新開発異種金属接合法を用いた核融合炉用高熱負荷機器開発が重要マイルストーンを通過

2023 年 3 月 9 日

各 位

会社名 東邦金属株式会社
代表者名 代表取締役社長 小樋 誠二
(コード番号:5781 東証スタンダード)
問合せ先 総 務 部 部 長 西﨑 友彦
(TEL:06-6202-3376)


新開発異種金属接合法を用いた核融合炉用高熱負荷機器開発が
重要マイルストーンを通過
― 産学連携で生まれた新技術が核融合炉の実現に大きく貢献 ―

研究の概要
自然科学研究機構 核融合科学研究所(岐阜県土岐市 所長・吉田善章)と東邦金属株式会社(大阪
市中央区 取締役社長・小樋誠二)の研究グループは、将来の核融合炉への実装を目指した、ダイバ
ータ※1と呼ばれる高い熱負荷に曝される炉内機器の開発を行っています。これまで、同グループはそ
の機器の製作に必要不可欠である、異種金属の接合技術を新たに開発してきました。今回、その新接
合技術を用いて製作した機器を核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)に取り付け、約3か月
間の実験で、高温プラズマを 8,000 回以上照射する試験を実施しました。実験終了後に行った検査で
は、機器の接合部の異常や表面の損傷は認められず、照射後の健全性が確認されました。今回の実験
結果は、本接合技術の高い信頼性を示しており、今後実用化に向けた研究の進展が期待されています。
この成果は、3/13-3/15 に開催される日本原子力学会・春の年会で発表予定です。


研究の背景
「核融合炉」は、持続可能な社会におけるクリーンなエネルギー源として早期実現が期待されてい
ます。核融合科学研究所と東邦金属(株)は、核融合炉を構成する重要機器の1つである、ダイバー
タの開発を共同で推進しています。ダイバータには、高い耐熱性能と除熱性能の両立が求められてお
り、高融点金属であるタングステンと、高熱伝導特性を有する銅合金を接合する技術の確立が不可欠
です。研究グループは、従来のロウ付け等の接合法に替わる、新たな異種金属接合技術※2を開発し、
ダイバータや産業機器への応用を目指してきました。
本共同研究で開発中のダイバータは、電子ビームをタングステン表面に照射して熱負荷を与える方
法で、既に 20MW/m2※3という高熱負荷環境下での健全性が確かめられています。しかし、電子とともに
イオンも存在する高温プラズマに繰り返し曝される等、核融合炉条件に近い過酷な環境下における健
全性の確認が待たれていました。


研究の成果
研究グループは、開発中のダイバータ試験体(図1)を、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置
(LHD)に設置し、昨年9月末より約3か月間にわたって行われたプラズマ実験期間中、8,000 回以上
生成された高温プラズマに繰り返し曝露しました。
実験中は、ダイバータの温度や、表面から放出される不純物の種類と放出量、プラズマの温度や密
度、真空度といった各種の値を計測しましたが、機器自体の異常やプラズマへの悪影響は観測されま
せんでした。
さらに、実験終了後の本年2月末に、LHD の真空容器内に入ってダイバータ試験体を調査しました。
高熱負荷に曝されたタングステン表面にはしばしば亀裂や接合面の異常が見られることがありますが、
本試験体の目視による観察では、そのような亀裂や異常は発見されず、機器全体の健全性が確認され
ました。今後、電子顕微鏡をはじめとする各種装置を用いて微細な分析を行う予定です。




図 1 今回開発したダイバータ試験体。タングステンのプラズマ対向板と銅合金製の除熱体(水冷)
からなる。半透明化した除熱体の中に見えるのは水冷配管。


研究成果の意義と今後の展開
今回、新開発の異種金属接合技術を用いて製作したダイバータが、高温プラズマ照射環境下での試
験に成功したことから、本技術の高い信頼性が確認されました。今後、将来の核融合炉への実装を目
指し、国内外の大型プラズマ実験装置における実験を計画しています。また、高温プラズマや高熱流
束を対象とした「核融合研究」のスピンオフである本技術は、高熱を扱う場面において、産業機器へ
の応用・展開も大いに期待できると考えています。


【用語解説】
※1 ダイバータ
高温のプラズマが直接接触し、余剰なプラズマ粒子を排気する機器
※2 新たな異種金属接合技術
研究グループが開発した、粉末固相接合法(Powder Solid Bonding, PSB)
と命名された、プラズマを利用した異種金属接合法。(特許第 6563581 号)
https://www.nifs.ac.jp/news/press-o/200918.html
※3 20MW/m2
地上で観測される太陽熱の約 20,000 倍

【研究体制】
森﨑 友宏 (自然科学研究機構 核融合科学研究所 教授)
村瀬 尊則 (自然科学研究機構 核融合科学研究所 技術部実験応用技術係長)
坂田 浩章 (東邦金属株式会社 技術開発部部長)
北垣 慎二 (東邦金属株式会社 技術開発部次長)
高橋 雄太 (東邦金属株式会社 技術開発部応用技術開発課課長)
中島 擁平 (東邦金属株式会社 技術開発部応用技術開発課)
【発表情報】
会議名:日本原子力学会 春の年会
講演タイトル:
(SPS法を用いたタングステン-銅合金接合によるダイバータ受熱機器の開発)
著者名:村瀬尊則、森﨑友宏、林祐貴、坂田浩章、北垣慎二、高橋雄太、中島擁平


【研究サポート】
本研究は核融合科学研究所と東邦金属株式会社との共同研究として行われました(平成29年9月29日
締結)。また幅広い産業分野への更なる応用展開を支援する「自然科学研究機構の産学連携支援事業」
(令和元年度~2年度)に採択されました。


【本件のお問い合わせ先】
● 研究内容について
大学共同利用機関法人
自然科学研究機構 核融合科学研究所 技術部
装置技術課 実験応用技術係
係長 村瀬 尊則(むらせ たかのり)
電話: 0572-58-2110 E-mail: murase.takanori@nifs.ac.jp

東邦金属株式会社 技術開発部
次長 北垣 慎二(きたがき しんじ)
電話: 072-830-2268 E-mail: s-kitagaki@tohokinzoku.co.jp


● 本件の広報について
大学共同利用機関法人
自然科学研究機構 核融合科学研究所 ヘリカル研究部
基礎物理シミュレーション研究系
准教授 兼 対外協力部副部長 樋田美栄子(といだ みえこ)
電話: 0572-58-2377 E-mail: toida.mieko@nifs.ac.jp

東邦金属株式会社 総務部
部長 西﨑友彦 (にしざき ともひこ)
電話: 06-6202-3376 E-mail: nishizaki@tohokinzoku.co.jp


● 取材の申し込みについて
東邦金属株式会社 総務部
部長 西﨑友彦 (にしざき ともひこ)
電話: 06-6202-3376 E-mail: nishizaki@tohokinzoku.co.jp


以上

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