TCFD提言に基づく情報開示更新(TCFDレポート2023)のお知らせ

2023年7月28日
各 位


会 社 名 フィード・ワン株式会社
代表者名 代表取締役社長 庄司 英洋
(証券コード 2060 東証プライム市場)
問合せ先 経営企画部サステナビリティ推進室長 太田 尚三
TEL 045(311)2300



TCFD提言に基づく情報開示更新(TCFDレポート2023)のお知らせ


当社は、本日開催の取締役会において、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)※
提言」に基づく情報開示を更新することを決議いたしましたのでお知らせいたします。



当社グループは、穀物や魚粉を主原料とした畜産用・水産用配合飼料の製造・販売から、畜
産物・水産物の生産・販売まで「食のバリューチェーン」を担う事業を営んでおり、自然の恵
みの上に成り立っています。そのため、気候変動が当社グループ事業に及ぼす影響は大きく、
取り組むべき重要な社会課題であると捉えています。
そこで当社グループは、2022年4月に TCFD提言へ賛同し、気候変動における情報開示を行
うことを表明しました。パリ協定の目指す脱炭素社会の実現に向け、TCFD 提言に基づくフレ
ームワークを活用した情報開示を今後も積極的に進めてまいります。




※TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは
G20 の要請を受け、主要国の中央銀行や金融規制当局などが参加する国際機関である金融安
定理事会(FSB)により 2015 年に設立されました。気候変動がもたらすリスクと機会が企業
経営に与える財務的影響を評価し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に
ついて適切に開示することを推奨しています。
TCFD公式サイト(英語):https://www.fsb-tcfd.org/
TCFDコンソーシアム公式サイト:https://tcfd-consortium.jp/


以上
TCFD レポート 2023
(気候関連財務情報開示資料)




2023 年 7 月 28 日



― 目次 ―
はじめに ............................................................................................................ 2

1. ガバナンス .................................................................................................... 3

2. 戦略 ............................................................................................................ 5

3. リスク管理 .................................................................................................. 10

4. 指標と目標 ................................................................................................. 12

おわりに .......................................................................................................... 16





はじめに
フィード・ワングループは、穀物や魚粉を主原料とした畜産用・水産用配合飼料の製造・販売から、
畜産物・水産物の生産・販売まで「食のバリューチェーン」を担う事業を営んでおり、自然の恵みの上
に成り立っています。そのため、気候変動が当社グループ事業に及ぼす影響は大きく、使命である皆様
の食卓に安全・安心な「食」を安定的にお届けすることを果たすためにも、取り組むべき重要な社会課
題であると捉えています。
そこで当社グループは、2022 年 4 月に TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への
賛同を表明しました。パリ協定の目指す脱炭素社会(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて
2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする)の実現に向け、TCFD 提言に基づく「ガバナンス」
「戦略」「リスク管理」「指標と目標」のフレームワークを活用した情報開示を積極的に進めてまいります。




<TCFD が開示を推奨する 4 項目の取り組み概要>
項目 取り組み
➢ 代表取締役社長を委員長とする ESG 委員会は、気候関連リスク・機会の特定・評
価並びに取り組み支援を行う。その内容につき定期的に取締役会に報告する。
ガバナンス
➢ 取締役会は、気候関連リスク・機会に関する報告を受け、その対応などにつき監督・
助言を行う。
➢ サステナビリティ重点課題(マテリアリティ)の一つに気候変動を含む「事業を通じ
た環境問題解決」を設定し、気候関連課題への対応を掲げている。
(https://www.feed-one.co.jp/csr/environment/)
➢ ESG 委員会にて、複数のシナリオを参照し当社グループ事業における気候関連リス
ク・機会の特定、財務インパクトの評価、対応策の検討などを実施(シナリオ分析)。
➢ シナリオ分析の結果、気候関連リスクとして「炭素税導入によるコストの増加」「気候
変動に起因する原料生産量・原料価格への影響に伴う利益の減少」などを認識。
戦略
➢ 一方で、「サステナブル飼料の開発・販売、サステナブル原料の活用による飼料販
売数量の増加」「畜産における暑熱対策技術の向上による飼料販売数量の増加」
などを気候関連機会として認識。
➢ これらのリスク・機会への対応策として「設備投資・物流効率化・プラスチック包装資
材削減による炭素税低減への取り組み」「輸入原料の多産地化・飼料米などの価
格や品質面において有利性のある国産原料の活用」「環境負荷低減飼料の開発・
販売」などを実施。
➢ 全社的リスクマネジメント(ERM)規程で採用されている体制・仕組みを活用し、
リスク管理
ESG 委員会にて気候関連リスクの特定・評価を行い、対応策を策定。
➢ 2030 年度目標 : Scope1・2 における CO2 排出量 50%削減(2020 年度比)
指標と目標
➢ 2050 年度目標 : サプライチェーンにおけるカーボンニュートラルの実現


1.ガバナンス
当社グループは ESG/SDGs の取り組みを推進するために「ESG 委員会」を設置しています。
ESG 委員会では、気候関連リスク・機会を含む ESG に関連する当社グループの課題・対応策を検
討・議論しています。委員長は代表取締役社長であり、メンバーは事業部門・管理部門・社長直轄
部門からそれぞれの責任者を選任し、横断的な体制を構築しています。
取締役会は、ESG 委員会から気候関連リスク・機会を含む ESG/SDGs に関する報告を定期的
(年 4 回程度)に受け、その取り組みなどにつき監督・助言を行います。




<サステナビリティ推進体制>





ERM(Enterprise Risk Management)を運用するための組織体制





(1) ESG 委員会について
ESG 委員会は下記の役割を担っています。
① 当社グループの ESG/SDGs の取り組み方針の検討や意思決定を行い、体制を構築・周知す
るとともに、事業に沿った取り組みを推進する。
② 中期経営計画・事業計画と連動した気候関連リスク・機会を含む「ESG/SDGs 全社グループ
目標」を設定し、取り組み支援や助言を行い、進捗を管理する。
③ 気候関連を含む ESG/SDGs に関する事項について、取締役会へ定期的(年 4 回程度)に報
告し、監督・助言を受ける。




<2022~2023 年度 ESG 委員会議題>
年度 月日 議題
➢ ESG/SDGs 全社グループ目標
(2021 年度振り返り・2022 年度目標設定)
【第 1 回】
2022年度 ➢ 人権への取り組みについて
5 月 23日
➢ TCFDレポート 開示案について
➢ 活動報告と今後の予定
➢ ESG/SDGs 全社グループ目標の進捗状況報告
【第 2 回】
➢ TCFD への対応(2021 年度 CO2 排出量の実績報告)
8 月 29 日
➢ 活動報告と今後の予定
➢ ESG/SDGs 全社グループ目標の進捗状況報告
【第 3 回】 ➢ 人権への対応 ~人権デューデリジェンスの取り組み~
11 月 28日 ➢ 日経リサーチ「SDGs 経営調査2022」結果報告
➢ 活動報告と今後の予定
➢ ESG/SDGs 全社グループ目標の進捗状況報告
【第 4 回】 ➢ 環境方針/TCFD レポートの更新について
2 月 27日 ➢ 人権デューデリジェンスの取り組み状況
➢ 活動報告と今後の予定
➢ ESG/SDGs 全社グループ目標
(2022 年度振り返り・2023 年度目標設定)
【第 1 回】 ➢ TCFD提言における取り組みについて
2023年度
5 月 22 日 (CO2 排出量の精緻化・Scope3 の算定)
➢ 人権デューデリジェンス:当社における重要人権リスクの特定
➢ 活動報告と今後の予定





2.戦略
(1) シナリオの設定及びシナリオ分析のプロセス・体制
① 気候関連シナリオの設定
当社グループでは、気候変動への対応を経営上の重要課題と認識し、気候変動が及ぼす
財務インパクトを把握するため、2030 年におけるシナリオ分析を実施しました。
今回のシナリオ分析においては、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間
パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオを参照しています。「世界の平均気温上昇を産業
革命以前に比べて 2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」というパリ協定の目標
達成と脱炭素社会の実現を見据えた「1.5℃/2℃未満シナリオ」と、新たな政策・規制が導入
されずに気候変動が加速する「4℃シナリオ」の二つのシナリオを検討しました。シナリオの概
要は以下のとおりです。




<当社グループにおける気候関連シナリオ>
区分 シナリオ概要 主な参照シナリオ
➢ 脱炭素社会の実現へ向けた政策・規制が実施され、世界全 ➢ IEA World
体の気温上昇幅を産業革命前の水準から 1.5℃~2℃程 Energy Outlook
度に抑えられるシナリオ 2022「NZE」
1.5℃/2℃ ➢ 炭素税※の導入により、オペレーションコストが増加 ➢ IEA World
未満シナリオ ➢ 移行リスクは高いが、物理リスクは 4℃シナリオと比較すると Energy Outlook
低く抑えられる 2022「SDS」
➢ IPCC SSP 1-2.6
➢ IPCC RCP2.6
➢ 気候変動対策の新たな政策・規制は導入されず、世界全体 ➢ IEA World
の気温が産業革命前の水準から 4℃ほど上昇するシナリオ Energy Outlook
➢ 炭素税は導入されるが低額 2022「STEPS」
4℃ ➢ 顧客・市場の脱炭素に対する要求度が低い ➢ IPCC SSP 5-8.5
シナリオ ➢ 自然災害の激甚化による工場の操業停止・物流遮断など ➢ IPCC RCP8.5
のリスクが高まる
➢ 気温上昇・海水温上昇による穀物、魚粉、家畜への影響が
大きい

気候変動の主な原因である CO2 排出量に課される税





② シナリオ分析のプロセス
下記ステップに従い、サプライチェーンを俯瞰した気候関連リスク・機会の特定及び当社グ
ループの事業活動に与える影響と現在の戦略のレジリエンスを評価し、個別の対応策を検討
しました。




③ シナリオ分析体制
財務インパクトの把握及び重要性に応じた適切な対応策の立案を目指し、ESG 委員会の
中に TCFD タスクフォースを設置しました。TCFD タスクフォースは、当社グループにおける各
事業の統括部門及び関係部門の 9 部門が参加し、サステナビリティ推進室が中心となって部
門毎のシナリオ分析を行いました。シナリオ分析結果は ESG 委員会において、経営視点での
審議を重ねた上で承認されました。





(2) シナリオ分析結果
① 気候関連リスク・機会の特定・評価
シナリオ分析では、気候関連リスクを移行リスク・物理リスクの二つのカテゴリーに分類し、
当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があるリスクを「重要リスク」として特定しま
した。また、気候変動への対策を講じることで、当社グループの製品やサービス、企業価値の向
上に繋がる「機会」についても特定しています。
シナリオ分析で抽出された重要な気候関連リスク・機会について、財務影響度は損益及び
事業運営へのインパクトなどの観点から定量的又は定性的に大・中・小の 3 段階に評価し、時
間軸はリスク顕在化の可能性がある時期として、2023 年を基準に短期・中期・長期の 3 段階
に分類しています。




<財務影響度> <時間軸>

大 : 損益影響額 5 億円超 短期 : 5 年以内
又は事業運営への影響が重大

中 : 損益影響額 1 億円超 5 億円以下 中期 : 5 年超 10 年以内
又は事業運営への影響がやや大きい

小 : 損益影響額 1 億円以下 長期 : 10 年超
又は事業運営への影響が軽微





② シナリオ分析結果と対応策一覧


財務影響度
区分 リスク・機会 リスク・機会の説明 時間軸 リスク・機会への対応策
1.5℃/2℃ 4℃

■CO 2排出量(Scope1・2)削減への取り組み
当社グループは2030年度におけるCO 2排出量削減目標を50%(2020
年度比)と掲げ、目標達成に向けて取り組む。
<削減施策>
・省エネ活動(生産性の向上 等)による原単位改善
低炭素・脱炭素社会の実現に向けた世界的なCO 2排出規制の強化による炭素税が導入される。 ・工場への省エネ設備の導入拡大
・IoT技術を活用した生産性向上によるエネルギー使用量の削減
(1.5℃:140$/t-CO 2、4℃:90$/t-CO 2)
・工場や事業所への太陽光発電設備の設置
政  
・老朽化した工場設備のリノベーション
策 ■当社グループのCO 2排出量(Scope1・2)に対する課税
・ 炭素税導入によるコストの増加 ※詳細な算定結果は③参照 大 大 中期
移 規 ■サプライチェーンにおける炭素税低減の取り組み
行 制 <畜産飼料>
リ ■サプライチェーンに対する課税 配合飼料のバラ積み促進や工場でのトランスバック解体作業の削減
ス 物流業者や包装資材会社など、化石燃料を主とする車両や貨物船などの運賃、 <水産飼料>
ク 及び化石燃料由来のプラスチック包装資材の価格に転嫁され、当社グループのコストが増加。 リサイクルプラスチック配合のポリ袋を使用した飼料袋の利用検討
<食品事業>
センター納品を主とした物流・積載効率の最大化
業務用卵製品で使用しているモールドパック ※の利用継続の推進
精肉加工工程で使用されるプラスチック包装資材の使用量の削減

非木材紙を素材とした包装容器


■畜産業における温室効果ガス削減への取り組み
評 サステナビリティを意識した植物代替肉などへ 温室効果ガスであるメタンや一酸化二窒素の放出に起因する家畜の評判が悪化し、サステナビリティを ・牛のゲップに含まれるメタンガスや、家畜の排せつ物から発生するメタン
小 小 長期
判 の需要シフトによる利益の減少 意識した代替肉などへ需要がシフトすることにより、利益が減少する。  ガス・一酸化二窒素を低減させる環境負荷低減飼料の研究開発
・それらの飼料を給与した環境に配慮した畜産物のブランディング

■生産者への対応
<畜産飼料>
・畜舎設備に関する情報提供や地元の行政・生産者との連携強化
・被災時に必要な支援をタイムリーに供給できる体制の構築
将来的な気候変動が予測される中、未曾有の大型台風の襲来確率は高まるとされており、地盤が弱い
<水産飼料>
自然災害による畜産農家・養殖場の物理的損 山間部の畜産生産者においては畜舎損壊の被害が、水産養殖業者においては生簀損壊被害が懸念さ
小 小 短期 ・海外の先進的な波浪に耐えうる養殖設備に関する情報の収集・提供
失、物流の遮断による飼料販売数量の減少 れ、飼料販売数量が減少する。
・同設備に対応する飼料の開発による飼養サポート体制の構築
降雨量の増加による河川の増水・土砂崩れなどにより、配送ルートが遮断されるリスクも想定される。

性 ■物流遮断への対策
従来よりBCPをもとに訓練や対応を実施しており、今後も複数の配送ルー
トによる代替供給が可能な体制を構築することで安定供給に努める。

当社グループはBCPをもとに訓練や対応を実施し、社員の安全確保や飼
将来的な気候変動が予測される中、未曾有の大型台風の襲来確率は高まるとされており、工場の多く
料製造・販売の保全に努めている。
自然災害による工場の操業停止 は沿岸部に立地していることから、高潮被害の拡大により工場操業停止のリスクがある。 小 小 短期
工場が被災した場合は、被災工場以外からの製造応援を実施することで
自然災害の激甚化により、貨物船の到着遅延や道路物流の遮断が生じ、工場への原料搬入が滞る。
リスクの最小化を図っている。

■畜産:家畜への影響
■生産者への対応
4℃シナリオでは、2100年にかけて全国の気温が産業革命前の水準と比べ、4℃程度上昇する。
<畜産飼料>
気温上昇に伴う暑熱ストレスから、国内における養豚・養鶏の飼育成績は2060年にかけて低下し、養
近年では家畜の育種改良や畜舎の空調を安定的に維持する装置の開発
牛においても斃死リスクや乳量減少リスクが高まることが想定される。
など技術革新が進んでおり、今後も継続的に飼養管理技術に関する情報
気温・海水温上昇による家畜・養殖魚への影 過去の猛暑時には世界でも生産性が低下し、気温上昇の慢性化による家畜への影響が懸念される。
の収集・発信を行うことで、家畜の生産性向上に寄与する。
響と国内生産適地の変化に伴う飼料販売数量 小 中 長期
物 <水産飼料>
の減少 ■水産:養殖魚への影響
理 長期的(2100年)には水温が2~3℃上昇することが想定され、環境変化
短中期(2010年~2030年)における海水温の上昇幅は北緯30度~40度付近表層で+0.5℃であ
リ に左右されない完全閉鎖循環式陸上養殖の需要増加が想定される。
り、水温帯の海域に大きな変化は無いと考えられる。
ス 当社においても完全閉鎖循環式陸上養殖に対応する製品の開発が重要
主要養殖魚であるブリの生産量長期予想(2037年~2074年)は、横ばい~増加傾向であり、海水温
ク になると認識し、研究課題として対応を検討している。
の上昇が養殖魚に及ぼす影響は軽微と想定される。

■とうもろこし・魚粉の生産量への影響
主な畜産飼料原料であるとうもろこしは、
2030年に主産地米国では4℃の気温上昇で25%(2020年度比)の減収予測であるが、農業技術の ■価格や品質面において有利性のある原料の積極的活用
発展や品種改良などが進むことにより、グローバルでは増収予測であり、今後も安定的な調達が可能 <畜産飼料>

と推測される。 原料調達リスク及び価格変動リスク分散の観点から輸入国の多様化を図

主な水産飼料原料である魚粉は、中長期にかけてグローバルでは減少予測であるが、その減少幅は小 るとともに、輸入原料代替として近年生産が増加している飼料米などの国
さく、魚粉においても当面は安定的な調達が可能と推測される。 産原料の活用を積極的に行っている。
<水産飼料>
■とうもろこし・魚粉の価格への影響 産地の供給状況をモニタリングしながら国内魚粉や現地魚粉メーカーと
とうもろこしはバイオエネルギーに使用されるなど、飼料とは異なる用途の需要増大により2030年にか の連携を強化し、フレキシブルな対応が行える体制を構築することで、リス
気候変動に起因する原料生産量・原料価格へ
けて価格上昇が見込まれる。 大 大 長期 ク低減を図る。
の影響に伴う利益の減少
魚粉においてもエネルギー価格の高騰や技術革新に伴う設備投資額の増加により、中長期にかけて価 また、将来的な資源の枯渇や価格高騰リスクも鑑みて低魚粉・無魚粉飼
格上昇が見込まれる。 料の研究開発を実施し、切替えを推進する。

■配合飼料の販売価格 ■適正な価格改定
畜産飼料の製品原価における原材料費率は8割強であり、現段階においては、原料相場の変動に伴い <畜産飼料>
四半期毎に販売価格の改定を行うことでリスク回避を図っているが、2030年にかけて急激に原料価格 原料動向を加味した四半期毎における適正な販売価格改定の継続
が高騰した際は、適正な価格改定を維持できずに利益が減少する可能性がある。 <水産飼料>
水産飼料も製品原価における原材料費率は8割強であり、その4割強を魚粉が占めているが、水産飼 不定期だが原料価格の変動に応じた販売価格の改定によるリスク低減
料においては、定期的な価格改定がないことから、原料価格の販売価格への転嫁状況によっては、利益
が減少する可能性がある。

北九州畜産工場において、タブレット端末を活用した工場のリモート制御
資 脱炭素社会の実現に向けた世界的なCO 2排出規制の強化に伴い、社会全体で排出削減に繋がるIoT
や、工程別の電力量・蒸気量管理による生産性向上やエネルギー使用量
源 IoT技術を活用した製造の効率化によるエネ ソリューションニーズが高まり、IoT技術の向上・普及が進むことが想定される。
小 小 中期 の低減に取り組んでおり、従来からエネルギー効率を17%改善した。
効 ルギー使用量の削減 IoT技術の導入・活用により、工場における製造の効率化を実現させ、エネルギー使用量の低減による
今後も全工場にIoT技術を普及させることで、さらなるエネルギー効率の
率 利益改善が期待できる。
改善を図る。

■畜産飼料
■畜産飼料 家畜の飼料要求率改善を図る製品や糞量低減飼料の開発・販売を従来
環境負荷低減の観点から温室効果ガスの排出量を低減させる飼料のニーズが高まることが想定され、 から行っている。また、牛から排出されるメタンガスを低減させる飼料の開
牛のゲップに含まれるメタンガスを低減させる飼料やメタンガス・一酸化二窒素を含む家畜の排せつ物 発にも取り組んでおり、今後もグローバルな視点から素材の探索や情報
を低減する飼料など、環境負荷低減飼料の研究開発を進めることで飼料販売数量の拡大が期待でき 収集を継続的に進めることで、他社に先行して製品開発を実現し、飼料販
機 る。 売数量拡大を図る。
製 サステナブル飼料の開発・販売、サステナブル 中 中 短期

品 原料の活用による飼料販売数量の増加 ■水産飼料 ■水産飼料
・ 天然資源に依存しない低魚粉・無魚粉飼料のニーズが高まることが想定され、魚粉の代替原料として 低魚粉・無魚粉飼料の開発を進めており、一部の魚種においては、低魚粉
サ サステナビリティに優れた昆虫由来原料の普及拡大が期待される。また、温室効果ガスを吸収する機能 飼料の販売を行っている。昆虫由来原料や藻類・メタン資化菌の活用にお
ー を有した飼料原料(藻類・メタン資化菌)への関心も高まることが想定され、これらの原料を配合した飼 いては、発生量が少なく高価という課題を抱えているが、他社に先駆けて
ビ 料の販売数量拡大が期待できる。 実用化に向けた取り組みを行い、使用ノウハウを得ることで飼料販売数量
ス の拡大を図る。


従来より暑熱対策向けの飼料やサプリメントの開発・販売を行っており、家
気温上昇に伴う暑熱ストレスから国内における養豚・養鶏の飼育成績は2060年にかけて低下し、養牛
畜産における暑熱対策技術の向上による飼料 畜の生産性改善に大きく貢献してきた。
においても斃死リスクや乳量減少リスクが高まることが想定されることから、暑熱対策向け飼料のニーズ 中 中 短期
販売数量の増加 今後もさらなる研究開発を進め、飼養管理技術について継続的に情報収
の高まりが期待できる。
集を行い、環境に配慮しつつ質の高いサービスを提供する。





③ シナリオ分析で算出した炭素税額について
シナリオ分析の結果、脱炭素社会への移行に伴うリスクである「炭素税導入によるコストの
増加」が、当社グループに及ぼす影響として定量的に大きいことを認識しました。炭素税額に
ついては、当社及び CO2 排出量の多い関係会社 3 社の Scope1・2 の CO2 排出量を対象
範囲として、下記二つのパターンを検討しました。


(i) 当社グループが CO2 排出量削減への取り組みを講じなかった場合
(ii) 当社グループが 2030 年度に CO2 排出量(2020 年度比)を 50%削減した場合


<2030 年度を想定した当社グループの炭素税額及び算出方法> (単位:百万円)
1.5℃ 4℃
パターン 算出方法
シナリオ シナリオ
➢ 事業成長率を加味した 2030 年度の CO2 排出量に炭素税※
(ⅰ) 605 417
を乗じて算出。
➢ 事業成長率を加味しかつ 50%削減達成時の 2030 年度の
(ⅱ) 371 239
CO2 排出量に炭素税※を乗じて算出。

炭素税: 1.5℃シナリオ $140/t-CO2(IEA World Energy Outlook 2022「NZE」先進国を参照)
4℃シナリオ $190/t-CO2(IEA World Energy Outlook 2022「STEPS」EU を参照)
為替レートは 1 ドル 140 円で試算


1.5℃シナリオにおいて、当社グループが CO2 排出量削減への取り組みを講じず、事業活
動の成長に伴い CO2 排出量が増加した場合の 2030 年度の炭素税額は、約 6 億円となりま
した。
一方で、当社グループが掲げる 2030 年度の CO2 排出量削減目標 50%(2020 年度比)
を達成した場合、炭素税額は約 2 億 3 千万円削減でき、約 3 億 7 千万円になると見込んで
います。なお、CO2 排出量削減に伴うコストは含まれておりません。





3.リスク管理
(1) 気候関連リスクを特定・評価するプロセス
ESG 委員会の中に設置されている TCFD タスクフォースにてグループ内関係部門との審議
を通じ、内部・外部要因を鑑みて当社グループの気候関連リスク・機会を特定します。特定した
気候関連リスク・機会は、ERM 規程にて採用されている体制・仕組み(プロセス・指標)を活用
し、当社グループへのインパクトを定量・定性的に分析・評価し、対応策を策定します。


(2) 気候関連リスクを管理するプロセス
ESG 委員会は、気候関連リスク・機会への対応の実施状況をモニタリングし、対応策の妥当
性の確認を行うことで当該リスク・機会への対応の改善を図り、重要な事項は取締役会へ報告
します。
取締役会は、ESG 委員会より報告される気候関連リスク・機会への対応策を監督・助言する
役割を担っています。


<気候関連リスク・機会を特定・評価・管理するプロセス>




(3) 気候関連リスクを特定・評価・管理するプロセスの総合的リスク管理への統合について
当社グループでは、ERM 規程を制定し、リスクを「経営又は事業の目的(中期経営計画、事
業計画等)達成に負の影響を与え、かつ確実に発生するかどうか分からない事象」と定義し、
全社 RM 会議を中心としてリスクマネジメントを行っています。リスクマネジメントは全国の計 57
部門においても取り組んでおり、各部門には推進チームを設定し、年間を通じてリスク管理(特
定、分析・評価、対策実行、モニタリング・改善)の PDCA を回しています。


気候関連リスクに関しては、TCFD タスクフォースと全社 RM 会議が下図のとおり連携し、総
合的なリスク管理をすることで、グループ全体のリスクの最小化や機会の最大化を図っています。


<ESG 委員会と全社 RM 会議との連携>




<全社 RM 会議を中心とした活動内容>
項目 実施内容 頻度
➢ リスクの特定及び分析・評価
セルフチェック
➢ リスクへの対応策の策定 年1回
(各部門による自己診断)
※それぞれ気候関連リスクを含む
➢ 活動計画の確認
➢ 全社重点リスク対応状況の確認
定例会 年4回
➢ モニタリング件数確認
➢ 啓発を目的とした情報共有
➢ 年間活動計画・全社重点リスクの確認
経営会議への報告 ➢ 活動進捗状況の報告 年2回
➢ 年間活動結果の報告
➢ 新入社員研修
研修会 年数回
➢ ファシリテーター研修





4.指標と目標
当社グループでは、気候変動に伴うリスクの最小化と機会の最大化を図るため、CO2 排出量を
重要な指標として定めています。2030 年度までに当社グループにおける Scope1・2 の CO2 排出
量を 50%削減するという目標(2020 年度比)を掲げ、2050 年度にはサプライチェーンにおける
カーボンニュートラルの達成という目標を設定しました。


(1) CO2 排出量削減目標
① 中期目標
(i) 目標年度 2030 年度
(ii) 内容 Scope1・2 における CO2 排出量 50%削減(2020 年度比)
(iii) 対象範囲 単体及び主要関係会社


② 長期目標
(i) 目標年度 2050 年度
(ii) 内容 カーボンニュートラルの達成
(iii) 対象範囲 サプライチェーン全体





(2) 中期目標における CO2 削減ロードマップ
当社グループでは、中期目標に向けて三つの削減施策を策定し、目標年度である 2030 年
度までの脱炭素ロードマップを作成しました。
2030 年度にかけて事業成長による排出量の増加が見込まれるものの、さらなる排出量削減
を当社グループにおいて実現してまいります。また、事業活動を通じてサプライチェーン全体にお
ける低炭素化及び脱炭素化に貢献することが重要であり、削減貢献量も含めた削減施策を実
行することで、取り組みをより一層加速してまいります。




① 省エネ・創エネ活動
生産拠点における原単位の改善、省エネ性能の高い設備への更新などを進めるとともに、
燃料の転換(重油⇒液化天然ガス等)や設備の電化(ヒートポンプ・電動フォークリフト導入等)
を進めてまいります。
また、太陽光などの再生可能エネルギー発電設備を導入することで自社における創エネに
取り組むとともに、生産拠点の再編も視野に入れながら着実な削減を実現してまいります。


② 再エネ電力切替
再生可能エネルギー由来の電力を購入することで、当社グループの電力の非化石化を実
現するとともに、国内における再エネ導入の加速に寄与してまいります。


③ 削減貢献量によるオフセット
牛のゲップに含まれるメタンガス、家畜の排せつ物から発生するメタンガスや一酸化二窒素
など畜産由来の温室効果ガス削減に貢献し、その環境価値(J-クレジット等)を当社が購入・
オフセットすることで、サプライチェーンにおける低炭素化及び脱炭素化に寄与してまいります。


(3) CO2 排出量実績 : Scope1・2 単位:t-CO2
項目 対象範囲 2020 年度 2021 年度 2022 年度
Scope1・2 40,774 40,664 43,914

(▲0.3%) (+8.0%)

Scope1 単体 14,435 15,347 18,739

主要関係会社(工場)

Scope2(熱) 単体 2,280 1,108 820

主要関係会社(工場)

Scope2(電気) 単体 24,059 24,209 24,356

主要関係会社(工場)

※算定基準(対象となるエネルギー類)を「省エネ法」から「GHG プロトコル」に変更したため、
2020 年度・2021 年度の数値を見直しました
※カッコ内は前年度対比となります
※小数点の関係で合計値が合わない場合があります




(4) CO2 排出量実績 : Scope3 単位:t-CO2
項目 対象範囲 2020 年度 2021 年度 2022 年度
Scope3 1,420,061 1,784,969 1,860,584

(+25.7%) (+4.2%)

カテゴリー1 単体※1 1,418,931 1,783,749 1,859,445
※1
【購入した製品・サービス】 原料購入分のみ

カテゴリー5 単体(工場・研究所) 724 782 688
【事業から出る廃棄物】 主要関係会社(工場)

カテゴリー6 単体(本社) 71 78 104
【出張】

カテゴリー7 単体 336 359 346
【雇用者の通勤】

※カッコ内は前年度対比となります
※小数点の関係で合計値が合わない場合があります





(5) CO2 排出量削減の取り組み
取り組み① : ガスコージェネレーションの導入(省エネ)

⚫ 北九州水産工場・北九州畜産工場に導入

⚫ 液化天然ガスを用いて発電する際に発生する排熱の一
部を有効活用し、蒸気生産時のエネルギー効率向上を
図る設備


<導入効果>
CO2 排出量【約 200t-CO2/年】の削減効果




取り組み② : バイソンサイクロンの導入(省エネ)

⚫ 北九州水産工場・東北飼料㈱に導入

⚫ 蒸気省エネルギー圧力調節器であり、ボイラーから出て
きた湿り度の高い蒸気をサイクロン状に旋回させ蒸気と
ミストに分離し、ミスト分を再蒸発させ、乾き度(質)の高
い過熱蒸気に改質することでエネルギー効率向上を図
る設備


<導入効果>
液化天然ガス使用量【約 10%/年】の削減効果
(北九州水産工場における実績)




取り組み③ : 工場照明設備の LED 化(省エネ)

⚫ 当社グループ 6 工場に導入

⚫ 従来の水銀灯などからの照明を LED 化し、省エネ効果
によるエネルギー使用量の削減に加え、CO2 排出量の
削減にも寄与


<導入効果>
CO2 排出量【約 82t-CO2/年】の削減効果



おわりに
フィード・ワングループは、持続可能な社会への貢献と持続的な成長を目指し、「サステナビリティ重
点課題」である「事業を通じた環境問題解決」の一つに気候変動をテーマとして設定し、取り組んでい
ます。
先に掲げた中長期目標の達成に向けて作成したロードマップをもとに、まずは継続的な省エネ活動
や設備投資などによる Scope1・2 における CO2 排出量の削減を進めてまいります。また、Scope3 に
おいてはさらなる CO2 排出量の精緻化に加え、削減への取り組みとして、原料調達段階で発生する
CO2 排出量削減のため、海外から輸入している原料の一部を国産原料に置き換える取り組みを進め
ています。そして、削減貢献量においては畜産由来の温室効果ガス削減を目的として、牛のゲップに含
まれるメタンガス低減飼料の開発及び家畜の排せつ物から発生するメタンガスや一酸化二窒素を低
減する糞量低減飼料の開発・販売に既に取り組んでいます。この畜産由来の温室効果ガス削減効果
を J-クレジットなどの環境価値として「見える化」することが、当社グループとして、業界全体で取り組
みを進めていくうえで重要であると考えています。
このようなサプライチェーンとの連携を図りながら業界全体の低炭素化及び脱炭素化に貢献すると
ともに、パリ協定の目標達成と脱炭素社会の実現に貢献してまいります。


今後とも当社グループは、TCFD が提言するフレームワークに基づき、定期的に気候関連リスク・機
会の見直しや財務インパクトのレビューを実施し、開示情報のさらなる充実と気候変動への取り組み強
化を目指してまいります。




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フィード・ワン株式会社
経営企画部 サステナビリティ推進室
e-mail:ir@feed-one.co.jp


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