あたらしい小型原子時計のガスセルの作製成功と販売に関するお知らせ -超高精度磁気センサからジャイロセンサまで新規市場参入へ-

2021 年9月 10 日
各 位
会 社 名 株式会社多摩川ホールディングス
代表者名 代表取締役社長 桝沢 徹
(JASDAQ・コード6838)
問合せ先 経営企画部 山内 加奈
電話番号 03-6435-6933


あたらしい小型原子時計のガスセルの作製成功と販売に関するお知らせ
~超高精度磁気センサからジャイロセンサまで新規市場参入へ~

この度、当社は東北大学と共同で進めて参りました研究開発にお
いて、小型原子時計の性能を大きく支配する重要な構成部品のガス
セルを小型かつ低コストに製造する方法(特許出願中)の実証に成
功いたしました。またその実証試験として行われた小型原子時計の
原理実証にも成功しております。今後、ガスセル単体の販売を視野
に入れた仕様等の聞き取りと、さらなる研究開発を進めることとし
ましたので、お知らせいたします。

図 1 今回開発に成功したガスセル
1.経緯
2020 年 7 月 6 日付「小型原子時計および原子時計を利用したアプリケーションの研究開始について」
にて公表いたしましたとおり、当社は国立大学法人東北大学工学研究科・小野崇人教授を研究担当代表者
として、小型原子時計(Miniature Atomic Clock)および原子時計を利用したアプリケーションの共同研究
を進めて参りました。


2.小型原子時計及びガスセルについて
小型原子時計は人工衛星や惑星探査機、通信基地局等に利用されており、今後はスマートフォン等のモ
バイル端末や、スマートグリッドの電力制御システム等への搭載が期待されております。例えば、時刻同
期として用いる際は、GPS (Global Positioning System)信号から UTC (協定世界時, Universal Time Coordinated)
と同期させて、複数の基地局間や端末間における信号の送受信の時間の遅れをより小さくすることが行わ
れ、近年広く使われております web 会議等の映像や音声の遅れを減らすことが可能となります。


この小型原子時計には、ガスセルと呼ばれるアルカリ原子を封入したガラス窓のある小さな容器が搭載
されております。このガスセルにレーザー光を入射し、CPT(Coherent Population Trapping)共鳴とよばれ
る量子干渉現象を起こさせて、アルカリ原子のエネルギー準位の差に等しい信号を取り出し、安定化され
たクロック信号を出力します。ガスセルは小型原子時計の性能を大きく支配するもので、世界各国の研究
所等で多くの開発が進められておりましたが、作製方法に課題があり、コスト面に問題を残しておりまし
た。そして、近年開発され利用されているアルカリ原子が含まれる固形材を用いる比較的容易な作製方法
を用いたとしても、サイズと性能の面で解決すべき課題がありました。
図 2 アルカリ原子ディスペンサー(アルカリ原子が含まれる固形材)を用いたガスセル。(a)
従来型のガスセルで、ディスペンサーが残されている。(b)今回実証したガスセル。ディスペ
ンサー部分を切り離し、小型化、高性能化、低コスト化が実現されている。

3.今回の開発について
当社は上記の課題を解決するあたらしいガスセルの作製方法を発明し、特許出願を行い、作製、評価を
進め、その実証に成功いたしました(図 1 参照)
。この作製方法は MEMS (メムス, Micro Electro Mechanical
Systems)と呼ばれる、半導体微細加工技術を応用した技術を用いており、従来のガスセル作製方法から比
較すると、サイズは約 2 分の 1 に小型化いたしました(図 2 参照)。
詳細については、2021 年 11 月 9 日(火)~11 日(木)にオンラインで開催されます第 38 回「センサ・
マイクロマシンと応用システム」シンポジウムで発表予定であります。


4.今後の取組みについて
アルカリ原子を封入したガスセルは、小型原子時計以外に超高精度な磁気センサやジャイロセンサ等の
光量子センサにも利用され、市場は拡大傾向にあります。新たなガスセルを利用する小型原子時計の開発
を加速させるとともに、今後はガスセル単体での販売を視野に入れた仕様等の聞き取りを実施して市場に
参入し、基礎技術の確立と応用を推進して参ります。


2019 年 2 月 14 日付「東北大学(宮城県仙台市)との共同研究の開始に関するお知らせ」にて公表いた
しましたとおり、当社は自然エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、温泉熱他)分野での活用が見込ま
れております、余剰電力の最適化機器制御・モニタリングシステムの研究開発につきましても、東北大学
マイクロシステム融合研究開発センター・古屋泰文学術研究員(元東北大学特任教授、弘前大学名誉教授)
を研究担当代表者とする共同研究を進めております。
時代や社会のニーズが大きく変化する中、当社は課題や新たなニーズを見つけ、既存の技術領域から新
しい領域に拡大することで、事業拡大を目指しております。通信(5G)・環境・災害対策をキーワードと
し、スマートシティのインフラとなる「通信」「エネルギー」分野でソリューションを提供することで、

「脱炭素社会」の実現に貢献して参ります。


以 上

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