熊本大学とオンコリスバイオファーマ 共同発表論文 「Molecular Therapy - Oncolytics」に掲載

2022年11月1日


各 位
会 社 名 オンコリスバイオファーマ株式会社
代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 浦田 泰生
(コード番号:4588)
問 合 せ 先 取 締 役 吉村 圭司
(TEL.03-5472-1578)


熊本大学とオンコリスバイオファーマ 共同発表論文
「Molecular Therapy - Oncolytics」に掲載

オンコリスバイオファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:浦田泰生、 以
下、「オンコリスバイオファーマ」)および熊本大学(所在地:熊本県熊本市、 学長:小
川久雄)は、このたび共同発表した論文 “An oncolytic virus as a promising candidate for the
treatment of radioresistant oral squamous cell carcinoma” 「本論文) ”Molecular Therapy
(以下、 が、
– Oncolytics”に掲載されましたので、お知らせいたします。

なお、論文の概要は下記の通りです。
① テロメライシン(suratadenoturev; OBP-301)を放射線に併用することで、放射線耐性
口腔がん細胞の放射線抵抗性を解除できることを明らかにしました。
② 放射線耐性口腔がん細胞や実際の口腔がん患者の組織を移植した動物モデルにおい
て、テロメライシン併用放射線療法が放射線療法単独に比べて優れた治療効果を発
揮することを明らかにしました。
③ テロメライシン併用放射線療法が放射線耐性口腔がんに対する有望な治療法である
ことが示され、難治性口腔がんへの腫瘍溶解ウイルスの臨床応用が期待されます。

【代表者のコメント】
オンコリスバイオファーマ株式会社 代表取締役社長 浦田泰生
「今回の試験結果はテロメライシンの口腔がんへの適応を強く示唆する結果です。放
射線治療抵抗性のがん細胞ならず、既存治療に抵抗性を示す患者からの口腔癌細胞に
対してもテロメライシンが奏功したことは非常に有意義な結果だと考えます。今後の
臨床研究に期待したいと思います。」

熊本大学 大学院生命科学研究部歯科口腔外科学 教授 中山秀樹
「口腔がんは会話や食事などの生命活動の自由を奪う命にかかわる重大な病気で
す。口腔がんに対し、手術、放射線治療、薬物治療を組み合わせて治療を行います
が、わが国では急激な高齢化が進み、手術や抗がん剤の投与が困難なため放射線治
療のみを受ける患者が増加しています。しかし、放射線治療のみで口腔がんを治す
ことは難しいことから、私たちは腫瘍溶解ウイルス(テロメライシン®)を用いて放
射線治療の効果を高める研究を進めてきました。その結果、放射線耐性の培養口腔
がん細胞において、テロメライシン®が放射線の効果を相乗的に増強することを確認




しました。さらに、口腔がんを移植したマウスモデルを用いて放射線照射時にテロ
メライシン®を併用し、マウスの健康状態に悪影響なく放射線単独照射よりも有意な
腫瘍抑制効果がみられることを明らかにしました。以上の結果は、テロメライシン®
が口腔がん患者に対して副作用を生じずに放射線治療の効果を高める可能性を示唆
しており、新たな低侵襲治療の開発に繋がる大きな成果と考えています。今後は、
高齢の進行口腔がん患者に対するテロメライシン®併用放射線療法の実用化を目指
し、臨床研究を進めてゆきたいと考えています。」

※添付資料も、併せてご参照ください。


【テロメライシンについて】
がんのウイルス療法テロメライシン(suratadenoturev; OBP-301)は、がん細胞で特異
的に増殖し、がん細胞を破壊することができるように遺伝子改変された 5 型のアデノ
ウイルスです。テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖することでがん細胞
を溶解させる強い抗腫瘍活性を示します。また、正常な細胞の中ではテロメラーゼ活
性が低くテロメライシン®の増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つこと
が期待されています。身体の負担も少なく、これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの
重篤な副作用は報告されていないことから、患者様の QOL(Quality of Life)の向上が
期待されます。

【熊本大学について】
国立大学法人熊本大学は、教育基本法及び学校教育法の精神に則り、総合大学とし
て、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的及び応用的能力を備えた人材を育成
することにより、地域と国際社会に貢献することを目的としています。また、国内外
の大学、研究機関、様々なステークホルダーと協働して教育・研究やオープンイノベ
ーションを推進することで、大きな発展を目指していきます。
詳細は、www.kumamoto-u.ac.jp/をご覧ください。

【オンコリスバイオファーマ社について】
オンコリスバイオファーマ社は、 「がんのウイルス療法」と「重症ウイルス感染症治
療薬」を事業領域としたウイルス創薬を基盤として、がんや重症感染症領域の医療ニ
ーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、 「がんを切らずに治
す」というコンセプトに基づき開発を進めているテロメライシンをはじめとする腫瘍
溶解ウイルスの開発を進め、先駆け審査指定制度の対象品目に指定された食道がん領
域で 2024 年の承認申請を目指しています。
詳細は、www.oncolys.com をご覧ください。

以 上





令和4年11月1日

報道機関 各位

熊本大学
オンコリスバイオファーマ株式会社

治療抵抗性口腔がんに対する
腫瘍溶解ウイルス併用放射線療法の有効性を確認
-口腔がんの革新的治療法実用化への大きな一歩-

(ポイント)
 腫瘍溶解ウイルス(suratadenoturev; OBP-301)※1を放射線に併用することで、放射線
耐性口腔がん細胞の放射線抵抗性を解除できることを明らかにしました。
 放射線耐性口腔がん細胞や実際の口腔がん患者の組織を移植した動物モデルにおいて、
OBP-301併用放射線療法が放射線単独療法に比べて優れた治療効果を発揮することを
明らかにしました。
 OBP-301併用放射線療法が放射線耐性口腔がんに対する有望な治療法であることが示さ
れ、難治性口腔がんへの腫瘍溶解ウイルスの臨床応用が期待されます。

(概要説明)
熊本大学大学院生命科学研究部歯科口腔外科学講座の吉田遼司准教授、中山秀樹教授ら
の研究グループは、 オンコリスバイオファーマ株式会社との共同研究により、放射線治療が
効きにくい口腔がん細胞に対して、放射線療法に腫瘍溶解ウイルスを併用することで極め
て高い抗腫瘍効果が得られることを明らかにしました。
超高齢社会を迎えた本邦で、口腔がんの治療において放射線治療が手術に次ぐ有用な治
療法となっています。しかし、放射線治療に抵抗性を示し再発・増悪することが問題となっ
ており、単独療法での治療効果は限定的です。したがって、低侵襲で高い治療効果を示す併
用療法の開発が急務となっています。近年、腫瘍溶解ウイルスである「suratadenoturev
(OBP-301)」を既存の治療法と併用することで高い治療効果を発揮することが複数の悪性
腫瘍で報告されていますが、放射線耐性口腔がんにおけるOBP-301の有効性についてはほと
んど研究されていませんでした。
今回、本研究グループは、放射線療法にOBP-301を併用することで従来よりも高い治療効
果が得られるかを複数の口腔がん細胞や実際の口腔がん患者の腫瘍組織から樹立したPDX
モデル※2を用いて検討しました。
その結果、OBP-301は放射線が効きにくい口腔がん細胞に対して、アポトーシス※3やオー
トファジー※4を増強して放射線治療の効果を向上させることを明らかにしました。 また、 同
じ結果は複数の口腔がん移植動物モデルにおいても確認され、問題となるような副作用は
認めませんでした。以上の結果から、OBP-301併用放射線療法は実際のヒト口腔がんにおい
ても低侵襲で高い抗腫瘍効果を発揮する可能性が示されました。
本研究の結果は、 既存治療では限界を迎えつつある口腔がんに対する、低侵襲かつ効果的
な革新的治療法開発への大きな一歩であり、臨床応用に向けた早期の臨床試験実施が期待



されます。

本研究成果は、 分子標的治療に関する国際科学雑誌である 「Molecular Therapy
- Oncolytics」に 令和4年10月8日にオンラインで掲載されました。本研究は、
日本学術振興会「科学研究費助成事業 基盤研究(C)18K09771」および、OBP-
301の開発元であるオンコリスバイオファーマ株式会社などの支援を受けて実
施したものです。

(説明)
[背景]
超高齢社会を迎えた本邦では標準治療と呼ばれる手術療法や化学放射線療法を行えない
患者さんが増加しています。そのような場合、放射線療法が選択されます。しかし、放射線
治療が効かない “放射線抵抗性がん細胞”の存在が臨床上の問題となっています。 実際の臨
※5
床においても放射線単独療法の治療効果は十分ではなく、 不良な予後 をたどるケースが少
なくありません。そこで、副作用が少なく、高い治療効果が期待できる新たな治療法の開発
が急務です。
「suratadenoturev
(OBP-301) はアデノウイルスを改変した国産の腫瘍溶解ウイルスで、

通常、コクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)を介して細胞に感染します。悪性腫瘍で
は、hTERTというタンパク質を利用して細胞内で増殖し、細胞死を起こしますが、正常細胞
ではhTERTの発現は低く、感染してもウイルスが増殖しないことから、細胞への影響は少な
いとされます。したがって、OBP-301は悪性腫瘍選択的に殺細胞効果を発揮する副作用の少
ない治療薬として注目されています(図1) 。
既に基礎研究のレベルでは、 様々な悪性腫瘍で高い抗腫瘍効果が報告されています。 また、
海外を含め複数の悪性腫瘍を対象に、臨床試験が進んでいます。しかし、放射線抵抗性口腔
がんにおけるOBP-301の有効性については、ほとんど研究されていませんでした。




[研究の内容・成果]
まず、OBP-301の治療効果に関わるCARやhTERTが口腔がん細胞で発現しているかを調べ
たところ、放射線抵抗性口腔がん細胞を含む、ほぼ全ての口腔がん細胞でCARやhTERTが発
現していることを確認しました。また、実際の口腔がん患者において、腫瘍組織でhTERT
の発現が高いと化学放射線療法の治療効果や患者の予後が有意に不良となることが分かり
ました(図2) 。このことから、既存の治療に抵抗性を示す難治性口腔がん患者の中に、



OBP-301による治療が有効な患者が存在する可能性が示されました。




次に、口腔がん培養細胞を用いた実験から、放射線照射にOBP-301を併用することで放
射線耐性口腔がん細胞であるSAS-R、HSC-2-Rを含めた複数の口腔がん細胞で効果的に細胞
死を誘導できることを明らかにしました(図3) 。また、その効果は相乗的に発揮されるこ
とが分かりました。さらに、どのようなメカニズムで放射線耐性を解除するかを検討した
ところ、アポトーシスやオートファジーを増強して細胞死を誘導している可能性が示唆さ
れました。




最後に、培養細胞におけるOBP-301併用放射線療法の抗腫瘍効果が、実際のヒト腫瘍で
も期待できるかを、口腔がん細胞をマウス皮下に移植した動物モデルを用いた治療実験で
検証しました。その結果、OBP-301併用放射線療法は放射線単独療法と比較して有意に腫
瘍増殖を抑制しました。また、その効果は放射線耐性口腔がん細胞を用いた動物モデルで
も確認されました(図4)。さらに、実際の口腔がん患者組織を移植したPDXモデルにおい
ても、放射線単独療法に比べてOBP-301併用放射線療法が効果的に腫瘍増殖を抑制しまし
た。なお治療実験では、心臓、肺、肝臓といった重要臓器にOBP-301による副作用は全く
観察されず、ウイルス投与によるマウスへの健康への影響は認めませんでした。





[展開]
今回の研究成果から、腫瘍溶解ウイルスが放射線耐性口腔がんに対する放射線療法の抗
腫瘍効果を、効果的に増強することが明らかとなりました。また、動物モデルの結果から
実際の口腔がん患者においても低侵襲かつ効果的な治療法となり得ることが示されまし
た。今後、臨床試験を推進することで、放射線治療が効きにくい口腔がんや高齢口腔がん
患者に対する新たな治療法の実用化につながる可能性があります。

[用語解説]
※1 腫瘍溶解ウイルス(suratadenoturev; OBP-301)
:がん細胞で特異的に増殖し、がん細
胞を破壊することができるように遺伝子改変されたアデノウイルス。 細胞増殖に関わる「テ
ロメラーゼ活性」の高いがん細胞で特異的に増殖することでがん細胞を溶解させる強い抗
腫瘍活性を示す。 一方、正常な細胞の中ではテロメラーゼ活性が低くウイルスは極めて増殖
しにくく、高い安全性を保つと考えられる。
※2 PDX モデル:免疫不全マウスに患者の腫瘍組織をそのまま移植する手法。腫瘍が生体の
中で三次元的に増殖することができるため、 シャーレの中で培養する場合に比べて、 患者の
体内での腫瘍の性質を良く反映するモデルとされる。近年は抗がん剤などの効果スクリー
ニングに用いられる。
※3 アポトーシス:個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節
された細胞死のこと。 がん細胞では、 遺伝子変異などの影響でこの現象が起きにくくなって
いる。
※4 オートファジー:細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解する機能のこと。がん
や神経変性疾患、感染症など様々な生命現象に関わるとされる。
※5 予後:患者が罹った疾患の今後の病状についての医学的な見通し。病気の進行具合、治
療の効果、生存できる確率など、すべてを含めた見通しを指す。

(論文情報)
論文名:An oncolytic virus as a promising candidate for the treatment of
radioresistant oral squamous cell carcinoma
著者:Shunsuke Gohara, Kosuke Shinohara, Ryoji Yoshida, Ryusho Kariya, Hiroshi
Tazawa, Masashi Hashimoto, Junki Inoue, Ryuta Kubo, Hikaru Nakashima, Hidetaka
Arita, Sho Kawaguchi, Keisuke Yamana, Yuka Nagao, Asuka Iwamoto, Junki Sakata,
Yuichiro Matsuoka, Hisashi Takeshita, Masatoshi Hirayama, Kenta Kawahara,
Masashi Nagata, Akiyuki Hirosue, Yoshikazu Kuwahara, Manabu Fukumoto, Seiji
Okada, Yasuo Urata, Toshiyoshi Fujiwara, and Hideki Nakayama



掲載誌:Molecular therapy –Oncolytics-
doi:https://doi.org/10.1016/j.omto.2022.10.001
URL:https://www.cell.com/molecular-therapy-family/oncolytics/fulltext/S2372-
7705(22)00123-1#relatedArticles




【お問い合わせ先】
熊本大学大学院生命科学研究部
歯科口腔外科学講座
担当:准教授 吉田遼司
電話:096-373-5288
E-mail:ryoshida@kumamoto-u.ac.jp

オンコリスバイオファーマ株式会社
電話:03-5472-1578(代表)
E-mail:oncolys_information@oncolys.com





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