慢性期脊髄損傷に対する治療に関する特許出願のお知らせ

2022 年3月 11 日
各 位
会 社 名 クリングルファーマ株式会社
代表者名 代 表 取 締 役 社 長 安達 喜一
(コード番号:4884 東証マザーズ)
問合せ先 取締役 経営管理部長 村上 浩一
(TEL.072-641-8739)



慢性期脊髄損傷に対する治療に関する特許出願のお知らせ

当社は、学校法人慶應義塾(理事長:伊藤公平)と共同で慢性期脊髄損傷に対する治療に関する特許出
願を行ったことをお知らせいたします。

当社は、現在、脊髄損傷急性期患者を対象に組換えヒト HGF タンパク質(以下、 「HGF」
)を投与する第
Ⅲ相臨床試験を実施すると共に、慶應義塾大学医学部生理学教室 岡野栄之教授及び同大学医学部整形外
科学教室 中村雅也教授と新規の脊髄損傷治療に関する共同研究を進めてまいりました(2021 年2月 10
日付け当社プレスリリース参照、以下、 「本研究」。この度、慢性期完全脊髄損傷モデル動物に対して、

慶應義塾大学が保有する iPS 細胞由来神経幹/前駆細胞と当社が開発する HGF 及びスキャフォールド(足
場基材)を併用することにより機能回復が得られることを見出しましたので、 特許を共同出願する運びと
なりました。特許出願の概要は以下の通りです。

【概要】
発明の名称:脊髄損傷治療剤
出願番号:PCT/JP2022/10976
出願日:2022 年3月 11 日
概要:脊髄損傷では、外力により脊髄実質に傷害が起こると、急性期には炎症によって二次損傷と呼ば
れる脊髄損傷範囲の拡大が起こります。 その後、炎症が落ち着いた亜急性期を経て慢性期へと移
行しますが、慢性期では損傷を受けた脊髄が脱落して空洞化や瘢痕組織が形成されるために神
経軸索の再生が困難になることが知られています。
本研究では、胸髄を完全に切断した慢性期脊髄損傷のラットモデルに対して、HGF を含有するス
キャフォールドを損傷部位に設置後、 細胞由来神経幹/前駆細胞を移植し観察しました。
iPS その
結果、損傷部の神経再生が促進され、後肢運動機能が再獲得されました。
本研究によって、これまで治療法のなかった慢性期脊髄損傷に加えて、脊髄が断裂した最も重症
な脊髄損傷に対しても治療効果が得られる可能性が示唆されました。本出願は、上記の併用によ
る脊髄損傷治療剤に関するものです。

なお、本件による本年度の業績への影響はございません。
HGF(Hepatocyte Growth Factor, 肝細胞増殖因子)について
HGF は、成熟肝細胞の増殖を促進する因子として発見された生理活性タンパク質であり、その後の研究か
ら細胞増殖のみならず、細胞運動促進、抗細胞死、 形態形成誘導、血管新生など様々な組織・臓器の再
生と保護を担う多才な生理活性を有することが明らかにされました。
HGF は神経保護作用や軸索伸展作用も有し、神経難病とされる脊髄損傷や筋萎縮性側索硬化症(ALS)に
対する薬理効果は、慶應義塾大学医学部生理学教室 岡野栄之教授及び整形外科学教室 中村雅也教授ら
のグループ、 並びに東北大学神経内科学 青木正志教授らのグループの研究により明らかにされています。
新たな神経難病治療薬として、HGF への期待が高まっています。

iPS 細胞由来神経幹/前駆細胞について
ヒト iPS 細胞(人工多能性幹細胞)に由来し、未分化な状態を保ったまま増殖することが可能な自己複製
能と、中枢神経系を構成する3系統の細胞(ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト)へと
分化できる多分化能を併せ持つ細胞です。現在、慶應義塾大学病院において、 「亜急性期脊髄損傷に対す
る iPS 細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の臨床研究が実施されております。詳細は、同大学に
よる 2022 年1月 14 日付けプレスリリースをご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2022/1/14/220114-1.pdf

脊髄損傷について
脊髄の外傷による損傷のことで、受傷原因は平地転倒・交通事故・転落などの順に多いとされています。
近年は、人口の高齢化に伴い、転倒による受傷が増加傾向にあります。国内では、年間に約6千人の脊髄
損傷患者が発生しており、慢性期までを含めた患者総数は 10~20 万人と言われています*。適切な初期
治療と専門的なリハビリテーションにより一定の回復が望めますが、運動麻痺や筋の痙性、拘縮、知覚麻
痺、体幹内臓機能不全(膀胱直腸障害、発汗体温調節機能障害、内臓機能低下、呼吸機能低下)などの複
合した重度の後遺障害が残る場合が多く、治療薬の開発が強く望まれています。

出典:Miyakoshi N et al Spinal Cord 2021 Jun;59(6):626-634.
坂井宏旭ら「わが国における脊髄損傷の現状」(2010)

以上

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