地を契約に基づく長期安定のキャッシュ・フローを得られる底地 1,800 0


として開発。子会社が運営する私募リート「地主プライベートリート投資法人(以下、地主
リート)」で長期にわたる「安定地主」として保有するとともに、年金基金や生損保等の機 出所:ストラテジー・アドバイザーズ

関投資家に投資機会を提供している。底地をつくる機能と、「安定地主」として長期に底
主要指標
地を保有し運用する機能の双方を有するのが、同社の JINUSHI ビジネスである。
株価(4/5) 2,551
創業者で前社長の松岡哲也取締役は、前職での商業施設開発の経験から、不動産業
年初来高値(3/28) 2,563
界では非常識とされた「土地のみに投資」をする JINUSHI ビジネスを着想し、同社を設
立。西羅弘文代表取締役社長とともに今までになかった底地マーケットの創出・拡大に注 年初来安値(2/13) 2,102

力してきた。2017 年の地主リートの運用開始により、地主リートの成長とともに「日本の大 52週高値(24/3/28) 2,563
地主」を目指すビジネスモデルを確立した。 52週安値(23/8/20) 1,842

同社の「企業 DNA」は「JINUSHI ビジネスのパイオニアとしての矜持」と言えよう。この矜持 発行済株式数(百万株) 18.2

のもと、創業来約 20 年超にわたって積み上げてきた「信頼性を担保するトラックレコード」 時価総額(十億円) 35.8
と、「安定地主としての地主リート」が最大の模倣困難なリソースであり、他社の追随を許さ EV (十億円) 75.7
ない。
自己資本比率(23/12、%) 30.9
社名変更と同時期に公表された中期経営計画では、最終年の 2026 年 12 月期の当 ROE (23/12、%) 15.1
期純利益 70 億円、地主リート資産規模 3,000 億円を目標としている。業績面では、こ PER (24/12 会予、倍) 8.4
の目標値に対する進捗を見ていくこととなろう。
PBR (23/12 実績、倍) 1.1
同社の株価は、新型コロナ禍が始まった 2020 年の下落で底を打った後は緩やかに切り 配当利回り (24/12 会予、%) 3.3
上がって推移してきたが、バリュエーションは過去 5 年で低い水準に留まっている。底地マー
ケット及びそのパイオニアとしての同社の認知度が上がるにつれて、バリュエーションの上昇を
出所:ストラテジー・アドバイザーズ
伴いながら、同社の優位性が株価に反映されていくと考えられる。


日本基準-連結

決算期 売上高 前年比 営業利益 前年比 経常利益 前年比 純利益 前年比 EPS DPS

(百万円) (%) (百万円) (%) (百万円) (%) (百万円) (%) (円) (円)

20/12 29,886 n.a. 2,420 n.a. 2,157 n.a. 1,644 n.a. 89.9 25.0

21/12 56,177 n.a. 5,475 n.a. 5,002 n.a. 3,124 n.a. 170.9 50.0

22/12 49,887 -11.2 6,411 17.1 5,943 18.8 3,641 16.5 199.2 55.0

23/12 31,597 -36.7 6,154 -4.0 5,718 -3.8 4,709 29.3 267.8 55.0

24/12 会社予想 55,000 74.1 8,200 33.2 7,300 27.7 5,000 6.2 304.1 85.0

注:決算期変更で20/12期は9カ月決算のため20/12期と21/12期の前年比は不可。出所:会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成


地主 | 3252(東証プライム)


目次

1. 底地マーケットのパイオニアの地位を確立した不動産金融商品メーカー ............................................................................. 4

2. 西羅社長から見た地主の生い立ち ..................................................................................................................... 5

3. 経営戦略論の視点からの地主の事業戦略 ........................................................................................................... 8

1)マイケル・ポーターのポジショニング理論からのアプローチ ........................................................................................ 8

2)リソース・ベースト・ビュー(RBV)からのアプローチ ............................................................................................ 9

3)地主が持つ模倣困難性の高い 2 つのリソース ................................................................................................. 9

4)模倣困難性の高いリソースを実現する組織.................................................................................................. 10

5)フィリップ・コトラーの競争地位別戦略からのアプローチ ....................................................................................... 12

6)他社が同質化戦略を仕掛けてこない理由 ................................................................................................... 12

4. 底地に特化した JINUSHI ビジネス .................................................................................................................. 13

1)JINUSHI ビジネスの前提:定期借地権とは何か .......................................................................................... 13

2)JINUSHI ビジネスの強み ..................................................................................................................... 14

3)JINUSHI ビジネスのプロセス(4 つのステップ) ............................................................................................ 15

4)JINUSHI ビジネスの収益構造 ............................................................................................................... 20

5. 国内唯一の底地特化型私募リート「地主リート」 ................................................................................................... 22

6. 当面の業績動向 ....................................................................................................................................... 26

7. 中長期展望 ............................................................................................................................................. 29

1)中長期的に好環境が続く見通し.............................................................................................................. 29

2)規律を維持した積極拡大フェーズの中期経営計画......................................................................................... 30

8. 同業他社との比較 ..................................................................................................................................... 32

9. 株価動向とバリュエーション ............................................................................................................................. 34

10.リスク要因............................................................................................................................................... 37

11.ESG の取り組み ....................................................................................................................................... 38





地主 | 3252(東証プライム)

エグゼクティブサマリー
国内で唯一の底地に特化 地主(以下、同社)は、自らは建物を建てず「土地のみに投資」をする、国内唯一の底地に特化した不動
した不動産金融商品メー 産金融商品メーカー。多種多様なテナントと 20~50 年程度の定期借地契約を締結し、仕入れた土地を契
カー 約に基づく長期安定のキャッシュ・フローを得られる底地として開発し、投資家に販売している。販売先の中心
は子会社が運営する国内唯一の底地特化型私募リート「地主プライベートリート投資法人」(以下、地主リ
ート)であり、長期に底地を保有する「安定地主」の役割を担うとともに、年金基金や生損保等の機関投資
家に投資機会を提供している。底地をつくる機能と、「安定地主」として長期に底地を保有し運用する機能の
双方を有するのが、同社の JINUSHI ビジネスである。

西羅社長から見た地主の 現代表取締役社長の西羅弘文氏は、創業者で取締役の松岡哲也氏とともに同社を育ててきた創業メンバ
生い立ち ーである。松岡氏は前職の兼松都市開発にて商業施設の開発案件に携わった後、2000 年に同社(当時
は日本商業開発)を設立した。前職で関わった案件の失敗経験から、不動産業界では非常識とされた「土
地のみに投資」をするビジネスモデルの着想に至った。創業当初は、不動産業界や借入先からの理解が進まず
に苦労したが、底地開発のトラックレコードを積み上げ、2017 年に地主リートの運用を開始した。地主リートを
成長軌道に乗せたことで、JINUSHI ビジネスは底地専業としては他の追随を許さないビジネスモデルとなった。

同社の「企業の DNA」は、「JINUSHI ビジネスのパイオニアとしての矜持」と言えよう。2022 年の社名変更を
経て、地主リートの成長とともに「日本の大地主」を目指す方針のもと、この DNA を組織に浸透させ、磨き続
ける限り、同社は大きく成長していくと予想される。

ポーター賞受賞企業。経 同社は 2023 年に「ポーター賞(https://www.porterprize.org/)」を受賞している。マイケル・ポーター
営戦略論の視点からの地 のポジショニング理論に基づくと、同社は、「不動産業界の人の多くがロマンを感じる不動産開発を一切行わず
主の事業戦略 に、底地の取り扱いに徹する」集中戦略と、「顧客である投資家に対して、底地特化の不動産金融商品という
形で、他にはない長期安定的な投資機会を提供する」差別化戦略に注力している。

地主の模倣困難性の高い 同社の模倣困難性の高いリソース(経営資源)は「投資家からの信頼性を担保するトラックレコード」と、「長
リソースは「信頼性を担保 期保有者としてのテナントからの信頼感が絶大な安定地主の役割を担う地主リート」である。「トラックレコード」
するトラックレコード」と「地 は他社が一朝一夕に築くことができず、また、同社に追い着くことは不可能である。また、「地主リート」と同様の
主リート」 底地特化のリートを他社が始めても二番煎じとなってしまうため、他社のリートが投資家から選好される可能性
は低い。これらより、同社の優位性は今後も長期にわたって維持できると考えられる。

JINUSHI ビジネス JINUSHI ビジネスのプロセスのうち、「土地を仕入れる」、「テナントに土地を貸す」、「貸している土地を販売す
る」までは主に同社が行う。販売される底地の約 3 分の 2 は、連結子会社の地主アセットマネジメントが運用
する地主リートの資産に組み込まれ、安定的な資産に長期投資したいという投資家のニーズを満たす金融商
品として提供される。2017 年に運用を開始した地主リートは 8 年連続で増資し、2024 年 1 月時点の資
産規模は 2,216 億円、業界第7位まで拡大している。

業績と株価の見通し 同社の売上総利益の 7 割強が、底地の販売によるフロー収益によってもたらされるため、底地の販売動向が
業績を左右する。2026 年 12 月期の当期純利益 70 億円、地主リート資産規模 3,000 億円を目標とす
る中期経営計画が公表されている。業績面では、この中期経営計画の水準をもとに進捗を見ていくこととなろ
う。目先の 2024 年 12 月期については、大幅増収が計画されているが、前期末の販売用不動産の水準と、
前期からの順調な仕入状況からみれば、十分達成可能な水準にあると言えよう。

同社の株価は新型コロナ禍が始まった 2020 年に底を打った後は、短期的な上下はあるものの、徐々に切り
上がって推移してきた。一方でバリュエーションは過去 5 年の中でも低い水準に留まっている。同社のビジネスモ
デルの優位性に対する自信は 2022 年の社名変更にも表れているが、底地マーケット及び底地マーケットのパ
イオニアとしての同社の優位性に対する認知がまだ高くないことが課題と言える。これは、逆の言い方をすると、
認知度向上の余地が大きいことを意味していると言えよう。社名変更後、同社は IR を積極化させており、大
手証券会社の新規カバレッジも獲得し、売買代金も上昇してきている。認知が浸透していくにつれ、バリュエー
ションの上昇を通じて、同社の事業及びビジネスモデルの優位性が株価に反映されていくと考えられる。


地主 | 3252(東証プライム)


1. 底地マーケットのパイオニアの地位を確立した不動産金融商品メーカー
失敗から着想された 地主(以下、同社)は、国内唯一の不動産の底地に特化した不動産金融商品メーカーである。兼松都市
JINUSHI ビジネス 開発で商業施設の開発を行っていた松岡哲也氏が 2000 年に創業し、自身が手掛けた案件の失敗をもと
に、底地への投資に特化した JINUSHI ビジネスを着想した。

底地とは、「建物を所有する第三者(テナント)の借地権が設定されている土地」のことである。土地そのもの
の所有者と使用者が別になるため、底地は一般的な不動産と比べると制約が多く、流動性が著しく低いとされ
てきたが、1992 年の借地借家法改正により、地主の権利保護を強めた定期借地権の制度が整備された。

法律面の整備が進んでも、不動産業界では底地に特化すること自体が非常識で、なかなか受け入れられるこ
とではなかった。当時の金融機関の底地評価は、更地価格の半値程度であったようだ。それでも同社は、「正
しいことは必ず世に広まる」という信念のもと、底地マーケットの創出・拡大に注力し続けた。リーマン・ショックや
東日本大震災等を経て、底地所有により得られるキャッシュ・フローの長期安定性、つまり自然災害やマーケッ
トボラティリティに強い商品特性に光が当たり、底地の取引が増加していった。これに歩調を合わせて、同社も
底地マーケットのパイオニアとしての地位を確立していった。2017 年には地主プライベートリート投資法人(地
主リート)の運用を開始し、2024 年 1 月 10 月時点の運用残高は 2,216 億円となっている。

2007 年 11 月の名古屋証券取引所セントレックスに上場した当時の売上高 8,309 百万円、親会社株主
に帰属する当期純利益 498 百万円(08/3 期実績)から、2023 年 12 月期までの過去 15 年間に、売
上高は 3.8 倍、親会社株主に帰属する当期純利益は 9.5 倍になった。

図表 1. 地主の売上高・当期純利益の推移


20,000 80,000

18,000 70,000

16,000 60,000
14,000
50,000
12,000
40,000
10,000
30,000
8,000
6,437
20,000
6,000 4,709
3,606 3,177 3,641 10,000
4,000 2,685 3,124
1,864 1,958 1,645
2,000 0

0 -10,000

-2,000 -917 -20,000




当期純利益(百万円、左軸) 売上高(百万円、右軸)


注:決算期変更のため 20/12 期は 9 カ月決算。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益
出所:会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成



地主 | 3252(東証プライム)

社名変更に表れる「日本の 同社は、「JINUSHI ビジネスを通じて安全な不動産金融商品を創り出し、世界の人々の資産を守る一翼を
大地主」を目指す方針 担う。」を経営理念としている。

同社は 2022 年 1 月に、従来の「日本商業開発」から現在の「地主」に社名を変更した。「地主」というのは
元々一般的に使われている用語であるが、新しい意味と価値を持つ時代が来ることに確信を得て、ビジネスモ
デルを社名とした。これまで誰もビジネスとして取り組んでこなかったこと、そして流動性の低さゆえに、これまでマ
ーケットとして認識されてこなかった底地マーケットを創ってきたパイオニアとして、「社業、地主。」というスローガン
のもと、地主リートの成長とともに「日本の大地主」を目指す方針を明確にしている。

実質的に JINUSHI ビジ 同社の事業は、いくつかセグメントが分かれているものの、実質 JINUSHI ビジネスの単一モデルであることを踏
ネスの単一モデル まえ論じる。JINUSHI ビジネスの一連のプロセスのうち、「土地を買う(仕入れる)」、「土地を貸す(底地に
する)」、「貸している土地(底地)を売る」のプロセスは主に同社が行い、底地特化型私募リート「地主リー
ト」を通じて「投資家の資金を運用する」プロセスは、100%子会社の地主アセットマネジメントが担っている。

個人中心の株主構成 2007 年 11 月に名証セントレックスに上場した同社は、2014 年 12 月に東証一部に上場した(同時に名
証一部に指定変更)。東証一部上場の直前の 2014 年 9 月末時点では、松岡氏が 54.7%を占める株
式を保有していた。その後、徐々に保有比率を低下させており、2023 年 12 月末時点の松岡氏の保有比
率は 17.55%(自己株考慮後。合同会社松岡の保有分 5.56%を含めると 23.12%)となっている。ま
た、2023 年 12 月末時点の金融機関の保有比率は 13.54%、外国人の保有比率は 4.10%に留まり、
緩やかに低下傾向にあるものの、個人中心の株主構成が続いている。

図表 2. 地主の株主構成

区分 保有比率(自己株式考慮後)
22/12 期末 23/12 期末
個人その他 83.05% 74.30%
外国法人等 4.81% 4.10%
金融機関 9.93% 13.53%
その他の法人 1.27% 7.02%
その他(金融商品取引業者) 0.89% 1.00%
うち松岡哲也氏 31.37% 17.55%
うち松岡哲也氏(合同会社松岡の保有分を含む) ー 23.12%
うち西羅弘文氏 2.00% 2.23%


注:保有比率は発行済株式数から自己株式数を除いた株数を用いて算出
単元未満株は「その他(金融商品取引業者)」に含む
出所:会社資料


2. 西羅社長から見た地主の生い立ち
西羅弘文氏は奈良県出身で、1974 年生まれの 49 歳である。父親が商社勤務で、出張から帰ってくるたび
に海外の話をよく聞いていたことや、大学生時代に海外を訪れた先の商業施設(ショッピングセンター)に興味
を持っていたことなどのエピソードがあるが、何よりも、大学生時代に、知り合いのつてで、同社の創業者である
創業者と現代表取締役社 松岡哲也氏と出会ったことが西羅氏の人生に大きな影響を与えた。西羅氏の松岡氏に対する第一印象は、
長は同じ商社系不動産会 普通の方とは違う「おもろいおっさん」であり、松岡氏と働きたいと思うようになったという。こうした経緯から、西羅
社出身 氏は大学を卒業した 1998 年に、松岡氏が在籍する兼松都市開発に入社した。

兼松都市開発は、名前の通り、商社の兼松(8020 東証プライム)のグループ会社で、元々はマンション販
売を中心に展開していた。大阪府出身で 1961 年生まれの松岡氏は、1986 年の入社から数えて 10 年目



地主 | 3252(東証プライム)

の 1995 年に、商業施設を開発し賃貸を行う事業のプロジェクトを手掛けるようになっていた。借地の上に自
社所有の商業施設を建て、テナントに賃貸するというビジネスである。

ここで 2 つのことが起きる。

日本商業開発(現・地 ひとつは、バブル崩壊後の「商社冬の時代」が続いたことである。1990 年代、総合商社はそれまでの過剰な
主)の設立 投資がたたり、業績が軒並み悪化していたが、1997 年のアジア通貨危機でさらに打撃を受けた。兼松も多分
に漏れず業績が悪化し、1999 年に構造改革を実施して事業の選択と集中に踏み切った。その一環で、グル
ープの不動産部門である兼松都市開発も事業縮小を余儀なくされることとなった。松岡氏はこの機に独立する
道を選び、2000 年 4 月に日本商業開発(現・地主)を設立した。西羅氏は、同年 10 月に同社に入社
している(兼松都市開発が手掛けていた物件管理業務を同社が引き継いだこともあり、西羅氏は兼松都市
開発に籍を残し、同社と兼松都市開発間の円滑な業務引継ぎに注力。引継ぎ完了後に同社に入社)。

現在の JINUSHI ビジネ なお、独立の際に、兼松グループからの配慮で、兼松都市開発として手掛けられていた物件管理を同社が受
スの原点 託し、引き続き関与し続けることができた。すぐに売上計上できる仕事があるというのは、独立する者としては大
いに助かるものである。その中に、現在の JINUSHI ビジネスの構想につながる案件があった。

その案件は、滋賀県の大型ショッピングセンター案件であった。借りた 5,000 坪の土地の上に建物を建てて、
大手総合スーパーに貸すという、兼松都市開発在籍時に松岡氏が手掛けたものであった。兼松都市開発が
建物を所有するこの案件のテナントは、当時売上規模 1 兆円を誇る総合スーパーであったが、銀行の不良債
権処理とデフレ不況の煽りを受けて経営不振に陥り、その店舗から撤退することとなった。立地が良かったため、
後継候補のテナントは何とか見つかったものの、建物がそのままでは入らないと言って譲らない。交渉の結果、オ
ーナー側での建物改装の追加投資の負担やテナント賃料の減額を受け入れざるをえない状況に陥ってしまっ
た。顕在化した建物所有のリスクを一身に浴びてしまったことになる。

建物はそもそも経年劣化する。そして、特定の業種やテナント専用につくられた建物は、使用するテナントや業
種が変わると価値が失われ、莫大な追加費用がかかってしまう。他者が使用する建物を所有することはこれほ
ど恐ろしいことなのか・・・。この経験を通じて、松岡氏は「そもそも建物を持たずに土地だけを貸せば、失敗に至
らなかったのではないか」という発想を持つに至った。

現在の JINUSHI ビジネスが生まれた瞬間であった。

理解されない悔しさ 総合スーパー案件の失敗を通じて、底地に特化することで不動産投資のリスクを極小化するビジネスモデルが
正しいと確信を持つことができた。しかし、底地特化のビジネスモデルは、不動産業界ではまったく相手にされな
かった。

「不動産とは建物と土地がセットであるのが常識」、「建物を建てることが不動産開発のロマン」とされていたため
である。銀行も、建物と土地がセットでないと融資しない、もしくは価値を半値程度にしか評価しない有様であ
った。貸した土地が更地で返ってくることを確実なものとする定期借地権制度は整備されていたが、底地に関し
ては、借り手が圧倒的に有利な普通借地権と同様の評価しかなされていなかったためである。また、底地の所
有者は、個人地主や開発を前提とするデベロッパーが殆どであり、底地の流通マーケット自体が存在していなか
ったことも大きい。

松岡氏は、自身の著書「僕が不動産ビジネスであたり前だと思うことについて」にて、以下のように述べている。

「ロマンを滔々(とうとう)と語りながら土地の売買やビルの建設に手を出していると、リアリティがなくなって、不
動産投資のリスクはどんどん上がっていく。リスクが上がると、不動産投資は破綻をきたすことが多くなる。投資案
件が破綻した結果、リートなどに投資する一般投資家を巻き込み、不幸にしていくことにつながる。」

投資家を不幸にしないのが正しいビジネスであるはずなのに、自分たちが信じた底地特化のビジネスモデルの良
さが分かってもらえない。馬鹿にすらされてきた。そうした悔しい時間がしばらく続いた。



地主 | 3252(東証プライム)

リーマン・ショックが 同社は、会社設立から 7 年経った 2007 年に名古屋証券取引所セントレックスに上場した。この頃より、世
JINUSHI ビジネスへの理 の中に存在していない底地ビジネスの市場創出のためには、「自分達だけが良い商品と言っても伝わらない。他
解浸透の契機 人に所有してもらって、その良さを実感してもらうことが必要ではないか」、「良さを実感してもらえれば、底地保
有が投資機会になると知ってもらえるのではないか」と考え、意図的に、底地をつくっては外部へ販売し、底地マ
ーケットの創出に注力してきた。それでも、底地特化のビジネスモデルへの理解はなかなか進まなかった。そうこう
しているうちに発生したのが、2008 年のリーマン・ショックである。

多分に漏れず、同社も苦境に陥り、現預金が枯渇する寸前にまで追い込まれるほどであった。苦境を脱するに
は、とにかく保有している物件を誰かに買ってもらう必要がある。探しに探し当てた先が、誰もが知っている企業
のオーナー家の資産管理会社であった。こうした資産管理会社は資産運用の手段として不動産を保有してい
ることもあり、不動産の投資、運用の大変さやリスクを身をもって知っていた。そして、同社の底地投資の物件に
おいてテナント退去や借地料減額が発生していないこと、金融業界全体の信用収縮局面でもキャッシュ・フロ
ーの安定状態を維持できていることに気づいた彼らは、次のように言ったという。「なるほど。底地投資は素晴ら
しい」。

こうして、リーマン・ショックは、底地投資の高い安全性への理解の醸成と、底地特化のビジネスモデルの認知度
向上の契機となった。同様に、2011 年に発生した東日本大震災もまた、他の不動産関連投資と比べて、
JINUSHI ビジネスが「長期に安定し、マーケットボラティリティや自然災害にも強い」特徴を持っていることを知ら
しめる機会となった。

地主リート設立で、地主リ その後同社は、JINUSHI ビジネスの開発実績を積み上げていき、J リート等にも底地を売却するようになって
ートとともに「日本の大地 いった。2012 年には、年金基金向けの不動産私募ファンド「JINUSHI ファンド」を組成したほか、2014 年に
主を目指す」ビジネスモデル はケネディクス商業リート投資法人(現・KDX 不動産投資法人)にパイプラインサポート会社として参画する
を確立 など、リート運営のノウハウを獲得していった。

ノウハウと実績を蓄積していくのと合わせて、資産運用に関する許認可取得を進めていき、2016 年 4 月に地
主アセットマネジメントを設立し、西羅氏が地主アセットマネジメントの代表取締役社長に就任した。そして同
年 9 月に地主プライベートリート投資法人(地主リート)が設立され、2017 年 1 月に運用を開始した。

西羅氏が地主リートの責任者となってまず行ったことは、数カ月で意思決定者に直接アプローチできる信用金
庫や信用組合等約 300 社をまわったことである。出資同意を取り付けたのは 1 割程度と苦労したという。この
後も投資家及びレンダーとのコミュニケーションを深めていき、投資対象としての底地の魅力を伝えていった。それ
は言わば、投資機会としての底地マーケットをつくり上げていくことであり、地主リートの成長とともに「日本の大地
主」へつながる道であった。

社名変更と経営の承継 2022 年 1 月に、同社は「日本商業開発」から「地主」に社名を変更した。社名変更には、①磨き上げてきた
ビジネスモデルが、旧社名にある「商業開発」に当てはまらなくなった、②ビジネスモデル自体を社名にすることで
認知度を上げていく、という 2 つの意味が込められている。

初期の頃、同社が取り扱っていた物件は、住宅地に近接したスーパーやドラッグストアなどの商業施設、生活
必需品を扱う事業者に土地を貸すものがほとんどであった。同種の事業者向けも引き続き伸ばしていくが、今
後は、ホスピスや老人ホームなど、社会インフラを担う事業者含め、様々なテナント業種に積極的にアプローチ
していく方針を採るため、「商業開発」の範囲では収まらなくなってきたためである。

これまで同社は、JINUSHI ビジネスについて、あえて積極的な外部発信をしてこなかった。土地の取引自体は
大昔から行われてきたことであり、また、JINUSHI ビジネスのモデル自体はシンプルである。そのため、資金があ
る他社の追随や模倣を警戒していたためである。しかし、後述する通り、同社は、JINUSHI ビジネスが模倣困
難性の高いリソースに基づいた競争優位性を確立していることに確証を持つに至った。社名変更には、他社の
追随を許さないパイオニアとしてマーケットを拡大させていく、ここからは認知向上とともに JINUSHI ビジネスをま
すます拡大させていくという強い意志が込められている。



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社名変更と時を同じくして、経営の承継も始まっている。2022 年 3 月に、それまで代表取締役社長であった
松岡氏が代表取締役会長 CEO となり、同時に西羅氏が代表取締役社長 COO に就任した。2023 年 3
月には、松岡氏は代表権のない取締役に、西羅氏が代表取締役社長となり、西羅氏が経営全般に責任を
持つ体制となった。このように、着実に経営の継承が進んでいる。

トヨタ自動車が開発した生産管理手法「かんばん方式」は、「KANBAN」という英語となった。西羅氏の夢は、
地主であることに特化するモデルが「JINUSHI」という英語で通用するようにすることである。

企業の DNA 企業には DNA がある。企業の DNA とは、組織や社員全体に根付く独自の価値観、経営哲学であり、それ
らが企業の競争力の源泉となることが少なくない。創業者が熱い想いをもって起業し、その商品やサービスが世
の中に広く受け入れられた時に、企業は本格的な成長を始める。そして企業の成長過程において、創業者の
想いが企業の DNA へと進化していくと考えられる。また、途中で中興の祖が現れ、創業時の理念を進化させ
たり、新たな企業文化を植え付けたりするケースもある。コア・コンピタンス(企業の中核的な能力)は模倣困
難性の高いリソースによってもたらされるものであり、それを形成する有力な要因が企業の DNA であると考えら
れる。人が得意分野で勝負すれば勝てるように、企業も DNA に根差した領域で事業展開することが勝利の
方程式となる。

地主の DNA は 同社の生い立ちから、同社の「企業の DNA」は、「JINUSHI ビジネスのパイオニアとしての矜持」と言えよう。同
「JINUSHI ビジネスのパ 社は、過去の失敗案件の経験から、「底地に特化することで、テナントから入ってくる安定的な賃料をもとにした
イオニアとしての矜持」 不動産金融商品を提供する」という JINUSHI ビジネスの正しさの確証を得て、底地専業のパイオニアの地位
を確立した。しかし、それは、不動産業界としての非常識に挑み、華やかさが乏しいと業界の多くの人が考えて
いる地味な取引をひたすらに続け、地道に実績を積み上げていくことで成し得たものである。同社の DNA を紡
ぐ上で大切なことは、「大人であること」などを掲げる行動規範(https://www.jinushi-
jp.com/company/vision/)にも記され社内で徹底されている。

同社は、今後、地主リートの成長とともに「日本の大地主」としての地位を強固にしていく方針である。西羅社
長のもと、「パイオニアとしての矜持」が組織に浸透し続ける限り、同社の持続的な成長が期待されよう。


3. 経営戦略論の視点からの地主の事業戦略
地主は「ポーター賞」受賞 競争戦略論の第一人者として知られる経営学の権威であるマイケル・ポーター氏協力のもと 2001 年に創設
企業 され、各業界をリードする有力企業が受賞してきた歴史ある賞である「ポーター賞」を、同社は 2023 年に受
賞した。ここからは、マイケル・ポーターによる経営戦略論等を参考に同社の事業戦略を論じていく。


1)マイケル・ポーターのポジショニング理論からのアプローチ


地主は集中戦略と差別化 マイケル・ポーターは、ある業界の中で成功を収めるためには、明確なポジションを取ることが必要と説いている。
戦略に注力 具体的なポジションの取り方、競争優位の築き方として、①コスト・リーダーシップ戦略、②集中戦略、③差別
化戦略、の 3 つの基本戦略があるとし、いずれかに舵を切ることが不可欠と主張する。ポジショニング理論に則
ると、同社は②集中戦略と③差別化戦略に注力していると言える。

②集中戦略は、狭い範囲の特定市場(顧客セグメント、地域、特定商品等)で、経営資源を集中して競
争優位に立つ戦略である。競争優位を得るためには、競合他社と異なる選択すること、つまり、トレードオフが
不可欠となる。戦略の本質として、「何をやらないか」を選択することも重要である。同社は、不動産業界の大
半の企業が取り扱う建物、建築物の保有及び流通、多くの業界人がロマンを感じる不動産開発を一切やらな
いという選択をし、底地の取り扱いに集中している。

③差別化戦略は、幅広いターゲットを狙いつつも、低コストではなく、顧客が認知するユニークな付加価値を提
供することで競合に対して優位に立つ戦略である。他社が提供しておらず、顧客が対価を支払いたくなるような


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価値を提供する戦略、とも言える。同社の顧客は、テナントがついて長期安定のキャッシュ・フローを生み出す
底地に投資する投資家である。同社が運用する地主リートは、底地特化の不動産金融商品として国内唯一
であり、他にはない長期安定的な投資機会という価値提供を実現している。


2)リソース・ベースト・ビュー(RBV)からのアプローチ


地主のコア・コンピタンスは ポーターのポジショニング理論に対して、自社の経営資源(リソース)に着目する「リソース・ベースト・ビュー
「底地ビジネスとファンド業 (RBV)」と呼ばれるアプローチもある。ゲーリー・ハメル、C.K.プラハラードはコア・コンピタンス(他社に真似で
の高度な融合」 きない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な能力)を、ジョージ・ストークス、フィリップ・エバンス、ロ
ーレンス・シュルマンはケイパビリティ(バリューチェーン全体に及ぶ組織的能力)を、それぞれ重視する。同社の
場合、コア・コンピタンスは「底地をつくり長期に保有する底地ビジネスと、投資家に安定的な投資機会を提供
するファンドビジネスの高度な融合」、ケイパビリティは「仕入から運用までの JINUSHI ビジネスの一連のプロセ
ス」である。

一方、 RBV の大家であるジェイ・バーニーは、コア・コンピタンスもケイパビリティも広義のリソースに含めて論じ、
その上で、自社のリソースがどのくらいの強みになるかをチェックするフレームワークとして VRIO を提唱している。
バーニーは、自社のリソースの有効活用可能性に関する評価軸として、「経済価値<Value>」、「希少性
<Rarity>」、「模倣困難性<Imitability>」、「組織<Organization>)」を挙げている。VRIO は、これ
ら 4 つの評価軸の頭文字をとったものだが、バーニーはこの中でも特に、「模倣困難性」があり、「組織」による
裏付けがあるリソースが、競争優位に資するとしている。


3)地主が持つ模倣困難性の高い 2 つのリソース


リソースの模倣困難性が高いか低いかは、「模倣がそもそも不可能か」、「模倣しようとすると莫大なコストが必
要になるかどうか」で評価される。同社にとって模倣困難性の高いリソースは、①不動産金融商品に対する投
資家からの信頼性を担保するトラックレコード、②長期安定保有者としてのテナントからの信頼感が絶大な安
定地主の役割を担う地主リートの存在である。これらの強力なリソースが、「底地をつくり長期に保有する底地
ビジネスと、投資家に安定的な投資機会を提供するファンドビジネスの高度な融合」という同社の競争優位の
源泉となっている。

① 不動産金融商品に対する投資家からの信頼性を担保するトラックレコード

投資家からの信頼性を担 同社は仕入れた土地にテナントをつけた底地を、利回り商品として投資家に提供している。同社が提供する金
保するトラックレコード 融商品はローリスク・ミドルリターンであり、社債に代替する性格を持つ金融商品である。

特に同社が開発する「底地」は、変動要素が他の不動産投資商品と比較し圧倒的に少なく、長期安定した
商品としての高い優位性を持つ。また、もし他社が真っ向から競合する「底地」を提供しようとしても、建物のデ
ザイン力やデベロッパーとしての開発能力で差をつけることができないため、有利な利回りを提供する以外に差
別化を図る方法がない。そして、投資家に有利な利回りを提供するためには、同社より安く土地を仕入れる
か、同社より高い賃料をテナントから獲得するしか方法がなくなる。結局は、仕入またはテナント付けの際に、土
地の売り手またはテナントに対して同社より悪い条件で交渉せざるを得ず、同社との競争で有利に立つことは
難しい。仮に、同社とまったく同じ商品を提供できるとしても、投資家はトラックレコードのある方を優先する。同
社は 20 年超の底地開発実績や約 8 年の地主リートの運用実績といった長期のトラックレコードがあり、同社
の商品が選好されるだろう。





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このように、底地に特化した金融商品に限れば、同社以上の有利な条件の競合商品は表れにくいことになる。
さらに、資本市場の動向の影響を受けない私募リートの形態であり続けることが、長期安定保有を目的とする
投資家にとっては好ましく、更なる信頼性の向上につながっている。

② 長期保有者としてのテナントからの信頼感が絶大な安定地主の役割を担う地主リート

テナントからの信頼性が絶 テナントの立場で考えれば、借地料が同じであれば、本来、底地の所有者は誰でも構わないはずである。ところ
大な地主リート が、実際には、「貸主が誰か」が重要なファクターとなる。それは、長期にわたる契約ということから、「契約の途中
で借地料を始めとした条件が改悪される可能性はないか」、「契約の途中で貸主が変わる可能性はないか」、
「貸主が変わることで重要な拠点を失う可能性があるのではないか(立ち退きリスク)」という不安がテナントに
残るためである。

テナントが感じるこうした不安は、貸主のネームバリューが高いことだけでは払拭できない。ネームバリューがある
企業ほど、価格交渉力の関係から、将来、条件変更を言ってくるのではないかという不安が強まることも考えら
れる。また、不動産デベロッパーが貸主となった場合、デベロッパーの主たる事業は「不動産開発」であるため、
テナントは常に再開発等により「拠点を失う」懸念を持ち続けることになる。

こうしたテナントの不安を払拭する唯一の材料は、「契約満了の際は既存テナントとの再契約を第一に考える」
といった明確な方針と、方針に偽りがないことを保証する「条件変更を言われることはなかった」といったような過
去の実績である。創業来 20 年超の底地取引に関する同社の実績は、方針に則って運営されてきたことを明
確に示しており、「同社および地主リートは、契約通り借地料をしっかりと払っていれば、地主としてうるさいことは
一切言わない。信頼のおける安定地主であり続けてくれる。」といったテナントの安心感向上につながっている。
底地の買い手である同社、及び長期安定の保有者となる地主リートの存在が、「誰が底地を保有しているの
かが分からない」というテナントの不安の払拭し、他社ができない信頼の確立に大きく寄与している。

なお、西羅社長が社長に就任した際、真っ先に行ったのが、テナント回りであったという。そこでは、テナントは同
社のパートナーという位置づけであることと、同社の JINUSHI ビジネスが、テナントと投資家の双方にとってメリッ
トのある仕組みであることを説明していったとのことで、結果として仕入の増加につながっているようである。

以上の 2 つのリソースは、他社が一朝一夕に築くことができず、また、同社に追い着くことは不可能であり、これ
らの模倣困難性の高いリソースに裏付けられた優位性は今後も長期にわたって維持されよう。そのため、底地を
つくるビジネスと、投資家に安定的な投資機会を提供する地主リートが相互に関わり合いながら、持続的な事
業成長を続けていく蓋然性が高いと考えられる。


4)模倣困難性の高いリソースを実現する組織


非常識なビジネスモデルに 経営に必要なリソースである「モノ」が「仕入れる土地」、「カネ」が「不動産金融商品への投資資金」のことだと
面白さを感じる人が集まる するなら、「モノ」と「カネ」は、上に挙げた 2 つの模倣困難性が高いリソースによってもたらされる状況にあると言
組織づくりも、模倣困難性 えよう。ただし、それらは、一連の取引を実行する「ヒト」がいなくては成り立たない。
の高いリソースを磨き上げ
同社における中核的な人材層は、JINUSHI ビジネスの土地の仕入から販売までのプロセスの全取引を実行
る要因
する営業担当であり、この営業担当の層を厚くすることが成長には欠かせない。ところが、前述の通り、底地特
化の同社のビジネスモデルは不動産業としては非常識であるため、関わろうとする人がそもそも集まりにくいという
問題を抱えることになる。実際、同社は新卒採用も行っているが、不動産会社と併願で応募してくる人は少な
く、投資運用業界や商社志望の人、営業志望の人が多いとのことである。こうした状況を受け、同社は、「土
地のみに投資する」というビジネスコンセプトに共感でき、JINUSHI ビジネスのビジネスモデルに面白さを感じる
ことができ、「もっと色々なことができる」と考えられる人を厳選して採用している。厳選することも企業の DNA の
浸透のしやすさを重視する同社の姿勢を表している。




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なお、2023 年 12 月期末時点の 95 人の従業員の 4 割程度が、JINUSHI ビジネスの土地の仕入から販
売までのプロセスの全取引を実行する営業担当とみられる。そして、やればやるだけ評価され報酬に反映される
ようになっている。2023 年 12 月期末時点の同社単体の平均年収は 1,718 万円である。1 年前のデータと
なるが、2023 年 3 月の東洋経済オンライン「平均年収が高い会社ランキング」
(https://toyokeizai.net/articles/-/660328?page=2)では、平均年収は 1,694 万円で 4 位に
入っている。また、不動産金融の上場企業と比べても、他社が高くても 1,000 万円を超えるかどうかの水準で
あるので、同社の平均給与が圧倒的に高いことが分かる。また、新卒の初任給は月 50 万円(別途住宅補
助 10 万円)となっており、上場企業ではトップという調査もある。高給でないと人が来ないというわけではなく、
好待遇と言える水準の年収を出せるだけの利益を出していることと、それを可能とする JINUSHI ビジネスその
ものの収益性の高さに着目したい。

このように、非常識とされるビジネスモデルに面白みを感じる人を、厳選しながらも、この規模で取り揃えるのは
容易なことではない。このこともまた、模倣困難性をさらに高める要因となっていると考えられる。


図表 3. 従業員数(左軸)及び平均年収(右軸)の推移(人、万円)

1,921 2,000
150 1,741
1,694 1,697 1,718
140 1,800
1,559
130 1,501 1,600
120 1,369
110 1,400


83 1,200
90 1,000 981

80 69 6 1,000















15/3期 16/3期 17/3期 18/3期 19/3期 20/3期 20/12期21/12期22/12期23/12期
ニューリアルプロパティ JINUSHIUSA
地主フィナンシャルアドバイザーズ 地主アセットマネジメント
地主 単体平均年収(万円)(右軸)

注:20/12 期は 9 カ月決算
平均年収は単体
17/3 期に人数が急増しているのはニューリアルプロパティとその子会社の連結子会社化によるところが大きい
出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成





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図表 4. 不動産金融の上場企業との平均年間給与の比較

企業名 コード 決算期 平均年間給与
(万円)
地主 3252 23/12 1,718
サムティ 3244 23/11 761
サンフロンティア不動産 8934 23/03 720
トーセイ 8923 23/11 847
フージャースホールディングス 3284 23/03 611
いちご 2337 23/02 1,006
日本エスコン 8892 22/12 685

注:各社とも単体の金額
日本エスコンは 24/03 期に決算期変更のため、23/12 期の金額はない
出所: 各社有価証券報告書よりストラテジー・アドバイザーズ作成


5)フィリップ・コトラーの競争地位別戦略からのアプローチ

他社は同質化戦略を採っ フィリップ・コトラーは、「同業界内における競争上の地位により、取るべき戦略の定石が異なる」という「競争地
てくるはずだが・・・ 位別戦略」を提唱している。コトラーは、業界内の地位の類型としてリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチ
ャーの 4 分類があるとし、それぞれの競争地位に応じた戦略目標があるとしている。

不動産業界において底地に特化する同社は、ニッチャーにあたる。ニッチャーの採るべき戦略は、ポーターのポジ
ショニング理論における「集中戦略」に近く、局所的ナンバーワンの地位を確立し、競合の参入を防ぐことが定
石となる。これに対して、他社がどのような戦略を採ってくるかというのも重要な論点となろう。コトラーの戦略論
の定石に則れば、底地特化のビジネスモデルが魅力的で有望なものであれば、業界のリーダーならずとも、他社
は、同社のビジネスモデルを模倣する同質化戦略を採ってくるはずである。


6)他社が同質化戦略を仕掛けてこない理由

他社は底地特化を模倣し 同社のビジネスモデルは、資金さえあれば、追随・模倣が可能と言える。既存の不動産企業であれば、土地の
てこない 情報を得るためのネットワークや取引上の信用力もあって参入しやすく思われるが、JINUSHI ビジネスを前面
に打ち出して参入してきている企業は見当たらない。その要因として、以下の 3 点が考えられる。

① 不動産業界におけるマインド

不動産業界に身を置く人のほとんどは、「地図に残る仕事」という言葉に代表されるように、建物や街をつくりだ
すことが不動産業であると考えている。建築やエリア開発こそが不動産業の醍醐味であり、ロマンであるというマ
インドを持つ人が多い。このようなマインドを持つ人の目には、土地を仕入れてテナントをつけて販売することだけ
に特化することは、付加価値がないように映る。底地特化は不動産業としては非常識であると捉える人もいる
ようで、そのような業界人は、そもそも底地の取り扱いに特化しようとしない。

② キャッシュ循環の問題



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不動産業界では、「不動産の保有期間は短いほど良い」と言われている。物件を買い取って保有すると、その
物件に資金が「張り付く」ことになり、必要な運転資金が増加する。そのため、手数料が収益源となる仲介や、
手離れの良い物件の販売が好まれる傾向が強い。特に中小不動産企業だと、物件を寝かせておくだけの資金
力が乏しいことが多い。同社は、「地主リート」が有力な売却先であり、キャッシュ循環の問題点を解決、地主リ
ートの資金調達力をむしろ強みとしている。

③ 目利き力で敵わないと捉えられている可能性

仕入の判断の段階において重要なのは、売却先の目線にあった額で販売できるかどうか、建物を建てるテナン
トが万が一撤退した時にその土地を他に転用できるかどうかといったことの判断である。こうした「目利き」の力
は、不動産業においては案件の経験量に裏打ちされると考えられており、20 年超の実績を積んできた同社を
前にして、目利きで敵わないと認識している可能性がある。なお、同社の場合、20 年超の実績もさることなが
ら、物件の買い手である地主リートをグループで抱えていることも、目利き力の向上につながっている。

以上の要因から、同業の不動産企業は、同社の「JINUSHI」ビジネスに対して同質化政策を仕掛けてこない
と考えられる。


4. 底地に特化した JINUSHI ビジネス

1)JINUSHI ビジネスの前提:定期借地権とは何か


1992 年施行の借地借家 JINUSHI ビジネスは、建物を持たずに土地だけに投資をすることで、建物所有に関連する様々なリスクを排
法が JINUSHI ビジネス 除し、安定的な収益を長期間にわたって享受する底地をつくり上げ、不動産金融商品として販売するモデルで
の法的根拠 ある。1992 年 8 月に施行された借地借家法の改正における借地権の取り決めが根拠になっている。

借家借家法において、借地権は、普通借地権と定期借地権に分類される。定期借地権は、当初定められた
契約期間で借地関係が終了し、その後は更新できないものであり、①一般定期借地権、②事業用定期借
地権、③建物譲渡特約付借地権の 3 種類がある。

同社が取り扱う案件は、主に事業用の建物を所有するために設定される、②事業用定期借地権に基づいた
ものが多く、JINUSHI ビジネスの前提となっている。一方、居住用の用途、例えば老人ホーム等のテナントとの
案件を行う際は、①一般定期借地権に基づいて対応することとなるが、契約の更新や建物の改築による借地
権の存続期間の延長をしないことや、建物買取請求権を行使しないことについての特約をつけることで、事業
用定期借地権を利用する場合と同様の設定になるようにしている。


図表 5. 借地権の種類

借地権 存続期間 利用目的 契約方法
定期借地権
一般定期借地権 ・公正証書等の書面で行う
50 年以上 用途制限なし
(法 22 条) [1]契約の更新をしない
事業用建物所有に限 [2]存続期間の延長をしない
事業用定期借地権 10 年以上 [3]建物の買取請求をしない

(法 23 条) 50 年未満 という 3 つの特約を定める
(居住用は不可)
・30 年以上経過した時点で建物を相当の
建物譲渡特約付借地権
30 年以上 用途制限なし 対価で地主に譲渡することを特約する
(法 24 条)
・口頭でも可




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・制約なし
普通借地権 30 年以上 用途制限なし
・口頭でも可



借地権 借地関係の終了 契約終了時の建物
定期借地権
一般定期借地権
(法 22 条)
期間満了による ・原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する
事業用定期借地権
(法 23 条)
・以下のいずれか
建物譲渡特約付借地 [1]建物は地主が買取る
権 建物譲渡による [2]建物は収去せず土地を返還する
(法 24 条) [3]借地人または借家人は継続して借家として住まうことが
できる
・以下のいずれか
[1]法定更新される [1]建物買取請求権がある
普通借地権 [2]更新を拒否する [2]買取請求権が行使されれば建物はそのままで土地を
には正当事由が必要 明け渡す
借家関係は継続される

出所:国土交通省ウェブサイト


2)JINUSHI ビジネスの強み


JINUSHI ビジネスの 3 底地に特化することで得られる JINUSHI ビジネスの不動産金融商品の特徴として、①追加投資が不要であ
つの特徴 る、②長期安定収益が見込める、③資産価値が下がりにくい、の 3 点が挙げられる。

① 追加投資が不要である

投資対象が土地のみであるため、土地の上に建つ建物の建設コスト及び所有コストはテナント負担となる。そ
のため、建物の保守、修繕、改装等のための追加投資を必要としない。このことは現在のインフレ局面でも有
利に働き、建築費や修繕費の上昇の影響を受けない。

② 長期安定収益が見込める

契約期間が 20~50 年と長期で、建物はテナントが投資するため、退去リスクが低く、長期にわたる安定収益
を見込むことができる。実際、これまでの開発実績は累計で 362 案件にのぼるがテナント退去事例は 1 件も
発生しておらず、借地料減額事例も、新型コロナ禍の時期に期間限定で対応した 1 件が発生したのみであ
る。

③ 資産価値が下がりにくい

契約終了時、テナントは更地で返還することが義務づけられており、流動性の高い更地で返還されてくるため、
資産価値が下がりにくい。建物とは異なり土地は経年劣化しないため、インフレ局面となり土地価格が上昇す
るなら、その分が含み益上昇となる(売却時のキャピタルゲインが拡大する)。

建物を含む不動産投資に 建物を含む不動産投資との比較で言うと、底地に特化することにより、JINUSHI ビジネスは、建物に由来する
比べて変動要素が少ない 様々な変動要素が排除された不動産投資に仕立てられている。JINUSHI ビジネスにおいて、通常の不動産
投資と同等に考慮しなくてはならないリスクは、金利変動リスクのみと言える。


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図表 6. 変動要素で見た通常の不動産投資との違い

変動要素となりうる 通常の不動産投資 JINUSHI ビジネス
項目 (建物+土地) (土地のみ)
・賃料変動リスクや空室リスクがあり ・賃料変動リスクや空室リスクがなく
賃貸収入
収入が変動する 長期にわたり収入は変動しない
・左の費用の大半が不要である
・日常的に以下の費用がかかる
販促・広告宣伝費 リーシング 清掃費
水道光熱費 保険料 警備費 修繕費 ・土地にはそもそも減価償却がない
賃貸原価
・減価償却費がかかる ・賃貸原価は土地の固定資産税のみ
・固定資産税がかかる 増税分は固定資産税連動条項により
賃料に加算
(固定資産税連動条項)

営業外費用 ・金利変動リスクがある ・金利変動リスクがある

・リニューアルやリノベーションで追加費用が
かかる ・追加費用や追加の設備投資が不要
その他支出
・追加の設備投資が必要になることがある
・災害発生時の対応費用が必要

出所:会社資料にストラテジー・アドバイザーズ加筆


3)JINUSHI ビジネスのプロセス(4 つのステップ)


JINUSHI ビジネスは、①土地を買う(仕入れる)、②土地を貸す、③貸している土地を売る、④投資家の
資金を運用する、の 4 つのステップを踏むことで、資金の回転を継続させながら保有不動産を増やしていくモデ
ルである。

① 土地を買う(仕入れる)

土地を買う際のポイントは、仕入リスクの低減である。そのため、原則、具体的にテナントが決まってから土地を
低減された仕入リスク
取得する。その際、万が一テナントが退去した場合でも、他のテナントを見つけやすい、または、第三者への転
売が容易であるといった、長期にわたって需要がある、転用性が高い土地であることを条件としている。また、不
動産金融商品としての売却を想定しているため、買い手の目線に合った利回りが確保できる可能性が高い案
件であることも重視している。

土地を買う場合には、相対取引であることがほとんどだが、土地情報の取得手段は、金融機関や仲介会社等
からの入手のほか、テナントからの持ち込み、住宅デベロッパーからの共同開発提案等多岐にわたっている。テナ
ントからの持ち込みは同社独自の手法であり、テナントと長年にわたり良い関係性を築いてきている証左であ
る。また、土地建物双方を保有する取引先から土地のみを取得し、土地のみのオフバランスを図る案件もあり、土地所
有者が抱える課題を解決するソリューションとして価値提供しているという側面もある。





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図表 7. 仕入の推移


58,800 60,060
60,000 83



50,000 46,000 70
43,493
41,995

38,388
40,000 35,500

28,192
30,000 40 37 40


20,400 30
20,000
16,000 24

10,000



20/3期 20/12期 21/12期 22/12期 23/12期
仕入額(契約ベース)(百万円、左軸) 販売用不動産残高(百万円、左軸)
契約件数(件、右軸)

注:決算期変更のため 20/12 期は 9 カ月決算
出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成



② 土地を貸す

解約リスクも低減 テナントとは、20~50 年程度の長期の定期借地権設定契約を締結する。これにより、同社は土地のみを所
有し、建物はテナント負担で建設、所有されることになる。そのため、同社としては、建物の保守や修繕等の追
加投資を必要としない。

テナントとの契約において、原則 10 年以上の中途解約を不可としているため、解約リスクは低減されている。
また、契約期間中はテナントからの借地料改定の申し入れも原則不可としており、安定収益の確保の可能性
を高めている。さらに、事業用定期借地権の契約をベースとしているため、契約終了時に建物買取請求権が
発生しない、すなわち、更地返還義務がある契約となっており、資産価値が下がりにくくなっている。

一方、テナントとしても、出店の際の初期コストを抑えることができるなど、同社から土地を借りることのメリットは
大きい。また、上述の通り、テナントが保有する土地をオフバランスした上で、その立地で引き続き事業を継続
することも可能であるため、財務体質改善、財務の効率性向上を図ることもできる。こうして同社の JINUSHI
ビジネスの仕組みを利用するテナントは、2023 年 12 月期時点で 125 社まで増加している。





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図表 8. テナントの社数の推移(社)
























20/12期 21/12期 22/12期 23/12期

出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成



社数ベースでいうと、2023 年 12 月期の 125 社のテナントのうちの 24 社を占めるスーパーを筆頭に、ドラッ
グストア、カーディーラー、飲食店、ホームセンター、飲食店、家族葬といった業種のテナントが上位にくる。なお、
同社は現在、ホスピス、老人ホーム、家族葬、学校・保育園、病院・健診センター、物流・データセンターといっ
た社会インフラを担う事業者のテナントの拡大を目指している。





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図表 9. テナントの業種別内訳(2 社以上の業種)

業種 社数 割合 主なテナント(()内は開示のある店舗数)
スーパーマーケット 24 19.2% コーナン商事(34) ライフコーポレーション(21)
スギホールディングス(18) ウエルシア薬局(13)
ドラッグストア 11 8.8%
中部薬品(11)
カーディーラー 11 〃 トヨタユーゼック ビッグモーター
飲食店 10 8.0% くら寿司
ホームセンター 8 6.4% コーナン PRO スーパービバホーム
家族葬 7 5.6%
家電量販店 6 4.8% ケーズデンキ ジョーシン ヤマダ電機
ホテル 5 4.0%
工場・倉庫 4 3.2%
病院・健診センター 4 〃
学校・保育園 4 〃
スポーツクラブ 3 2.4%
ブライダル 3 〃
ディスカウントストア 3 〃
物流・データセンター 2 1.6%
ガソリンスタンド 2 〃
住宅展示場 2 〃
ホスピス 2 〃

注:「主なテナント」にて店舗数の開示があるのは 10 案件以上のテナントを掲載
出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成



このように、同社はひたすら土地を買って、テナントに貸すことを繰り返してきた。その結果、2023 年 12 月末
時点で、累計 362 案件、約 4,664 億円の開発実績を積み上げてきた。開発実績のテナント業種の上位は
小売業に属する業種が多いが、最も多いスーパーマーケットでも 30%を下回っている。また、地域的には東名
阪で約 85%を占めるが、一極集中しているわけではない。





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図表 10. 開発実績の業種別構成比


スーパーマーケット 26.9%
ホームセンター 19.7%
ドラッグストア 9.3%
カーディーラー 9.1%
ホテル 6.1%
家電量販店 4.6%
ブライダル 1.9%
複合商業施設 1.9%
ショッピングモール 1.9%
家族葬 1.8%
自動車展示場 1.5%
ディスカウントストア 1.4%
飲食店 1.4%
学校・保育園 1.3%
病院・健診センター 1.3%
ホスピス 1.2%
工場 0.9%
物流 0.8%
その他 7.0%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30%

出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成




図表 11. 開発実績の地域別構成比



東京圏 44.6%

大阪圏 27.7%

名古屋圏 12.2%

九州 3.9%

米国 0.8%

その他 10.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成





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③ 貸している土地を売る

上述の①、②のステップにて長期安定のキャッシュ・フローを生み出す不動産金融商品として仕立てた後は、地
開発した物件の約 3 分の
主リート等のファンドや投資家に売却する。
2 が地主リートへ売却
同社から地主リートへの売却比率(スポンサーパイプラインサポート比率)は、65.6%である。内訳は、地主
リートに直接組み込まれるものが 30.8%、ブリッジスキームによるものが 34.8%である。ブリッジスキームとは
「最終的な売却先が決まっており、別法人が一時的に保有する仕組み」のことであり、地主アセットマネジメント
が指定する第三者(実質、地主リートと推測)に対し取得に係る優先交渉権を付与するものである。三井
住友ファイナンス&リースの 100%子会社の SMFL みらいパートナーズや、みずほリースの 100%子会社のエ
ムエル・エステートといったリース会社が間に立っている。

なお、同社では、資金の回転を重視して、土地の仕入れから販売までの期間の目安を 1 年~1 年半程度に
設定している。

④ 投資家の資金を運用する

100%子会社の地主アセットマネジメントが運用する地主リートは、国内唯一の底地特化型の私募リートであ
地主リートでの運用
る。こちらは、章を変えて「地主リート」のところで詳述する。


4)JINUSHI ビジネスの収益構造

収益はフロービジネスとスト 同社の収益はフロービジネスの収益とストックビジネスの収益に分類できる。両者の売上総利益率に大きな差
ックビジネスに区分 があることを考慮すると、両者の収益インパクトについては、売上総利益の額で比較するのが好ましい。2023
年 12 月期における売上総利益に占める割合は、フロービジネスの収益が 73.7%、ストックビジネスの収益が
26.3%である。底地の販売によるフロービジネスの収益の割合が多く、底地の販売の動向次第で業績は大き
く変動する。

フロービジネスの収益は、不動産売却収益と不動産売買の仲介手数料で構成される。不動産売却収益が
大半であり、土地の売却状況や、売却した個々の案件の収益性の差により、変動が大きい。ただし、同社が
開発する金融商品の競争力は高く、買い手の需要も旺盛であり、売却ができない心配はほぼないようだ。

ストックビジネスの収益は、販売用不動産賃貸収益、アセットマネジメント収益、長期賃貸収益、その他収益
(プロパティマネジメント、サブリース、運営管理)で構成される。安定的な収益源として積み上げていく方針を
採っており、売上総利益の約 26%がストックビジネスによってもたらされている。同社は長期的には、安定した
ストック収益により固定費を賄うことで業績の安定性向上、株価のバリエーション向上を目指している。





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図表 12. ビジネス形態別売上総利益の推移

10,857 10,499 100%
11,000
9,263 90%
10,000 9,100
9,000 80%

8,000 70%
7,000 60%
8,469 7,732
6,000 5,019 50%
7,032 7,753
5,000
40%
4,000 3,874
26.3%
22.0% 30%
3,000 22.7% 22.8%
16.3%
20%
2,000
2,388 2,766 10%
1,000 2,068 1,509
1,144
0 0%
20/3期 20/12期 21/12期 22/12期 23/12期
ストックビジネス(百万円、左軸) フロービジネス(百万円、左軸)
ストックビジネスの構成比(右軸)

注:決算期変更のため 20/12 期は 9 カ月決算
出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成




図表 13. フロービジネスの売上総利益の推移

10,000 100%

9,000 8,469 90%
7,753 7,732
8,000 80%
7,032
7,000 70%

6,000 60%

5,000 50%
3,874
4,000 40%
27.2%
3,000 30%
18.0%
2,000 13.6% 14.3% 20%
9.8%
1,000 10%

0 0%
20/3期 20/12期 21/12期 22/12期 23/12期
売上総利益(百万円、左軸) フロービジネスの売上総利益率(右軸)


注:決算期変更のため 20/12 期は 9 カ月決算
出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成


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図表 14. ストックビジネスの売上総利益の推移

4,000 100%
86.2% 86.1%
82.0% 90%

80%
3,000 2,766
70%
2,388
272 60%
2,068

2,000 768 50%
335 1,509 880
40%
1,144 47
30%
1,000 528

1,648 1,570 20%
1,307
894 815 10%

0 0%
20/3期 20/12期 21/12期 22/12期 23/12期
販売用不動産賃貸収益(百万円、左軸) アセットマネジメント収益(百万円、左軸)
長期賃貸収益(百万円、左軸) その他収益(百万円、左軸)
売上総利益率(右軸)

注:決算期変更のため 20/12 期は 9 カ月決算
出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成


5. 国内唯一の底地特化型私募リート「地主リート」
低リスク・低ボラティリティ 100%子会社の地主アセットマネジメントが運用する地主リートは、国内唯一の底地特化型リートである。商
の地主リート 品コンセプトとしては、財務安定性を重視して 20~40%程度の LTV 水準で、分配金利回りを年率 3.5%
程度に想定している。実績としては、運用開始以降、LTV30%程度、分配金利回り年率 4.0%程度で運
用されてきており、8 次募集後の 2024 年 1 月 10 日時点でも LTV、分配金利回りとも、これらの水準を維
持している。また、同時点での固定借入比率は 100%、平均残存借入期間は 5.3 年となっている。

このように、エクイティ投資でありながら、低リスク・低いボラティリティの特徴を持ち、社債等の円建債券と従来の
私募リートの間に位置する、従来の金融商品にはない商品性となっている。

なお、資本市場の変動リスクを回避するため、同社では地主リートの上場を企図しておらず、あくまで私募リート
として運用を継続していく方針である。そうすることで、長期安定的な JINUSHI ビジネスとの高い親和性を維
持していく。なお、上場しないため、投資口価格は決算期末の鑑定評価額等によって決定される。





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図表 15. 商品性で見た地主リートのポジション




出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成



8 次増資終了後の 2024 年 1 月 10 日時点で運用物件数は 154 物件で、運用資産のテナント業種別ポ
小売 3 業種への集中度が
ートフォリオは、スーパーマーケット(構成比 31.2%)、ホームセンター(同 27.4%)、ドラッグストア
高い地主リートのポートフ
(17.4%)の上位 3 業種で 76.0%を占めている。過去実績の上位 3 業種合計が 55.9%であることと比
ォリオ
較すると、上位 3 業種への集中度が高いポートフォリオとなっている。





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図表 16. 地主リートのポートフォリオ:テナント業種別及び地域別構成比


スーパーマーケット 31.2%

ホームセンター 27.4%

ドラッグストア 17.4%

カーディーラー 6.5%

家電量販店 6.1%

ホテル 2.6%

スポーツクラブ 1.7%

住宅展示場 1.1%

ガソリンスタンド 1.1%

自動車展示場 1.0%

その他(6業種) 3.8%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%

地主リート(2024年1月10日時点) 過去開発実績




東京圏 44.3%



大阪圏 29.4%



名古屋圏 15.6%



九州 5.8%



その他 4.9%



米国 0.0%


0% 10% 20% 30% 40% 50%

地主リート(2024年1月10日時点) 過去開発実績


出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成
2017 年の運用開始後毎 底地に特化した私募リートは他に存在していないため、他にはない投資機会を提供する金融商品として投資
年増資して資産規模拡大 家に受け入れられており、2017 年の運用開始以降、運用資産規模を拡大させてきた。



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図表 17. 地主リートの資産規模の推移

2,500 600

2,216


2,000
1,800


1,515
1,500


1,093

1,000












2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年

資産規模(億円、左軸) 投資家数(社、右軸) 物件数(物件、右軸)


出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成
地主リートの投資家分布 地主リートへの投資家は、2024 年 1 月 10 日時点で、事業法人等(構成比 36.2%)、信用金庫・信
用組合(同 26.9%)、中央金融法人(22.3%)が上位を占めている。2023 年 12 月末時点の私募リ
ート 54 投資法人の投資家構成と比較すると、事業法人等の保有が多い一方で、年金基金の保有が少な
い構成となっている。足元では、同リートを運用する地主アセットマネジメントが、年金基金と中央金融法人の
割合増加に注力しており、長期安定のキャッシュ・フローを生み出す底地の商品特性を踏まえれば、今後、こ
れらの投資家の割合の上昇が見込まれる。


図表 18. 地主リートの投資家構成

地主リート 私募リート(54 投資法人)
(2024 年 1 月 10 日時点) (2023 年 12 月末)
投資家 割合 投資家 割合
中央金融法人 22.3% 中央金融法人 29.0%
地方銀行 7.0% 地域金融機関 33.5%
信用金庫・信用組合 26.9%
事業法人等 36.2% 事業会社等 16.8%
年金基金 7.3% 年金 20.7%
地主 0.3%

出所: 会社資料、不動産証券化協会「私募リート・クォータリー」よりストラテジー・アドバイザーズ作成



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6. 当面の業績動向
2023 年 12 月期は大幅 2023 年 12 月期の業績は大幅減収になった点が目立つ。売上高は前期比 36.7%減の 31,597 百万円
減収だが当期純利益は期 と大幅減収であったが、営業利益は 6,154 百万円と同 4.0%減に留まり、親会社株主に帰属する当期純
初計画超過で増益 利益は 4,709 百万円と同 29.3%増となった。


2023 年 12 月期は期初 期初会社計画は、売上高 42,000 百万円(前期比 15.8%減)、営業利益 6,300 百万円(同
計画から減収予想だった 1.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は 4,200 百万円(同 15.3%増)であった。期初の段
階で、減収・営業利益減益を計画していたのは、前期の仕入が少なく、2023 年 12 月期初の販売用不動
産残高が前期初比 32.9%減で始まったためである。それでも、親会社株主に帰属する当期純利益を増益と
計画していたのは、固定資産の売却に伴う特別利益の発生を織り込んでいたためである。また、同社によれ
ば、特別利益により当期純利益の成長が見込めていたため、底地の販売量を抑制したようだ。

2023 年 12 月期の期中 2023 年 12 月期第 2 四半期決算公表時、会社計画は、売上高が 42,000 百万円から 32,000 百万
に会社計画修正 円(前期比 35.9%減)へ、営業利益が 6,300 百万円から 6,000 百万円(同 6.4%減)へ、親会社
株主に帰属する当期純利益が 4,200 百万円から 4,400 百万円(同 20.8%増)へそれぞれ修正され
た。大型案件等の売却、売却案件の想定以上の高い利益率、順調な仕入拡大による販売用不動産賃貸
収益の増加見込みにより、期初会社計画水準の利益の確保の目途が立ったとして、2023 年 12 月期に売
却を予定していた一部案件の売却時期を 2024 年 12 月期以降に変更することとなった。これが、売上高の
計画が大幅に減額された要因である。

仕入は好調で特別利益計 仕入は下期も順調に進み、2023 年 12 月期は前期比 2.86 倍の 58,800 百万円となり、2023 年 12
上もあり、当期純利益は 月期末の販売用不動産残高は前期末比 2.13 倍の 60,060 百万円となった。また、売上高こそ減ったが販
上方修正後計画を超過 売案件の利益率が高くて全体の利益率が改善したことや、期初より織り込まれていた固定資産の売却による
特別利益 1,489 百万円が計上されたことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は上方修正後の会
社計画をも上回った。


図表 19. 売上高・利益動向


(百万円) 20/12 21/12 22/12 23/12
CoE
売上高 29,886 56,177 49,887 31,597 55,000
前期比 n.a. n.a. -11.2% -36.7% 74.1%
営業利益 2,420 5,475 6,411 6,154 8,200
前期比 n.a. n.a. 16.5% -4.0% 33.2%
売上高営業利益率 8.1% 9.7% 12.9% 19.5% 14.9%
親会社株主に帰属する当期純利益 1,644 3,124 3,641 4,709 5,000
前期比 n.a. n.a. 16.5% 29.3% 6.2%
売上高当期純利益率 5.5% 5.6% 7.3% 14.9% 9.1%

注:決算期変更のため 20/12 期が 9 カ月決算のため、20/12 期と 21/12 期の前期比はなし
出所: 会社資料
2024 年 12 月期は増収 2024 年 12 月期について、同社は、売上高 55,000 百万円(前期比 74.1%増)、営業利益 8,200
増益を計画 百万円(同 33.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益 5,000 百万円(同 6.2%増)を計画し
ている。

図表 6 にある通り、2024 年 12 月期初の販売用不動産残高は前期初比 113.0%増であることに加え、
前期好調だった仕入状況が 2024 年 12 月期も継続するとして、大幅増収が想定されている。一方、前期
にあった 2018 年頃に仕入れた高利益率かつ大型の売却案件に相当する物件を想定していないために前期

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より売上総利益率は低下することを見込み、2024 年 12 月期の売上高営業利益率は前期比 4.6%ポイ
ント低下の 14.9%を計画している。さらに、前期にあった固定資産売却による特別利益も剥落するとしている
が、それでも、販売増による大幅増収が牽引して、親会社株主に帰属する当期純利益でも増益を確保できる
と同社は予想している。また、上記要因を考慮しても、2023 年 12 月期より前の各利益率を見れば、引き
続き高い利益率を維持しているといえよう。

ここから、2024 年 12 月期の業績の焦点となる大幅増収の確からしさを検証してみるが、ストラテジー・アドバ
イザーズでは、2024 年 12 月期の売上高 55,000 百万円は十分に達成可能とみている。

同社の収益の中心は、底地の販売によるフロー収益によるものである。そのため、前期末の販売用不動産の
額と当期の仕入額(計上ベース)の合計をインプット、当期の売上原価をアウトプットとして、インプットがアウ
トプットになった割合(ここでは「ターンオーバー率」と呼ぶ)を計算してみた。ターンオーバー率は、土地の仕入
から販売までの期間の影響を受ける。販売を遅らせた物件があった 2023 年 12 月期こそ低下しているが、通
常期は 2021 年 12 月期、2022 年 12 月期の 55%前後と推察される(2020 年 12 月期は 9 カ月決
算のため参考値)。

2024 年 12 月期の会社計画の売上高 55,000 百万円に対し、売上原価率が 2021 年 12 月期並みに
悪い 83.5%、仕入額が 2022 年 12 月期並みに少ない 25,000 百万円と保守的に仮定すると、2024
年 12 月期のターンオーバー率は 54.0%と算出され、通常期の水準となる(24/12 Sim)。売上原価率
と仕入額の直近数年の悪い数値を使ってもターンオーバー率が通常期の水準ということは、売上高も十分に保
守的で達成可能な金額である可能性が高いことを示唆している。

なお、ストラテジー・アドバイザーズでは、2024 年 12 月期の販売費及び一般管理費を前期比 8.2%増の
4,700 百万円程度で見込んでいるが、会社計画の営業利益 8,200 百万円の達成のためには、保守的な
条件とした Sim の水準より売上高が上振れるか、売上原価率が低減する必要がある。直近の仕入状況が
好調なことから、会社計画の営業利益 8,200 百万円は十分に達成可能と考えている。


図表 20. ターンオーバー率の推移と 2024 年 12 月期の検証


(百万円) 20/3 20/12 21/12 22/12 23/12
CoE Sim
売上高 74,187 29,886 56,177 49,887 31,597 55,000 55,000
売上原価 65,087 24,868 46,914 39,030 21,098 n.a. 45,925
売上原価率 87.7% 83.2% 83.5% 78.2% 66.8% n.a. 83.5%
仕入額(計上ベース) 38,835 24,461 51,146 24,845 52,739 n.a. 25,000
販売用不動産残高 43,493 38,387 41,995 28,192 60,060 n.a. 39,135
ターンオーバー率 n.a. 36.6% 52.4% 58.4% 26.1% n.a. 54.0%

注:決算期変更のため 20/12 期が 9 カ月決算のため、20/12 期と 21/12 期の前期比はなし
出所: 会社資料





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図表 21. 半期/四半期業績動向
(百万円) 22/12 23/12
H1 H2 H1 H2
損益計算書
売上高 27,069 22,818 10,373 21,224
売上原価 21,104 17,925 7,579 13,518
売上総利益 5,964 4,893 2,793 7,706
売上総利益率 22.0% 21.4% 26.9% 36.3%
販売管理費 2,215 2,231 2,100 2,244
売上高販売管理費率 8.2% 9.8% 20.2% 10.6%
営業利益 3,749 2,662 693 5,461
売上高営業利益率 13.8% 11.7% 6.7% 25.7%
営業外収支 157 -625 17 -453
金融収支 -276 -305 -177 -217
持分法投資損益 173 -181 40 0
その他 260 -139 154 -236
経常利益 3,906 2,037 711 5,007
売上高経常利益率 14.4% 8.9% 6.9% 23.6%
特別損益 -197 -1,134 1,207 242
税前利益 3,709 903 1,918 5,250
法人税等合計 1,138 -172 700 1,730
(法人税率) 30.7% -19.0% 36.5% 33.0%
親会社株主に帰属する当期純利益 2,569 1,072 1,193 3,516
売上高当期純利益率 9.5% 4.7% 11.5% 16.6%


(百万円) 22/12 23/12
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4
損益計算書
売上高 19,661 7,408 2,701 20,117 8,130 2,243 14,837 6,387
売上原価 15,121 5,984 1,829 16,096 6,117 1,462 8,416 5,102
売上総利益 4,540 1,424 872 4,021 2,012 781 6,421 1,285
売上総利益率 23.1% 19.2% 32.3% 20.0% 24.7% 34.8% 43.3% 20.1%
販売管理費 1,249 966 935 1,296 1,098 1,002 1,072 1,172
売上高販売管理費率 6.4% 13.0% 34.6% 6.4% 13.5% 44.7% 7.2% 18.3%
営業利益 3,290 459 -64 2,726 914 -221 5,349 112
売上高営業利益率 16.7% 6.2% -2.4% 13.6% 11.2% -9.9% 36.1% 1.8%
営業外収支 -54 211 -136 -489 -36 53 -70 -383
金融収支 -126 -150 -149 -156 -72 -105 -126 -91
持分法投資損益 170 3 -137 -44 40 0 0 0
その他 -98 358 150 -289 -4 158 56 -292
経常利益 3,236 670 -199 2,236 879 -168 5,277 -270
売上高経常利益率 16.5% 9.0% -7.4% 11.1% 10.8% -7.5% 35.6% -4.2%
特別損益 -140 -57 -1,053 -81 1,207 0 -40 282
税前利益 3,095 614 -1,253 2,156 2,086 -168 5,238 12
法人税等合計 1,008 130 -34 -138 712 -11 1,751 -21
(法人税率) 32.6% 21.2% n.a. n.a. 34.1% n.a. 33.4% n.a.
親会社株主に帰属する当期純利益 2,086 483 -1,220 2,292 1,350 -157 3,485 31
売上高当期純利益率 10.6% 6.5% -45.2% 11.4% 16.6% -7.0% 23.5% 0.5%

出所:会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成



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7. 中長期展望

1)中長期的に好環境が続く見通し


同社の JINUSHI ビジネスを取り巻く環境は、今後も良好に推移すると予想される。

底地の流通量は 2030 底地の供給サイドの視点では、底地の流通量の拡大が見込まれている。日本不動産研究所の調査による
年に 16 兆円まで拡大す と、底地取引の累積値ベースで見た底地市場規模は 2021 年時点で累計 5.47 兆円とされている。今後、
る見通し 2026 年には 9.95 兆円、2030 年には 16.06 兆円まで拡大すると予測されている。

店舗出店の約 10%が また、ザイマックス不動産総合研究所の「商業店舗の出退店に関する実態調査 2022」によると、店舗出店に
「借地・建物自社所有が原 おける不動産の所有、賃借の方針は「建物賃借(借家)が原則」が 43%で最も多く、次いで「特に決まって
則」によるもの いない」の 30%が続く。「借地・建物自社所有が原則」は 10%に留まっている。「建物賃借(借家)が原
則」の事業者に、「借地・建物自社所有」のメリットが伝わりきれていない可能性もあるが、今後の取り組み次
第によって、「借地・建物自社所有」の割合が増える余地があるとも言えよう。


図表 22. 商業店舗の出店時の契約形態

契約形態 全体 店舗数別
10 店舗未 50 店舗 100 店舗 200 店舗 200 店舗
満 まで まで まで 以上
土地・建物とも 12% 26% 12% 0% 3% 0%
自社所有が原則
借地・建物自社所有が原則 10% 13% 11% 13% 0% 7%
建物賃借(借家)が原則 43% 23% 41% 58% 71% 63%
特に決まっていない 30% 36% 34% 22% 23% 20%
その他 4% 2% 3% 7% 3% 10%


契約形態 全体 店舗面積別
50 坪 150 坪 500 坪 1,000 坪 1,000 坪
未満 まで まで まで 以上
土地・建物とも 12% 1% 6% 14% 30% 31%
自社所有が原則
借地・建物自社所有が原則 10% 4% 4% 17% 19% 14%
建物賃借(借家)が原則 43% 72% 62% 23% 5% 28%
特に決まっていない 30% 14% 27% 43% 44% 28%
その他 4% 9% 1% 3% 2% 0%

出所:ザイマックス不動産総合研究所「商業店舗の出退店に関する実態調査 2022」
J リート及び私募リート市 底地を不動産金融商品として求める需要サイドの視点では、まずは、J リート及び私募リートの市場拡大が見
場は拡大 込まれている。不動産証券化協会の資料によると、2023 年 12 月末のリートの資産総額(取得価格ベー
ス)は 28.7 兆円(J リート 22.7 兆円、私募リート 5.9 兆円)、物件数は 6,287 物件(J リート 4,697
物件、私募リート 1,590 物件)となった。地主リートの運用が始まった 2017 年 12 月末をベースに、2023
年 12 月末までの 6 年で資産総額は年率 7.2%、物件数は同 6.9%のペースで拡大してきたが、同期間、
私募リートの資産総額は同 16.1%、物件数は同 17.8%のペースで拡大しており、私募リートの拡大ペース
の方が上回っている。投資対象としての私募リートの存在感が増している。




地主 | 3252(東証プライム)

なお、不動産証券化協会が 2003 年から実施している「不動産私募ファンドに関する実態調査」では、私募
リートの保有不動産の内訳等のデータが公表されている。これまでは底地は、その土地の上に建てられる建物
の主要目的に沿って分類されてきたが、2023 年 7 月調査より、「底地」というカテゴリを新設した。リートの投
資先の底地の存在感が高まっている証左と言えよう。なお 2023 年 7 月の同調査によると、運用中ファンドの
投資対象物件のうち、物件数ベースで 10%、運用資産金額ベースで 4%が、底地に振り向けられている。


図表 23. リート(J リート+私募リート)の規模の推移

2017 年 2018 年 2019 年 2020 年 2021 年 2022 年 2023 年
12 月 12 月 12 月 12 月 12 月 12 月 12 月
資産総額(億円) *取得価格ベース 189,692 208,603 224,843 241,936 256,048 268,637 287,593
私募リート 24,398 28,826 33,578 39,056 43,658 49,906 59,660
J リート 165,294 179,777 191,265 202,880 212,390 218,731 227,933
法人数 82 89 95 98 100 105 112
私募リート投資法人数(投資法人) 23 28 31 36 39 44 54
J リート銘柄数(銘柄) 59 61 64 62 61 61 58
物件数(物件) 4,206 4,613 4,958 5,278 5,579 5,873 6,287
私募リート 595 713 833 987 1,150 1,323 1,590
J リート 3,611 3,900 4,125 4,291 4,429 4,550 4,697
資産総額における私募リートが占める割合 12.9% 13.8% 14.9% 16.1% 17.1% 18.6% 20.7%
物件数における私募リートが占める割合 14.1% 15.5% 16.8% 18.7% 20.6% 22.5% 25.3%

出所:不動産証券化協会「私募リート・クォータリー」よりストラテジー・アドバイザーズ作成

2)規律を維持した積極拡大フェーズの中期経営計画

社名変更は積極拡大の狼 同社は、2022 年 2 月に、2026 年 12 月期を最終年度とする中期経営計画を公表した。同タイミングで実
煙 施した社名変更にも意図が表れている通り、JINUSHI ビジネスの認知度を上げて、積極的に拡大していくフェ
ーズと位置付けている。地主リートの資産規模は 3,000 億円を視野に入れている。


図表 24. 中期経営計画

財務項目 21/12 期 23/12 期 24/12 期 26/12 期
会社計画 中期計画 年平均
成長率
売上高 561 億円 315 億円 550 億円 1,000 億円 12.2%
当期純利益 31 億円 47 億円 50 億円 70 億円 17.5%
地主リート 3,000 億円
1,515 億円 2,216 億円 n.a. 14.6%
資産規模 程度
ROE 11.9% 15.3% n.a. 13%程度
自己資本比率 32.2% 31.0% n.a. 30%以上

注:年平均成長率は 2021 年 12 月期からの平均成長率。地主リート資産規模は、期末翌月の増資後の金額
出所: 会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成
JINUSHI ビジネスの拡 同社は、JINUSHI ビジネスの拡大と地主リートの成長を両輪とした成長戦略を描いている。 このうち、
大と地主リートの成長を両 JINUSHI ビジネスの拡大に関しては、①テナント業種の多様化、②事業エリアの拡大、③土地のオフバランス
輪とした成長戦略 提案の 3 つの施策を進めている。

①テナント業種の多様化は、社名変更により社名から「商業開発」を外したことにも表れているように、
JINUSHI ビジネスの対象はあらゆるテナント業種を対象とするものとしている。中でも、社会インフラを担う施設


地主 | 3252(東証プライム)

のテナントを重点領域と位置づけており、既に、ホスピス、老人ホーム、家族葬といった分野のテナントの獲得を
進め始めている。2023 年 12 月期における仕入件数 83 件、仕入額 58,800 百万円のうち、社会インフラ
を担うテナントの案件は 44 件 13,200 百万円を占めた。件数ベースで 53%、仕入額ベースで 22%に相
当する。

図表 25. 仕入における社会インフラを担うテナントの案件の割合:契約件数ベース


100 53.0% 60%

90 50%

80 40%
70 27.3%
30%


20%
10.8%

37 10%
40 0.0% 33
0%


20 33 24 44 -10%

10 24 -20%

0 0 4 -30%
20/12期 21/12期 22/12期 23/12期
生活必需品等(件、左軸) 社会インフラ(件、左軸)
社会インフラの割合(右軸)

出所:会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成

図表 26. 仕入における社会インフラを担うテナントの案件の割合:仕入金額ベース

30%
80,000 22.4%
19.6%
70,000 20%
58,800
60,000 7.4%
10%
50,000 0.0% 46,000
0%
40,000
45,500
30,000 -10%
20,400
42,500
16,000
20,000
-20%
16,400
10,000
16,000 13,200
0 3,400 4,000 -30%

20/12期 21/12期 22/12期 23/12期
生活必需品等(百万円、左軸) 社会インフラ(百万円、左軸)
社会インフラの割合(右軸)

出所:ストラテジー・アドバイザーズ作成


地主 | 3252(東証プライム)

②事業エリアに関して、2022 年 12 月の九州支店の設立により、国内 4 拠点、米国 1 拠点の 5 拠点体
制で展開されている。また、2023 年 7 月には本社をこれまでの大阪から東京に移転している。なお、同社が
手掛けた案件の立地は 197 市区町村に及ぶが、まだ案件の実績がないところも 1,062 市区町村ある。人
口 20 万人以上及び政令指定都市に絞ってみても、実績ありが 134 市区町村、実績なしが 156 市区町
村であり、地域的な拡大余地は大きく残されていると言える。

③土地のオフバランス提案は、東証が打ち出す「資本コストや株価を意識した経営」等の時流にも沿ったアプロ
ーチである。同社の底地開発はこれまでテナントの新規出店をターゲットとしてきたが、土地のオフバランス提案
は、既に土地建物を保有しているオーナーに対するアプローチであり、同社の新たな成長領域と言え、資本効
率の向上や財務体質改善ニーズなどを抱えているテナントに対し有効な提案である。不動産業の同様の手法
としては土地建物セットのセール・アンド・リースバックが挙げられるが、同社は土地のみのオフバランスを提案す
る。その利点は、「土地のみなのでデューデリジェンス等の手間がかからない」、「建物を引き続き自社保有でき
るため自由度の高い運営が可能」等が挙げられる。セール・アンド・リースバックと同様の効果(資本効率向
上、財務体質改善)を見込めつつ、上述したメリットを享受できることを考えれば、今後ますます広がりを見せ
るだろう。なお、本スキームを利用する場合のデメリットとしては、テナントにとって土地部分を他社が保有するこ
とになると、再開発時の立ち退きリスクや、契約満了時の借地料増額リスクがつきまとうことだが、同社はそのデ
メリットも安定地主の「地主リート」が補うだけでなく、むしろ他社が模倣できない強みともしている。

ストラテジー・アドバイザーズでは、底地マーケットの拡大の状況から、2026 年 12 月期の地主リート資産規
模 3,000 億円は十分に達成可能であり、それに向けた仕入の増加が進めば、売上高及び当期純利益も射
程圏に入ってくると見ている。ただし、2023 年 12 月期にみられたように、高利益率の物件の販売があった場
合、他の物件の販売タイミングを変える可能性があるため、売上高についていえば、多少のぶれが生じる可能
性がある点には留意しておきたい。


8. 同業他社との比較

底地取引専業という形態 底地の個々の案件の取引においては競合する企業は存在するものの、底地取引専業という形態を採る企業
では競合は不在 は他にいないため、ビジネスモデル上、直接競合する企業は存在しない。そのため、不動産金融の企業を比較
対象とした。

不動産金融企業との比較 収益不動産の物件を組成して投資家に販売する企業を不動産金融の企業とし、その中でも系列のリートを
保有している企業を比較対象とした。上場企業では、サムティ(3244 東証プライム)、サンフロンティア不動
産(8934 東証プライム)、トーセイ(8923 東証プライム)、フージャースホールディングス(3284 東証
プライム)、いちご(2337 東証プライム)、日本エスコン(8892 東証プライム)が挙げられる。

収益性に関しては、同社の売上高当期純利益率は 2023 年 12 月期実績で 14.9%と他社より高いが、
ROE は 15.3%といちごを除く他社より低い水準に留まっている。有利子負債の持ち方の影響を除いた
ROIC で見ても真ん中程度であり、同社の収益性は平均的と言えよう。同社のベータは、週次 5 年間で
0.928(週次 2 年間で 0.353)である。リスクフリーレートを 0.6%、株式市場の超過リターンを 6%と置く
と、株式資本コストは 6.2%となり、ROE の超過リターンは 8.9%と計算される。

安全性指標は前期より悪 2023 年 12 月期末の同社の安全性指標は、自己資本比率 30.9%、ネット D/E レシオ 1.26 倍、
化しているが総じて他社と DCR164.9%である。2022 年 12 月期末は自己資本比率 42.8%、ネット D/E レシオ 0.45 倍、
同等水準 DCR92.3%であったので、いずれも数字の上では悪化している。2023 年 12 月期の仕入が大幅に増加した
ことと、予定していた土地の販売を遅らせたことにより販売用不動産と有利子負債が増加したことが原因だが、
悪化した数字をもってしても、総じて他社と同等の水準にある。同社の安全性に関しては特段の問題はなく、コ
ントロールされていると判断できる。





地主 | 3252(東証プライム)


図表 27. 他の不動産金融企業との比較
コード 主な対象 系列リート
企業名 不動産 (私)は私募リート


地主 3252 底地 地主リート(私)
マンション
サムティ 3244 サムティ・レジデンシャル投資法人
ホテル

サンフロンティア不動産 8934 オフィス フロンティア不動産投資法人

オフィス
トーセイ 8923 トーセイ・リート投資法人
商業施設

フージャースホールディングス 3284 レジデンス フージャースプライベートリート投資法人(私)

オフィス
いちご 2337 いちごオフィスリート投資法人
ホテル
商業施設
日本エスコン 8892 レジデンス エスコンジャパンリート投資法人
生活密着型

コード ネット DCR 自己資本
企業名 D/E レシオ 比率
(倍) (%) (%)
地主 3252 1.26 163.9 30.9

サムティ 3244 2.09 205.7 25.5

サンフロンティア不動産 8934 0.16 89.2 52.9

トーセイ 8923 1.30 120.5 33.4

フージャースホールディングス 3284 1.32 153.5 23.6

いちご 2337 1.48 85.9 30.7

日本エスコン 8892 2.08 179.6 25.0

注:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益
注:売上高成長率および当期純利益成長率は過去 5 年の CAGR。地主は 2020 年 12 月期が 9 カ月決算のため過去 4.75 年の CAGR
注:日本エスコンは決算期変更のため 2022 年 12 月期の数字を使用
出所:ストラテジー・アドバイザーズ作成





地主 | 3252(東証プライム)

9. 株価動向とバリュエーション
同社のこれまでの株価推移をみるために、図表 23 で、2019 年末の株価を 100 とした時の主な不動産
金融企業と TOPIX(東証株価指数)の株価推移を指数で表した

新型コロナ禍の市場混乱期は 新型コロナ禍が始まった 2020 年は株式市場全体が大幅に下落し、不動産金融企業の株価は軒並み
同業他社より下落耐性が強い TOPIX に劣後して推移したが、同社は TOPIX 並みで推移した。市場が混乱する局面では、少なくとも
他の不動産金融企業よりは耐性が強いことの証左と言えよう。

直近パフォーマンスは TOPIX 2021 年以降の株価回復局面で、2022 年に社名を変更してしばらく後に同社の株価は TOPIX を上
に劣後 回った局面があった。しかし、2023 年以降は総じて TOPIX 優位で推移してきた。また、他の不動産金融
企業と比較しても、特にオーバーシュートしているわけではない。

PER、PBR とも低水準 このことはバリュエーションにも表れている。PER、PBR とも、同社より低いのはサンフロンティア不動産くらいで
あり、他社より割高感はない。また、2018 年以降の約 5 年でみても、現在の PER、PBR ともに低い水
準に留まっている。


図表 28. 不動産金融企業の株価推移


(2019年12月末=100)


















地主 サムティ サンフロンティア トーセイ
フージャース いちご エスコン TOPIX

出所:ストラテジー・アドバイザーズ作成





地主 | 3252(東証プライム)

図表 29. PER の推移


(倍)

18.0

16.0

14.0

12.0

10.0

8.0

6.0

4.0

2.0

0.0


出所:ストラテジー・アドバイザーズ作成




図表 30. PBR の推移


(倍)

2.0




1.5




1.0




0.5




0.0


出所:ストラテジー・アドバイザーズ作成



地主 | 3252(東証プライム)

図表 31. 同業他社とのバリュエーション比較
コード 決算期 株価 時価総額 PER PBR 配当利回り ROE
企業名 (4/5) 会社予想 直近実績 会社予想 直近実績
(百万円) (倍) (倍) (%) (%)
地主 3252 23/12 2,551 41,945 8.4 1.3 3.3 15.1
サムティ 3244 23/11 2,783 129,641 11.4 1.2 3.2 17.1
サンフロンティア不動産 8934 23/03 1,910 92,736 8.0 1.1 2.9 19.1
トーセイ 8923 23/11 2,411 116,637 10.4 1.4 3.0 16.5
フージャースホールディングス 3284 23/03 1,081 38,431 8.0 1.1 5.1 22.7
いちご 2337 23/02 429 191,793 19.4 1.9 1.9 11.7
日本エスコン 8892 22/12* 996 94,944 ― 1.4 ― 11.3

注:日本エスコンは決算期変更により 2024 年 3 月期が 15 カ月決算。会社予想を用いる PER と配当利回りは適用なしとした
出所:ストラテジー・アドバイザーズ作成





地主 | 3252(東証プライム)

業績が株価に反映されやす 日本の株式市場は、2024 年 2 月 22 日に 1989 年 12 月につけた日経平均株価の前回の史上最高
い相場環境へ。バリュエーシ 値を超えたことに代表されるように、2023 年からの外国人買いが主導する大型株中心の流動性株相場が
ョンは過去 5 年で最低水準 継続している。この後は、企業業績を反映しやすい業績相場へと移行していくとの見方が多い。

不動産金融の分野にこぞって資金が流入してくる局面とはならずとも、業績が好調であれば株価は素直に反
応しやすくなっていくとみられる。また、同社の現在のバリュエーションは PER で 7.2 倍、PBR で 1.1 倍と、
新型コロナ禍が始まる直前の 2019 年末以降で低い水準に留まっており、この水準からのバリュエーションの
更なる低下は限定的であると考えられる。

認知度が向上すれば株価は 業績面では、中期経営計画にある、2026 年 12 月期の当期純利益 70 億円、地主リート 3,000 億円
上昇へ 程度を目安に進捗を見ていくことになろう。

同社の株価は、新型コロナ禍が始まった 2020 年に底を打った後は、短期的な上下はあるものの、徐々に
切り上がって推移してきた。一方でバリュエーションは過去 5 年の中でも低い水準に留まっており、割安な水
準にある。ここまで見てきた通り、同社は、JINUSHI ビジネスのビジネスモデルに自信を深め、2022 年の社
名変更に至っている。同社が現在目指しているのは、投資対象としての底地マーケットの魅力と、底地マーケ
ットにおけるパイオニアとしての同社の優位性を広く知らしめることにある。これは、認知度向上の余地がまだま
だ大きいことを意味しており、徐々にではあるが、認知が浸透していくにつれ、バリュエーションの上昇を通じて、
同社の事業及びビジネスモデルの優位性が株価に反映されていくと考えられる。

増配により配当性向は 同社は、2024 年 12 月期の 1 株当たり予想配当金 85.0 円(中間 42.5 円、期末 42.5 円)を計画
28.0%まで上昇する見通し している。前期実績では 1 株当たり配当金が 55.0 円(期末のみ)だったので、前期比 30.0 円の大幅
増配となる見込みである。23/12 期まで行っていた株主優待を廃止し、現金配当で還元する方針へ変更
したことによる大幅増配である。配当性向は 2023 年 12 月期では 20.5%であったが、2024 年 12 月期
は 28.0%の想定となっている。なお、今期より中間配当を実施することにしたのは、株式の流動性を高める
ためである。


10. リスク要因
現時点では事業遂行や業績の面で注視すべき大きなリスクはないとみられるが、想定していたような業績に
ならないリスクを挙げるとすれば以下の 3 点が指摘できよう。

短期的には、テナントの出店意欲が急減退する可能性が考えられる。実際、2022 年 12 月期に仕入が件
数、金額ともに伸びなかったのは、ウクライナ戦争勃発に伴うサプライチェーンの混乱や物価上昇の懸念が高
まり、同社の主要テナント業種である小売業全体として出店抑制モードとなったことが大きな要因であった。
出店意欲の変化は、比較的短時間のうちに、同社の仕入状況に影響する。小売業の出店意欲と、出店意
欲に関係するマクロ動向(物価上昇や為替変動等)には注意を払っておきたい。

同社の業績は、土地の販売によって得られるフローサービスによる収益が多いため、土地の売却計画の変更
により、実際の業績が会社計画から大きく乖離する可能性がある。これは上述したようなテナント側の環境変
化によって生じることもあれば、2023 年 12 月期に見られたように、物件の販売予定をずらしたことで売上高
が計画を大きく下回るようなこともある。同社では、損益計算書においては当期純利益の動向を最優先に考
えているが、決算業績の出方によって、短期的に株価が反応することもありうる。

中長期的には、仕入競争が激しくなる可能性が考えられる。この点については、個別の物件ベースでは現時
点でも競争は発生していると認識される。同社では、相対取引による仕入が大半を占め、価格競争になりや
すい入札の物件が少ないことから、これらを原因に仕入ができない可能性は低いとしている。むしろ、プレイヤ
ーの参入増によって底地マーケットの市場が拡大する方が、中長期的な成長に資する可能性がある。




地主 | 3252(東証プライム)

JINUSHI ビジネスにおいて、他の不動産投資と同様に避けられないのは金利リスクである。金利上昇は、資
金調達サイドではネガティブに働くが、不動産価格の上昇により資産サイドとしてはポジティブに働くので、メリッ
トもデメリットもある。なお、同社は、JINUSHI ビジネスの高い回転率を踏まえ、変動で借りつつ、不動産マ
ーケットそのもののシクリカルな点を意識して原則 8 年以上の長期で借入し、案件売却時に繰上返済してい
る。また、地主リートは長期固定の借入を原則としながら、LTV(loan to value)は 30%程度と他リート
と比較し低く、金利に対する感応度は低いと推測はする。財務戦略としてもしっかり手当がされているため、
金利がゆっくりと動く分にはさほど問題ないが、短期間に急激に変動する場合には注意しておきたい。


11. ESG の取り組み
同社の事業全般は、概ね、順調であり、成長戦略という視点では、大きな課題は見当たらない。ただし、昨
今、投資家が大いに注目する環境・社会・ガバナンス(ESG)という観点からは、改善の余地が残っていると
考えられる。以下が主な論点である。

コーポレート・ガバナンス体制 同社は、グループとして、地主、連結子会社 17 社を有する。2023 年 12 月末時点で、創業者で取締役
の松岡哲也氏が、筆頭株主として、17.55%を保有する(合同会社松岡の保有分 5.56%を加えると
23.12%)。監査等委員会設置会社であり、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする独
立した「指名・報酬委員会」を設置している。

取締役は、6 名中、独立社外取締役は 4 名で、社外取締役はいずれも監査等委員である。コーポレート
ガバナンス・コード原則 4-8 により、プライム市場上場の会社には、過半数の独立社外取締役を選任するこ
とを求めており、当該原則を満たしている。指名・報酬委員会も独立社外取締役が 80%(5 名中 4 名)
を占める。


図表 32. 地主の取締役のスキルマトリクス

氏名(敬称略) 西羅 弘文 松岡 哲也 西村 浩之 志和 謙祐 小笹 文 石渡 朋徳

代表取締役 社外取締役 社外取締役 社外取締役 社外取締役

役職 社長 取締役 (常勤) (非常勤) (非常勤) (非常勤)

性別 男性 男性 男性 男性 女性 男性

構成員

監査等委員会 ◎ ○ ○ ○

指名・報酬委員会 ○ ◎ ○ ○ ○

スキル・マトリックス

企業経営 ● ● ●

営業・マーケティング ● ● ●

財務・会計 ● ●

法務・コンプライス・監査 ● ● ● ●

サステナビリティ ● ● ● ●

海外 ● ● ● ●


出所: 会社資料





地主 | 3252(東証プライム)

ただし、女性役員比率は 6 名中 1 名(全体の 16.7%)に留まっている。前期まで女性取締役は不在で
あったが、2024 年 3 月より企業経営の豊富な経験や実績を有する小笹文氏が社外取締役に就任し、女
性取締役が 1 名となった。

政府の女性版骨太の方針を受けて、東証は、上場規程を改正し、プライム市場上場企業に対して ①
2025 年をめどに、女性役員を 1 名以上選任するよう努める、②2030 年までに、女性役員の比率を
30%以上とすることを目指す、 ③これらの目標を達成するための行動計画策定を推奨する、と定めた。 1こ
れは、推奨ではあるものの、機関投資家の議決権行使を通じて、強い強制力を持つようになる可能性があ
る。

②を実現するためには、女性取締役をあと 1 名追加で選任する必要があると思われる。投資家からの評価
を高めるためにも、早期に女性役員比率 30%を達成することが期待される。

サステナビリティの取り組み 同社はサステナビリティに関するマテリアリティ(重点課題)を特定し、サステナビリティについての考え方及び
取組みを開示している。

建物に投資せず、土地のみに投資を行う同社独自の不動産投資手法「JINUSHI ビジネス」は、自然災害
やマーケットボラティリティに強く、温室効果ガスや産業廃棄物等の排出が極めて少ない不動産投資モデルで
ある。そのため、ESG 方針において、JINUSHI ビジネスを通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを
目指している。

そして、①土砂災害、浸水等の自然災害リスクの低い土地の仕入、②長期契約の締結による、テナントの
建築・解体に伴う GHG 排出の低減、③テナント業種の多様化及び事業エリアの拡大による環境変化への
対応力の強化、④既存の土地・建物案件における土地のオフバランスの促進(テナントにおける建物長期
利用の促進)により、JINUSHI ビジネスの拡大を図る。

同社は、2021 年 10 月に ESG 推進委員会を設置した。ESG 推進委員会は、代表取締役社長が委員
長となり、取締役会に上程・報告する体制である。2022 年 2 月に策定された中期経営計画とともに、
ESG 方針を策定し、中期経営計画では、ESG ロードマップを策定している。


図表 33. 地主の ESG ロードマップ




出所: 会社資料





東京証券取引所「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023(女性版骨太の方針 2023)に係る上場制度の整備等に係る有価証券上場規程等の一部改正について」
(2023 年 10 月 4 日)

地主 | 3252(東証プライム)

ESG のうち、環境については、2022 年 8 月に、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提
言に賛同を表明するとともに、同提言に基づく情報開示をウェブサイトで行っている。TCFD が提言する枠組
みに基づき、シナリオ分析を行い、2030 年及び 2050 年時点での移行リスクと物理リスク・機会等を検討し
ている。

シナリオ分析では、パリ協定の達成及び脱炭素の実現を念頭に置いた「1.5℃シナリオ」、また気候変動対
策が十分に進展せず自然災害が激甚化するケースである「4℃シナリオ」の双方を採用して、分析している。
シナリオ分析による対応策として、自社排出分のカーボンニュートラル化や、テナントへの環境配慮型設備導
入等の働きかけにより、2050 年カーボンニュートラル社会実現への貢献を目指す。

気候変動に関する目標は、①カーボンニュートラル(自社排出分:Scope1、2)の継続(2030 年目
標、2050 年目標)と、②テナントとの定期借地権設定契約の ESG 条項の組入率 100%、を設定して
いる。

2023 年 2 月に国内の不動産上場企業としては初となるカーボンニュートラル(自社排出分)を達成し
た。 CO2 排出量が極めて低いビジネスモデルがカーボンニュートラル達成に寄与した。

また、自社の達成だけではなく、テナントとの協業を加速しており、契約書面への ESG 条項の組み入れによ
り、環境配慮型設備の導入を後押ししている。2022 年 6 月以降、緑化・省エネ設備の積極利用に関す
る ESG 条項をテナントと締結する定期借地権設定契約のひな型に組み入れている(2022 年 12 月期、
2023 年 12 月期 100%達成)。2023 年末時点で、ESG 条項に基づく、環境配慮型設備の設置は、
100 件である(太陽光発電 47 件、EV 充電設備 29 件、壁面・屋上緑化 24 件)。

ESG のうち、社会については、ステークホルダーとの Win-Win 関係の達成を目指す。具体的には、①地主
プライベートリート投資法人を通じた不動産金融商品の提供(投資家)、②多様な人材の確保と育成
(従業員)、③テナントの出店戦略を通じた地域社会への貢献(地域社会)、である。他にも、テニスプ
レイヤーと契約したスポーツ支援や、交響楽団等への協賛を通じた文化支援も行っている。

図表 34. 地主のサステナビリティの取り組み




出所: 会社資料





地主 | 3252(東証プライム)

図表 35. 連結損益計算書
24/12C
(百万円) 18/3 19/3 20/3 20/12 21/12 22/12 23/12
oE
売上高 31,260 39,834 74,187 29,886 56,177 49,887 31,597 55,000
売上原価 24,402 31,662 65,087 24,868 46,914 39,030 21,098
売上総利益 6,858 8,172 9,100 5,019 9,263 10,857 10,499
売上総利益率 21.9% 20.5% 12.3% 16.8% 16.5% 21.8% 33.2%
販売管理費 3,174 3,725 3,856 2,599 3,788 4,446 4,344
営業利益 3,684 4,447 5,244 2,420 5,475 6,411 6,154 8,200
売上高営業利益率 11.8% 11.2% 7.1% 8.1% 9.7% 12.9% 19.5% 14.9%
営業外収益 229 703 403 637 285 435 227
受取利息・配当金 27 27 12 7 5 17 15
持分法投資利益 30 303 166 130 n.a. n.a. 40
為替差益 n.a. 88 79 n.a. 138 296 84
その他 172 285 146 500 142 122 88
営業外費用 869 822 1,049 900 758 903 663
支払利息・割引料 542 613 729 392 457 598 445
持分法投資損失 n.a. n.a. n.a. n.a. 83 8 n.a.
為替差損 127 n.a. n.a. 377 n.a. n.a. n.a.
資金調達費用 178 167 272 120 212 267 186
その他 22 42 48 11 6 30 32
経常利益 3,044 4,327 4,599 2,157 5,002 5,943 5,718 7,300
売上高経常利益率 9.7% 10.9% 6.2% 7.2% 8.9% 11.9% 18.1% 13.3%
特別利益 n.a. 333 130 n.a. n.a. n.a. 1,489
特別損失 70 829 102 n.a. 73 1,331 40
税前利益 2,974 3,831 4,628 2,157 4,927 4,612 7,168
法人税・住民税・事業税 992 1,312 1,538 612 4,006 1,423 2,268
法人税等調整額 -30 -165 -87 -100 -2,203 -456 162
法人税等合計 962 1,146 1,451 512 1,803 967 2,430
(法人税率) 32.3% 29.9% 31.4% 23.7% 36.6% 21.0% 33.9%
親会社株主に帰属する当期純利益 1,958 2,684 3,177 1,644 3,124 3,641 4,709 5,000
売上高当期純利益率 6.3% 6.7% 4.3% 5.5% 5.6% 7.3% 14.9% 9.1%
EPS(円) 109.61 149.30 174.59 89.94 170.90 199.16 267.76 304.09
有形・無形固定資産投資 72 338 197 2,954 14,142 500 723
減価償却費・のれん償却額 159 166 116 72 148 148 206
キャッシュ・フロー 2,118 2,850 3,293 1,716 3,272 3,789 4,915
CFPS(円) 118.6 159.5 182.5 93.8 178.9 207.2 268.8
ROE 10.4% 12.8% 14.0% 6.8% 11.9% 12.4% 15.1%
ROIC(投下資本) 4.8% 4.2% 4.6% 2.8% 5.0% 7.5% 4.6%
ROIC(事業資産) 7.5% 5.9% 6.5% 4.4% 7.2% 10.3% 6.2%
配当金(円) 55.00 55.00 55.00 25.00 50.00 55.00 55.00 85.00
期中平均株式数(百万株) 17.0 17.0 18.0 18.0 18.0 18.0 17.0
期末株式数(百万株) 17.8 18.0 18.2 18.2 18.2 18.2 16.4

注:決算期変更のため 20/12 期は 9 カ月決算
出所:会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成





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図表 36. 連結貸借対照表
(百万円) 18/3 19/3 20/3 20/12 21/12 22/12 23/12
流動資産 56,577 90,020 66,886 60,074 60,002 52,850 84,019
現金及び預金 14,522 18,857 21,851 20,897 17,264 23,140 23,092
売上債権 194 99 147 198 205 273 330
棚卸資産 41,049 69,516 43,493 38,387 41,995 28,192 60,060
その他 812 1548 1395 592 538 1245 537
固定資産 10,677 9,577 8,169 11,146 26,335 19,302 17,462
有形固定資産 187 455 522 3,436 17,488 16,803 14,859
うち土地 4 4 4 2,884 16,994 16,066 13,971
無形固定資産 12 9 14 55 225 116 49
投資その他の資産 10,477 9,112 7,633 7,654 8,621 2,382 2,553
投資有価証券 2,424 1,520 300 293 581 319 343
貸倒引当金 -361 -213 -89 -89 -88 -88 -84
その他 8,414 7,805 7,422 7,450 8,128 2,151 2,294
総資産 67,251 99,597 75,054 71,220 86,337 72,153 101,482
流動負債 9,131 11,876 7,854 5,400 13,999 4,583 7,483
買入債務 140 102 225 187 112 103 110
未払金・未払費用 848 501 443 459 581 754 451
有利子負債 4,107 8,505 3,890 2,863 7,061 1,875 2,359
短期借入金 3,329 4,968 1,099 797 1,126 n.a. 1,473
1 年内返済予定の長期借入金 778 3,537 2,791 2,066 5,935 1,875 886
未払法人税等 1,061 919 1,523 5 3,753 232 2,202
繰延税金負債 96 136 98 112 126 182 210
その他 2,879 1,713 1,675 1,774 2,366 1,437 2,151
固定負債 37,819 66,109 43,330 40,979 44,555 36,610 62,496
有利子負債 36,956 65,258 42,674 40,437 42,749 35,288 60,414
退職給付/給与引当金 69 43 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.
繰延税金負債 516 539 448 234 1,000 398 587
その他 278 269 208 308 806 924 1,495
純資産 20,304 21,611 23,870 24,841 27,781 30,960 31,501
株主資本 20,304 21,611 23,870 24,841 27,781 30,906 31,365
資本金・剰余金 7,201 7,410 7,707 7,707 7,705 7,705 7,705
利益剰余金 13,108 14,811 16,996 17,635 20,302 23,030 26,733
自己株式 0 0 0 0 0 0 -3,499
その他包括利益累計額 -30 -629 -832 -500 -227 169 424
新株予約権 25 20 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.
非支配株主持分 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 54 136
総資産 67,251 99,597 75,054 71,220 86,337 72,153 101,482
有利子負債 41,063 73,763 46,564 43,300 49,810 37,163 62,773
自己資本比率 30.2% 21.7% 31.8% 34.9% 32.2% 42.8% 30.9%
D/E レシオ 2.02 3.41 1.95 1.74 1.79 1.20 2.00

注:決算期変更のため 20/12 期は 9 カ月決算
出所:会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成





地主 | 3252(東証プライム)

図表 37. 連結キャッシュ・フロー計算書
(百万円) 18/3 19/3 20/3 20/12 21/12 22/12 23/12
営業活動によるキャッシュ・フロー
税引前利益 2,974 3,831 4,628 2,157 4,927 4,612 7,168
減価償却費 160 166 116 72 148 148 206
持分法による投資損益 292 5 93 -3 378 6,669 -59
運転資本 -9,644 -28,770 26,022 2,504 5,277 13,387 -32,210
法人税等支払額 -1,041 -1,410 -949 -2,090 -377 -5,426 373
その他 1,619 -1,843 -229 930 1,020 603 -690
合計 -5,640 -28,021 29,681 3,570 11,373 19,993 -25,212
投資活動によるキャッシュ・フロー
有形固定資産の取得による支出 -38 -324 -144 -56 -13,373 -379 3,487
無形固定資産の取得による支出 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a.
その他 192 317 1,305 -43 -4,140 223 205
合計 154 -7 1,161 -99 -17,513 -156 3,691
財務活動によるキャッシュ・フロー
短期借入金の純増減額 2,789 1,639 -3,869 -302 329 -930 1,440
長期借入金の純増減額 4,779 31,665 -23,232 -3,116 2,521 -12,128 24,160
株式の発行 3 204 290 n.a. n.a. n.a. n.a.
自己株式の取得による支出 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. -3,499
配当金の支払額 -1,018 -982 -992 -1,004 -458 -913 -1,005
その他 -140 -14 -17 -20 -29 -4 16
合計 6,413 32,512 -27,820 -4,442 2,363 -13,975 21,112
キャッシュに係る換算差額 7 -136 -28 18 57 99 16
キャッシュ増減額 934 4,348 2,994 -953 -3,718 5,960 -392
キャッシュ期首残高 13,575 14,509 18,857 21,851 20,897 17,178 23,140
キャッシュ期末残高 14,509 18,857 21,851 20,897 17,178 23,140 22,747

注:決算期変更のため 20/12 期は 9 カ月決算
出所:会社資料よりストラテジー・アドバイザーズ作成





地主 | 3252(東証プライム)

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