悪性胸膜中皮腫を対象とした医師主導治験(第I相)第1症例への投与完了のお知らせ

2022 年 1 月 20 日

各 位


東 京 都 千 代 田 区 麹 町 三 丁 目 2 番 4 号
会 社 名 株式会社スリー・ディー・マトリックス
代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 岡 田 淳
(コード番号:7777)
問 合 せ 先 取 締 役 新 井 友 行
電 話 番 号 03 (3511)3440


悪性胸膜中皮腫を対象とした医師主導治験(第 I 相)第1症例への
投与完了のお知らせ

株式会社スリー・ディー・マトリックス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岡田淳、以下
「当社」)は、国立大学法人広島大学(学長:越智光夫)、同大学院医系科学研究科・細胞分子生物学
研究室の田原栄俊教授らと「天然型マイクロ RNA*1」補充型核酸医薬*2「MIRX002」を共同開発してお
ります。MIRX002 は、悪性胸膜中皮腫に効果のあるマイクロ RNA と、それをがん細胞に送達するた
めの当社界面活性剤ペプチド*3「A6K」を組み合わせたものです。
この度、MIRX002 の開発推進を進める広島大学の田原栄俊教授により設立されたベンチャー企業で
あり、
当社が特許譲渡並びにライセンス契約及び資本提携を進めている株式会社 PURMX Therapeutics
(本社:広島市、代表取締役社長:田原栄俊、以下「PURMX」
)より、天然型マイクロ RNA 補充療法に
よる悪性胸膜中皮腫を対象とした医師主導治験(第 I 相)において、1 例目の被験者に MIRX002 が投
与されたとの発表がありましたので、お知らせします。


悪性胸膜中皮腫は、肺の胸膜と呼ばれる部分に発生するがんの一種であり、主にアスベスト(石綿)
への曝露が原因で発生するといわれています。潜伏期間が 25~50 年と非常に長く、今後 2030 年頃
が発生ピークとなり、年間 3000 人以上の罹患が予測されています。治療法として外科的切除、抗癌
剤療法、免疫療法および放射線療法の組み合わせがあるものの、再発率は高く、予後が非常に悪い状
況です。悪性胸膜中皮腫を根治し、患者の QOL
(生活の質)を上げるような治療法が望まれています。
本医師主導治験は、悪性胸膜中皮腫の患者を対象として胸腔内に MIRX002 を投与するものであり、
安全性および忍容性を評価し、推奨用量を決定することを目的とした第 I 相試験*4 です。世界で初
めて人に投与するファースト・イン・ヒューマン試験*5 であり、悪性胸膜中皮腫への有効性につい
ては探索的に検証します。


天然型マイクロ RNA は体内に投与すると瞬時に分解されてしまうため今まで開発が進んでいませ
んでしたが、当社界面活性剤ペプチド A6K と混合することでマイクロ RNA が天然型を保ったまま、
分解からの保護と働きを調節したいがん細胞への送達を同時に達成し、本核酸医薬の開発に至りま
した。さらに、MIRX002 のマイクロ RNA は、悪性胸膜中皮腫のがん細胞だけでなく、再発の原因と
なる「がん幹細胞*6」や「抗がん剤耐性がん細胞」にも顕著な効果を示すことがわかっています。こ
れにより、悪性胸膜中皮腫の根治が期待される画期的な治療です。当社は、このような核酸医薬によ
るがんの治療は、今後さらに広がっていくと考えており、その中で当社のドラッグ・デリバリー・シ
ステム(以下、
「DDS」)技術が幅広く核酸の送達に活用されていく可能性があります。
なお、当社が提供する界面活性剤ペプチド「A6K」は、当社が開発中の難治性乳癌に対する siRNA
核酸医薬「TDM-812」においても既に用いられており、医師主導治験において人での核酸医薬の送達
を実証済みで、今回が 2 例目の実証となります。


なお、本件による通期業績への影響及び現中期経営計画における事業収益への影響はございませ
ん。承認取得の状況やその他の関連事項が業績に影響を与える場合には、速やかにお知らせします。



以 上
【参考(語句説明)

*1:マイクロ RNA
生体内に存在する 20~25 塩基からなる微小な RNA であり、他の遺伝子の発現を調節することで
様々な生命現象を制御する分子です。人の体内には、判明しているだけでも 2500 種類以上のマイ
クロ RNA が存在しています。


*2:核酸医薬
核酸医薬とは、異常な遺伝子の働きに対し、それを抑制するように作用する新しい医薬品です。
様々な遺伝子に対する核酸医薬が注目されていますが、現在のところ悪性胸膜中皮腫に対する治
療薬として承認されている核酸医薬はなく、新たな開発が期待されております。マイクロ RNA は、
人の細胞で合成される核酸の一種であることから、
「天然型」の核酸と呼ばれています。


*3:界面活性剤ペプチド
6-10 残基程度のアミノ酸から構成されるペプチドで、疎水性部分と電荷をもつ部分が分子内の共
存することにより界面活性剤としての性質を示します。水溶液中で自己組織化されることでナノ
チューブを形成し、マイクロ RNA をはじめとする各種の分子と複合体を形成します。それにより
体内での核酸の分解を保護したり、がん細胞への送達を達成できることがわかっております。


*4: 第Ⅰ相試験
新しい薬をはじめて人(患者)に投与する段階の試験。少数の患者で、投与量を段階的に増やして
いき、薬の安全性と適切な投与量、投与方法を調べます。通常、標準的治療法のないがん患者が対
象となります。


*5: ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験
新しい薬を全世界ではじめて人(患者)に投与する段階の試験。人における投与経験がないため、
第 I 相試験のなかでも特に緻密さや経験が要求されます。これまでの医薬品開発では、先に海外
で FIH 試験とその後の開発が進んでから日本での開発が行われることが多く、ドラッグラグを生
む一因となっていました。


*6:がん幹細胞
がんの転移や治療抵抗性を担う細胞集団といわれ、いわゆるがんの悪性度を司る親玉細胞のこと
です。がん細胞を生み出す元となる細胞ともいわれ、抗がん剤などの既存の治療法が効果を発揮し
にくいとされています。がんの根治のため、核酸医薬をはじめとしたがん幹細胞を標的とする新規
の薬剤の開発が望まれています。

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