軟骨無形成症に対するアプタマー創薬の研究論文がScience Translational Medicineに掲載

News Release

2021 年 5 月 6 日
各 位
株式会社リボミック
(コード番号:4591 東証マザーズ)


軟骨無形成症に対するアプタマー創薬の研究論文が
Science Translational Medicine に掲載


軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH と略)は新生児約 25,000 人に対して1人の頻度で発生す
る希少疾患で、現在有効な治療法がほとんどなく、新規医薬品開発が求められている厚生労働省
の指定難病です。当社は AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の支援のもと、大
阪大学医学系研究科(大薗恵一教授)ならびにチェコ共和国 Masaryk 大学医学部(Pavel Krejci
教授)らのグループと ACH 治療薬の開発に関する共同研究を進めてきましたが、このたびその
研究成果が米国科学誌 Science Translational Medicine に ONLINE 掲載(米国東部時間 5 月 5
日)されましたので、お知らせします。


学術誌名 Science Translational Medicine
論文タイトル RNA aptamer restores defective bone growth in FGFR3-related skeletal
dysplasia
論文 URL https://stm.sciencemag.org/content/13/592/eaba4226/tab-pdf

論文内容の骨子 当社が開発した FGF2 に対するアプタマー(RBM-007)が、ACH 患者由来
の iPSC(人工多能性幹細胞)や病気を再現した動物モデルでの実験におい
て、優れた ACH 治療薬となりうることが証明されました。


論文の詳細は、AMED ホームページ(https://www.amed.go.jp/seika/index.html 掲載予定)を
ご覧ください。


以上
【本件に関するお問い合わせ先: 財務経理部 03-3440-3745】
プレスリリース


核酸アプタマーを⽤いた軟⾻無形成症治療薬の開発


株式会社リボミック
国⽴⼤学法⼈⼤阪⼤学
国⽴研究開発法⼈⽇本医療研究開発機構


研究成果のポイント
・軟⾻無形成症(ACH)モデルマウスと患者由来 iPS 細胞で、FGF2 阻害により⾻の成⻑が促進された
・治療法のない希少疾患である軟⾻無形成症(ACH)に対する治療薬の開発が期待される
・核酸医薬としてのアプタマーの実⽤化の加速に寄与する


概要
軟⾻無形成症(Achondroplasia、ACH と略)は新⽣児約 25,000 ⼈に対して1⼈の頻度で発⽣する希少疾患
で、現在有効な治療法がほとんどなく、新規医薬品開発が求められている厚⽣労働省の指定難病です。この
疾患は、線維芽細胞増殖因⼦(FGF)に対する受容体のひとつである FGFR3 の突然変異によって発症し、
四肢短縮による低⾝⻑を主な症状とします。

我々は、ACH モデルマウス※1 を⽤いた薬理試験において、抗 FGF2 アプタマー※2(RBM-007)が低⾝⻑
改善効果を⽰すことを発⾒し、その作⽤機序を明らかにしました。また、ACH 患者由来の iPSC(⼈⼯多能
性幹細胞)は軟⾻細胞への分化が不全になっていますが、この iPS 細胞を試験管内で培養する際、RBM-007
を添加することにより、軟⾻細胞への分化が可能となりました。さらには、免疫不全マウスにこの RBM-
007 を添加した分化細胞を移植すると、マウスの体内で軟⾻組織が形成されることが明らかになりました。
これらの結果から、RBM-007 が ACH に対する新薬となりうることが強く⽰唆されました。

この研究は、国⽴研究開発法⼈⽇本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実⽤化研究事業「抗 FGF2
アプタマー(RBM-007)を⽤いた軟⾻無形成症治療薬の開発」、および創薬⽀援推進事業・希少疾病⽤医
薬品指定前実⽤化⽀援事業「抗 FGF2 アプタマーを⽤いた軟⾻無形成症治療薬の開発」の⽀援により⾏
われたもので、本研究の成果は、⽶国科学誌「Science Translational Medicine」に、2021 年 5 ⽉ 5 ⽇(⽶国
東部時間)に公開される予定です。
研究の背景
軟⾻無形成症(ACH)の原因となる遺伝⼦は 22 種類の FGF タンパク質に対する 4 種類の FGF 受容体のひ
とつ FGFR3 です。遺伝様式は常染⾊体優性遺伝ですが、約 90%以上は新規突然変異によるものとされ、健
康な両親から⽣まれます。患者の 95%に FGFR3 の G380R 点変異(380 番⽬のグリシンがアルギニンに置
換される変異)をみとめます。⽇本では 6,000 ⼈、世界では 250,000 ⼈の患者が推定されております。

ACH では、FGF タンパク質の結合により変異型 FGFR3 が活性化すると⾻を作るための軟⾻の形成にブレ
ーキがかかり、⾻の伸⻑が抑制されて、低⾝⻑となります(図1)。




図1.軟⾻無形成症の発症機序


そのため、FGFR3 の活性化を阻害することで、⾻の伸⻑を回復させるような医薬品の開発が試みられてい
ます。その中で、我々は FGFR3 に結合する FGF メンバーの中でも主要なプレーヤーである FGF2 に注⽬
し、その阻害剤が ACH の根本的な治療薬となりうるのではないかと考え本研究を実施しました。


研究の内容
今回我々は、FGF2 阻害剤として FGF2 に対する特異的 RNA アプタマー(RBM-007)を⽤いました。
RBM-007 は 37 鎖⻑の RNA 分⼦で FGF2 に対して特異的かつ強い結合活性をもち、FGF 受容体への結合
を完全に阻害することができます。
本研究では、1)軟⾻細胞を⽤いた in vitro※3 評価系、2)ACH モデルマウスを⽤いた in vivo※4 評価系、さら
に、3)ACH 患者由来の iPS 細胞を⽤いた in vitro/in vivo 評価系を⽤い、RBM-007 の効果を検証しました。
その結果、
1)RBM-007 が FGFR3 を介したシグナル伝達を完全に遮断すること、
2)ACH の原因となる FGFR3 変異を移⼊したことによって、短縮した⾻⻑が RBM-007 の投与による軟⾻
成⻑板の機能活性化により回復すること(図2)、
3)軟⾻細胞への分化能が失われた ACH 患者由来の iPS 細胞が RBM-007 の添加により軟⾻細胞への分化
能を回復し、移植した免疫不全マウスにおいて軟⾻様組織を形成することが明らかになりました。
これらの結果から、RBM-007 は ACH に対する新規治療薬になることが期待されます。




図2.ACH モデルマウスの⾝⻑と⼤腿⾻⻑に対する RBM-007 投与の効果
WT は野⽣型のマウス、ACH は病態モデルマウスを⽰す。


研究成果の意義
軟⾻無形成症(ACH)は未だ治療薬のない指定難病に定められている希少疾患であり、医薬品の開発が強
く望まれています。本研究成果により、FGF2 阻害剤である RBM-007 が ACH モデルマウス並びに患者由
来 iPS 細胞由来の⾻の成⻑を促進させることが明らかになり、RBM-007 は新規 ACH 治療薬として有望で
あると考えられます。

⾻の成⻑に重要である軟⾻を形成する器官(成⻑板)は太い⾻の端(⾻幹端)にあり、成⻑期に活発に増殖
し、思春期が終わる頃にはその働きを停⽌します。しかしながら、ACH の患者さんは軟⾻形成が不全のた
め、成⻑期の⾻の成⻑を伴う⾝⻑増加が⾒られません。そのため、ACH 治療薬は、軟⾻の成⻑時期である
幼少期から⻑期にわたって投与する必要があり、優れた安全性が求められます。現在、RBM-007 は⽶国に
おいて加齢⻩斑変性症に対する第Ⅱ相臨床試験が進⾏中であり、⾮臨床試験においても優れた安全性が確認
されております。ACH に関しても、RBM-007 は治験開始に必要な準備をすべて完了し、2020 年 7 ⽉に国
内の1治験施設にて、RBM-007 の安全性・忍容性及び薬物動態を調べることを⽬的とする、第Ⅰ相試験を
開始いたしました。今後は、患者さんのために新規 ACH 治療薬の実現を⽬指すところです。


論⽂情報
掲載誌
Science Translational Medicine

タイトル
RNA aptamer restores defective bone growth in FGFR3-related skeletal dysplasia

著者名
Takeshi Kimura, Michaela Bosakova, Yosuke Nonaka, Eva Hruba, Kie Yasuda, Satoshi Futakawa, Takuo
Kubota, Bohumil Fafilek, Tomas Gregor, Sara P. Abraham, Regina Gomolkova, Silvie Belaskova, Martin Pes,
Fabiana Csukasi, Ivan Duran, Masatoshi Fujiwara, Michaela Kavkova, Tomas Zikmund, Josef Kaiser, Marcela
Buchtova, Deborah Krakow, Yoshikazu Nakamura, Keiichi Ozono, Pavel Krejci

DOI
10.1126/scitranslmed.aba4226


⽤語説明

※1 ACH モデルマウス
FGFR3 の遺伝⼦を ACH 疾患変異型に⼈為的に改変したマウス。ACH 患者と共通する低⾝⻑を⽰す。
※2 アプタマー
アプタマーとは、標的とするタンパク質の形状にフィットする⽴体構造をつくって結合し、その働きを阻害
あるいは調節できる核酸分⼦のことです。アプタマーは、SELEX 法とよぶ⼈⼯進化技術によって、膨⼤な
数の1本鎖核酸の中から標的タンパク質を「餌」にして標的に強い結合⼒をもつ分⼦を「⿂釣り」と同じ原
理で釣り上げて作製します。RBM-007 は FGF2 に対して特異的かつ⾼い親和性をもつ。RBM-007 はすで
に⽶国において、滲出型加齢⻩斑変性に対する第Ⅱ相臨床試験が実施中です。
※3 in vitro
in vitro(イン・ビトロ)とは、“試験管内で(の)”という意味で、試験管や培養器などの中でヒトや動物の
組織を⽤いて、体内と同様の環境を⼈⼯的に作り、薬物の反応を検出する試験のことを表す。
※4 in vivo
in vivo(イン・ビボ)とは、“⽣体内で(の)”という意味で、マウスなどの実験動物を⽤い、⽣体内に直接
被験物質を投与し、⽣体内や細胞内での薬物の反応を検出する試験のことを表す。


本件に関するお問い合わせ先

株式会社リボミック 広報担当
TEL:03-3440-3745
URL:https://www.ribomic.com
E-mail:info“AT”ribomic.com


⼤阪⼤学 医学系研究科 ⼩児科 教授 ⼤薗恵⼀
TEL:06-6879-3932
E-mail:kitano“AT”ped.med.osaka-u.ac.jp


AMED 事業に関すること
国⽴研究開発法⼈⽇本医療研究開発機構
創薬事業部 創薬企画・評価課
難治性疾患実⽤化研究事業 担当
E-mail:nambyo-r“AT”amed.go.jp


創薬⽀援推進事業・希少疾病⽤医薬品指定前実⽤化⽀援事業 担当
E-mail:id3desk”AT”amed.go.jp
※E-mail は上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

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