抗菌性・防カビ性、活性持続性、耐熱性を併せ持つ新規有機金属構造体材料を開発

2022 年 12 月 27 日
各 位
会 社 名 日 本 曹 達 株 式 会 社
代表者名 代 表 取 締役 社 長 阿 賀 英 司
(コード番号 4041 東証プライム)
問合せ先 総 務 部 長 見 邉 伸 樹
( TEL 03-3245-6053)


抗菌性・防カビ性、活性持続性、耐熱性を併せ持つ新規有機金属構造体材料を開発
-高機能で安全な新規生理活性材料-


当社は、優れた抗菌活性を有する亜鉛イオンと、高い防カビ活性を有する有機成分を、有機金属構造
体(MOF:Metal-Organic Frameworks a) )に複合化(錯体化)することにより、多くの微生物に対し
て効力を発揮する高機能な生理活性材料の開発に成功いたしましたので、お知らせいたします。

既存の農業化学品と、MOF の設計技術を組み合わせて応用した本開発材料は、抗微生物成分を徐々
に放出させることが可能であり、 高い抗菌・防カビ効果を持続するとともに、 高い耐熱性を示しました。
この研究成果は、国際的に権威のある学術誌のひとつである英国王立化学会発行の学術雑誌「Dalton
Transactions」に速報として掲載されました。 また、2022 年 11 月 10 日開催の 2022 年度九州大学
オープンイノベーションワークショップにおいてポスター発表を行い、高い評価を得ております。


1.背景

近年、細菌やカビなどの微生物汚染の防止に対する関心は高く、様々な製品に抗菌性・防カビ性が求
められています。 一般的に抗菌・防カビ剤は、金属イオン、光触媒などの無機系、および有機系に大別
され、無機系は高い耐熱性と徐放性を示す一方で、抗微生物スペクトルが狭いこと、また、有機系は
薬剤量当たりの効果は高い一方で、耐熱性や徐放性に劣ることが課題とされていました。
本研究では、MOF が金属イオンと有機配位子から成ること、また、MOF は難溶性固体になることが
多いことから、生理活性を有する金属イオンと有機配位子を組み合わせて、無機系と有機系の両方の
特長を有する生理活性材料を創出しました。 これにより得られた MOF は、広い抗微生物スペクトルを
示すとともに、水安定性や耐熱性が向上したことから、本材料がコントロールドリリースの可能な高耐
熱性の生理活性材料として有望であることを確認しました。

2.研究成果

(1) 抗菌活性のある亜鉛イオンと、防カビ活性のあるチアベンダゾール(TBZ)を MOF に複合化する
ことにより、新規生理活性材料を開発しました。
(2) 従来利用されている抗菌・防カビ剤を MOF に複合化(錯体化)することにより、亜鉛イオンの抗菌
活性と、TBZ の防カビ活性の両方が単剤で発現可能となりました。 また、MOF への複合化により、
水への徐溶性と、熱分解温度が 400℃以上という大幅な耐熱性の向上を達成し、広い抗微生物スペ
クトル、活性持続性、耐熱性を高次元で実現する生理活性材料の創出に成功しました。
(3) 食品添加物である TBZ を MOF の有機配位子に採用するという分子設計により、安全性に優れた生
理活性材料の提供を可能としました。
3.今後の展開

本研究では、単剤では実現困難であった高い生理活性と、その持続性・安定性の両立を、有機金属
構造体とすることによって高いレベルで実現できることを見出しました。 本開発材料は、従来、有機系
の抗菌・防カビ剤の適応が困難であった高温での樹脂混練が可能であることから、水回りの樹脂部材に
適用することで、持続的な生理活性の発現が期待されます。
今後、高性能な抗菌・防カビ材料としての活用に向けて、開発を推進いたします。




概念図: 本研究で開発した MOF 材料の錯体構造と、抗菌・防カビ性を示すイメージ



a) MOF(Metal-organic Frameworks 金属有機構造体) は、有機配位子が金属イオンを架橋して形成する
結晶性の配位ネットワーク構造をもつ材料です。 非常に小さな規則性細孔を有するものは、従来の多孔
性材料(活性炭、ゼオライトなど)をはるかに超える比表面積を有し、ガス吸着や分離への応用が期待
されています。




<本件に関するお問い合わせ先>
日本曹達株式会社 総務部広報・IR 課 担当:駒
TEL:03-3245-6053 Email:k.koma@nissogr.com



以 上

5327