蒸し大豆の嗜好性に影響する官能特性の探索

神戸市中央区港島中町 6-13-4 フジッコ株式会社 東証第一部コード番号 2908 2021 年 8月 23 日



日本食品科学工学会 第 68 回大会で発表予定
-官能評価研究-
蒸し大豆の嗜好性に影響する官能特性の探索
フジッコ株式会社(本社神戸市:代表取締役社長執行役員 福井正一)は、国立研究開発法人 農業・
食品産業技術総合研究機構(本部つくば市:理事長 久間和生)との共同研究成果を含む「蒸し大豆の嗜
好性に影響する官能特性の探索」について、日本食品科学工学会 第 68 回大会(会期:2021 年 8 月 26
日(木)~28 日(土)、オンライン開催)において発表いたします。


大豆は古くから豆腐、味噌、醤油など多様な加工方法によって食されており、近年では蒸し大豆や水
煮大豆のような素材に近い大豆食品も普及しています。当社においても蒸し大豆、水煮大豆、煮豆、大
豆ヨーグルトなど多様な商品を展開しています。これらの大豆食品のおいしさには原料大豆の特性が影
響を及ぼすことから、原料大豆の詳細な特性評価は重要であると考えられます。
そこで本研究では、大豆のもつ基本的な官能特性(外観、香り、食感、味、風味)を明らかにし、さ
らにそれらの特性と嗜好性との関係を明らかにすることを目的としました。


大豆の官能特性を明らかにするために、定量的記述分析法(Quantitative descriptive analysis 以
下 QDA 法)を実施しました。QDA 法とは、官能評価手法の一つで、対象試料にどのような特徴(食品の場
合:外観、香り、食感、味、風味)があるか、その特徴はどれくらいの強度であるかを、訓練された評
価者が精度高く評価する手法です。QDA 法によって、人が食べて感じる特徴を数値化することが可能とな
り、この評価結果は商品特徴の分析や新商品の開発のために有用な情報となります。


〈大豆の官能特性の見える化(QDA 法)

産地、品種の異なる大豆 16 種類について QDA 法を実施しました。評価試料は、味や風味など大豆その
ものの特徴を評価できるように蒸し大豆とし、訓練を行った評価者 12 名で評価を行いました。
蒸し大豆の評価項目として、香り 5 語、食感 6 語、味 3 語、風味 4 語 合計 18 語を定義しました。こ
れらの評価項目のうち、蒸し大豆の品種間差には「硬さ」
「ねっとり感」や「甘味」
「うま味」
「栗の風味」
等の寄与が大きいことが分かりました。また、 種類の大豆は官能特性によって 6 グループに分類され、


各大豆の特性を可視化することができました。
(図)


〈大豆のおいしさの要因解明(嗜好性調査)

96 名(4 区分の年齢層:10 代以下、20~30 代、40~50 代、60 代以上 各 20 名前後)を対象者として
蒸し大豆 10 種類の嗜好性調査を実施しました。
嗜好性調査の結果から、対象者の嗜好タイプは 4 タイプに分類することができ、嗜好性には「硬さ」
「ね
っとり感」
「甘味」などの特徴が大きく寄与していることが分かりました。また同時に行った属性アンケ




ート結果から、年代や大豆食品の食頻度、同居家族の食生活などが蒸し大豆の嗜好性に関与する可能性
が示唆されました。




以上より、QDA 法を用いた評価により蒸し大豆の官能特性を数値化することができ、さらに嗜好性調査
を行うことによって、蒸し大豆の嗜好性に寄与する要因を把握することができました。本結果をもとに、
商品に適した原料大豆の選択など、よりおいしい商品作りを目指します。




図. 大豆品種と官能特徴マップ
※大豆品種(□)と評価項目(■)のマップ上の距離が近いほど、その特徴を強く有することを示します。
評価項目と定義は、QDA 法に従い評価者の議論を行い決定しました。





■発表学会情報
【大 会 名】 日本食品科学工学会 2021 年度大会
【会 期】 2021 年 8 月 26 日(木)~28 日(土)
【一般講演会場】 オンライン開催
【発 表 演 題】 蒸し大豆の嗜好性に影響する官能特性の探索
【発 表 番 号】 3Ga08
【発 表 日 時】 2021 年 8 月 28 日(土)10:45~11:00
【学会発表要旨】
(目的)
大豆は古くから煮豆、豆腐、味噌など様々な加工方法によって食されており、近年、蒸し大豆や水煮
大豆のような料理素材に近い大豆食品も広く普及している。大豆食品の品質には原料大豆の品質が影響
を及ぼすことが予想されるため、原料大豆の品質評価は重要であるが、その詳細な官能評価系について
はこれまで検討されていない。本研究では、大豆のもつ基本的な官能特性を明らかにし、さらにそれら
の特性と嗜好性との関係を明らかにすることを目的とした。
(方法)
産地、品種の異なる大豆 16 種類について、官能特性を明らかにするため分析型官能評価(QDA)を実
施した。評価試料は、味や風味など大豆そのものの特徴を評価できるように蒸し大豆とし、評価は訓練
を行ったパネル 12 名で行った。また、QDA の結果から、代表的な官能特性を有する大豆 10 種類を選び嗜
好性調査を実施した。対象者 は 4 区分の年齢層 (10 代以下、20~30 代、40~50 代、60 代以上)各 20
名前後、合計 96 名とした。評価項目は、総合評価、硬さ(強度・嗜好)
、ねっとり感(強度・嗜好)、甘
味(強度・嗜好)の 7 項目とし、7 段階尺度を用いた 。10 歳以下の対象者のみ 3 段階で評価した。
(結果)
蒸し大豆の官能評価用語として 18 項目(香り 5 語、テクスチャー 6 語、味 3 語、風味 4 語)を QDA
により定義した。評価の結果、17 項目で品種間に有意差がみられた。主成分分析の結果、第 1 主成分は
62.7%、 2 主成分は 13.7%の寄与率であった。 1 主成分は、
第 第 正の方向に「硬さ」
「飲み込む前の粗さ」

負の方向に「ねっとり感」「水分感」「甘味」の寄与が大きかったことから、主にテクスチャーに関する
軸と解釈できた。第 2 主成分は、
「皮の残りやすさ」
「うま味」
「苦味」を示す軸と解釈できた。官能特性
の類似度に基づきクラスター分析を行った結果、大豆 16 種類は 6 グループに分類することができた。ま
た、嗜好性調査により、品種に対する嗜好の類似度から、対象者の嗜好タイプを分類した。各嗜好タイ
プの特徴から、蒸し大豆の嗜好性には「硬さ」「ねっとり感」「甘味」などの寄与が大きいことが示唆さ
れた。




<お問い合わせ先> フジッコ株式会社
担当者:研究開発部 おいしさ研究チーム 東条 由花
責任者:研究開発部 部長 鈴木 利雄
TEL:078-303-5385 FAX:078-303-5944
ホームページアドレス:https://www.fujicco.co.jp





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