臓器の”芽”を移植し生体内で機能的なヒト臓器を創り出す再生医療等製品(3次元臓器)の研究開発着手に関するお知らせ

平成 27 年 11 月9日
各 位


会 社 名 株 式 会 社 ヘ リ オ ス
代表者名 代 表 取 締 役 社 長 鍵本 忠尚
(コード番号:4593、 東証マザーズ)



臓器の”芽”を移植し生体内で機能的なヒト臓器を創り出す
再生医療等製品(3 次元臓器)の研究開発着手に関するお知らせ

当社は、公立大学法人横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学 谷口英樹教授、
同武部貴則准教授ら研究グループが開発した多能性幹細胞(iPS 細胞等)から機能的なヒ
ト臓器を作製する技術に関し、平成 26 年 10 月、全世界における独占的な特許実施許諾
契約を締結するとともに、同研究グループと共同研究を開始しています。

同技術は、胎内で細胞同士が協調し合って臓器が形成される過程を模倣するという発
想から開発されたもので、3 種類の細胞(内胚葉細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞)を
一緒に培養することで臓器のもとになる立体的な器官原基(臓器の芽:Organ Bud)を人
為的に創出する新規の細胞培養操作技術です。具体的には、例えば肝臓の場合、肝臓の
機能を担う肝細胞の前駆細胞をヒト iPS 細胞から作製し、血管を作り出す血管内皮細胞
と、細胞同士をつなぐ働きなどを持つ間葉系幹細胞と特別な条件下で共に培養すると 48
時間程度で立体的なヒト肝臓原基が創出されます。さらにこのヒト肝臓原基をマウスの
生体内に移植すると、ヒト血管構造を持つ機能的な肝臓へと成長し、肝不全モデルマウ
スへの移植実験では非移植群のマウスと比較して生存率が有意に改善するという治療効
果が発現することが明らかになっています。この研究成果は英国科学誌 Nature に 2013
年 7 月に掲載されています。なお、米国科学誌 Science が 2013 年の世界 10 大ブレーク
スルーとして同技術を選出しています。
同研究グループは、肝臓のみならず、膵臓、腎臓、腸、肺、心臓、脳などさまざまな
器官の 3 次元的な器官原基を創出することにも成功しています。現在、臓器が適切に機
能しない臓器不全症という病気に対しては、機能を損なった臓器を健常な臓器へ置換す
る臓器移植が極めて有効な治療法として実施されています。しかしながら、年々増大す
る臓器移植のニーズに対し、ドナー臓器の供給は絶対的に不足しており、同技術は臓器
移植の代替治療として多くの患者を救済し得る「器官原基移植療法」という新たな治療
概念を提唱できるものと期待されます。

横浜市立大学では 2019 年に新生児(出生後 28 日以内)の代表的な代謝性肝疾患であ
る「尿素サイクル異常症」を対象とした臨床研究を実施する計画を進めています。尿素
サイクル異常症は、肝臓においてアンモニアを解毒し尿素を産生する代謝経路(尿素サ
イクル)で働く酵素に先天的な異常があり、血液中のアンモニア値が上昇する高アンモ
ニア血症により中枢神経障害が起こり、新生児期に発症すると死に至るか、知的発達障
害などの重度の後遺症を残すという重篤な疾患です。日本では小児(18 歳未満の児童)
の患者数は 286 人(平成 23 年度小児慢性特定疾患治療研究事業の全国登録状況より)、
新生児の患者数は年間 20 人強と推定されます。現在、根治治療は肝臓移植しかなく、軽
症例においても食事療法と薬物療法により、アンモニア値の低下を図る治療を生涯にわ




たり続ける必要があります。同大による臨床研究では、カテーテルを介して肝臓へ肝臓
原基を注入し、機能的な肝臓を育てることを目的として行い、まずは安全性の検証を行
う予定です。

当社は共同研究を通して今後、臨床試験への道筋をつけていきたいと考えており、現
時点においては、代謝性肝疾患を対象疾患と想定しております。肝臓は、たんぱく質な
ど身体に必要なさまざまな物質を合成し、不要有害な物質を解毒、排泄するなど約 500
種類もの機能を、約 2,000 種類以上の酵素を用いて果たしている体内の化学工場といえ
る臓器です。代謝性肝疾患は、生まれつき特定の酵素が欠損していること等により必要
な物質を作ることができない肝臓の疾患で、国内で年間約 30 名、欧米で年間約 390 名が
新たに発症していると推定されます。主たる治療薬である酵素補充療法の年間治療費
(一人当たり 3,000 万円から 5,000 万円)を参考にした場合の市場規模は 120 億円~210
億円と推定しています。

当社はその後、肝臓移植(移植数国内年間約 400 件強、欧米約 10,000 件、待機患者数、
国内で 400 人弱、欧米約 19,000 人)の代替治療に向けた研究開発を進めてゆくことを想
定しています。
中でも当社が将来的に注目している疾患領域が肝硬変となります。肝硬変は慢性肝炎
の進行により壊れた肝細胞の跡に繊維が沈着することで肝臓が硬くなり、肝臓の機能が
低下した疾患で、慢性肝炎の末期的症状といえます。国内患者は約 40~50 万人存在する
と推計(肝がん白書;日本肝臓学会発行)されており、肝硬変の推定患者のうち継続し
て医療機関を受診している患者数は 56,000 人(平成 23 年患者調査;厚生労働省)、肝が
んを併発していない肝硬変の年間死亡者数は約 17,000 人(肝がん白書;日本肝臓学会)
と推計されています。根治治療は肝臓移植しかない状況であり、肝硬変での治療効果が
検証された場合の治療ニーズは高いと予想されます。

当社は、本年 10 月、横浜市立大学の先端医科学研究センター内に増設された産学連携
ラボに入居いたしました。今回のラボ入居は当社目的達成に向けた体制の早期構築を目
的としております。今後、横浜市立大学と共同でヒトへの移植が可能なヒト肝臓原基の
大量製造方法の構築、さらに作製されたヒト肝臓原基の評価方法や移植方法を検討する
ことにより、最適な移植手法を見出し、再生医療の実用化に向けた取り組みを促進して
いきます。

当社は、当社のミッションである『 「生きる」を増やす。爆発的に。』を実現し、一人
でも多くの患者様に一刻も早く iPS 細胞技術を用いた治療法を届けるため、引き続き研
究開発に邁進して参る所存です。

以上



本件に関するお問い合わせ先
株式会社ヘリオス 広報担当
Mail: pr@healios.jp





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